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本編
-38- 僕に出来ること
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強い願いと共に虹色に光っていたアレックスの手は、すっと光を失うとともに、元の、綺麗な手に戻った。
「良かった……っ」
僕の呟いた声に、我を取り戻したセバスさんが駆け寄ってくる。
良かった、アレックスの手が元に戻って。
魔力の使い方、ましてどうやったら魔法が発動するかなんて分からなかったけれど、舞台での知識が役に立った。
同じ世界なわけじゃない。でも、魔法に関しての原理みたいなものは同じなのかもしれない。アレックスが、僕も魔法が使えるはず、って言ってくれたのも大きかった。
顔色も悪くないし、手もあったかい。
トクントクン、と、規則正しい脈も伝わってくるし、息も…うん、大丈夫、規則正しい。
「レン様…」
「セバスさん、アレックス、大丈夫ですよね?僕のために無理したんです」
セバスさんがアレックスをじっと見つめると、ほっとしたようにうなずいてくる。
やっぱりセバスさんは、目で見たらどんな状態なのかがわかるみたいだ。舞台でも“鑑定”を使える仲間がいたから、それと同じようなスキルなのかもしれない。
「ええ、ええ、大丈夫です。魔力を使いすぎて寝ているだけですよ。
他の部屋にお連れしましょう。
このような魔力の使いすぎは、学生時代のとき以来ですね。
アレックス様は回復力も早いですから、3日ほどゆっくり休めば目を覚ましますから、そうしたら」
「そんなにですか?」
3日も寝たままになるの?長すぎない?
それで、回復力が早いって、普通ならどのくらい寝込むことになるんだろう?
僕が驚きで声を上げると、セバスさんが困ったような表情で僕を見やる。
なんだろう?僕が遮っちゃったからじゃないみたいだけど。
「…レン様が、魔力を分ければ明日にでも目を覚ましますが……」
そっか、そうだよね。
神器って、魔力が高いから云々、供給に重宝されるみたいな言い方されたじゃないか。
「なら、僕が。どうやったらいいですか?」
「…レン様、その前に、傷の手当てをしましょう。
それから、レン様も魔力を半分ほど使われているようですから、魔力回復のポーションをご用意します。
レン様は魔力量がかなり多いですから、半分ほど使われたところであまり変化は感じないかもしれませんが、実際はかなりの量をお使いです。
それに、お腹もすいておられましょう?食事も用意しましょう」
「でも……」
ぐぅ、とお腹がなって、それ以上何も言えなくなっちゃった。
たしかに、さっきまでは全くお腹が減ってなかったのに、急にお腹が減った気がする。
でも、アレックスが魔力を使い切って寝てる間、僕だけ食事とかってどうなんだろう?
なんだか、それって不誠実というか…悪いことしてるみたいな気がする。
「アレックス様は本当に寝ているだけですから……ああ、しかし、、、レン様がいなければ、アレックス様の手は元には戻らなかったでしょう。
しっかりお体を整えてから、それから、アレックス様の回復に力をお貸しください。
それが、アレックス様が目覚める一番の近道です」
「わかりました」
とりあえず、アレックスが昔着ていたっていう服を着せてもらった。
肩幅はちょっと大きくて、でも着丈は少し足りなかった。
着丈を合わせると、肩も腰もぶかぶかになるから、ひとまずこれで、と言われた。
ここについたときの服に比べたら雲泥の差で、とくに気にすることはないんだけれど、セバスさんとアニーさんには、ぜひ明日にでも仕立てを呼びましょうと言われてしまう。
アニーさんには、手足が長くて綺麗だって、凄く褒められちゃったよ。
アニーさんっていうのは、このエリソン侯爵邸のハウスキーパーさん。
