132 / 196
本編
-132- 後見人
しおりを挟む
「お待たせしました」
「おう、親父さんの様子どうだ?」
「かなり体調も回復しているようですし、来週もう一度診てもらって大丈夫なようでしたらここを発つことにことになりました」
「そっか。じゃあ、アレックス様にも連絡しなきゃな」
シリルの研究のこともあるし、ぎりぎりまでこの庭はこのままでいてくれるらしい。
ただ収納するだけだから、時間と場所が決まったら優先してきてくれるという。
で、あっちに着いたころに、向こうの庭に移してくれるらしい。
『同じ状態のままそっくり出すことは出来るから安心してくれ』と何でもないようにおっしゃった。
すげえ、の一言だろ。
ただ、両方とも立ち合いにはオリバーがいることが条件だった。
向こうには転移で連れて行ってくれるらしい。
俺も一緒で問題ない、と。
一体どれだけ一度に転移出来るのか、と思ったが、オリバーに言わせると距離には関係なく体積が関係するという。
アレックス様の場合、ご自身を抜きにしたら三人くらいまでなら楽に往復出来るそうだ。
親父さんの体調も良くなってるんなら、なんとか今月中に移動できそうだな。
「……向こうに行ったら、もう兄ちゃんに会えない?」
シリルが寂しそうな顔で俺を見上げる。
「そんなことはないぞ。
エリソン侯爵領は、オリバーの実家だし、俺の義父も住んでる。
それに、シリルの後見人はオリバーだから、何かあったら一緒に飛んでくぞ」
「……うん。ありがとう」
わしゃわしゃと頭を撫でると嬉しそうに笑うシリルが可愛い。
これは、将来かなり美形に育つだろうなあ。
植物の研究者としても期待しているが、容姿も良いとなるとちょっぴり心配になる。
……まあ、前例が後見人についているから大丈夫だろ。
性格はオリバーよりかしっかりしてるしな。
オリバーを後見人に、というのは、オリバー自身が言い出したことだ。
これだけすごい植物を作るとなると、貴族の横やりが入ってくると面倒があるということと、植物に関しては、自分以上に知識があるものはいない、と爺さんを説得した。
それに加えて、エリソン侯爵領の貴族であるというのがでかい。
オリバー以上に適役な後見人はいないだろう。
オリバーは、爺さんだけじゃなくて、シリル本人にもちゃんと話をした。
前に特許の申請を行う時は説明せずに進めようとしたことがあったから、今度は本人にもちゃんと告げたのだろう。
前回の失敗から学んだことに、偉いぞーなんて内心オリバーを褒めたが、“後見人”の説明はとっても下手だった。
流石オリバーだ。
『コーケンニンって何?』とシリルはちゃんと聞いてきた。
うん、シリルもシリルで偉い。
わからないことはちゃんと聞いて、納得してから返事をするように言ったが、簡単そうに思えて簡単じゃないよな。
大人でも出来ない奴がいる。
それに対し、オリバーはなんつったと思う?
