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本編

-17- ルーカスの訪問 セバス視点

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「おーい、セバスさーん、いるがあ?お客さんだー」
ホールに向かえば、すぐ玄関先で侯爵家の使用人としておおよそふさわしくない大声が響き渡りました。
彼は庭師のロブといいます。息子のロンとともに、侯爵家の庭木の手入れと訪問客の案内を任せているのですが、
何度言っても、対応は変わりません。
アレックス様は、ロブとロンを気に入っており、帝都の別邸ならともかく領地なら細かいこと気にするな、と。
…まあ、美しい庭であることは認めますよ。さらに壁の修復まで美しく完璧にしておりますからね。
その点は高い評価をしております。


ええ、ええ、ありえないことはわかっておりますとも。
ですが、エリソン侯爵家の使用人は、アレックス様の代になられた今、とても少ないのです。
皆さま高齢で退職され、あまり新しい者を入れないのです。
屋敷自体も侯爵家としてはかなり慎ましい佇まいと暮らしをしておいでですし、なによりアレックス様が次々と新しい魔法具や魔法陣を開発し取り入れるので少ない人数でも回っております。
慎ましい…といいましても、ホール、客間、談話室、ダイニング、書斎、アレックス様の主寝室に、そのお隣に夫人部屋がひとつ、ゲストルームが2つ、コンサバトリーに、使用人10人ひとり1つの部屋もございますから、あくまで他の4侯と比べて、になりますが。


「ええ、あなたの声はこの屋敷のどこにいても聞こえますとも、ですから」
「なんらよがっだ!お客さんだ。宰相さまがお忍びだってよ。神器様を届けにきたとー」
普段でしたら、私の言葉を聞かずに話し始めるなどいろいろと注意いたしますが…神器様?

「は?」

「ほんれ、お待たせしてどーもすんません」
屋敷の扉を開き勝手に招き入れるロブ。
ええ、まあ、悪意ある者は門にも入れませんからね、良いのですが、ええ、本当に、確かに……クライス帝国の宰相閣下、私の甥、本人です。
私でも追い付かない展開がもあるものです。

「先触れもなく申し訳ありません。……お久しぶりです、叔父上。急ぎ、アレクサンドラ=エリソン様宛に神器様をお持ちしました」

「ルーカス、いいえ、宰相閣下、たいへんご無沙汰しております。ご活躍お聞きしていますよ。
でして、神器様、とは……、誠でございますか?」

「はい、ご覧になりますか?」
どうぞ、とシーツにくるまれた中からお顔を拝見させていただきました。

私には、高い鑑定スキルがございますので、それを知っての対応でしょう。
久しい甥との再会を嬉しく思いますが、あいにく懐かしさに浸る時間は今はないようです。

なんと美しい。肌がきめ細やかで白く、髪はつややかな黒、まつ毛の長いこと!
神器様は皆美しいとお聞きしますが、本当に美しい。これはアレックス様の好みのど真ん中なのでは?!
…っといけませんね、つい。

レン・ミズハラ 19
闇属性 魔力126
元役者 アレクサンドラ=エリソン所有の神器
スキル 歌、ダンス、ピアノ、殺陣、カンフー
状態 貞操保護、催眠状態


殺陣とカンフーというのはなんでしょう?聞いたことがありませんね、それより、確かに闇属性であられます!

「たしかに、闇属性であられますね。しかも魔力は100以上。……召喚の儀は去年だったのでは?」
「昨日皇太子殿下の独断により、召喚の儀が行われました。召喚された聖女様はおひとり、神器様は4人です。
皇太子殿下は、すでに聖女様を迎えられ…。
神器様の選別は私に任されましたので、昨年度の申請を有効としました。
他の神器様も、無事所有者にお送りしました。
最後のおひとり、レン様です。
どうか丁重にお願いします。彼らには……とても悪いことをしてしまいましたので」

自責の念に駆られたような表情をしていますね。
これは…少し話を聞いたほうが良いでしょうか?
甘いものでも食べていただいて。
料理人は2人おりますが、1人は製菓専門のコンフェです。
ルーカスも甘いものが好きなはずですから。

「神器様、レン様には、2階のアレックス様のお部屋でひとまず休んでもらいましょう。
そして、ルーカス、あなたにはお茶を入れますので、少し休んでいきなさい」
「叔父上…ありがとうございます」
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