ハウスキーパーっていっても、僕がいた世界でハウスキーパーって言われたら、掃除とか料理とか家事をする家政婦さん、みたいな感覚になっちゃうけれどそうじゃない。
ここで働いている人の人事管理をする人みたい。
女性はアニーさんだけなんだって。
とっても気さくで、優しい人柄なんだけれど、仕草の一つ一つ、背筋もすっと伸びてて、どことなく気品がある。
そういうところは、セバスさんとちょっと似てるかも。
家令のセバスさんとは同期で、アレックスのお爺さんがエリソン侯爵を継いだ時から働いているみたい。
セバスさんは執事じゃなくて家令だった。
アレックスの領地での仕事、領地とお屋敷の管理を手伝ってるんだって。
エリソン侯爵で働いている人のことも、ご飯を食べながらすこしだけ説明してもらったよ。
全員で10人。
日本の家庭に育った僕には感覚がよくわからないけれど、侯爵邸にしたら、すごく、ものすごーく、ありえないくらい人が少ないみたい。
たしかに、この広い家の掃除は?って思うよね。
そうしたら、掃除はほぼ魔法ですんじゃうんだって。
アレックスが魔法でいろんなものを開発して補ってるから回せてるみたい。
食器も、食器洗い乾燥機みたいなのがあるんだって、凄いよね。
1日何も口にしていないからって、お腹に優しいシチューにパンが浸っているご飯を貰ったよ。
野菜がしっかり煮込まれていて、柔らかくて美味しかった。
あとで、料理人の人にもお礼が言えたらいいな。
傷の手当てをしてもらう時に、ちょっとだけ困ったことがあった。
「レン様、おみ足失礼いたします。まず、ガラスを取り除いたうえで、こちらの怪我の回復ポーションを使いましょう。
…因みに、ポーションは、今日はまだ使ってないのでよろしいですか?」
セバスさんにガラスを取ってもらいながら、ポーションについて聞かれて思い出す。
ナイトポーションを、僕は使った。
「あ……使いました」
セバスさんの手元が止まり、一瞬厳しい視線が走る。
僕に向けてじゃないところを見ると、アレックスへかもしれない。
「……それは、体力回復、とかでしょうか?何か、聞いていますか?」
「えーと、ナイトポーションってアレックスは言ってました」
「……お持ちだったとは。いえ、なら、大丈夫です。同じポーションの複数使用はお体に負担がかかることもありますから確認させていただきました」
それ以上追及されなくて良かった、心底そう思ったよ。
「良かった……っ」
僕の呟いた声に、我を取り戻したセバスさんが駆け寄ってくる。
良かった、アレックスの手が元に戻って。
魔力の使い方、ましてどうやったら魔法が発動するかなんて分からなかったけれど、舞台での知識が役に立った。
同じ世界なわけじゃない。でも、魔法に関しての原理みたいなものは同じなのかもしれない。アレックスが、僕も魔法が使えるはず、って言ってくれたのも大きかった。
顔色も悪くないし、手もあったかい。
トクントクン、と、規則正しい脈も伝わってくるし、息も…うん、大丈夫、規則正しい。
「レン様…」
「セバスさん、アレックス、大丈夫ですよね?僕のために無理したんです」
セバスさんがアレックスをじっと見つめると、ほっとしたようにうなずいてくる。
やっぱりセバスさんは、目で見たらどんな状態なのかがわかるみたいだ。舞台でも“鑑定”を使える仲間がいたから、それと同じようなスキルなのかもしれない。
「ええ、ええ、大丈夫です。魔力を使いすぎて寝ているだけですよ。
他の部屋にお連れしましょう。
このような魔力の使いすぎは、学生時代のとき以来ですね。
アレックス様は回復力も早いですから、3日ほどゆっくり休めば目を覚ましますから、そうしたら」
「そんなにですか?」
3日も寝たままになるの?長すぎない?
それで、回復力が早いって、普通ならどのくらい寝込むことになるんだろう?
