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本編
-2- 異世界召喚
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「えー…と、え、あ、れ、う、うそ、み、水原蓮君っ!?ほ、本物ー!?」
静まり返った空間の中、最初に声をあげたのは、パジャマ姿の少年だった。
ふんわりとした柔らかそうな髪は、染めているわけではなく、本来の色なんだろう。
どこか混ざってるのか、色白で全体的に色素が薄く、ぱっちりと大きな瞳も少し青みがかってる。
その大きな目をより大きくし、嬉しそうに紅潮して指をさす。
人に指をさす行為はあまりよろしくないが、こんな状況じゃしかたない。
けど、僕自身を知っている、というのは少々驚きだ。
俳優業に復帰したのはごく最近のこと、それも舞台中心だ。
僕は10歳まで子役としてミュージカル劇団に所属し、舞台や映画に出ていた。
劇団に入ったきっかけは、女優である母の影響だ。
母が主役だったその舞台に、自分も一緒に立ちたい!と思ったのがきっかけだった。
舞台は劇団のときも、外部のオーディションで勝ち取ったときもあったし、子役としては大役に値するときもあったけど、母と同じ舞台に立つことはなぜかできなかった。
スケジュールが合わなかったり、オーディションに落ちたり、といった理由だ。
悔しくて泣いたこともある。
だが、今にして思えば、当たり前のことだ。
幼いながらも母と僕の顔が似過ぎていて、舞台はともかく映像は他人とは思えない。
母の幼少時代、という役柄で、男なのにも関わらず数回出演したことがある。
どれもかなりの定評だったらしいが、僕自身はとても不満だった。
母と一緒に演技がしたかったのだ。
一緒の映画に出演したものの、一緒に演技が出来ないというのはもどかしくあった。
舞台には立てなかったが、10歳の時母の息子役としてとあるドラマに抜擢された。
単発2時間半のヒューマンドラマで、政治家の息子役だ。
家族は勿論、学校でも良い子の優等生を演じ、裏では父と懇意にしている政治家相手に自ら売春に身を染める、随分と闇の深い少年の役だった。
子役としてはすこぶる良い評価を受けたが、ドラマの内容自体に賛否両論が巻き起こった。
また、夜8時からの単発ドラマなのにも関わらず、学校内や劇団の友人も、結構な人数がそれを見ていたのだ。
母もまだまだ若くて人気だったし、初めて親子出演する、ということで話題にもなっていた。
だが、役の影響は大きかった。
学校内での友人も、同じ劇団の友人も、急によそよそしくなった。
『お前なんか悪魔だ!』
一番の親友だと思っていた子にそう言われて、その言葉がずっとはなれず、結局、僕は劇団を辞めた。
中学になり、不登校が増えた。
そのころ母も独立し、父とマネージャーと3人で事務所を立ち上げた。
一人息子がこんな状況で申し訳ないと思ったが、3人とも優しかった。
特に父はとことん甘かった。
「好きなことをやりなさい。学び方は色々あるし、顔を出さなくても演技や歌は出来る。
そして何でもいい、君が好きだと思うことを仕事にしなさい。それが、君の幸せになるのだから」
そういってくれて、歌、ダンス、ピアノ、は自宅に講師をよんでくれて、
殺陣とカンフーは、母の伝手でアクション事務所に連れていってもらい、大人相手に特別講義を受けた。
まだ、人前に出る勇気はなかったけど、どれも好きだった。
そして、今から3年前に、母の事務所から正式に俳優として復帰した。
学校には殆ど行かず、高校は通信を選択した。
俳優として顔をさらすことになったが、僕も精神的に成長し、強くなった。
それに、自分にとってコンプレックスでしかない中性じみたこの容姿は、思ったよりずっと受け入れてくれる子が多くて、女の子のファンがちゃんとついてきてくれたし、ファンクラブもできた。
なかなかあたらなかったけど、ようやくあたったのがゲームが原作のミュージカルだった。
異世界に召喚された聖女が、勇者とともに崩壊寸前の世界を救うっていう王道のファンタジーで、僕はハーフエルフ、魔道士として勇者と一緒に旅をする仲間を演じていた。
このミュージカルでファンの子がぐっと増えたのは確かだし、公演が終わってもラジオ番組が続いていた。
さっきまで、そのラジオ番組の収録中だった。
役者が交代でパーソナリティをつとめる番組で、次の放送回は僕の番だった。
と、僕の俳優としての経緯は、こういった具合だ。
だから驚いたのだ。
そこまでメディアに出ていないのに、僕より年下の、それも男の子が僕のことを知っているってことに。
「うん、本物の水原蓮だよ」
彼の顔が、僕の大ファンです、っていう表情だったから、つい、役者の笑顔を向けてしまう。
この笑顔をすると、大抵、きゃぁぁと声が上がるのを知っている。
普段の生活の中でこんな綺麗な笑顔は作らない。
役として所作は綺麗で満点だけど、普段のギャップが酷い、とマネージャーから言われるくらいには品性にかけてる人間だって自分でもわかってる。
「ふあぁぁ、ぼ、僕、水原蓮君の大ファンで!みずきちゃ…、姉の影響で一緒にファンになってっ!
