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本編
-157- 仕返し
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「お久しぶりです、アレックス様。オリバーは大丈夫ですけど、少しだけ時間をください。
俺でわかることなら、このまま。
話している間には、復活すると思います」
『わかった』
梟越しに努めて穏やかに聞こえるようにアレックス様へ話しかけると、あからさまにほっとした声が聞こえてきた。
嘘は言っていない。
オリバーはもう泣き止んでるし、本人の言う通り落ち着いているからだ。
ただ、もう少しだけ時間が必要なのも事実。
アレックス様相手に話しかける時は、やっぱ緊張する。
オリバーの友人と言えど、コナーの様に遠慮なくとはいかない。
最初の出会いがマジで失礼な態度だったこともあるし、この家の持ち主で領主様だっていうのがデカい。
それに、蓮君の旦那さんだ。
蓮君と俺は友人同士で、その旦那、って言う間柄じゃ、俺の場合は一線置いておいたほうが後々面倒にならない。
立ち位置っつーか、立場っつーか。
オリバーは兎も角、コナーがあんな遠慮なしな態度でもアレックス様は全く気にしていないところを見ると、俺も地でいたって何らお咎めはないだろう。
けど、やっぱ、俺は、自他ともに認める“猫かぶり”なわけで。
そうなると、どうしてもこういう対応の仕方しか出来ない。
あんま畏まるのもと思って、毎回結構気を遣ってる気もする。
復活、なんて言葉はオリバーを軽く揶揄ってるような言葉だ。
現に、オリバーが拗ねたような口調で『もう少し言い方を』なんて呟く。
まだ鼻声でスンスン言ってる。
さっきまでの慌てた様子はないから、涙声でも鼻声でも、もうばれちまったもんはこれ以上取り繕う気はないらしい。
「考えたから、珍しくオブラートに言ったんじゃん」
「オブラートとは?」
「え、オブラートって通じねえの?遠回しに言って相手を傷つけないように……って、おまっ、ここでかむなよ───あ、すみません」
通信が繋がってる状態なのに、オリバーはちーんと鼻をかむ。
別の部屋でかめばいいのに……って思うが、オリバーに限っては、ないな。
けど、もうちっと遠慮するとかなんとかあるだろーが。
アレックス様に謝るのは、俺の方だ。
アレックス様はというと、案の定、面白そうに笑う声が聞こえてきた。
『今月末に、こちらで友人と集まり食事をするのをコナーから聞いているだろうか?』
「はい、つい一昨日に」
俺等は聞いたばっかだが、アレックス様だって聞いたばかりだろう。
コナーはそういうところ他人を使って話を繋げるのも、場を設けるのも、行動も早い。
そこは、商人気質っつーか……や、あれは、商人というより本人の気質かもしれないが。
『オリバーとアサヒは転移でうちまで連れてくから参加出来そうか?
