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本編
-64- 厨房問題
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「奥の1階はすべて使用人の部屋です。全部で10部屋あります。
個室で、お風呂とトイレまでついてるんで、かなり珍しいんですよ」
「普通のところはそうじゃないの?」
「めったにないと思いますね。うちの実家は子爵家ですし狭いですから使用人も少ないんで個室ですけど、トイレは共用、風呂無しです。
それに、侯爵家ともなれば、通常たくさんの使用人が働いていますからね、下の使用人ほど部屋の環境は悪くなります」
「今、みんなの部屋は不自由してない?」
「ええ、アレックス様が継ぐときに一度改装してますし、俺らの部屋も浄化ボタン一つで綺麗になりますし。
朝、それなりに日も入るんで、快適です。あと、鍵を閉めると防音結界が働くんで、部屋にいればとても静かなんですよ。
部屋に関したら、正直実家より静かで快適ですね」
「使用人の寝起きはまちまちですから。防音結界は本当に助かります」
エリソン侯爵家の使用人の部屋環境はいいみたいだ。
2人ともとても笑顔だし。
「ならよかった。アレックスが継いだのっていつ?」
「18の時ですね」
「そっか」
じゃあ、10年は経ってるんだ。
毎日浄化ボタンを押すなら、痛みは少ないのかな。
それでも、10年経ったら、どこかしら何かが劣化することもありそう。
セバスとアニーには、故障や劣化があったらちゃんと言うようにって伝えておくのがよさそうかな。
「じゃあ、この角から、ご案内しますね。ーーーここが使用人の食堂です」
セオが扉を開くと、アンティーク調の長いテーブルと、高級感あふれる椅子が並んでいた。
誕生日席も合わせて、全部で、16客もある。
ん?これってもしかして。
「これって、もとはエリソン侯爵家のダイニングだった?」
「あたりです。凄いでしょー、こんな高級な椅子とテーブルで俺たち食事してるんですよー」
「先代から改装されましてね、小さな方の部屋を使われるようになったそうです」
「そうなんだ。なんか、長いテーブルだったらどうしようって思ってたけれど、ハーフサイズだったから安心したんだ。
こんなに長いテーブルにアレックスと二人なんて、距離が遠すぎて話が出来ないよ」
「先代もそうおっしゃっていたそうです」
「使用人全員でなんかするときっていうのも、爺さまがここに呼び出すんで、この食堂を使ってますね」
セオとジュードの話に耳を傾けながら、しっかりと目を向けていく。
窓も大きくて日当たりもいいし、圧迫感もない。扉も二つあって、一つは観音扉だし、一度に食事を運べそうだ。
「ここも浄化ボタンなの?」
「ええ、ですが、最後に部屋を出る人が押すってことになってますね。
食べてる途中で押されると、食べかけのもの消えちゃうことあるんで」
「うわ、それは大変」
「でしょー? さ、次に行きましょう。ここが、厨房です。
お邪魔しまーす、レン様が来ましたよー」
「おお、レン様!どうぞどうぞ、好きなだけ見ていってください」
「2人でもむさ苦しいところですみませんねえ」
にこにこと話しかけてくるマーティンとイアンに思わず笑みが浮かぶ。
広い、それに、綺麗に使い込まれている。
ステンレス製なのかな?アイランド型の独立した作業台が2つあって、それぞれにコンロと流しがついてる。
壁側は全て、棚や、貯蔵庫、オーブンや調理器具が綺麗に整頓している。
でも、昼の下準備をもう始めていたみたい。
「アレックスは、今までお昼は帰ってきてなかったの?」
「仕事場で済まされていましたね」
「お茶の時間も?」
「ええ、朝と夜のみでしたよ。レン様と取られるのが嬉しそうでしたね」
うん、これはちょっと問題かもしれない。
「みんなの食事はどうしているの?お昼は?」
「賄いは、入ってくるもの次第ですけど、朝食と一緒にスープやシチューを作ったりしますよ」
「新しい食材が入った時は、お出しする前に試食会をすることもありますね」
休みもないし、休む時間もない。
食器洗い乾燥機みたいなのがあるって言っていたけれど、料理を作るだけで手いっぱいだ。
来た時、イアンがじゃがいもの皮むきしてたもん。
本来の仕事じゃないはず。
今までは朝と夜だけだったから、昼の休憩は、少しは休めたのかもしれないけれど。
せめてあと2人は早急に欲しいところかも。
それに、2人だってそろそろ教える側に回ってもいいと思うんだ。
「2人には、料理人や菓子職人として自分が育てたいなっていう人がいたりする?
できればエリソン侯爵領の人の方がいいと思うんだけれど」
「え?育てたい、ですか?」
「そう。僕が来たから、お昼もお茶の時間もだと、休む暇はないでしょう?
