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本編
-18- ルーカスの訪問 セバス視点
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紅茶と、そしてコンフェ力作だというオランジュショコラケーキを差し出すと、ルーカスの口元は少しだけ緩んだように見えました。
ですが、促すとへにょりと眉を下げてきます。あれまあ、ずいぶんとあけすけですね。
叔父としては少々心配になります。
「叔父上…その、昔のように普通に、少しだけ話を聞いてくれませんか?何を言われても不敬には致しません」
「では、今だけ。どうしたんだい?」
「今回、神器様になられた4人ですが、4人とも元の世界で裕福で幸せであったそうなのです。
通常お招きする聖女様神器様は、とても不遇な方々であるはずなのです。
最初は戸惑いはされますが、お招きすると、すぐにみな助けを求めるほどで、神器となるのもすぐに受け入れてくださいました。
しかし、今回は異例中の異例。急に拉致された、と皆さんお怒りでした。
ですから、今回は、先に魔力判定のみを行い、所有を希望している方々と面談をしていただいた上、彼らに選択をしていただくはずでした。
ペリエの実を口にしていただき真の神器様となるのも、その後。
もし彼らが望まないならば再び申請を募り、その中から選んでいただくことも考えておりました。
しばらく城に滞在していただくのも視野に入れていたのです」
そういってルーカスは紅茶を一口飲み、再度口を開きました。
「ですが、神殿につき、魔力判定のため聖玉の確認が取れたところでした、すでにサミュエル司祭の手により皆さんペリエの実を口にされ、さらに貞操保護具も身につけられていました。
すぐに取るよう伝えましたが、所有者を決めれば済むことだ、必要ならばこの後のすべてを教会に任せてもらってもよいとまで言うのです。
所有者を選ぶ権利は私にあり、それは陛下の命であると…実際そうなのですが、それだけはもぎ取り、魔力判定を行って4人とも連れ帰りました。
彼らの体調面を考えると、すぐに所有者を選ぶ必要がありました。何を基準にするか、どう選ぶか……ですが、今回の召喚についてはそもそも知らされていること自体が少ないので、貴族間のしがらみや権力はこの際関係なく、所有者の人柄と環境で決めさせていただきました。丁重に扱ってくれるであろう、なるべく幸せになれるだろう者を選んだつもりです。
つもりですが……、幸せというのは、人それぞれなのだ、と。本人にしかわからないものだと、他人が簡単に測れるものではないと、彼らの話を聞いて学んだのです。
彼、レン様から、恵まれた環境を整える責任と義務が私にある、と言われ、私はそれを是としました。陛下から全てを任されたのは私です。
私は…このようなことになり、彼らにきちんと答えられたのか、責任と義務は果たせたのか……」
ようやくケーキに口をつけて、ため息をひとつ。
グレース様の仰る通り、非情になり切れない者のようです。昔から変わりませんね。
「少なくとも、レン様には、恵まれた環境を整えることを約束しよう。
闇属性はとても貴重だ。無事に連れてきてくれて、感謝しているよ」
「他の3人は帝都の別邸や屋敷にお送りしましたが、ここには叔父上がいらしたので」
「きっとアレックス様も大切にするはずだ。あとはまかせてくれてかまわないよ。もし、またレン様に会うことがあったらそのときに訊ねてみればいい、責任と義務は果たせたか、と。
否と言われたら、その後で何ができるか考えればいいさ。君は、出来ることをやったのだから」
「はい。ありがとうございます、叔父上」
泊っていくかと問えば、いいえと答えました。来た時とは違い、ずいぶんすがすがしい表情をされています。
だが、夜通し駆けるのは道が整備されているとはいえ疲弊と危険を伴うのではないでしょうか?
そういいますと、日が沈む前までに少しでも進みたい、とのことで来るときすでに部屋を借りてきたようでした。
そういう用意は抜かりないようです。
さて、あの美しい神器様、レン様のご様子はいかがでしょうか?
ですが、促すとへにょりと眉を下げてきます。あれまあ、ずいぶんとあけすけですね。
叔父としては少々心配になります。
「叔父上…その、昔のように普通に、少しだけ話を聞いてくれませんか?何を言われても不敬には致しません」
「では、今だけ。どうしたんだい?」
「今回、神器様になられた4人ですが、4人とも元の世界で裕福で幸せであったそうなのです。
通常お招きする聖女様神器様は、とても不遇な方々であるはずなのです。
最初は戸惑いはされますが、お招きすると、すぐにみな助けを求めるほどで、神器となるのもすぐに受け入れてくださいました。
しかし、今回は異例中の異例。急に拉致された、と皆さんお怒りでした。
ですから、今回は、先に魔力判定のみを行い、所有を希望している方々と面談をしていただいた上、彼らに選択をしていただくはずでした。
ペリエの実を口にしていただき真の神器様となるのも、その後。
もし彼らが望まないならば再び申請を募り、その中から選んでいただくことも考えておりました。
しばらく城に滞在していただくのも視野に入れていたのです」
そういってルーカスは紅茶を一口飲み、再度口を開きました。
「ですが、神殿につき、魔力判定のため聖玉の確認が取れたところでした、すでにサミュエル司祭の手により皆さんペリエの実を口にされ、さらに貞操保護具も身につけられていました。
すぐに取るよう伝えましたが、所有者を決めれば済むことだ、必要ならばこの後のすべてを教会に任せてもらってもよいとまで言うのです。
所有者を選ぶ権利は私にあり、それは陛下の命であると…実際そうなのですが、それだけはもぎ取り、魔力判定を行って4人とも連れ帰りました。
彼らの体調面を考えると、すぐに所有者を選ぶ必要がありました。何を基準にするか、どう選ぶか……ですが、今回の召喚についてはそもそも知らされていること自体が少ないので、貴族間のしがらみや権力はこの際関係なく、所有者の人柄と環境で決めさせていただきました。丁重に扱ってくれるであろう、なるべく幸せになれるだろう者を選んだつもりです。
つもりですが……、幸せというのは、人それぞれなのだ、と。本人にしかわからないものだと、他人が簡単に測れるものではないと、彼らの話を聞いて学んだのです。
彼、レン様から、恵まれた環境を整える責任と義務が私にある、と言われ、私はそれを是としました。陛下から全てを任されたのは私です。
私は…このようなことになり、彼らにきちんと答えられたのか、責任と義務は果たせたのか……」
ようやくケーキに口をつけて、ため息をひとつ。
グレース様の仰る通り、非情になり切れない者のようです。昔から変わりませんね。
「少なくとも、レン様には、恵まれた環境を整えることを約束しよう。
闇属性はとても貴重だ。無事に連れてきてくれて、感謝しているよ」
「他の3人は帝都の別邸や屋敷にお送りしましたが、ここには叔父上がいらしたので」
「きっとアレックス様も大切にするはずだ。あとはまかせてくれてかまわないよ。もし、またレン様に会うことがあったらそのときに訊ねてみればいい、責任と義務は果たせたか、と。
否と言われたら、その後で何ができるか考えればいいさ。君は、出来ることをやったのだから」
「はい。ありがとうございます、叔父上」
泊っていくかと問えば、いいえと答えました。来た時とは違い、ずいぶんすがすがしい表情をされています。
だが、夜通し駆けるのは道が整備されているとはいえ疲弊と危険を伴うのではないでしょうか?
そういいますと、日が沈む前までに少しでも進みたい、とのことで来るときすでに部屋を借りてきたようでした。
そういう用意は抜かりないようです。
さて、あの美しい神器様、レン様のご様子はいかがでしょうか?
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