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本編
-4- 異世界召喚
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騒々しく乗り込んできたのは、同じローブを着ている人たちが数名に、護衛とみられる剣を腰にさした人たちが数名、そして、煌びやかな金髪碧眼の少年と、背が高く髪の長い銀髪の男だ。
茶や金の人もいるけれど、赤や緑と髪の色がさまざまで、それだけでああ、本当に違う世界にきちゃったんだな、と感じる。まるで、ついこの間まで出演していた舞台のような、ファンタジーな世界。
銀髪の男が僕たちを見て驚いたように目を見張り、周囲に鋭い視線を向けて、そして大きくため息をついた。
わかる、わかるけれど、もう少し僕らに配慮してほしい。
ため息をつきたいのは僕らの方だ。
そのとなりにいる金髪の少年は、現状の驚きに固まっている。
「まさかと思ったが、本当に実行に移すとは………」
銀髪の男がつぶやく。バリトン調の、良く響く声だった。
「っこの人数で召喚したのですか?!何を考えてるんでしょうか、兄上は。
ルーカス、早急に父上にお知らせしなくては。あぁ、彼らはどうしたら…」
「殿下、落ち着いてください。
陛下には、もし本当であったら私に任せると仰せつかっております、ご安心ください」
ルーカスと呼ばれた男が少年を落ち着かせ、他のものに指揮をとっている。
召喚に使われたであろう魔法陣の確認と、倒れているローブの人たちの状態を確認すると、様々な指示をしていた。
僕らは未だ放置だ。
えー…なにこれ、本当に自分勝手な人たちだな。
つまらない舞台を見せられているみたい。
けれど、彼らが何者かなのかがちょっとずつ分かってきた。
金髪碧眼の少年は、先ほど聖女様、ここはあえて聖女様と呼ばせてもらうけれど、を連れていった男に似ている。
どうやらさっきの男もこの少年も王子様らしい。
こっちの少年王子様、弟の方が、まだ好感が持てる。
それに、ルーカスと呼ばれた銀髪の男、陛下に任せられているってことは、この人も相当偉い立場にいるんだろう。
動くに動けないんだけれど、皆も同じ感じかな、ちらっと様子を窺ってみる。
や、旭さんの表情だけどんどん険しくなってる。
大丈夫かな?ううん、大丈夫じゃなさそう。
一方愛斗君と渚君は、ここにきたときと同じくらいあんぐり口をあけて状況を目で追っていた。
ついていけてないみたいだ。
「閣下、魔道士は全員気を失っているだけのようです。おそらく魔力切れ……、ですが、最悪枯渇してる可能性はあります」
「そうか。全員、皇太子殿下直属の近衛魔道士隊のものか?」
「はい、間違いありません。ここ2年で増員された者たちです」
「命に別状がなければ構わない。隊長に連絡を」
「はっ!」
「殿下、ここに残って隊長に報告をお願いできますか?
私は、すぐに彼らとともに神殿に向かいます」
そう言って、銀髪の男が、ようやく僕らの方へと近づいてきた。
優雅な足取りで目の前までくると、深々と頭を下げる。
まっすぐで癖のない銀髪がさらりと揺れた。
「大変お待たせして申し訳ありません。
私はこの国の宰相、ルーカスと申します。
新器の皆さまには、これからすぐに神殿にご案内します。
馬車を用意しておりますので、もうしばらくこのままお待ちください。」
そう言って、ゆっくりと顔を上げた。
近くで見ると、その顔には疲れが浮き彫りになっていた。
40代、うーん、30代かもしれない。
瞳は淡いブルーグレーで、その目元には、うっすらとクマが出来ていた。
全体的に、近寄り難い鋭利な雰囲気がある。
宰相ってもっと歳のいった人がなるものだと思ってたけど、でもここは異世界だ、僕たちの常識は通用しない。
僕らに対して、思ったより丁寧な口調だ。
でも、わからない単語が出てきた。
言葉が通じるのは正直良かったと思うけど、『しんき』ってなんだろ。
漢字変換すると、神気かなやっぱり。神姫…、や、僕たち男だし、姫はないよね。
「大変お待たせして、ですか。そんなことより先に謝罪することがあるでしょう?」
うっすらと笑みを浮かべながら、旭さんが口を開いた。
口元は笑ってるけど、目が怒ってる。
本気で怒ってる。相当怒ってる。
けれど、宰相さんは、そんな旭さんの様子に驚いたみたい。
「?」
「私たちは、いきなりここへ拉致されたんですよ?謝罪なら、まずはそれに対してして頂きたいですね」
「あなた方にとっては、その方が良かったはずです。元の世界では恵まれた環境にはいなかった、ならば」
「は?」
「…ですから、神器であるあなた方は」
「恵まれていましたが?」
この宰相さん相手に、一切怯まない旭さんは凄いな。
うん、僕も恵まれた環境にいた。
「少なくとも私は恵まれていましたよ。
父も母も健在ですし、家庭も裕福です。
残念ながら恋人とは別れたばかりでしたが、仕事はすこぶる順調でした、先程までは。
大口の契約がほぼ決まったのも同然でした。そんな中、急にこちらに落とされたんです」
「っそんなはずは、、、」
「あの、僕も、幸せです。
家族もみんな仲良くて、お店もいつもお客さんがたくさんきてくれて。
神殿に行けば、帰れますか?帰してくれますよね?」
「俺も恵まれてますよ、それなりに。
家も裕福だし、両親も勿論、友人にも。自由に好きなことさせて貰ってました。
風呂上がりにいきなりここについて」
渚君と愛斗くんが立て続けに答えると、宰相さんは、信じられないようなものを見る目を僕たちに向けた。