今回の舞台も3回見にいって、すっごく良かったです!
ラジオも次が蓮君だって言ってたからすごく楽しみにしてて…」
同じ舞台を3回も見に来てくれるなんて。
全身から喜びが伝わってくる、こんな状況でもなんだか嬉しくなるな。
「ありがとう、嬉しいよ」
心からでた言葉だったけど、感激しすぎたのか少年が泣きだしてしまう。
宥めるためにそばに寄ったら、逆効果になってしまった。
「ふえぇ、どうしようー嬉しすぎるー!あぁ、まつ毛長いーばっさばさだ、綺麗ー美人ーあぁ、綺麗だよぅ尊いっ!
いい匂いするー!一生夢の中にいたいー!!」
まつ毛ばさばさは認めよう、綺麗、はいいや、もう褒め言葉だ。けど、いい匂いってなんだろう。
それより。
「えーと…残念だけど、夢じゃないよ?」
「ふぇ!?現実!?」
そう、これは残念だけど、夢じゃなくて現実だ。
僕も、夢だと思いたいところだけど。
「あ、ああ、握手してください!!」
そうじゃない、そうじゃないよ。
静まり返った空間の中、最初に声をあげたのは、パジャマ姿の少年だった。
ふんわりとした柔らかそうな髪は、染めているわけではなく、本来の色なんだろう。
どこか混ざってるのか、色白で全体的に色素が薄く、ぱっちりと大きな瞳も少し青みがかってる。
その大きな目をより大きくし、嬉しそうに紅潮して指をさす。
人に指をさす行為はあまりよろしくないが、こんな状況じゃしかたない。
けど、僕自身を知っている、というのは少々驚きだ。
俳優業に復帰したのはごく最近のこと、それも舞台中心だ。
僕は10歳まで子役としてミュージカル劇団に所属し、舞台や映画に出ていた。
劇団に入ったきっかけは、女優である母の影響だ。
母が主役だったその舞台に、自分も一緒に立ちたい!と思ったのがきっかけだった。
舞台は劇団のときも、外部のオーディションで勝ち取ったときもあったし、子役としては大役に値するときもあったけど、母と同じ舞台に立つことはなぜかできなかった。
スケジュールが合わなかったり、オーディションに落ちたり、といった理由だ。
悔しくて泣いたこともある。
だが、今にして思えば、当たり前のことだ。
幼いながらも母と僕の顔が似過ぎていて、舞台はともかく映像は他人とは思えない。
母の幼少時代、という役柄で、男なのにも関わらず数回出演したことがある。
どれもかなりの定評だったらしいが、僕自身はとても不満だった。
母と一緒に演技がしたかったのだ。
一緒の映画に出演したものの、一緒に演技が出来ないというのはもどかしくあった。
舞台には立てなかったが、10歳の時母の息子役としてとあるドラマに抜擢された。
単発2時間半のヒューマンドラマで、政治家の息子役だ。
家族は勿論、学校でも良い子の優等生を演じ、裏では父と懇意にしている政治家相手に自ら売春に身を染める、随分と闇の深い少年の役だった。
子役としてはすこぶる良い評価を受けたが、ドラマの内容自体に賛否両論が巻き起こった。
また、夜8時からの単発ドラマなのにも関わらず、学校内や劇団の友人も、結構な人数がそれを見ていたのだ。
母もまだまだ若くて人気だったし、初めて親子出演する、ということで話題にもなっていた。
だが、役の影響は大きかった。
学校内での友人も、同じ劇団の友人も、急によそよそしくなった。
『お前なんか悪魔だ!』
一番の親友だと思っていた子にそう言われて、その言葉がずっとはなれず、結局、僕は劇団を辞めた。
中学になり、不登校が増えた。