『後見人とは判断の不十分な者に対し、支援を目的とした保護や権利擁護を行う者を言います。法的手続きや契約に関しても後押しいたしますよ』とぬかした。
小さい子供相手にする説明じゃない。
『……うん』と言って、俺をちらりと見上げてきたシリルは悪くない。
うん、の後は、難しくてちょっとよく分からないを無言で伝えてきた。
オリバーが嬉々として答えるその気持ちまで汲むなんて、シリルはすげーいい子だ。
『シリルが困った時に助けてくれる人のことだ。オリバーは、帝国内で一番植物に詳しいし、特許も沢山持ってる。説明下手だけどな、そこは俺が補うから安心しろ』
そう言うと、安心したように頷いて、『おじちゃん、ありがとう』と無邪気な笑顔で告げたシリルは悪くない。
オリバーは『お、おじちゃっ……』なんて衝撃を受けていたが、シリルからしたら、おじちゃんと言われてもしょうがない。
俺だって、おじちゃんか、兄ちゃんか、迷ったに違いない。
地味に大ダメージを受けてるオリバーがおっかしくって、俺は笑いを吹き出したっけ。
可哀想だから、『次から、オリバー様って言ってやって』とシリルにこっそり耳打ちしておいた。
「おう、親父さんの様子どうだ?」
「かなり体調も回復しているようですし、来週もう一度診てもらって大丈夫なようでしたらここを発つことにことになりました」
「そっか。じゃあ、アレックス様にも連絡しなきゃな」
シリルの研究のこともあるし、ぎりぎりまでこの庭はこのままでいてくれるらしい。
ただ収納するだけだから、時間と場所が決まったら優先してきてくれるという。
で、あっちに着いたころに、向こうの庭に移してくれるらしい。
『同じ状態のままそっくり出すことは出来るから安心してくれ』と何でもないようにおっしゃった。
すげえ、の一言だろ。
ただ、両方とも立ち合いにはオリバーがいることが条件だった。
向こうには転移で連れて行ってくれるらしい。
俺も一緒で問題ない、と。
一体どれだけ一度に転移出来るのか、と思ったが、オリバーに言わせると距離には関係なく体積が関係するという。
アレックス様の場合、ご自身を抜きにしたら三人くらいまでなら楽に往復出来るそうだ。
親父さんの体調も良くなってるんなら、なんとか今月中に移動できそうだな。
「……向こうに行ったら、もう兄ちゃんに会えない?」
シリルが寂しそうな顔で俺を見上げる。
「そんなことはないぞ。
エリソン侯爵領は、オリバーの実家だし、俺の義父も住んでる。
それに、シリルの後見人はオリバーだから、何かあったら一緒に飛んでくぞ」
「……うん。ありがとう」
わしゃわしゃと頭を撫でると嬉しそうに笑うシリルが可愛い。
これは、将来かなり美形に育つだろうなあ。
植物の研究者としても期待しているが、容姿も良いとなるとちょっぴり心配になる。
……まあ、前例が後見人についているから大丈夫だろ。
性格はオリバーよりかしっかりしてるしな。
オリバーを後見人に、というのは、オリバー自身が言い出したことだ。
これだけすごい植物を作るとなると、貴族の横やりが入ってくると面倒があるということと、植物に関しては、自分以上に知識があるものはいない、と爺さんを説得した。
それに加えて、エリソン侯爵領の貴族であるというのがでかい。
オリバー以上に適役な後見人はいないだろう。
オリバーは、爺さんだけじゃなくて、シリル本人にもちゃんと話をした。
前に特許の申請を行う時は説明せずに進めようとしたことがあったから、今度は本人にもちゃんと告げたのだろう。
前回の失敗から学んだことに、偉いぞーなんて内心オリバーを褒めたが、“後見人”の説明はとっても下手だった。
流石オリバーだ。
『コーケンニンって何?』とシリルはちゃんと聞いてきた。
うん、シリルもシリルで偉い。
わからないことはちゃんと聞いて、納得してから返事をするように言ったが、簡単そうに思えて簡単じゃないよな。
大人でも出来ない奴がいる。
それに対し、オリバーはなんつったと思う?
『後見人とは判断の不十分な者に対し、支援を目的とした保護や権利擁護を行う者を言います。法的手続きや契約に関しても後押しいたしますよ』とぬかした。
小さい子供相手にする説明じゃない。
『……うん』と言って、俺をちらりと見上げてきたシリルは悪くない。
うん、の後は、難しくてちょっとよく分からないを無言で伝えてきた。
オリバーが嬉々として答えるその気持ちまで汲むなんて、シリルはすげーいい子だ。
『シリルが困った時に助けてくれる人のことだ。オリバーは、帝国内で一番植物に詳しいし、特許も沢山持ってる。説明下手だけどな、そこは俺が補うから安心しろ』
そう言うと、安心したように頷いて、『おじちゃん、ありがとう』と無邪気な笑顔で告げたシリルは悪くない。
オリバーは『お、おじちゃっ……』なんて衝撃を受けていたが、シリルからしたら、おじちゃんと言われてもしょうがない。
俺だって、おじちゃんか、兄ちゃんか、迷ったに違いない。
地味に大ダメージを受けてるオリバーがおっかしくって、俺は笑いを吹き出したっけ。
可哀想だから、『次から、オリバー様って言ってやって』とシリルにこっそり耳打ちしておいた。
55
お気に入りに追加
1,007
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる