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本編
-40- 僕に出来ること
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「気がついたんです。アレックスのことを、好きになっちゃったって…。そしたら、すごく辛くなってしまって」
「なぜ、辛くなってしまわれたのです?」
セバスさんは、急かさないように、ゆっくりと聞いてくれた。
セバスさんも、最初から僕には優しかった。
アレックスの神器だから、大切に扱ってはくれるんだろうと思う。
「だって、アレックスは、侯爵様でしょう?」
「そうですよ」
「まだ、結婚はしてないでしょう?あれ?もしかして、もう…してたりするんですか?」
そういえば、結婚してるともしてないとも聞いてなかった。
もしかして、すでにしてたりするのかな?
28歳って言ってたし、侯爵様なんだし、ここは僕のいた世界じゃない。
いない方が不自然なのかもしれない。
そんな不安が一瞬よぎる。
「いえいえ、アレックス様は独身ですよ。過去、ご結婚もご婚約もされたこともありません」
「だったら……これからするでしょう?」
「ええ、されると思いますよ。喜ばしいことです」
「……っふ」
やっぱり、するんだ。
それはそうだよね、侯爵様だもん。
この領で一番偉い人がずっと独り身なわけない。
優しいしかっこいいから、きっとたくさん候補がいるんだろうな。
その候補にすら、僕はなれない。
胸が痛い。
鼻の奥と目頭が痛い。
ここに来てから、泣きそうになってばかりだ。
「ああ、どうされましたか?」
「だって、無理……、僕には、無理だよ、耐えられないよ」
「…ご結婚は、考えられませんか?」
小さく何度もうなずく。
「……それは、なぜか、聞いてもいいですか?」
「だって、だって……アレックスが貴族の誰かと結婚して、僕はそのふたりの間に子供を産むのでしょ?
僕が産んだ子供は、アレックスとその人が育てるんでしょ?
アレックスは頼ってくれって言ってくれたけれど……、っきっと、優しくしてくれると思うけれど、でも、そんなの……っ」
ああ、どうしよう。
言葉にしたらどんどん現実味が帯びてきて、悲しくなる。
まだ出会ってすぐなのに、こんなに好きになっちゃったんだ。
「…レン様、レン様は、勘違いされていらっしゃいます」
「っ勘違い?」
セバスさんが、しっかりと頷いてくる。
勘違いって何だろう?
「ご結婚とは、アレックス様とレン様とのご結婚ですよ」
「え?」
え?アレックスと僕との結婚?
だって、神器とは結婚出来ないんじゃないの?
あ、出来ないとは言ってなかったかも。
あまりいい話じゃないって言っていた気がする。
「僕は神器だから、結婚はない、契約者の所有物になるって教わりました」
「アレックス様とレン様はご結婚できますよ?…というか、されない場合は、きっとアレックス様は独身のままでしょうね……」
「?アレックスは、優しいしかっこいいから、しようと思えばすぐにでも結婚できると思います」
「いいえ、アレックス様は、レン様をそれは、もう、ものすごーくお好きになってるはずですから。
レン様が頷かれなければ、されることはないと思いますよ」
え?アレックスが僕を?
そんなにものすごーく??
本当にそうなら嬉しいけれど、でも、ちゃんと、恋愛の好きなのかな?
「なぜレン様と戻った後、すぐに席を外されたかお分かりになりませんか?
あれは、ご自身の精を吐き出す時間が欲しかったからですよ、レン様には隠せても、この爺には隠せません」
「本当ですか?」
「はい。…呆れてしまわれましたか?」
僕はぶんぶんと顔を横に振った。
ううん、呆れたんじゃなくて。
もし、それが、本当なら。
「そうだったら、とても、嬉しく思います」
「アレックス様に、素敵な方が来てくれて宜しゅうございました。
さて、わだかまりが解けたところで、魔力譲渡についてお話しましょうか」
「はい」
「それと、レン様、今から私に敬語は無しです。家の、他の使用人にもです。名前は呼び捨てて下さい」
「え?」
セバスさんを呼び捨てにして、敬語は無し?
なんだか、こんなに年上の人を呼び捨てて敬語も使わないなんて難しいよ。
そういえば、アレックスには、最初から敬語じゃなかったな。
流石に名前はさん付けしたけれど、すぐに呼び捨てるのも違和感なかったのに。
「レン様は、侯爵夫人になられるのですから今から慣れてください」
「う……わかりまし、、わかった。でも、セバス、本当にアレックスは僕と、その、結婚を望んでるの?勘違いとかない?」
「ありません、大丈夫ですよ、断言いたします」
セバスさん…セバスは、そういってくれるけれど、本当かな?
だって、アレックス、全然そんな素振りなかったよ?
本当に大丈夫かな?舞い上がって落とされるのは嫌だよ。
「でも……僕、ここにきてからずっと素だよ?演技してないよ?」
「ここではそれでいいんですよ、そのままで。むしろ、そういったところにも惹かれていらっしゃるかと。
場合によってはもう少し取り繕っていただくこともあると思いますが、少なくともここではそういったことは考えなくて大丈夫です」
「うーん……」
「もしも、今、アレックス様が考えられていないなら、これから考えてもらいましょう。
大丈夫です。レン様が思われる以上に、エリソン侯爵家使用人、いいえ、エリソン侯爵領に住む領民全てにとって、レン様とアレックス様のご結婚は大変喜ばしいことなのです。外堀からどんどん埋めていけばいいのですよ。
万が一にでもそのようなことがあれば、私を筆頭にエリソン侯爵使用人、全て尽力いたします」
なんだか腹黒いセバスさん…じゃなかった、セバスを目にしてしまった。
家令っていうくらいだから、優しいだけじゃないんだろうけれど、頼もしいな。
アレックス本人から望まれてるかはまだわからないけれど、少なくとも周りに望まれてるってことに感謝しなくちゃ。
歓迎されてるんだ。
アレックスに好きになってもらえるよう頑張ろう。
「セバス、魔力譲渡について教えて。僕はアレックスのために何ができるかな?」
「なぜ、辛くなってしまわれたのです?」
セバスさんは、急かさないように、ゆっくりと聞いてくれた。
セバスさんも、最初から僕には優しかった。
アレックスの神器だから、大切に扱ってはくれるんだろうと思う。
「だって、アレックスは、侯爵様でしょう?」
「そうですよ」
「まだ、結婚はしてないでしょう?あれ?もしかして、もう…してたりするんですか?」
そういえば、結婚してるともしてないとも聞いてなかった。
もしかして、すでにしてたりするのかな?
28歳って言ってたし、侯爵様なんだし、ここは僕のいた世界じゃない。
いない方が不自然なのかもしれない。
そんな不安が一瞬よぎる。
「いえいえ、アレックス様は独身ですよ。過去、ご結婚もご婚約もされたこともありません」
「だったら……これからするでしょう?」
「ええ、されると思いますよ。喜ばしいことです」
「……っふ」
やっぱり、するんだ。
それはそうだよね、侯爵様だもん。
この領で一番偉い人がずっと独り身なわけない。
優しいしかっこいいから、きっとたくさん候補がいるんだろうな。
その候補にすら、僕はなれない。
胸が痛い。
鼻の奥と目頭が痛い。
ここに来てから、泣きそうになってばかりだ。
「ああ、どうされましたか?」
「だって、無理……、僕には、無理だよ、耐えられないよ」
「…ご結婚は、考えられませんか?」
小さく何度もうなずく。
「……それは、なぜか、聞いてもいいですか?」
「だって、だって……アレックスが貴族の誰かと結婚して、僕はそのふたりの間に子供を産むのでしょ?
僕が産んだ子供は、アレックスとその人が育てるんでしょ?