最後に、僕と目が合う。
1人くらい、と思ったのかもしれないけど、僕だって相当恵まれている。
いる方だった、が正しい言い方なのかもしれなかった。
茶や金の人もいるけれど、赤や緑と髪の色がさまざまで、それだけでああ、本当に違う世界にきちゃったんだな、と感じる。まるで、ついこの間まで出演していた舞台のような、ファンタジーな世界。
銀髪の男が僕たちを見て驚いたように目を見張り、周囲に鋭い視線を向けて、そして大きくため息をついた。
わかる、わかるけれど、もう少し僕らに配慮してほしい。
ため息をつきたいのは僕らの方だ。
そのとなりにいる金髪の少年は、現状の驚きに固まっている。
「まさかと思ったが、本当に実行に移すとは………」
銀髪の男がつぶやく。バリトン調の、良く響く声だった。
「っこの人数で召喚したのですか?!何を考えてるんでしょうか、兄上は。
ルーカス、早急に父上にお知らせしなくては。あぁ、彼らはどうしたら…」
「殿下、落ち着いてください。
陛下には、もし本当であったら私に任せると仰せつかっております、ご安心ください」
ルーカスと呼ばれた男が少年を落ち着かせ、他のものに指揮をとっている。
召喚に使われたであろう魔法陣の確認と、倒れているローブの人たちの状態を確認すると、様々な指示をしていた。
僕らは未だ放置だ。
えー…なにこれ、本当に自分勝手な人たちだな。
つまらない舞台を見せられているみたい。
けれど、彼らが何者かなのかがちょっとずつ分かってきた。
金髪碧眼の少年は、先ほど聖女様、ここはあえて聖女様と呼ばせてもらうけれど、を連れていった男に似ている。
どうやらさっきの男もこの少年も王子様らしい。
こっちの少年王子様、弟の方が、まだ好感が持てる。
それに、ルーカスと呼ばれた銀髪の男、陛下に任せられているってことは、この人も相当偉い立場にいるんだろう。
動くに動けないんだけれど、皆も同じ感じかな、ちらっと様子を窺ってみる。
や、旭さんの表情だけどんどん険しくなってる。
大丈夫かな?ううん、大丈夫じゃなさそう。
一方愛斗君と渚君は、ここにきたときと同じくらいあんぐり口をあけて状況を目で追っていた。
ついていけてないみたいだ。
「閣下、魔道士は全員気を失っているだけのようです。おそらく魔力切れ……、ですが、最悪枯渇してる可能性はあります」
「そうか。全員、皇太子殿下直属の近衛魔道士隊のものか?」
「はい、間違いありません。ここ2年で増員された者たちです」
「命に別状がなければ構わない。隊長に連絡を」
「はっ!」
「殿下、ここに残って隊長に報告をお願いできますか?
私は、すぐに彼らとともに神殿に向かいます」
そう言って、銀髪の男が、ようやく僕らの方へと近づいてきた。
優雅な足取りで目の前までくると、深々と頭を下げる。
まっすぐで癖のない銀髪がさらりと揺れた。
「大変お待たせして申し訳ありません。
私はこの国の宰相、ルーカスと申します。
新器の皆さまには、これからすぐに神殿にご案内します。
馬車を用意しておりますので、もうしばらくこのままお待ちください。」
そう言って、ゆっくりと顔を上げた。
近くで見ると、その顔には疲れが浮き彫りになっていた。
40代、うーん、30代かもしれない。
瞳は淡いブルーグレーで、その目元には、うっすらとクマが出来ていた。
全体的に、近寄り難い鋭利な雰囲気がある。
宰相ってもっと歳のいった人がなるものだと思ってたけど、でもここは異世界だ、僕たちの常識は通用しない。
僕らに対して、思ったより丁寧な口調だ。
でも、わからない単語が出てきた。
言葉が通じるのは正直良かったと思うけど、『しんき』ってなんだろ。
漢字変換すると、神気かなやっぱり。神姫…、や、僕たち男だし、姫はないよね。
「大変お待たせして、ですか。そんなことより先に謝罪することがあるでしょう?」
うっすらと笑みを浮かべながら、旭さんが口を開いた。
口元は笑ってるけど、目が怒ってる。
本気で怒ってる。相当怒ってる。
けれど、宰相さんは、そんな旭さんの様子に驚いたみたい。
「?」
「私たちは、いきなりここへ拉致されたんですよ?謝罪なら、まずはそれに対してして頂きたいですね」
「あなた方にとっては、その方が良かったはずです。元の世界では恵まれた環境にはいなかった、ならば」
「は?」
「…ですから、神器であるあなた方は」
「恵まれていましたが?」
この宰相さん相手に、一切怯まない旭さんは凄いな。
うん、僕も恵まれた環境にいた。
「少なくとも私は恵まれていましたよ。
父も母も健在ですし、家庭も裕福です。
残念ながら恋人とは別れたばかりでしたが、仕事はすこぶる順調でした、先程までは。
大口の契約がほぼ決まったのも同然でした。そんな中、急にこちらに落とされたんです」
「っそんなはずは、、、」
「あの、僕も、幸せです。
家族もみんな仲良くて、お店もいつもお客さんがたくさんきてくれて。
神殿に行けば、帰れますか?帰してくれますよね?」
「俺も恵まれてますよ、それなりに。
家も裕福だし、両親も勿論、友人にも。自由に好きなことさせて貰ってました。
風呂上がりにいきなりここについて」
渚君と愛斗くんが立て続けに答えると、宰相さんは、信じられないようなものを見る目を僕たちに向けた。
最後に、僕と目が合う。
1人くらい、と思ったのかもしれないけど、僕だって相当恵まれている。
いる方だった、が正しい言い方なのかもしれなかった。
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