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本編
-43- 僕に出来ること*
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どうかな?何か変わったかな?成功したんだろうか?と思ったところで、まずは唇に反応があった。
下唇を優しく挟まれる。
「っ!」
一度離れて、また唇で、下唇を優しく食まれる。
あたたかい手が頭の後ろ、そして、ゆっくり耳の後ろから首にかけて移動して、なんだかそれだけで気持ちがいい。
吸われて、チュッと小さな音がして、離れて、今度は上唇。
「……っん……」
うまく息が出来なくて、自分でもびっくりするくらい甘ったるい鼻息が漏れた。
アレックスが、僕の唇の感触を確かめるように優しく食んでくる。
キスはレモン味なんて誰が言ったのか知らないけれど、アレックスとのキスは甘くも爽やかなオレンジみたいな味だ。
こんなの知らない。
こんな、甘くて優しいキスなんて知らない。
映画ではただ唇と唇を当てるだけの行為だった。
そこには、役としての気持ちが確かに乗っていたけれど、こんな、心も身体も気持ちがいいキスなんて知らない。
下唇の内側を優しく舌で撫でられて、おずおずと口を明け渡すと、かすめ取るように一度舌を探られてはすぐに離れていく。
まだ早いと宥めるように上唇も食まれて、あーどうしよう、アレックスが好きだって気持ちがいっぱいになる。
凄く気持ちがいい。
やったことなんてないけれど、彼がしてくれているように、僕も応える。
どちらからともなく離れて、アレックスをのぞき込むように見ると、綺麗なエメラルド色した瞳がとろりと笑みを作って僕を見てきた。
そんな、愛しいものみたいに初めて見られて、恥ずかしくて顔の熱が一気に上がるが分かった。
親指で唇の感触を確かめるようにゆるゆると撫でてから、ぐっと引き込まれた。
「あー、ははっ、すげー可愛い」
「っ!?」
わーわー、どどど、どうしよう?
えー?
ぎゅっと抱え込まれて、身動きが取れない。
というか、すげー可愛いって、そんな風に思ってたのかな?
それとも寝ぼけてるのかな?
でも、本当かな?本当なら嬉しい。
うー……、どうしよう、動けない。
「あ、アレックス、起きて」
控えめにゆすったら、より放さないように胸に抱かれてどうしていいか分からなくなる。
頭のてっぺんにアレックスの鼻先があたって、ちゅっと音がする。
旋毛にキスされた!
それから、またちゅっと、音がして今度は額にキス。
拘束は緩んだけれど、すぐに頬にキス、それから鼻先にもキスをされて、また唇にキス。
あー、また、このままとろとろに溶かされてもいいんじゃないかなーって思ってくる。
「アレックス様!いい加減になさってください!レン様が困っております!」
「っ!?ーーーってぇ……」
ゴンっとベッドに頭を打ち付けるような音がして、アレックスの痛そうなうめき声が上から降ってきた。
あーあーそうか、そうだよね、僕一人じゃなかったよ、わー、ずっと見られてたんだ、恥ずかしすぎる!
驚いて真っ赤になって口元を抑えるアレックスと、同じくらいに驚いて真っ赤になってるだろう僕。
「ぶっはははっ」
セオの場違いな笑い声が部屋中に響き渡った。
「あー、悪い……その、完全に寝ぼけてた」
「ううん、えっと、大丈夫?気分が悪かったり、右手が痛かったりとか」
真っ赤になった顔のまま視線が合わずに謝られて、僕もどこを見たらいいのかわからず、でも、思ったことだけを口にした。
ふつうなら3日間目を覚まさないところを目を覚ましたんだから、僕の魔力譲渡は成功したんだろうけれど、ちゃんと確かめたかった。
はっとしたアレックスは自分の右手を見て、びっくりしたような顔で僕を見る。
「何した、レン」
「?わかんないけど、元に戻ってって思ったら、戻ったよ。治癒魔法になるのかな?魔法ってすごいね、アレックスの手が戻って良かっーーー」
「そうじゃないだろ?お前こそ何してんだ、ポーションは?ちゃんと飲んだのか?」
「え?うん、セバスに言われて飲んだよ?でもね、そんな大したことなんて」
「大したことだ!短時間とはいえ魔法返しくらった人の手をまるまるもとに戻したんだぞ!?それも光魔法のだ。自分が何したかわかってんのか?」
「………」
よくわからないけれど、アレックスが凄い剣幕で怒ってるのは分かった。
怒ってるのは分かったけれど、何で怒ってるのかが僕にはわからない。
魔法返しとか知らないけれど、無事に戻ってよかったって思うのがいけないこと?
アレックスこそ、そんな手になって、全部の魔力を使いすぎるほどになるなんて僕は聞いてないし、望んでなかった。
手を直して感謝しろなんて思ってないよ。
貞操具を取ってくれたのはアレックスだし、お礼を言いたいくらい感謝しているのは僕のほうだ。
でも、なんで怒られるのかがわからない。
「レン、なんとか言え」
「…僕こそ、アレックスがあんな風になるなんて知らなかった。
貞操具を壊してくれってお願いしたのは僕だけど、でも、アレックスがいっそのこと壊すかって軽く言うから、僕はもっと簡単に出来ると思ってたんだ」
「………」
「そしたら、アレックスの手が……あんな風に、枯れ木みたいになちゃって、どうしたらいいかわかんなくて、だって、あんな……っ
なんで?ねぇ……僕は、僕はね?確かに取ってほしかったけれど、でも、あんなふうに無理してまで欲しくなかったよ?
アレックス、死んじゃうかと思った」
さっきまでのあの惨状が目の前に浮かんできて、怖くなる。
真意を確かめるように、僕はアレックスを食い入るように見やった。
僕のあのときの思いが少しでも伝わればいい、そう思った。
下唇を優しく挟まれる。
「っ!」
一度離れて、また唇で、下唇を優しく食まれる。
あたたかい手が頭の後ろ、そして、ゆっくり耳の後ろから首にかけて移動して、なんだかそれだけで気持ちがいい。
吸われて、チュッと小さな音がして、離れて、今度は上唇。
「……っん……」
うまく息が出来なくて、自分でもびっくりするくらい甘ったるい鼻息が漏れた。
アレックスが、僕の唇の感触を確かめるように優しく食んでくる。
キスはレモン味なんて誰が言ったのか知らないけれど、アレックスとのキスは甘くも爽やかなオレンジみたいな味だ。
こんなの知らない。
こんな、甘くて優しいキスなんて知らない。
映画ではただ唇と唇を当てるだけの行為だった。
そこには、役としての気持ちが確かに乗っていたけれど、こんな、心も身体も気持ちがいいキスなんて知らない。
下唇の内側を優しく舌で撫でられて、おずおずと口を明け渡すと、かすめ取るように一度舌を探られてはすぐに離れていく。
まだ早いと宥めるように上唇も食まれて、あーどうしよう、アレックスが好きだって気持ちがいっぱいになる。
凄く気持ちがいい。
やったことなんてないけれど、彼がしてくれているように、僕も応える。
どちらからともなく離れて、アレックスをのぞき込むように見ると、綺麗なエメラルド色した瞳がとろりと笑みを作って僕を見てきた。
そんな、愛しいものみたいに初めて見られて、恥ずかしくて顔の熱が一気に上がるが分かった。
親指で唇の感触を確かめるようにゆるゆると撫でてから、ぐっと引き込まれた。
「あー、ははっ、すげー可愛い」
「っ!?」
わーわー、どどど、どうしよう?
えー?
ぎゅっと抱え込まれて、身動きが取れない。
というか、すげー可愛いって、そんな風に思ってたのかな?
それとも寝ぼけてるのかな?
でも、本当かな?本当なら嬉しい。
うー……、どうしよう、動けない。
「あ、アレックス、起きて」
控えめにゆすったら、より放さないように胸に抱かれてどうしていいか分からなくなる。
頭のてっぺんにアレックスの鼻先があたって、ちゅっと音がする。
旋毛にキスされた!
それから、またちゅっと、音がして今度は額にキス。
拘束は緩んだけれど、すぐに頬にキス、それから鼻先にもキスをされて、また唇にキス。
あー、また、このままとろとろに溶かされてもいいんじゃないかなーって思ってくる。
「アレックス様!いい加減になさってください!レン様が困っております!」
「っ!?ーーーってぇ……」
ゴンっとベッドに頭を打ち付けるような音がして、アレックスの痛そうなうめき声が上から降ってきた。
あーあーそうか、そうだよね、僕一人じゃなかったよ、わー、ずっと見られてたんだ、恥ずかしすぎる!
驚いて真っ赤になって口元を抑えるアレックスと、同じくらいに驚いて真っ赤になってるだろう僕。
「ぶっはははっ」
セオの場違いな笑い声が部屋中に響き渡った。
「あー、悪い……その、完全に寝ぼけてた」
「ううん、えっと、大丈夫?気分が悪かったり、右手が痛かったりとか」
真っ赤になった顔のまま視線が合わずに謝られて、僕もどこを見たらいいのかわからず、でも、思ったことだけを口にした。
ふつうなら3日間目を覚まさないところを目を覚ましたんだから、僕の魔力譲渡は成功したんだろうけれど、ちゃんと確かめたかった。
はっとしたアレックスは自分の右手を見て、びっくりしたような顔で僕を見る。
「何した、レン」
「?わかんないけど、元に戻ってって思ったら、戻ったよ。治癒魔法になるのかな?魔法ってすごいね、アレックスの手が戻って良かっーーー」
「そうじゃないだろ?お前こそ何してんだ、ポーションは?ちゃんと飲んだのか?」
「え?うん、セバスに言われて飲んだよ?でもね、そんな大したことなんて」
「大したことだ!短時間とはいえ魔法返しくらった人の手をまるまるもとに戻したんだぞ!?それも光魔法のだ。自分が何したかわかってんのか?」
「………」
よくわからないけれど、アレックスが凄い剣幕で怒ってるのは分かった。
怒ってるのは分かったけれど、何で怒ってるのかが僕にはわからない。
魔法返しとか知らないけれど、無事に戻ってよかったって思うのがいけないこと?
アレックスこそ、そんな手になって、全部の魔力を使いすぎるほどになるなんて僕は聞いてないし、望んでなかった。
手を直して感謝しろなんて思ってないよ。
貞操具を取ってくれたのはアレックスだし、お礼を言いたいくらい感謝しているのは僕のほうだ。
でも、なんで怒られるのかがわからない。
「レン、なんとか言え」
「…僕こそ、アレックスがあんな風になるなんて知らなかった。
貞操具を壊してくれってお願いしたのは僕だけど、でも、アレックスがいっそのこと壊すかって軽く言うから、僕はもっと簡単に出来ると思ってたんだ」
「………」
「そしたら、アレックスの手が……あんな風に、枯れ木みたいになちゃって、どうしたらいいかわかんなくて、だって、あんな……っ
なんで?ねぇ……僕は、僕はね?確かに取ってほしかったけれど、でも、あんなふうに無理してまで欲しくなかったよ?
アレックス、死んじゃうかと思った」
さっきまでのあの惨状が目の前に浮かんできて、怖くなる。
真意を確かめるように、僕はアレックスを食い入るように見やった。
僕のあのときの思いが少しでも伝わればいい、そう思った。
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