アレックスは頼ってくれって言ってくれたけれど……、っきっと、優しくしてくれると思うけれど、でも、そんなの……っ」
ああ、どうしよう。
言葉にしたらどんどん現実味が帯びてきて、悲しくなる。
まだ出会ってすぐなのに、こんなに好きになっちゃったんだ。
「…レン様、レン様は、勘違いされていらっしゃいます」
「っ勘違い?」
セバスさんが、しっかりと頷いてくる。
勘違いって何だろう?
「ご結婚とは、アレックス様とレン様とのご結婚ですよ」
「え?」
え?アレックスと僕との結婚?
だって、神器とは結婚出来ないんじゃないの?
あ、出来ないとは言ってなかったかも。
あまりいい話じゃないって言っていた気がする。
「僕は神器だから、結婚はない、契約者の所有物になるって教わりました」
「アレックス様とレン様はご結婚できますよ?…というか、されない場合は、きっとアレックス様は独身のままでしょうね……」
「?アレックスは、優しいしかっこいいから、しようと思えばすぐにでも結婚できると思います」
「いいえ、アレックス様は、レン様をそれは、もう、ものすごーくお好きになってるはずですから。
レン様が頷かれなければ、されることはないと思いますよ」
え?アレックスが僕を?
そんなにものすごーく??
本当にそうなら嬉しいけれど、でも、ちゃんと、恋愛の好きなのかな?
「なぜレン様と戻った後、すぐに席を外されたかお分かりになりませんか?
あれは、ご自身の精を吐き出す時間が欲しかったからですよ、レン様には隠せても、この爺には隠せません」
「本当ですか?」
「はい。…呆れてしまわれましたか?」
僕はぶんぶんと顔を横に振った。
ううん、呆れたんじゃなくて。
もし、それが、本当なら。
「そうだったら、とても、嬉しく思います」
「アレックス様に、素敵な方が来てくれて宜しゅうございました。
さて、わだかまりが解けたところで、魔力譲渡についてお話しましょうか」
「はい」
「それと、レン様、今から私に敬語は無しです。家の、他の使用人にもです。名前は呼び捨てて下さい」
「え?」
セバスさんを呼び捨てにして、敬語は無し?
なんだか、こんなに年上の人を呼び捨てて敬語も使わないなんて難しいよ。
そういえば、アレックスには、最初から敬語じゃなかったな。
流石に名前はさん付けしたけれど、すぐに呼び捨てるのも違和感なかったのに。
「レン様は、侯爵夫人になられるのですから今から慣れてください」
「う……わかりまし、、わかった。でも、セバス、本当にアレックスは僕と、その、結婚を望んでるの?勘違いとかない?」
「ありません、大丈夫ですよ、断言いたします」
セバスさん…セバスは、そういってくれるけれど、本当かな?
だって、アレックス、全然そんな素振りなかったよ?
本当に大丈夫かな?舞い上がって落とされるのは嫌だよ。
「でも……僕、ここにきてからずっと素だよ?演技してないよ?」
「ここではそれでいいんですよ、そのままで。むしろ、そういったところにも惹かれていらっしゃるかと。
場合によってはもう少し取り繕っていただくこともあると思いますが、少なくともここではそういったことは考えなくて大丈夫です」
「うーん……」
「もしも、今、アレックス様が考えられていないなら、これから考えてもらいましょう。
大丈夫です。レン様が思われる以上に、エリソン侯爵家使用人、いいえ、エリソン侯爵領に住む領民全てにとって、レン様とアレックス様のご結婚は大変喜ばしいことなのです。外堀からどんどん埋めていけばいいのですよ。
万が一にでもそのようなことがあれば、私を筆頭にエリソン侯爵使用人、全て尽力いたします」
なんだか腹黒いセバスさん…じゃなかった、セバスを目にしてしまった。
家令っていうくらいだから、優しいだけじゃないんだろうけれど、頼もしいな。
アレックス本人から望まれてるかはまだわからないけれど、少なくとも周りに望まれてるってことに感謝しなくちゃ。
歓迎されてるんだ。
アレックスに好きになってもらえるよう頑張ろう。
「セバス、魔力譲渡について教えて。僕はアレックスのために何ができるかな?」
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