異世界に召喚された二世俳優、うっかり本性晒しましたが精悍な侯爵様に溺愛されています(旧:神器な僕らの異世界恋愛事情)

日夏

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本編

-41- 僕に出来ること

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「まず、魔力譲渡とは、誰しもが行える行為であります。神器様のみに限られた行為ではありません」
「そうなの?」

じゃぁ、僕だけがアレックスに出来るっていうわけじゃないのか。
ちょっと複雑だけれど、誰しもが行えるってことは、そう難しいことじゃないよね。

「はい。ですが、それは魔力の属性の合性に向き不向きがありまして、場合によっては」
「セバス」

僕は、思わずセバスの話を途中で止めた。
だって、すごーく長くなりそうなんだもん。
確かに僕は魔力譲渡のことを知りたいってお願いしたけれど、僕が知りたいのはアレックスにどうやったら魔力を分けられるのか、だ。
魔力譲渡の難しい理屈とかは今はいいよ。
後で、しっかり理解できればいいと思う。
それより、僕が今すべきことを知りたい。

「それは、後じゃ駄目なの?」
「…失礼いたしました。
魔力譲渡は簡単に言えば、自分の体液を相手の体内へ送り込む、という方法です」
「え?……うそでしょ?」
「いいえ、本当です」

うえー、そうなの?体液?なんかえっちじゃない?
あ、それじゃ、えっちしたら、魔力譲渡になるってこと!?
でも、それだと、僕だけが貰うことになっちゃうのか……あ、でも、口でしてもらったら、僕がわけることになるのか。
く、口で……手ではしてもらったけれど、口……。
わー駄目、今想像しちゃ駄目!

えー、けど、それって誰しもが行えるほど一般的なことなの?

「手を握って、どうこうしたら、魔力を送り込めるのかと思っていたよ」
「そういう方法もありますが、時間がかかります。要は汗を媒介に毛穴から流し込む、ということですから」
「体液なら何でもいいの?」
「はい。ただし、排泄にあたる糞尿については逆に体調不良を引き起こすことが多く、現在禁止とされております」
「…なるほど」

なるほどって言ったけど、なるほど以外の言葉が出なかっただけで、理解したわけじゃないからね。
だって、おしっことうんちなんて口にしたい人いる?いないでしょ?
なのに、体調不良を引き起こすことが多く…ってさ、それって一定数の人がやったってことだよね?
やろうって思う?思えないでしょ、普通……あーでも、ここで僕の普通が通用しないのがこの世界だよね。

「もっとも簡単なのは、口づけて流し込む方法かと思われますよ」
「うーん……」

僕がぐるぐるしてる間に、セバスがそっと助言してくれる。
でも、他にないかな?

口づけて流し込む?何をって、僕のよだれ。
よだれか……よだれ、よだれねー……よだれって汚くない?
小さな赤ちゃんのならともかく、大人のよだれ。
僕のよだれを流し込まれたら……アレックス嫌じゃないかな?

僕自身のよだれを僕自身に流し込むことを想像してみる。
うん、嫌だな。

キスもまだなのに、なんだかすごくハードルが高い。

「あ、涙はどうかな?」
「なみだ、でございますか?」
「うん」

ここにきて結構流したけれど、流そうと思えば秒で出るし、それこそ好きなだけ流せるし、よだれを流し込むより、涙を口移す方が僕にとっては全然抵抗なく出来そうだ。
同じ体液でも、僕のよだれと涙だったら、涙の方が断然綺麗な気がする。

「…ですが、何もなく流せるものでもないでございましょう?」
「僕は役者だったから、流そうと思えばすぐに好きなだけ流せるよ?…ほら」
「……っ」

困惑するような顔をセバスがするから、実際一筋流して見せたらすごい目で見られた。

「だから、涙をお皿みたいなのに貯めてから、口移すのはどうかなって思って。
その方が、僕は抵抗なく出来そうだから……駄目かな?」

「わかりました、ご用意いたします」
「うん、お願い」


ぱたぱたと、舟形の少し深みのあるお皿に、涙が貯まっていく。
早くたくさん長く出すには、悲しいこととか辛いことを想像するほうが出しやすい。
アレックスが、僕の知らない人と恋仲になることを想像する。
優しかった言葉が、僕を見る目が、その手が、辛辣になって、離れていく。

「………っ」
「レン様、大丈夫でいらっしゃいますか?」
「大丈夫」

いけない、入り込みすぎちゃったみたいだ。
けれど、その成果もあって、良い感じで溜まってきたんじゃないかな?

「もうそのくらいで十分で」
「爺さま、帰ったよー。こっちにいるって聞いたからバルコニーつっきってきちゃった、えへへ……うえ!?何やらせてんの!?」

扉じゃなくて、バルコニーから入ってきたのは、夕日のような鮮やかなオレンジ色の髪をした人だった。
優しそうな目元をしていて、その目元がセバスに似ていた。体系も。
セバスが若い時はこんな感じだった、と言われても違和感がないくらいには外見が似てる。
お孫さんとかなのかな、でも、性格は全然似てなさそうで軽い感じだ。
えへへ、って笑いながらバルコニーをつっきってくるなんて、セバスは絶対にしないだろうな。
身のこなしは言うまでもなく軽い。
年齢は、アレックスと同じくらいに見えるけど。


僕を見てぎょっとしたその人の顔は、セバスが驚いてぎょっとした時とよく似ていた。
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