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本編

-12- 貞操具 **

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お爺さんの声で我に返ったアレックスさんが、僕との距離を詰めてくる。
柑橘系の香りがさっきより少しだけ濃くなった。やっぱりこの香りはアレックスさんからするみたいだ。
なんだか尿意の他に、別の何かうずいてくる。なんで?!
内心焦っている僕をよそに、アレックスさんが僕のほうに屈みこんできた。

「あ、ああ、悪い……で?どうやるんだ?」
「貞操具の腹当部にアレックス様の魔力を流せば、連環が緩むはずでございます」

「わかった」
アレックスさんは、そのままうわかけを払い、再び目の前にさらされた貞操具とやらに眉を顰める。
一気に羞恥心に襲われ、思わず下半身を手で隠した。
お爺さんの時とは違って、恥ずかしすぎるよ。
どこを見たらいいのかもわからなくて、思わずアレックスさんの斜め後ろ、お爺さんのほうに視線を移すと心配そうな瞳とかち合った。

「手どけろ、コレに触れればいいのか?」
そういって、アレックスさんが僕の手を払いのけて、お腹の部分に触れようとする。
わー、無理無理!!とってほしいけど、今ここで外したら確実に漏れる!!
その腕を僕は両手で必死につかんで距離をとった。

「おい」
とたん機嫌の悪そうなアレックスさんの声が返ってきて、少しだけ怯む。
でも、ここは引けない。
怖気ずく自分に内心で叱咤しながら、僕は意を決してアレックスさんの目を合わせる。

「だ、駄目!」
「は?」
「だって、今ここでとったら、漏れちゃうよっ!」

アレックスさんのエメラルド色の瞳が一度大きくなると、すぐにまた不快感を露わにした表情で舌打ちする。
うー、めちゃくちゃ怒ってる。
瞳が切れ長で視線が鋭い上に、顔が整ってるから余計に怖い!
でもだって、こんなところで漏らしたら大変なことになっちゃう!

「…アレックス様」
お爺さんの咎めるような声に、アレックスさんははっとした顔を僕に向けた。
「あー、悪い。おまえに怒ったわけじゃない、つかまれ。んで、目、閉じてろ」
そう言って、僕をまるで子供をかかえるように抱き上げた。

言われる通りぎゅっと目を閉じてから、ほんの2,3秒ほどだった。
眩暈のように頭がくらりとしたけれど、それはほんの一瞬。

ついたぞ、という声に目を開けると、すでにトイレの個室内だった。
地に足がつく。つるりとした床は、磨かれた赤茶色の大理石みたいだけれど、足元は温かかった。
トイレの個室といっても、広い。
装飾は美しいアンティーク調だけれど、トイレ自体は僕のいた世界の最新の水洗トイレと見た目は変わらなかった。

「ほら、ちゃんと前向け、はずすぞ」
アレックスさんは、背後から抱くように僕の左肩に右掌を押しやって、トイレの前に向かせてくる。
そのまま左手で、僕のお腹の下にある未だ鈍く光ってるゴム版みたいなものに手をあてた。

少しあたたかい感じがして、うん、ちょっとだけ気持ちがいい。
でも、見た目は変わらない。

「連環が緩むっつってたけど、変わんないな……、外せるか?」
言われて、僕は自身の先端部分の金属をひっぱってみたけれど取れない。
中も埋まってるから少しでも動いたらわかるはずだけど、まったくといっていいほど動かない。
強力磁石みたいにぴったりと合わさってる。

「とれないよ」
「ちょっと触るぞ」
アレックスさんが、右手で僕の先端についている金属に触れると先端部分だけ急に鎖が緩んだ。
緩んだというか、鎖が長くなった。鎖の輪の数が増えてる。

「外れそうだな、とるぞ」
そういって、アレックスさんは、先端を前にスライドする。
ほんの少し動かしただけで、尿道の奥から先端へと波打つようにゾクゾクと尿意と疼きが襲ってきた。
「んんっ、あっ、待って、ゆっくりやって」
「なんだこれ、中も埋まってんのか?!」

のぞき込むようにしてくるから、その反動で、先端が少し回った。
内側からの新たな刺激で、背中がのけ反る。
「あっ、やだ、回さないで!変になっちゃう!」
「っ、悪い……」

「ゆっくりやって、前に抜いて」
涙声になっちゃうのは演技じゃないし、態とじゃない。
こんなの今までに知らない、未知の領域だ。

「わかった」
アレックスさんがゆっくりと引き抜いてくる。
先端の中心から金属製の小さな玉の連なりが、ひとつ、またひとつと顔を出してくる。
そのたびに強い刺激が走る。
尿意なのか射精の疼きなのかどっちかわからなくなってきた。

「アッ、ゆっくりやって、お願いだから」
「…ゆっくりやってる。ッ、結構長いな」

小さな玉が顔を出すたび、快感が奥から背中を走り抜けて、解放の時への期待がまだかまだかと押し寄せてくる。
体全身が小刻みに震えそうで、腰にまわってるアレックスさんの腕を掴む。
「危ないから動くな」
「ふっ……っ、あ、で、出ちゃうっ出ちゃう、漏れちゃうよっ」

先端が引っ掛かり、最後の球が抜けようとしてるのが分かった。
今までよりちょっと大きいのか、出口がみっちり膨れてる。
これで抜けるぞ、と主張してくる。
抜いたら確実にどっちかが出るっ!

「いいから、大丈夫だから出せ、ほら、抜けたぞ」
言われるや否や、自由になった先端からじょぼじょぼと黄色く半透明な液体が勢いよく流れ出た。
壊れた蛇口みたいに、なかなか止まらない。
はち切れそうだった膀胱がどんどんしぼんでいくのがわかる。

「ああ、おしっこ…いっぱい出てる、っ見ないで、目閉じて」
「わかったわかった、見てないから、全部だせ」

ああ、どうしよう、とんでもなく恥ずかしいのに、なんだか凄く――――
凄く、気持ちがいい。
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