7 / 415
本編
-7- 神殿にて
しおりを挟む
通された神殿は迷子になりそうなほど広かった。
馬車は神殿の入り口すぐでとめられたので、神殿自体の外観は詳しくわからなかったけれど、案内されて歩く僕たちに向かい、皆が立ち止まり、顔の前で手を重ねて肘をはり、頭を下げてくる。
彼らのお辞儀も独特だけど、服装はもっと独特だった。
胸の中央に大きな十字架の刺繍があり、白地に金糸の刺繍の入ったステラ。
全体的に白地と水色の長いコートみたいなんだけれど、それも金縁で覆われている。
神官なのだろうけれど、さすが異世界。ずいぶんと派手だ。
僕と旭さんはともかく、渚君はパジャマ、愛斗君に限っては上半身裸な上に倒れていた魔道士のローブを羽織っているだけ。
馬車に乗る前に服を貰おうとすると、神殿で用意するから、と断られたのだ。
出迎えれても、どうぞそのままで、と言われて、しかたなく渚君と愛斗君は裸足のままだ。靴くらい、と思ったけれど、2人に言わせると床はほんのり温かいから大丈夫みたい。つるりとした床は真っ白で、所々に青い大輪の花のような模様が繊細に描かれていた。
出迎えと案内には、白く長い髭が特徴の神官だった。大司教様だそう。
僕の家はもともと無宗教だし、正確にはどのくらい偉いかはわからない。
舞台の知識であっているならば、上から2番目。
宰相のルーカスさんが大司教様、と呼び、大司教様も閣下、と互いに敬語であるから、立場的には同等なのかも。
大司教様も、この国の宰相が自ら僕たちを運んでくるとは思っていなかったらしくて、かなり驚いていた。
通された部屋は、壁や天井が真っ白な、比較的こじんまりとした部屋だった。
こじんまりといっても、この壮大な建物にしたら、という意味で、たぶん12帖くらいはある。
来客用の部屋らしく、紺色の絨毯には大輪の花のような模様が描かれていて、白いゆったりとしたソファに、テーブルがあった。
促されて、僕たちは4人ならんで腰掛ける。
若い神官によって、ポットと4人分のカップが運ばれてきて、紅茶の良い香りが広がった。
ルーカスさんは部屋に入ることはなかった。
扉の外で何度か大司教様と話を交わした後、一緒にいた従者らしき人に指示を出し、新たな神官に促されてその場を後にする。
それを目にした大司教様が、若い神官に声をかけた。
「サミュエル、新器様方にこの国とお役目についてご説明を。私は閣下と少し話がある。後ほど聖玉の間にて魔力判定を行うから、ペリエの果実もお出ししなさい」
「畏まりました」
サミュエルと呼ばれた人が僕たちに向かい、頭を垂れてくる。
大司教様のときと同じように、顔の前で手を重ねて肘をはるお辞儀だ。
「新器の皆さま、初めてお目にかかります。私はこのアリアナ教の司祭を務めます、サミュエルと申します」
「あの」
すぐに口を開いたのは渚君だった。
「はい、なんでございましょうか?」
「あの、僕たち、何の説明もなくいきなりここに連れてこられたんです。ここはどこなんですか?」
「この国は、クライス帝国といいます」
「くらいすてい国」
「はい、帝国の中では3番目の広さを持ちますが、もっとも技術が発達している国でございます。南は海に面し、北には山に囲まれ、資源も豊富でございます――――ああ、順に説明いたしますね、さめないうちにどうぞ」
紅茶を思い思いに口にすると、それを満足げに見ながら、サミュエルさんはゆっくりと語りだした。
馬車は神殿の入り口すぐでとめられたので、神殿自体の外観は詳しくわからなかったけれど、案内されて歩く僕たちに向かい、皆が立ち止まり、顔の前で手を重ねて肘をはり、頭を下げてくる。
彼らのお辞儀も独特だけど、服装はもっと独特だった。
胸の中央に大きな十字架の刺繍があり、白地に金糸の刺繍の入ったステラ。
全体的に白地と水色の長いコートみたいなんだけれど、それも金縁で覆われている。
神官なのだろうけれど、さすが異世界。ずいぶんと派手だ。
僕と旭さんはともかく、渚君はパジャマ、愛斗君に限っては上半身裸な上に倒れていた魔道士のローブを羽織っているだけ。
馬車に乗る前に服を貰おうとすると、神殿で用意するから、と断られたのだ。
出迎えれても、どうぞそのままで、と言われて、しかたなく渚君と愛斗君は裸足のままだ。靴くらい、と思ったけれど、2人に言わせると床はほんのり温かいから大丈夫みたい。つるりとした床は真っ白で、所々に青い大輪の花のような模様が繊細に描かれていた。
出迎えと案内には、白く長い髭が特徴の神官だった。大司教様だそう。
僕の家はもともと無宗教だし、正確にはどのくらい偉いかはわからない。
舞台の知識であっているならば、上から2番目。
宰相のルーカスさんが大司教様、と呼び、大司教様も閣下、と互いに敬語であるから、立場的には同等なのかも。
大司教様も、この国の宰相が自ら僕たちを運んでくるとは思っていなかったらしくて、かなり驚いていた。
通された部屋は、壁や天井が真っ白な、比較的こじんまりとした部屋だった。
こじんまりといっても、この壮大な建物にしたら、という意味で、たぶん12帖くらいはある。
来客用の部屋らしく、紺色の絨毯には大輪の花のような模様が描かれていて、白いゆったりとしたソファに、テーブルがあった。
促されて、僕たちは4人ならんで腰掛ける。
若い神官によって、ポットと4人分のカップが運ばれてきて、紅茶の良い香りが広がった。
ルーカスさんは部屋に入ることはなかった。
扉の外で何度か大司教様と話を交わした後、一緒にいた従者らしき人に指示を出し、新たな神官に促されてその場を後にする。
それを目にした大司教様が、若い神官に声をかけた。
「サミュエル、新器様方にこの国とお役目についてご説明を。私は閣下と少し話がある。後ほど聖玉の間にて魔力判定を行うから、ペリエの果実もお出ししなさい」
「畏まりました」
サミュエルと呼ばれた人が僕たちに向かい、頭を垂れてくる。
大司教様のときと同じように、顔の前で手を重ねて肘をはるお辞儀だ。
「新器の皆さま、初めてお目にかかります。私はこのアリアナ教の司祭を務めます、サミュエルと申します」
「あの」
すぐに口を開いたのは渚君だった。
「はい、なんでございましょうか?」
「あの、僕たち、何の説明もなくいきなりここに連れてこられたんです。ここはどこなんですか?」
「この国は、クライス帝国といいます」
「くらいすてい国」
「はい、帝国の中では3番目の広さを持ちますが、もっとも技術が発達している国でございます。南は海に面し、北には山に囲まれ、資源も豊富でございます――――ああ、順に説明いたしますね、さめないうちにどうぞ」
紅茶を思い思いに口にすると、それを満足げに見ながら、サミュエルさんはゆっくりと語りだした。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
1,046
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる