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本編

-14- 貞操具 **

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濃厚な薔薇の香りが広がる中、くちゅくちゅと卑猥な音がトイレの個室内に響き渡る。
僕が自分でするより少しだけ強く上下に扱かれて、時折、自分じゃしたことない裏筋と睾丸の境や、睾丸とおしりの穴の境目も刺激される。
親指でくりくりと揉み解すように愛撫されて、そのたびに感じたことのない快感が腰から背中に駆け抜けた。

「ああっ、ん、ああっ、そこ、そこ気持ちい……」
「ん、気持ちいいな」

手の動きがより大胆に変わった。
上下に大きく扱いては先端を絞り出すように掌で覆い、亀頭と裏筋の間、その先端をもぐりぐりとひねり回される。

強い刺激に、自然と腰がかくかくと動くのが分かった。
まるで発情してる犬みたい。
こんなになるなんて思わなかった、こんな感じたこと、今までにない。
何度も快楽の波が押し寄せて、ぎりぎりのところで引いていく。
気持ちがいい、気持ちがいいけど、気持ちがよすぎてだんだん辛くなってきた。

「ひ、ああ、あ、あ、ん、んん、も、も、出るぅ」
「ああ。っ……そういうときは、イクっていうんだ。そのほうが気持ちいいから」

より速度があがり、まだ先があるのかと思う。

「あ、ああ、ふうう、も、無理、無理……、気持ちい、あ、ああ、ああ」
「ほら、イクんだろ?」
「ん、うんイク、イクから、いっちゃ……ああ―――!!」

先端の出口を親指と人差し指でくりくりと摘まむようにこねくり回されて、勢いよく2回に分けて射精した。
1度目の射精後、根元から先端に向けて絞りこまれ、2回目を促される。

膝に力が入らず、崩れ落ちそうになる。
けれど、ビクビクと全身が震える僕を、アレックスさんがしっかりと支えてくれていた。

両足の指先だけに力が入って、赤茶色の大理石みたいな床が滑る。
きゅっ、小高い音が響いた。



全てから解放されたからかな、だんだんと罪悪感が襲ってきた。
おしっこはしかたない、うー、見られたことはしかたなくないけれど、行為自体はしかたない。
食べたり飲んだりしたら、おしっこだってうんちだってする、それが人間だ。
けど、射精も仕方ないとはいえ、こんなに気持ちよくなっちゃってよかったのかな?

や、気持ちよくしてくれたのはアレックスさんで、そうしたからああなっちゃたんだけれど、ただ射精するだけなら、もっと処理的に刺激だけ与えてくれればよかったわけで。
それに、こんなよがるように声をあげたのも初めてだよ。
というか、他人の手すら初めてだった。
それなのに、今さっき初めて会った人にこんなこと頼んじゃって良かったのかな?

「大丈夫か?」
僕が云々と悩んでる間に、汚れた個所をペーパーでふき取られ、トイレも流されて、綺麗になっていた。
あんなに強く放っていた薔薇の香りすらなくなっている。

耳元で心配そうに呟くから、本当に悪いことしちゃったみたいに思えてきた。

「うん、もう平気」
「よし、じゃ、ひとまずさっきの部屋に戻るぞ」
そう言って、アレックスさんがゴム板から手を放し、僕をふたたび抱き上げた時だった。

外したはずの輪っかがひとりでにするすると戻っていき、先端も尿道口めがけてずぶずぶと入り込んでくる。
そこは出すところで入れるところじゃないのに。
尿道が、奥までみっちりと埋まる。

「あ、嫌だあっ!」
「っどうした?!」
「こ、これ!」
「……マジか」
僕が身をよじるから、アレックスさんは驚いたように声を上げた。
さっきまで自由だった僕の分身が、外も中も元通りに拘束された。

「っ悪い……とりあえず戻るぞ、目瞑れ」
目を閉じて一瞬の浮遊感の後、すぐさらりとした布の感触があった。さっきと同じベッドだ。

「大丈夫でございますか?」
お爺さん、セバスさんが、僕のほうへ静かに駆け寄り、そしてアレックスさんに目を向ける。その視線がなんだか鋭い。

「アレックス様…もしや」
「なんだその目は、仕方ないだろ。てか、10分、や、、5分、待ってくれ、すぐ戻る」

音もなくすっとアレックスさんがいなくなる。
セバスさんが、あきれたようにひとつだけため息をついた。
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