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本編
-73- いい男
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「…私は、今まで間違っていたのでしょうか?」
レナードが茫然として呟く。
僕に対して、というより、自分に対して…でもなさそうだ。
ここに存在しない人に向けたような、そんな言葉に聞こえた。
「間違ってたと思うなら謝って、これから直していけばいいだろー」
「セオ」
いつの間にか、セオが近くまで来ていた。
いつ入っていたのかな、全然気が付かなかった。
「セオ、お金渡せた?」
「もちろん、ばっちりです」
「よかった、ありがとう」
「いえいえ………と、それより。レン様っ!」
あー、やっぱり怒ってる。
っていうか……起こってるっていうか、悲しませてるっていうか。
「なんで我慢してるの!?嫌なことは嫌って言ってよ!」
あ、敬語がとれてる。それは、いいんだけれど、セオが泣きそうだ。
泣かせてるのは、僕だ。
「ごめんね、自分で何とかしたくて、意地はっちゃった」
「何のためにいたと思ってんの?目配せしてきたの何でさ?
俺は耳は良いけど、透視とか出来ないんだからね?
あんなおやじに身体触らせて平気でいないでください!」
「ごめんね、セオ。次からそうするっていうか、そうならないように気をつけるし、ちゃんと頼るから」
あー、泣かないで。
どうしよう?あ、セバスもアニーも入ってきた。
セバスがなんともいえない顔で僕らを見ている。
「ごめんね、セオ、泣かないで」
「泣いてませんー」
「ごめんね」
さて、これからどうしようか……。
アレックスが戻ってくるまであとほんの少しだけ時間がありそうだ。
「この領に、貴族向けの洋服を扱うお店はある?」
「はい、三店舗ございます」
セバスに問うと、すぐ答えが返ってくる。
「じゃあ、レナード。三店舗の内、一番信用のおけるお店に、午後に伺ってもいいか伝えてきてくれる?」
「私が、ですか?」
「うん。お願いできる?」
「わかりました。…失礼します」
「うん、ありがとう」
「レン様、良かったのですか?何のお咎めもせず」
アニーが痛々しい顔で僕のことを見る。
これで僕がレナードの減給やら謹慎やらをお願いしたらきっとアニーはそうするだろうな。
そんなことは望んでないし、今以上にアレックスのために色々してもらわないと困る。
「うん、いいんだ、僕も色々言っちゃったから、きっとレナードも思うことあると思うし」
「言われなれてないですからねー、きっと堪えてますよーレオンのやつ」
セオが復活して、僕に告げる。
「え、そうなの?…レナードって貴族出身なの?」
「うーん、そういうのは俺もわからないですけど、確か前侯爵様がどっかから拾ってきたんですよ」
セオの言葉に、僕はセバスを見る。
セバスの方がずっと長いんだから知ってるはず。
「ええ、素性はわかりませんが。確かに、アレックス様を養子に迎えて間もないころ、
ウィリアム様が出先で拾われて、迎い入れました。
そのころから穿った見方をする少年で、私も驚きましたが。
今回のミスはあまりにも唐突で彼らしくないと思いました。
そうですね……あまり、叱られなれていないと思いますよ」
「そっか。なら、尚更、良い方に変わってくれるといいんだけれど」
それに、私のようにいい男って自分で言うのは……まあ、そうなんだろうけれどさ。
自意識過剰とまでは言わないけれど、顔は…整ってると思うよ?確かに。
でも、全然アレックスのほうが、かっこいいし、いい男だ。
誰でも彼でもレナードに惚れるなんて思わないで欲しいし、あれは、納得がいかない!
「レン様?なんか納得してないことがあるんですか?ちゃんと言ってくださいね?」
「うん…、ねえ、セオ。レナードってそんなに言うほどモテるの?」
「へ?」
「レナードがね、私のようにいい男って言ってんだけど、自分で言う?
