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本編
-11- 貞操具
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棚も電話もベッドと同じ色、同じ素材のレッドウッドで、高級感溢れるアンティークだった。
この世界に電話なんてあるんだって不思議に思ったけれど、回転式なのにお爺さんは受話器を取るだけですぐに話し始めた。
「アレックス様、一大事でございます、すぐに一度お戻りを!アレックス様ー!!」
お爺さんの声とは思えないほどの大声で、再度アレックスという人の名前を叫ぶと、受話器じゃなくて、その横にちょこんとお座りしている猫の置物から声が聞こえてきた。
聞こえてきたというか、猫の置物が喋ってる。
『なんだ、爺、うるさいぞ』
「聞こえているなら、すぐに返事をしてくださいませ!一大事です、はやくお戻りを!」
『あーはいはい、お前の一大事は聞き飽きた。また兄上が金をせびりにでもきたか?部屋にとおさなくていいぞ、追い返してくれ』
猫の置物が、少し低めの男の声でしゃべってる。
口がパカパカとかわいく開いたり閉じたりしている。
押し寄せていた尿意の波が、驚きで引いた。
実に気のない返事でそっけない喋り方なんだけど、その声に冷たさは感じない。
このお爺さんを信頼しているんだろうな。
そんなことより、本当に僕にとっては一大事だ。
どこにいるかわからないけれど、はやく帰ってきてほしい。
「そうではありません!
お迎えいたしました神器さまが先ほどお目覚めになられましたが、貞操具をつけられております。
鑑定いたしましたが、神殿の特殊魔道具のようで、私には解除出来ないのです。
花を摘みに行かれたいようですが、それすらも封じられております。
アレックス様の魔力のみに反応する代物です。ですからすぐにお戻りを!」
『は?神器なんて必要ねーって言っただろ?お迎えってなんだ、聞いてないぞ、そんな話。
あれ?てか時期がおかしくないか?去年に』
「いいですから!つべこべいわずに!とっとと戻ってきてください!
アレックス様、あなたのせいで用を足せないでいるんですよ?!
これ以上我慢させたら――――」
『わ、わかった!わかったから、今、今戻る』
「から」
猫と同じ声が、会話の途中で、すぐそばの頭上で聞こえた。
とたん、ほんのりと柑橘系の甘くさわやかな香りが鼻をくすぐる。
見上げると、目の前にモスグリーン色のローブを身に着けた背の高い男性が立っていた。
ゆるやかにカーブを描くペールピンクの髪に、透き通ったエメラルド色の瞳。
端正なその顔が驚きを隠せない様子で僕を見てくるけれど、僕は僕で驚いた。
本当に、言葉通りすぐ戻ってきた。
でも、猫の置物がしゃべるし、異世界召喚だもん、転移魔法くらいあっても普通なのかも。
「アレックス様、美しさに驚きになるのもわかりますが、今はそれよりも貞操具の解除を!ずっと耐えていらっしゃいます!」
しびれを切らしたように最初に声をかけたのは執事のお爺さんだった。
あ、もしかしたら、執事じゃないのかもしれないけれど。
というより、ずっと耐えて、とかいうからさ、引いていた尿意の波がまた押し寄せてきちゃったよ。
この世界に電話なんてあるんだって不思議に思ったけれど、回転式なのにお爺さんは受話器を取るだけですぐに話し始めた。
「アレックス様、一大事でございます、すぐに一度お戻りを!アレックス様ー!!」
お爺さんの声とは思えないほどの大声で、再度アレックスという人の名前を叫ぶと、受話器じゃなくて、その横にちょこんとお座りしている猫の置物から声が聞こえてきた。
聞こえてきたというか、猫の置物が喋ってる。
『なんだ、爺、うるさいぞ』
「聞こえているなら、すぐに返事をしてくださいませ!一大事です、はやくお戻りを!」
『あーはいはい、お前の一大事は聞き飽きた。また兄上が金をせびりにでもきたか?部屋にとおさなくていいぞ、追い返してくれ』
猫の置物が、少し低めの男の声でしゃべってる。
口がパカパカとかわいく開いたり閉じたりしている。
押し寄せていた尿意の波が、驚きで引いた。
実に気のない返事でそっけない喋り方なんだけど、その声に冷たさは感じない。
このお爺さんを信頼しているんだろうな。
そんなことより、本当に僕にとっては一大事だ。
どこにいるかわからないけれど、はやく帰ってきてほしい。
「そうではありません!
お迎えいたしました神器さまが先ほどお目覚めになられましたが、貞操具をつけられております。
鑑定いたしましたが、神殿の特殊魔道具のようで、私には解除出来ないのです。
花を摘みに行かれたいようですが、それすらも封じられております。
アレックス様の魔力のみに反応する代物です。ですからすぐにお戻りを!」
『は?神器なんて必要ねーって言っただろ?お迎えってなんだ、聞いてないぞ、そんな話。
あれ?てか時期がおかしくないか?去年に』
「いいですから!つべこべいわずに!とっとと戻ってきてください!
アレックス様、あなたのせいで用を足せないでいるんですよ?!
これ以上我慢させたら――――」
『わ、わかった!わかったから、今、今戻る』
「から」
猫と同じ声が、会話の途中で、すぐそばの頭上で聞こえた。
とたん、ほんのりと柑橘系の甘くさわやかな香りが鼻をくすぐる。
見上げると、目の前にモスグリーン色のローブを身に着けた背の高い男性が立っていた。
ゆるやかにカーブを描くペールピンクの髪に、透き通ったエメラルド色の瞳。
端正なその顔が驚きを隠せない様子で僕を見てくるけれど、僕は僕で驚いた。
本当に、言葉通りすぐ戻ってきた。
でも、猫の置物がしゃべるし、異世界召喚だもん、転移魔法くらいあっても普通なのかも。
「アレックス様、美しさに驚きになるのもわかりますが、今はそれよりも貞操具の解除を!ずっと耐えていらっしゃいます!」
しびれを切らしたように最初に声をかけたのは執事のお爺さんだった。
あ、もしかしたら、執事じゃないのかもしれないけれど。
というより、ずっと耐えて、とかいうからさ、引いていた尿意の波がまた押し寄せてきちゃったよ。
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