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本編

-51- 一緒にお風呂

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「アレック…ス……」
何気に呼び止めて、ふと彼に目をやると、言葉を失ってしまう。
だって、一糸まとわぬその姿が、凄く綺麗な身体なんだ。
贅肉どころか無駄な筋肉は一切ない、ってくらいに、必要なところに必要な筋肉がついていて、そう、まるで美術の彫刻みたいに綺麗。
淡いオレンジ色の光が、より陰影をくっきりと照らしているから、なんだかより一層美しく見えた。
仕事が忙しいのに、いつも生活に役立つ魔法具や魔法陣を開発しているって聞いていたのに、それなのにどうやって鍛えてるのかな。
それに、その、あそこも綺麗だし、僕より大きい。

うーさっきまで温泉気分で恥ずかしさが分散されてたのに、きゅうにまた意識し始めちゃうよ。
早くも半分勃ちそうで、もらったフェイスタオルをでろんと体の中央に下げて誤魔化す。

「どうした?いくぞ」
「うん」

アレックスは、どこも隠さず僕の背をそっと支えながら堂々と歩く。
裸だと、より柑橘系の甘い良い匂いがする。
やっぱり、この香りはアレックス自身からするものなんだなあ。

ちらっと見てから、ついじいと見ちゃう。
どこをって、下半身の中心にある、あそこ。
アレックスのおちんちん。
おちんちんなんて可愛いものじゃなくて、立派なものだ。
当たり前なんだけれど、髪もまつ毛もペールピンクなら、あそこの毛もペールピンクだ。
腕とか胸とかには毛が無いのに、あそこには、陰毛は濃く、しっかりと生えてる。

上を見上げるとアレックスが何とも言えない顔で僕を見てた。
ぎゃー、見てたのを見られてる!
うー、見すぎたかもしれない。

「アレックスは、かっこいいね」
誤魔化しじゃなくて、本当にそう思ったから口にする。

「レンは綺麗だな」
「………ありがとう」

なんて言っていいかすぐに言葉が出なかった。
ありがとう、嬉しいよ、にこり、なんて、ファン相手だったら出来るけれど、アレックスには出来ない。
お風呂に入る前からのぼせそうだよ。

「レンは…19と聞いたんだが、下生えもないんだな」
「あ、うん。脱毛したから」
「脱毛?」
「うん。役者だったから、撮影とか舞台で気を遣うのも面倒で、脱毛しちゃったから生えないんだ」

そう、僕は全身脱毛していた。
見えるところの毛は、髪とまつ毛と眉毛以外、どこもかしこもつるんつるんだ。
役者をしている人やモデルなら珍しくもなかったけれど、全身は一般的ではない。

「そんな際どいところまで見せるものなのか?」
「ん?あー…生地が白かったりすると透けたり、場合によっては生地を突き出したりとかね、あって。
そうなると、ネット…えーと、ニュースになっちゃったりする人もいて。
特に、僕はこんな顔してるし、マイナスイメージにしかならないからって、早いうちに脱毛したんだ。
もう生えてこないよ」
「…そうか」

特に毛が生えていないことが駄目じゃないみたいだ。
なんか分からないけれど、アレックスがほっとした表情をしてるから、良しとしよう。

「寒くないか?」
「うん」
お風呂場も湯気が立っているんだけれど、湿気はそこまで多くなくて、息が吸いやすいし、身体も足元もほわっとあったかい。
これも、魔法なのかな?つくづく魔法って便利だ。

「なら、先に髪と体を洗ってからな」
ゆったりとした椅子に促されて座る、というか寝る。
お風呂なのに、エステとか美容院にあるリクライニングの椅子みたい。
オッドマンまであって、両足も持ち上げられてそこにそっと降ろされた。
ビニールじゃない。でも、低反発で、固くなくてもっちりした座り心地で気持ちがいい。
横には小さい丸いテーブルもあって、でもそこにはなにも置いてないから、お酒とかも飲めるのかな、とふと思った。
アレックスがすぐ傍でシャワーのお湯を調節してくれる。
見た目はアンティーク調なのに、作りは最新式のシャワーみたいだから不思議だ。

「熱くないか?」
「うん、大丈夫」
足元にゆっくりかけて、温度を確かめてくれる。
気持ちがいい温度で、泡をたくさん含むみたいな、柔らかな水圧だ。
少しずつ、上に、肩に、背に…とかけられて、はた、と我に返る。
これは、このまま洗われちゃうパターンでは?

「アレックス、自分で出来るよ?」
「やりたいから、今日は任せてくれないか?」

耳元でそう言われて、肩にシャワーを当て、耳のあたりの髪の毛をそっとかき上げられる。
あーオレンジのいい香りがするし、そんな風に優しい手つきで言われたら、断れない。

「うん…わかった」

首の後ろを左手で抑えられて、右手でゆっくりシャワーをかけてくれる。
すぐ目の前に、アレックスの綺麗な胸板が迫って、ドキドキするし、安心もする。
ふわっと、摘みたてみたいな薔薇の香りが広がる。
きつくなくて、甘すぎず、とてもいい匂い。

「すごくいい香りだね」
「領で帝都の貴族向けに販売しているシャンプーなんだ。気に入ったのならよかった」
「うん、気持ちいい」
「………」

アレックスは髪を洗うのも上手だ。
おでこの生え際も、耳の後ろも、襟足も。
しっかりと、でも優しく丁寧な手つきで洗ってくれる。
担当の美容師さんだってここまでやってはくれなかった。
一度流してもらい、そこからまた、薔薇のいい香りのトリートメント。
指通りを確かめるみたいに何度も梳かれて、ゆったりした気分になる。
ドキドキするのに、安心もして、リラックスもする、すごく心地いい。
思わずうっとり目をつぶると、ちゅっと唇にキスが落とされる。
そっと目を開いたときには、アレックスは、もうシャワーを片手にトリートメントを洗い流しているところだった。
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