うちで一泊して、次の日の朝帰ればいい』
「ありがとうございます」
マジか。
すげー助かる。
正直蓮君ともまた話したいと思っていたし、オリバーが友人と集まってゆっくりできる時間っつーのを作ってやりたかった。
が、今は難しい状態だ。
うちに来る分には全く問題ないけど、エリソン侯爵領で集まってってなると時間を取るのが難しい。
無理だと思っていたし、正式に断る方向でいた。
コナーがアレックス様を頼ればいいと言っていたが、オリバー本人が気乗りしていなかったのもある。
オリバーの性格からしたらアレックス様に頼むことは出来ないと思っていたし、俺から頼むのも内容が内容なだけに躊躇しちまう。
エリソン侯爵領までは、ここからさほど離れた距離じゃないはずだ。
元の世界で言ったら、感覚としちゃ東京から鎌倉まで、みたいなもんだろう。
けど、こっちには電車もなければ車もない。
ぱっかぱっかと呑気に走る馬車が唯一の交通手段と言っていい。
速度だけ言えば、自転車とさほど変わらないような気がするし、間休憩も挟む。
乗馬ならもう少し早いだろうが、俺は出来ないし、オリバーも出来るが得意じゃないと聞いている。
ってことは、行くとしたら三日は見ないといけない状況だった。
『近いから』『すぐだから』という親父さんたちは、本当に近いしすぐだと思っているんだろう。
実際、距離にしちゃそんな離れていないし、行ったり来たりを繰り返して慣れていれば尚更だ。
けど、やっぱ片道一日かかる場所が近いとは言い難いよな。
『ただ、うちの領は問題ないが、帝都から出る記録がつかない。うちと店だけの往復になるが』
「それは大丈夫です。今年いっぱいは、毎日状態を観測したい植物がいくつかあって、参加自体が難しいと俺もオリバーも思っていましたから」
観光は、ゆっくり出来るときが来たらすればいいと思ってる。
案内したいと言っていたオリバーは、口先だけじゃなくて本当にそう思ってるのが分かった。
そう遠くないうちに機会はあるだろう。
「それに、タイラーもソフィアも歳なので、一晩お世話になれるならとても助かります」
『なら良かった。詳しい時間はまた』
「はい」
寝ていいと言ったって、きっとタイラーは起きてる。
それか、俺らが戻れば起きるはずだ。
朝は確実に俺らよりも早く起きてるし、そうなればそれだけ睡眠時間を削ることになる。
休みっつー休みが、タイラーとソフィアにはない状態だ。
本人達は、俺が来て出かけることが増えたからゆっくりさせてもらってる、なんて言ってたけど。
元気だけどさ、極力無理はさせたくない。
『それと、シリルの方はいつ頃になりそうか分かるか?』
「今月中には引っ越し出来るかと。昨日ネストレさんの往診に同行したのですが、かなり回復されていました。
一週間後もう一度診察をお願いしていますが、本格的に寒くなる前に引っ越した方がいいという話になりました」
『診察が終わったら日取りを調整したい。一週間後、このくらいの時間にまた連絡するが、構わないか?』
「わかりました。よろしくお願いします」
手紙で一方的に告げるより、話が出来た方が詳細まで伝えやすい。
こっちから繋げるもんじゃないから、アレックス様の申し出はありがたかった。
「それと、レンがハワード伯の第二夫人、エリー様の紹介で、オリバーの母君、シャーロット様にお会いした。その時に、今月末の集まりがバレてしまった」
「え……それは」
ここにきてやっとオリバーが口を開いた。
それも、すぐ背後からだ。
鼻声はすっかり治ったみたいだな。
つーか、めちゃくちゃ近い。
や、いるのはわかってた。
あえて咎めなかった俺も俺だ。
見られちゃいなのをいいことに、オリバーは俺の左手を自分のそれで下からすくって、手のひらを合わせて握ってくる。
右手は俺の腰を緩くホールドだ。
一気に甘い空気が漂った。
こんなの、今俺は下手に話さない方がいいに決まってる。
ぜってー自爆するっ!
『フレディも誘うそうだ』
「先にアレックスから聞けて良かったです。ちなみにお店は……」
『レンがいるからな、黒猫亭は却下した。ラソンブレの個室を2部屋に分けてとってある』
「ああ、それならば助かります」
フレディっつーのは、オリバーの二番目の兄ちゃんだ。
ほっとしたような声でアレックス様に告げた後、俺の心境を知ってかオリバーの声に笑いが漏れる。
耳元がくすぐったい。
やめろとは言えない。
思っちゃいないし、それに言ったら言ったで、なんか言われて、それにまた言い返して......なんてことしたら、さすがにいちゃいちゃぶりがアレックス様にばれちまう。
さっきまでぐずぐず泣いてたのに、もうすっかり消え去ったみたいだ。
それは良いが、これ以上このままイチャイチャされたら、俺は話の内容が吹っ飛ぶ。
ラソンブレ、ラソンブレと店の名前を脳内で繰り返していると、シャツの裾からそろりと入ってくるオリバーのゆびさきを感じて咄嗟に右手で掴む。
っ終わってからにしてくれよ、頼むから!