そのころ母も独立し、父とマネージャーと3人で事務所を立ち上げた。
一人息子がこんな状況で申し訳ないと思ったが、3人とも優しかった。
特に父はとことん甘かった。
「好きなことをやりなさい。学び方は色々あるし、顔を出さなくても演技や歌は出来る。
そして何でもいい、君が好きだと思うことを仕事にしなさい。それが、君の幸せになるのだから」
そういってくれて、歌、ダンス、ピアノ、は自宅に講師をよんでくれて、
殺陣とカンフーは、母の伝手でアクション事務所に連れていってもらい、大人相手に特別講義を受けた。
まだ、人前に出る勇気はなかったけど、どれも好きだった。
そして、今から3年前に、母の事務所から正式に俳優として復帰した。
学校には殆ど行かず、高校は通信を選択した。
俳優として顔をさらすことになったが、僕も精神的に成長し、強くなった。
それに、自分にとってコンプレックスでしかない中性じみたこの容姿は、思ったよりずっと受け入れてくれる子が多くて、女の子のファンがちゃんとついてきてくれたし、ファンクラブもできた。
なかなかあたらなかったけど、ようやくあたったのがゲームが原作のミュージカルだった。
異世界に召喚された聖女が、勇者とともに崩壊寸前の世界を救うっていう王道のファンタジーで、僕はハーフエルフ、魔道士として勇者と一緒に旅をする仲間を演じていた。
このミュージカルでファンの子がぐっと増えたのは確かだし、公演が終わってもラジオ番組が続いていた。
さっきまで、そのラジオ番組の収録中だった。
役者が交代でパーソナリティをつとめる番組で、次の放送回は僕の番だった。
と、僕の俳優としての経緯は、こういった具合だ。
だから驚いたのだ。
そこまでメディアに出ていないのに、僕より年下の、それも男の子が僕のことを知っているってことに。
「うん、本物の水原蓮だよ」
彼の顔が、僕の大ファンです、っていう表情だったから、つい、役者の笑顔を向けてしまう。
この笑顔をすると、大抵、きゃぁぁと声が上がるのを知っている。
普段の生活の中でこんな綺麗な笑顔は作らない。
役として所作は綺麗で満点だけど、普段のギャップが酷い、とマネージャーから言われるくらいには品性にかけてる人間だって自分でもわかってる。
「ふあぁぁ、ぼ、僕、水原蓮君の大ファンで!みずきちゃ…、姉の影響で一緒にファンになってっ!
今回の舞台も3回見にいって、すっごく良かったです!
ラジオも次が蓮君だって言ってたからすごく楽しみにしてて…」
同じ舞台を3回も見に来てくれるなんて。
全身から喜びが伝わってくる、こんな状況でもなんだか嬉しくなるな。
「ありがとう、嬉しいよ」
心からでた言葉だったけど、感激しすぎたのか少年が泣きだしてしまう。
宥めるためにそばに寄ったら、逆効果になってしまった。
「ふえぇ、どうしようー嬉しすぎるー!あぁ、まつ毛長いーばっさばさだ、綺麗ー美人ーあぁ、綺麗だよぅ尊いっ!
いい匂いするー!一生夢の中にいたいー!!」
まつ毛ばさばさは認めよう、綺麗、はいいや、もう褒め言葉だ。けど、いい匂いってなんだろう。
それより。
「えーと…残念だけど、夢じゃないよ?」
「ふぇ!?現実!?」
そう、これは残念だけど、夢じゃなくて現実だ。
僕も、夢だと思いたいところだけど。
「あ、ああ、握手してください!!」
そうじゃない、そうじゃないよ。
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