確かに、レナードの顔はかっこいいのかもしれないけれど、でも、アレックスの方がずっとかっこいいし、ずっとずっといい男だもん」
「ぶはははっ、ですよねー!俺もそう思います!」
セオが吹き出し爆笑する。
えー?大笑いするほど、変なこと言ってないと思うんだけれどなあ。
あ、でも珍しい!
セバスも笑ってるし、アニーまで涙を浮かべて笑ってる。
「確かに、ええ、そうですわね、その通りですよ、レン様」
「もー、笑い話じゃないのに」
まあ、ずっと暗い顔しているより、いいかな。
「今度から、採寸の時はアニーかセオが傍にいてね」
「かしこまりました」
アニーがすぐさま返事をしてくれたけれど、セオは返事をしてくれない。
なんでだろう?
「セオ?」
「えーと…俺ですか?」
「だって、外に行くのに、アニーは一緒にいないでしょ?」
「そうですねー、いないですねー」
「アレックスが傍でじっとみてたら、お店の人緊張しちゃうでしょう?侯爵様だし」
「あー、そうですねー」
「ね?レナードとジュードじゃ、アレックスが、その…嫉妬しちゃうかもしれないし、だから、セオしかいないでしょう?」
セオががっくりとうなだれる。
だって、他にいないでしょう?
レナードとジュードはわからないけれど、セオにはちゃんと恋人がいるって言ってたから、アレックスも安心すると思う。
セオには昨日色々えっちなことも聞いたから、3人の中では1番接しやすい。あと、僕をそのまま認めてくれてるんだよね。魔力譲渡直後のアレックスとのやり取りを見てたからかもしれないけど、セオの性格だからこそだと思う。
それに、多分セオは、恋人に抱かれる側だ。ポーションの話もそうだったけれど、キスが上手だったんならえっちも上手なはずですから大丈夫、なんて言わないと思うし。
「…はい。じゃあ、俺がアレックス様に嫉妬されないように、ちゃんとフォローしてくださいね、レン様」
「うん」
ほんと、頼みますよーと念を押してくるセオに、思わず笑っちゃった。
レナードが茫然として呟く。
僕に対して、というより、自分に対して…でもなさそうだ。
ここに存在しない人に向けたような、そんな言葉に聞こえた。
「間違ってたと思うなら謝って、これから直していけばいいだろー」
「セオ」
いつの間にか、セオが近くまで来ていた。
いつ入っていたのかな、全然気が付かなかった。
「セオ、お金渡せた?」
「もちろん、ばっちりです」
「よかった、ありがとう」
「いえいえ………と、それより。レン様っ!」
あー、やっぱり怒ってる。
っていうか……起こってるっていうか、悲しませてるっていうか。
「なんで我慢してるの!?嫌なことは嫌って言ってよ!」
あ、敬語がとれてる。それは、いいんだけれど、セオが泣きそうだ。
泣かせてるのは、僕だ。
「ごめんね、自分で何とかしたくて、意地はっちゃった」
「何のためにいたと思ってんの?目配せしてきたの何でさ?
俺は耳は良いけど、透視とか出来ないんだからね?
