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本編

-132- 後見人

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「お待たせしました」
「おう、親父さんの様子どうだ?」
「かなり体調も回復しているようですし、来週もう一度診てもらって大丈夫なようでしたらここを発つことにことになりました」
「そっか。じゃあ、アレックス様にも連絡しなきゃな」

シリルの研究のこともあるし、ぎりぎりまでこの庭はこのままでいてくれるらしい。
ただ収納するだけだから、時間と場所が決まったら優先してきてくれるという。
で、あっちに着いたころに、向こうの庭に移してくれるらしい。
『同じ状態のままそっくり出すことは出来るから安心してくれ』と何でもないようにおっしゃった。
すげえ、の一言だろ。

ただ、両方とも立ち合いにはオリバーがいることが条件だった。
向こうには転移で連れて行ってくれるらしい。
俺も一緒で問題ない、と。
一体どれだけ一度に転移出来るのか、と思ったが、オリバーに言わせると距離には関係なく体積が関係するという。
アレックス様の場合、ご自身を抜きにしたら三人くらいまでなら楽に往復出来るそうだ。

親父さんの体調も良くなってるんなら、なんとか今月中に移動できそうだな。

「……向こうに行ったら、もう兄ちゃんに会えない?」

シリルが寂しそうな顔で俺を見上げる。

「そんなことはないぞ。
エリソン侯爵領は、オリバーの実家だし、俺の義父も住んでる。
それに、シリルの後見人はオリバーだから、何かあったら一緒に飛んでくぞ」
「……うん。ありがとう」

わしゃわしゃと頭を撫でると嬉しそうに笑うシリルが可愛い。
これは、将来かなり美形に育つだろうなあ。
植物の研究者としても期待しているが、容姿も良いとなるとちょっぴり心配になる。
……まあ、前例が後見人についているから大丈夫だろ。
性格はオリバーよりかしっかりしてるしな。



オリバーを後見人に、というのは、オリバー自身が言い出したことだ。
これだけすごい植物を作るとなると、貴族の横やりが入ってくると面倒があるということと、植物に関しては、自分以上に知識があるものはいない、と爺さんを説得した。
それに加えて、エリソン侯爵領の貴族であるというのがでかい。
オリバー以上に適役な後見人はいないだろう。

オリバーは、爺さんだけじゃなくて、シリル本人にもちゃんと話をした。
前に特許の申請を行う時は説明せずに進めようとしたことがあったから、今度は本人にもちゃんと告げたのだろう。
前回の失敗から学んだことに、偉いぞーなんて内心オリバーを褒めたが、“後見人”の説明はとっても下手だった。
流石オリバーだ。

『コーケンニンって何?』とシリルはちゃんと聞いてきた。
うん、シリルもシリルで偉い。
わからないことはちゃんと聞いて、納得してから返事をするように言ったが、簡単そうに思えて簡単じゃないよな。
大人でも出来ない奴がいる。

それに対し、オリバーはなんつったと思う?
『後見人とは判断の不十分な者に対し、支援を目的とした保護や権利擁護を行う者を言います。法的手続きや契約に関しても後押しいたしますよ』とぬかした。
小さい子供相手にする説明じゃない。

『……うん』と言って、俺をちらりと見上げてきたシリルは悪くない。
うん、の後は、難しくてちょっとよく分からないを無言で伝えてきた。
オリバーが嬉々として答えるその気持ちまで汲むなんて、シリルはすげーいい子だ。

『シリルが困った時に助けてくれる人のことだ。オリバーは、帝国内で一番植物に詳しいし、特許も沢山持ってる。説明下手だけどな、そこは俺が補うから安心しろ』
そう言うと、安心したように頷いて、『おじちゃん、ありがとう』と無邪気な笑顔で告げたシリルは悪くない。

オリバーは『お、おじちゃっ……』なんて衝撃を受けていたが、シリルからしたら、おじちゃんと言われてもしょうがない。
俺だって、おじちゃんか、兄ちゃんか、迷ったに違いない。

地味に大ダメージを受けてるオリバーがおっかしくって、俺は笑いを吹き出したっけ。
可哀想だから、『次から、オリバー様って言ってやって』とシリルにこっそり耳打ちしておいた。



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