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本編

-39- 僕に出来ること

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傷も治ったし、魔力回復のポーションも飲んだし、ご飯も食べた。
身体の外も中も回復した。
やる気も準備も万端だ。

傷のポーションは洗い流すようにかけただけで、すーっと傷がふさがってびっくりしたし、
魔力回復のポーションは、僕にはよくわからなかったけれど飲んだら、8割くらいは回復してるみたい。
まあいいでしょう、ってセバスさんから許可が下りた。

ポーションの味は、美味しくなかった。美味しくないっていうか、はっきり言って、不味かった。
最初にちょっと青臭い感じがして、ピリッとした胡椒みたいな辛さがきて、最後に苦みが広がるみたいな感じ。
口直しに、ってジュースを手渡されて、ありがたくいただいた。

さすが、異世界、ポーションってすごいね。
アレックスにポーションを飲ませるのは駄目なのか聞いたら、これだけ魔力を使った後だとあまり効果がないんだって。
回復するのは本人の技量によるところが大きいみたい。
もし飲ませるなら、起きてから様子を見て飲んでもらいましょうって言っていたよ。


「ところでレン様、アレックス様とは情を交わされましたか?」
「え?」

セバスさんに聞かれて、一瞬なんのことかわからなかったけど、わかったとたん顔の熱が急上昇する。
情を交わされたかって、え、えっちしたかってこと?
さっきと今までのこの短時間で!?
こんなに、初めて会った日に?神器って、そういうものなの?
アレックスが僕を見る目に欲はなかったし、ない、ないよ、ありえない!
僕はぶんぶんと顔を振って否定したけれど、セバスさんは疑うような目を向けてくる。
や、本当にないです!してないです!

「先ほどナイトポーションを使われたと、仰っていましたが?」
「あ、あれは…、おしっこするときに外してもらったら、その、たっちゃって。
自分で触ったら魔道具の鎖が締まって…それで、しかたなくアレックスが抜いてくれたから、その時に」
「………」

疑わしい目で見ないでよ!本当だもん。
セバスさんの中のアレックスってそんなに節操なしみたいな位置なのかな?

「本当です。滑りが良くなるからって、こーゆーときはみんな使ってるし、信用のおける商会のものだからって…なんか、すごく高そうな瓶に入ってました」
「ああ、いいえ、申し訳ありません。
レン様を疑ってるわけじゃないんです。ただ、アレックス様にそんな忍耐力があったのかと思いまして」

えー?セバスさんにとって、アレックスってそういう印象なんだ?
うーん、セバスさんに比べたらアレックスも子供みたいなものかもしれないけれど。

「アレックスは大人です。それに…僕は子供に思われてるみたいだから、ないと思います」
「………」

ものすごくびっくりしたようなセバスさんと目が合う。
え?僕、なんか変なこと言った?
だって、あんなになった僕を見ても、宥められてしかないんだよ?
気持ちよくしてくれたけど、それだけだったし、その間だって欲を一切感じなかった。
もし、その…そういった気があったら、出来る状態だったし。

ギラついた欲のある目っていうのを、僕は知ってる。
勿論危険な状態になったことはなかったけれど、少年愛な俳優も中にはいた。
目を見ただけじゃわからないことも多いけれど、危険を察知できるのは良いことだって教わった。

アレックスは一度もそういう目で僕を見なかった。
あんな状態だったのに、だ。
アレックスは優しいけれど、それは、僕がアレックスの神器だからだと思う。間違ってないはず。

「では、口づけも?」
「してません」
「………なんと……」

セバスさんは驚いているけれど、アレックスとキス、かあ。
あ……うん、全然嫌じゃない、っていうか……全然良い。
アレックスがキスしてくれたら…嬉しい、かも。うん、嬉しい。

ってことは、僕はアレックスを好きになっちゃったんだなあ。
初めて会ったばかりで、恥ずかしいところを色々見せたのに、好きになっちゃったんだ。
良い匂いで、優しくてかっこいいから?
それとも、初めて色々人にやってもらったから?
誰もいない状態で頼ってくれって言われたからかな?

わからないけれど、好きになっちゃった。
この体に戸惑うことはたくさんあるけど、でも、アレックスが子供が欲しいって望むなら…僕は、きっと拒めない。
拒むどころか、子供を産んでもいいとさえ思う。うん、今なら…思える。

でも、アレックスが誰か別の人と結婚して、僕の産んだ子供をその人と一緒に育てていくのは耐えられそうもない。
きっとアレックスは僕のことも大切にしてくれると思う。
跡継ぎが必要だと思うから、いつかはえっちもするんだろうと思う。

僕の意思にあまり関係なく、子供を産むんだろう、それが神器っていう存在みたいだから。
けど…アレックスの奥さんか、あ、男の人だから、旦那さんになるのかな?
僕はその人とえっちするのは無理だし、僕の目の前でふたりの仲睦ましい姿を見るのは……無理かもしれない。

それに、子供が出来ないだけで、えっちはできるよね?
優しく僕を抱いた腕で、別の、旦那さんのことも抱くのかな?

どうしよう、ちゃんと考えてなかった。

「レン様?」
「あ……、なんでもないです」
「なんでもないっていう顔をしていません。……どうされましたか?」

ああ、どうしよう、また八つ当たりしそうだ。
それに、まだ謝ってなかった。

「ごめんなさい……っ」
「謝ることはありません」

「…でも、さっき、八つ当たりしちゃったから、その分です」
「あれは私の配慮が至らなかったのです。ですから、悪いのは私の方です。
それで、今度は、どうされましたか?セバスになんでもお話しください、出来る限りお力になりますから」

甘えてもいいのだろうか?本音を言ってもいいのかな?
セバスさんが僕を見つめる。
その瞳は、僕の父さんと同じような、すごく優しいものだった。
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