あんなおやじに身体触らせて平気でいないでください!」
「ごめんね、セオ。次からそうするっていうか、そうならないように気をつけるし、ちゃんと頼るから」
あー、泣かないで。
どうしよう?あ、セバスもアニーも入ってきた。
セバスがなんともいえない顔で僕らを見ている。
「ごめんね、セオ、泣かないで」
「泣いてませんー」
「ごめんね」
さて、これからどうしようか……。
アレックスが戻ってくるまであとほんの少しだけ時間がありそうだ。
「この領に、貴族向けの洋服を扱うお店はある?」
「はい、三店舗ございます」
セバスに問うと、すぐ答えが返ってくる。
「じゃあ、レナード。三店舗の内、一番信用のおけるお店に、午後に伺ってもいいか伝えてきてくれる?」
「私が、ですか?」
「うん。お願いできる?」
「わかりました。…失礼します」
「うん、ありがとう」
「レン様、良かったのですか?何のお咎めもせず」
アニーが痛々しい顔で僕のことを見る。
これで僕がレナードの減給やら謹慎やらをお願いしたらきっとアニーはそうするだろうな。
そんなことは望んでないし、今以上にアレックスのために色々してもらわないと困る。
「うん、いいんだ、僕も色々言っちゃったから、きっとレナードも思うことあると思うし」
「言われなれてないですからねー、きっと堪えてますよーレオンのやつ」
セオが復活して、僕に告げる。
「え、そうなの?…レナードって貴族出身なの?」
「うーん、そういうのは俺もわからないですけど、確か前侯爵様がどっかから拾ってきたんですよ」
セオの言葉に、僕はセバスを見る。
セバスの方がずっと長いんだから知ってるはず。
「ええ、素性はわかりませんが。確かに、アレックス様を養子に迎えて間もないころ、
ウィリアム様が出先で拾われて、迎い入れました。
そのころから穿った見方をする少年で、私も驚きましたが。
今回のミスはあまりにも唐突で彼らしくないと思いました。
そうですね……あまり、叱られなれていないと思いますよ」
「そっか。なら、尚更、良い方に変わってくれるといいんだけれど」
それに、私のようにいい男って自分で言うのは……まあ、そうなんだろうけれどさ。
自意識過剰とまでは言わないけれど、顔は…整ってると思うよ?確かに。
でも、全然アレックスのほうが、かっこいいし、いい男だ。
誰でも彼でもレナードに惚れるなんて思わないで欲しいし、あれは、納得がいかない!
「レン様?なんか納得してないことがあるんですか?ちゃんと言ってくださいね?」
「うん…、ねえ、セオ。レナードってそんなに言うほどモテるの?」
「へ?」
「レナードがね、私のようにいい男って言ってんだけど、自分で言う?
確かに、レナードの顔はかっこいいのかもしれないけれど、でも、アレックスの方がずっとかっこいいし、ずっとずっといい男だもん」
「ぶはははっ、ですよねー!俺もそう思います!」
セオが吹き出し爆笑する。
えー?大笑いするほど、変なこと言ってないと思うんだけれどなあ。
あ、でも珍しい!
セバスも笑ってるし、アニーまで涙を浮かべて笑ってる。
「確かに、ええ、そうですわね、その通りですよ、レン様」
「もー、笑い話じゃないのに」
まあ、ずっと暗い顔しているより、いいかな。
「今度から、採寸の時はアニーかセオが傍にいてね」
「かしこまりました」
アニーがすぐさま返事をしてくれたけれど、セオは返事をしてくれない。
なんでだろう?
「セオ?」
「えーと…俺ですか?」
「だって、外に行くのに、アニーは一緒にいないでしょ?」
「そうですねー、いないですねー」
「アレックスが傍でじっとみてたら、お店の人緊張しちゃうでしょう?侯爵様だし」
「あー、そうですねー」
「ね?レナードとジュードじゃ、アレックスが、その…嫉妬しちゃうかもしれないし、だから、セオしかいないでしょう?」
セオががっくりとうなだれる。
だって、他にいないでしょう?
レナードとジュードはわからないけれど、セオにはちゃんと恋人がいるって言ってたから、アレックスも安心すると思う。
セオには昨日色々えっちなことも聞いたから、3人の中では1番接しやすい。あと、僕をそのまま認めてくれてるんだよね。魔力譲渡直後のアレックスとのやり取りを見てたからかもしれないけど、セオの性格だからこそだと思う。
それに、多分セオは、恋人に抱かれる側だ。ポーションの話もそうだったけれど、キスが上手だったんならえっちも上手なはずですから大丈夫、なんて言わないと思うし。
「…はい。じゃあ、俺がアレックス様に嫉妬されないように、ちゃんとフォローしてくださいね、レン様」
「うん」
ほんと、頼みますよーと念を押してくるセオに、思わず笑っちゃった。
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