多分、や、おそらく俺の顔は真っ赤になってる。
オリバーは分かっててやってる。
その証拠に俺がオリバーの手を掴むと俺の手ごと包み込んで抱きしめてくる。
こういうスキンシップが毎日繰り広げられてる。
いーよ普段はさ、俺とオリバーしか居ないし、居たってソフィアかタイラーかおはぎだし、今更感ある。
けど、通信中っつーのは、羞恥心が強すぎる。
さすがにそのまま進めることはしないようだから、力を抜く。
もし仮に進めたら、俺は今日口聞かないくらいするはずだ。
前科があるから、引き際も心得てるのかもな。
てか、こういう時のオリバーは、いつも余裕があり過ぎるだろ。
ズルくね?
「アサヒ、レンには専属従者のセオを同じ部屋につかせる。扱いは従者としてではなく、子爵として参加してもらうつもりでいる。アサヒと同年だ、よろしく頼む」
「はい」
クッソ、もう『はい』以上言える余裕がねえ!
「レン君に、従者をつかせるのですか?」
オリバーがちょっと面白くなさげな声でつぶやいた。
良いじゃん別にさ。
俺の信用がないとかじゃねえと思うぞ?
それに、セオという名前には聞き覚えがある。
前に蓮君が真似してたことがあったからだ。
「部屋が別々なんだ。じゃないと俺が気になって食事どころじゃない。セオは、夫同然の恋人もいるし、間違ってもアサヒやマナトに惚れるようなことはない。そこは、安心してくれ」
「ああ、なるほど」
オリバーはなんだか知らないが今アレックス様の説明で納得したらしい。
が、そのまま俺の首筋に唇をそろりとはわせてくる。
付け上がらせてるのは、分かってる。
分かってるけど。
「アサヒたちを信用してないわけじゃないんだが、万が一の保険だと思ってくれ」
「はい」
普通を装うのも限界だ。
けど、こんな状態は意地でも知られたくねえから、強く出られない。
俺が最初に、復活云々言ったからか?
その仕返しにしちゃやりすぎだろ。
俺でわかることなら、このまま。
話している間には、復活すると思います」
『わかった』
梟越しに努めて穏やかに聞こえるようにアレックス様へ話しかけると、あからさまにほっとした声が聞こえてきた。
嘘は言っていない。
オリバーはもう泣き止んでるし、本人の言う通り落ち着いているからだ。
ただ、もう少しだけ時間が必要なのも事実。
アレックス様相手に話しかける時は、やっぱ緊張する。
オリバーの友人と言えど、コナーの様に遠慮なくとはいかない。
最初の出会いがマジで失礼な態度だったこともあるし、この家の持ち主で領主様だっていうのがデカい。
それに、蓮君の旦那さんだ。
蓮君と俺は友人同士で、その旦那、って言う間柄じゃ、俺の場合は一線置いておいたほうが後々面倒にならない。
立ち位置っつーか、立場っつーか。
オリバーは兎も角、コナーがあんな遠慮なしな態度でもアレックス様は全く気にしていないところを見ると、俺も地でいたって何らお咎めはないだろう。
けど、やっぱ、俺は、自他ともに認める“猫かぶり”なわけで。
そうなると、どうしてもこういう対応の仕方しか出来ない。
あんま畏まるのもと思って、毎回結構気を遣ってる気もする。
復活、なんて言葉はオリバーを軽く揶揄ってるような言葉だ。
現に、オリバーが拗ねたような口調で『もう少し言い方を』なんて呟く。
まだ鼻声でスンスン言ってる。
さっきまでの慌てた様子はないから、涙声でも鼻声でも、もうばれちまったもんはこれ以上取り繕う気はないらしい。
「考えたから、珍しくオブラートに言ったんじゃん」
「オブラートとは?」
「え、オブラートって通じねえの?遠回しに言って相手を傷つけないように……って、おまっ、ここでかむなよ───あ、すみません」
通信が繋がってる状態なのに、オリバーはちーんと鼻をかむ。
別の部屋でかめばいいのに……って思うが、オリバーに限っては、ないな。
けど、もうちっと遠慮するとかなんとかあるだろーが。
アレックス様に謝るのは、俺の方だ。
アレックス様はというと、案の定、面白そうに笑う声が聞こえてきた。
『今月末に、こちらで友人と集まり食事をするのをコナーから聞いているだろうか?』
「はい、つい一昨日に」
俺等は聞いたばっかだが、アレックス様だって聞いたばかりだろう。
コナーはそういうところ他人を使って話を繋げるのも、場を設けるのも、行動も早い。
そこは、商人気質っつーか……や、あれは、商人というより本人の気質かもしれないが。
『オリバーとアサヒは転移でうちまで連れてくから参加出来そうか?
うちで一泊して、次の日の朝帰ればいい』
「ありがとうございます」
マジか。
すげー助かる。
正直蓮君ともまた話したいと思っていたし、オリバーが友人と集まってゆっくりできる時間っつーのを作ってやりたかった。
が、今は難しい状態だ。
うちに来る分には全く問題ないけど、エリソン侯爵領で集まってってなると時間を取るのが難しい。
無理だと思っていたし、正式に断る方向でいた。
コナーがアレックス様を頼ればいいと言っていたが、オリバー本人が気乗りしていなかったのもある。
オリバーの性格からしたらアレックス様に頼むことは出来ないと思っていたし、俺から頼むのも内容が内容なだけに躊躇しちまう。
エリソン侯爵領までは、ここからさほど離れた距離じゃないはずだ。
元の世界で言ったら、感覚としちゃ東京から鎌倉まで、みたいなもんだろう。
けど、こっちには電車もなければ車もない。
ぱっかぱっかと呑気に走る馬車が唯一の交通手段と言っていい。
速度だけ言えば、自転車とさほど変わらないような気がするし、間休憩も挟む。
乗馬ならもう少し早いだろうが、俺は出来ないし、オリバーも出来るが得意じゃないと聞いている。
ってことは、行くとしたら三日は見ないといけない状況だった。
『近いから』『すぐだから』という親父さんたちは、本当に近いしすぐだと思っているんだろう。
実際、距離にしちゃそんな離れていないし、行ったり来たりを繰り返して慣れていれば尚更だ。
けど、やっぱ片道一日かかる場所が近いとは言い難いよな。
『ただ、うちの領は問題ないが、帝都から出る記録がつかない。うちと店だけの往復になるが』
「それは大丈夫です。今年いっぱいは、毎日状態を観測したい植物がいくつかあって、参加自体が難しいと俺もオリバーも思っていましたから」
観光は、ゆっくり出来るときが来たらすればいいと思ってる。
案内したいと言っていたオリバーは、口先だけじゃなくて本当にそう思ってるのが分かった。
そう遠くないうちに機会はあるだろう。
「それに、タイラーもソフィアも歳なので、一晩お世話になれるならとても助かります」
『なら良かった。詳しい時間はまた』
「はい」
寝ていいと言ったって、きっとタイラーは起きてる。
それか、俺らが戻れば起きるはずだ。
朝は確実に俺らよりも早く起きてるし、そうなればそれだけ睡眠時間を削ることになる。
休みっつー休みが、タイラーとソフィアにはない状態だ。
本人達は、俺が来て出かけることが増えたからゆっくりさせてもらってる、なんて言ってたけど。
元気だけどさ、極力無理はさせたくない。
『それと、シリルの方はいつ頃になりそうか分かるか?』
「今月中には引っ越し出来るかと。昨日ネストレさんの往診に同行したのですが、かなり回復されていました。
一週間後もう一度診察をお願いしていますが、本格的に寒くなる前に引っ越した方がいいという話になりました」
『診察が終わったら日取りを調整したい。一週間後、このくらいの時間にまた連絡するが、構わないか?』
「わかりました。よろしくお願いします」
手紙で一方的に告げるより、話が出来た方が詳細まで伝えやすい。
こっちから繋げるもんじゃないから、アレックス様の申し出はありがたかった。
「それと、レンがハワード伯の第二夫人、エリー様の紹介で、オリバーの母君、シャーロット様にお会いした。その時に、今月末の集まりがバレてしまった」
「え……それは」
ここにきてやっとオリバーが口を開いた。
それも、すぐ背後からだ。
鼻声はすっかり治ったみたいだな。
つーか、めちゃくちゃ近い。
や、いるのはわかってた。
あえて咎めなかった俺も俺だ。
見られちゃいなのをいいことに、オリバーは俺の左手を自分のそれで下からすくって、手のひらを合わせて握ってくる。
右手は俺の腰を緩くホールドだ。
一気に甘い空気が漂った。
こんなの、今俺は下手に話さない方がいいに決まってる。
ぜってー自爆するっ!
『フレディも誘うそうだ』
「先にアレックスから聞けて良かったです。ちなみにお店は……」
『レンがいるからな、黒猫亭は却下した。ラソンブレの個室を2部屋に分けてとってある』
「ああ、それならば助かります」
フレディっつーのは、オリバーの二番目の兄ちゃんだ。
ほっとしたような声でアレックス様に告げた後、俺の心境を知ってかオリバーの声に笑いが漏れる。
耳元がくすぐったい。
やめろとは言えない。
思っちゃいないし、それに言ったら言ったで、なんか言われて、それにまた言い返して......なんてことしたら、さすがにいちゃいちゃぶりがアレックス様にばれちまう。
さっきまでぐずぐず泣いてたのに、もうすっかり消え去ったみたいだ。
それは良いが、これ以上このままイチャイチャされたら、俺は話の内容が吹っ飛ぶ。
ラソンブレ、ラソンブレと店の名前を脳内で繰り返していると、シャツの裾からそろりと入ってくるオリバーのゆびさきを感じて咄嗟に右手で掴む。
っ終わってからにしてくれよ、頼むから!
多分、や、おそらく俺の顔は真っ赤になってる。
オリバーは分かっててやってる。
その証拠に俺がオリバーの手を掴むと俺の手ごと包み込んで抱きしめてくる。
こういうスキンシップが毎日繰り広げられてる。
いーよ普段はさ、俺とオリバーしか居ないし、居たってソフィアかタイラーかおはぎだし、今更感ある。
けど、通信中っつーのは、羞恥心が強すぎる。
さすがにそのまま進めることはしないようだから、力を抜く。
もし仮に進めたら、俺は今日口聞かないくらいするはずだ。
前科があるから、引き際も心得てるのかもな。
てか、こういう時のオリバーは、いつも余裕があり過ぎるだろ。
ズルくね?
「アサヒ、レンには専属従者のセオを同じ部屋につかせる。扱いは従者としてではなく、子爵として参加してもらうつもりでいる。アサヒと同年だ、よろしく頼む」
「はい」
クッソ、もう『はい』以上言える余裕がねえ!
「レン君に、従者をつかせるのですか?」
オリバーがちょっと面白くなさげな声でつぶやいた。
良いじゃん別にさ。
俺の信用がないとかじゃねえと思うぞ?
それに、セオという名前には聞き覚えがある。
前に蓮君が真似してたことがあったからだ。
「部屋が別々なんだ。じゃないと俺が気になって食事どころじゃない。セオは、夫同然の恋人もいるし、間違ってもアサヒやマナトに惚れるようなことはない。そこは、安心してくれ」
「ああ、なるほど」
オリバーはなんだか知らないが今アレックス様の説明で納得したらしい。
が、そのまま俺の首筋に唇をそろりとはわせてくる。
付け上がらせてるのは、分かってる。
分かってるけど。
「アサヒたちを信用してないわけじゃないんだが、万が一の保険だと思ってくれ」
「はい」
普通を装うのも限界だ。
けど、こんな状態は意地でも知られたくねえから、強く出られない。
俺が最初に、復活云々言ったからか?
その仕返しにしちゃやりすぎだろ。
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