人を増やした方がいいと思うんだ、せめて1人ずつは早急に」
そういうと、2人は顔を見合わせた後、困ったように眉を下げて僕を見やった。
個室で、お風呂とトイレまでついてるんで、かなり珍しいんですよ」
「普通のところはそうじゃないの?」
「めったにないと思いますね。うちの実家は子爵家ですし狭いですから使用人も少ないんで個室ですけど、トイレは共用、風呂無しです。
それに、侯爵家ともなれば、通常たくさんの使用人が働いていますからね、下の使用人ほど部屋の環境は悪くなります」
「今、みんなの部屋は不自由してない?」
「ええ、アレックス様が継ぐときに一度改装してますし、俺らの部屋も浄化ボタン一つで綺麗になりますし。
朝、それなりに日も入るんで、快適です。あと、鍵を閉めると防音結界が働くんで、部屋にいればとても静かなんですよ。
部屋に関したら、正直実家より静かで快適ですね」
「使用人の寝起きはまちまちですから。防音結界は本当に助かります」
エリソン侯爵家の使用人の部屋環境はいいみたいだ。
2人ともとても笑顔だし。
「ならよかった。アレックスが継いだのっていつ?」
「18の時ですね」
「そっか」
じゃあ、10年は経ってるんだ。
毎日浄化ボタンを押すなら、痛みは少ないのかな。
それでも、10年経ったら、どこかしら何かが劣化することもありそう。
セバスとアニーには、故障や劣化があったらちゃんと言うようにって伝えておくのがよさそうかな。
「じゃあ、この角から、ご案内しますね。ーーーここが使用人の食堂です」
セオが扉を開くと、アンティーク調の長いテーブルと、高級感あふれる椅子が並んでいた。
誕生日席も合わせて、全部で、16客もある。
ん?これってもしかして。
「これって、もとはエリソン侯爵家のダイニングだった?」
「あたりです。凄いでしょー、こんな高級な椅子とテーブルで俺たち食事してるんですよー」
「先代から改装されましてね、小さな方の部屋を使われるようになったそうです」
「そうなんだ。なんか、長いテーブルだったらどうしようって思ってたけれど、ハーフサイズだったから安心したんだ。
こんなに長いテーブルにアレックスと二人なんて、距離が遠すぎて話が出来ないよ」
「先代もそうおっしゃっていたそうです」
「使用人全員でなんかするときっていうのも、爺さまがここに呼び出すんで、この食堂を使ってますね」
セオとジュードの話に耳を傾けながら、しっかりと目を向けていく。
窓も大きくて日当たりもいいし、圧迫感もない。扉も二つあって、一つは観音扉だし、一度に食事を運べそうだ。
「ここも浄化ボタンなの?」
「ええ、ですが、最後に部屋を出る人が押すってことになってますね。
食べてる途中で押されると、食べかけのもの消えちゃうことあるんで」
「うわ、それは大変」
「でしょー? さ、次に行きましょう。ここが、厨房です。
お邪魔しまーす、レン様が来ましたよー」
「おお、レン様!どうぞどうぞ、好きなだけ見ていってください」
「2人でもむさ苦しいところですみませんねえ」
にこにこと話しかけてくるマーティンとイアンに思わず笑みが浮かぶ。
広い、それに、綺麗に使い込まれている。
ステンレス製なのかな?アイランド型の独立した作業台が2つあって、それぞれにコンロと流しがついてる。
壁側は全て、棚や、貯蔵庫、オーブンや調理器具が綺麗に整頓している。
でも、昼の下準備をもう始めていたみたい。
「アレックスは、今までお昼は帰ってきてなかったの?」
「仕事場で済まされていましたね」
「お茶の時間も?」
「ええ、朝と夜のみでしたよ。レン様と取られるのが嬉しそうでしたね」
うん、これはちょっと問題かもしれない。
「みんなの食事はどうしているの?お昼は?」
「賄いは、入ってくるもの次第ですけど、朝食と一緒にスープやシチューを作ったりしますよ」
「新しい食材が入った時は、お出しする前に試食会をすることもありますね」
休みもないし、休む時間もない。
食器洗い乾燥機みたいなのがあるって言っていたけれど、料理を作るだけで手いっぱいだ。
来た時、イアンがじゃがいもの皮むきしてたもん。
本来の仕事じゃないはず。
今までは朝と夜だけだったから、昼の休憩は、少しは休めたのかもしれないけれど。
せめてあと2人は早急に欲しいところかも。
それに、2人だってそろそろ教える側に回ってもいいと思うんだ。
「2人には、料理人や菓子職人として自分が育てたいなっていう人がいたりする?
できればエリソン侯爵領の人の方がいいと思うんだけれど」
「え?育てたい、ですか?」
「そう。僕が来たから、お昼もお茶の時間もだと、休む暇はないでしょう?
人を増やした方がいいと思うんだ、せめて1人ずつは早急に」
そういうと、2人は顔を見合わせた後、困ったように眉を下げて僕を見やった。
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