僕が驚きで声を上げると、セバスさんが困ったような表情で僕を見やる。
なんだろう?僕が遮っちゃったからじゃないみたいだけど。
「…レン様が、魔力を分ければ明日にでも目を覚ましますが……」
そっか、そうだよね。
神器って、魔力が高いから云々、供給に重宝されるみたいな言い方されたじゃないか。
「なら、僕が。どうやったらいいですか?」
「…レン様、その前に、傷の手当てをしましょう。
それから、レン様も魔力を半分ほど使われているようですから、魔力回復のポーションをご用意します。
レン様は魔力量がかなり多いですから、半分ほど使われたところであまり変化は感じないかもしれませんが、実際はかなりの量をお使いです。
それに、お腹もすいておられましょう?食事も用意しましょう」
「でも……」
ぐぅ、とお腹がなって、それ以上何も言えなくなっちゃった。
たしかに、さっきまでは全くお腹が減ってなかったのに、急にお腹が減った気がする。
でも、アレックスが魔力を使い切って寝てる間、僕だけ食事とかってどうなんだろう?
なんだか、それって不誠実というか…悪いことしてるみたいな気がする。
「アレックス様は本当に寝ているだけですから……ああ、しかし、、、レン様がいなければ、アレックス様の手は元には戻らなかったでしょう。
しっかりお体を整えてから、それから、アレックス様の回復に力をお貸しください。
それが、アレックス様が目覚める一番の近道です」
「わかりました」
とりあえず、アレックスが昔着ていたっていう服を着せてもらった。
肩幅はちょっと大きくて、でも着丈は少し足りなかった。
着丈を合わせると、肩も腰もぶかぶかになるから、ひとまずこれで、と言われた。
ここについたときの服に比べたら雲泥の差で、とくに気にすることはないんだけれど、セバスさんとアニーさんには、ぜひ明日にでも仕立てを呼びましょうと言われてしまう。
アニーさんには、手足が長くて綺麗だって、凄く褒められちゃったよ。
アニーさんっていうのは、このエリソン侯爵邸のハウスキーパーさん。
ハウスキーパーっていっても、僕がいた世界でハウスキーパーって言われたら、掃除とか料理とか家事をする家政婦さん、みたいな感覚になっちゃうけれどそうじゃない。
ここで働いている人の人事管理をする人みたい。
女性はアニーさんだけなんだって。
とっても気さくで、優しい人柄なんだけれど、仕草の一つ一つ、背筋もすっと伸びてて、どことなく気品がある。
そういうところは、セバスさんとちょっと似てるかも。
家令のセバスさんとは同期で、アレックスのお爺さんがエリソン侯爵を継いだ時から働いているみたい。
セバスさんは執事じゃなくて家令だった。
アレックスの領地での仕事、領地とお屋敷の管理を手伝ってるんだって。
エリソン侯爵で働いている人のことも、ご飯を食べながらすこしだけ説明してもらったよ。
全員で10人。
日本の家庭に育った僕には感覚がよくわからないけれど、侯爵邸にしたら、すごく、ものすごーく、ありえないくらい人が少ないみたい。
たしかに、この広い家の掃除は?って思うよね。
そうしたら、掃除はほぼ魔法ですんじゃうんだって。
アレックスが魔法でいろんなものを開発して補ってるから回せてるみたい。
食器も、食器洗い乾燥機みたいなのがあるんだって、凄いよね。
1日何も口にしていないからって、お腹に優しいシチューにパンが浸っているご飯を貰ったよ。
野菜がしっかり煮込まれていて、柔らかくて美味しかった。
あとで、料理人の人にもお礼が言えたらいいな。
傷の手当てをしてもらう時に、ちょっとだけ困ったことがあった。
「レン様、おみ足失礼いたします。まず、ガラスを取り除いたうえで、こちらの怪我の回復ポーションを使いましょう。
…因みに、ポーションは、今日はまだ使ってないのでよろしいですか?」
セバスさんにガラスを取ってもらいながら、ポーションについて聞かれて思い出す。
ナイトポーションを、僕は使った。
「あ……使いました」
セバスさんの手元が止まり、一瞬厳しい視線が走る。
僕に向けてじゃないところを見ると、アレックスへかもしれない。
「……それは、体力回復、とかでしょうか?何か、聞いていますか?」
「えーと、ナイトポーションってアレックスは言ってました」
「……お持ちだったとは。いえ、なら、大丈夫です。同じポーションの複数使用はお体に負担がかかることもありますから確認させていただきました」
それ以上追及されなくて良かった、心底そう思ったよ。
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