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本編
-102- マロングラッセ
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「なあ、おはぎ」
『なあに?アサヒ』
「俺の魔力は67あって、裏番長のスキルがあるから、耐性もあるんだろ?」
『ん』
「けどさ、教会の奴、サミュエルの言いなりになっちまったんだけど、なんで?
そりゃあ最初のちょこっとは抵抗出来たけど、全然歯が立たなかったぞ?
神器の俺より魔力が多いとは思えねえんだけど」
すっかり夕飯を腹いっぱい食ったのに、食後のお茶と茶菓子が普通に食える。
習慣ってマジにすげーな。
今日は、クッキーじゃなくて、マロングラッセだ。
ふんわりブランデーが香る大人の味だ。
めちゃくちゃ美味い。
これもソフィアの手作りで、オリバーとおはぎには酒の香りづけをしていないものが出されてるようだ。
ちょっとだけ色が違う。
『絶対服従のスキル、攻撃耐性あっても、魔力がたくさんあっても普通勝てない』
「うげ、そんなんあんの?」
絶対服従?
なんだそのスキル。
相手の意思関係なく出来るなら敵なしじゃね?
そんな危ねえスキル、国教なのに許してんのか?
すげーイカれてんな。
『でもアサヒ、おはぎいるから大丈夫。安心して』
「そうなのか?」
『ん。おはぎ、もっと強い。次は大丈夫』
「そっかー、ありがとな。おはぎは可愛いのにすげーなあ」
こんなに可愛い姿で、色々魔法が使えて、猫なのに魔法陣まで書ける。
凄くね?
あ、猫じゃないんだっけか。
もふもふの黒毛は、手触りがいい。
心なしか前より毛艶が良くなってる気がする。
「あ、そうだ、オリバー、コナー宛に手紙送りたいから、オリバーの名前貸してくれ」
「…何故?」
あ、不機嫌になった。
以前の俺ならオリバーに言わずに直接送ってた。
でも、オリバーの伴侶であるわけで、その伴侶の俺が、旦那の友人に直接手紙を送るってのは、ちょっとばかり体裁が悪いし、オリバーにしちゃ良い話でもない。
てか、逆にされたら、俺はぜってー怒る、断言していい。
友人の伴侶宛にオリバーが直接手紙を送るなんてことがあったら、良い気分じゃない。
だから、オリバーが内容を確かめてから、出来れば一筆添えて貰い、オリバーに封をしてもらえばいい。
それなら、許容範囲以内だろ。
まあ、俺基準だけどな。
「だってさあ、シリルの件があったから“対価”払ってねえんだもん。
けど、俺が直接コナーに出すのは変だろ?
だから、出来ればオリバーに一筆添えて貰って、オリバーの名前で出してくれねえかなって思って。
俺の名前で出すのはなんか違うしさ」
「ああ、それでしたら、その件が対価そのものですよ。気にしなくていいと思いますけど」
「でも、向こうには一銭の儲けにもなってねえし、貸しとかめちゃくちゃ高くつきそうじゃん。こっちが貸しとくくらいで丁度いいだろ?」
「ですが──」
「俺の気づきを黙っていたくねえの。
いざって時に有利にしておきてえの。
俺がお前の強みを手助け出来て、弱いとこ補える奴だって思わせておきたいんだって。
けど、俺もまだ文章を書くのは不馴れだから、手紙の内容もお前が確認してから一筆添えて欲しい…駄目か?」
「…わかりました」
やっと折れてくれたか、それも渋々だ。
納得は…あんまりしてないみたいだな。
タイラーはなんも顔に出てないし何も言ってこないが、ソフィアは微笑ましく俺らを見守ってる。
「先に戻りますね」
「え?…わかった」
は?
普段、何かと俺といたがるオリバーが先に戻る?
びっくりしすぎて、わかった以外の言葉が出なかった。
てか、なんであんな寂しそうな顔をされなくちゃなんねえんだ。
俺が悪いみたいじゃん。
全然納得いかねえんだけど。
最後のひとくち、マロングラッセを口に入れる。
甘くて美味しいマロングラッセが、何故か苦みが強く感じた。
あんな顔させたくなかったんだけどなあ。
そんなに嫌なら、やっぱり手紙は諦めた方が良いのか?
おはぎのもふもふとした頭を撫でて気を紛らわす。
おはぎは栗も好きらしい。
おかわりした栗を夢中で食べてる。
「アサヒ」
「…はい」
浮かない気分の中、タイラーが俺の名前を呼ぶ。
身構えちまったが、咎めてるわけじゃないようだ。
きっと、俺は情けない顔をしてる。
やっぱ、俺がなんか悪いのか?
「アサヒ、オリバー様宛に手紙を書いてあげてください」
「え?俺がオリバーに?毎日一緒に居んのに?」
「はい。手紙を貰えなくて拗ねてるだけです。オリバー様が言い淀んだ時に、アサヒが話し始めてしまったでしょう?」
「あ…」
そういや、『ですが…』の後、なんか言いかけてたような気もする。
「『ですが、私も貰ったことがないのに』」
「えー…マジで?」
俺の言葉に、タイラーとソフィアは笑いながら頷いてくる。
マジらしい。
確かに手紙をオリバーに渡したことはない。
報告だとか、メモだとか、仕事に関するもんはあったけど、あらためて感謝だとかを文字にしてつらつらと綴ったことは無い。
声に出す方が楽だし、オリバーには、言いたいことは言うって決めてたからだ。
でも、そっか、俺からの手紙が欲しいならくれてやる。
「タイラー、ちょっとだけ良い便箋ある?ここで書いてく」
「お持ちします」
『なあに?アサヒ』
「俺の魔力は67あって、裏番長のスキルがあるから、耐性もあるんだろ?」
『ん』
「けどさ、教会の奴、サミュエルの言いなりになっちまったんだけど、なんで?
そりゃあ最初のちょこっとは抵抗出来たけど、全然歯が立たなかったぞ?
神器の俺より魔力が多いとは思えねえんだけど」
すっかり夕飯を腹いっぱい食ったのに、食後のお茶と茶菓子が普通に食える。
習慣ってマジにすげーな。
今日は、クッキーじゃなくて、マロングラッセだ。
ふんわりブランデーが香る大人の味だ。
めちゃくちゃ美味い。
これもソフィアの手作りで、オリバーとおはぎには酒の香りづけをしていないものが出されてるようだ。
ちょっとだけ色が違う。
『絶対服従のスキル、攻撃耐性あっても、魔力がたくさんあっても普通勝てない』
「うげ、そんなんあんの?」
絶対服従?
なんだそのスキル。
相手の意思関係なく出来るなら敵なしじゃね?
そんな危ねえスキル、国教なのに許してんのか?
すげーイカれてんな。
『でもアサヒ、おはぎいるから大丈夫。安心して』
「そうなのか?」
『ん。おはぎ、もっと強い。次は大丈夫』
「そっかー、ありがとな。おはぎは可愛いのにすげーなあ」
こんなに可愛い姿で、色々魔法が使えて、猫なのに魔法陣まで書ける。
凄くね?
あ、猫じゃないんだっけか。
もふもふの黒毛は、手触りがいい。
心なしか前より毛艶が良くなってる気がする。
「あ、そうだ、オリバー、コナー宛に手紙送りたいから、オリバーの名前貸してくれ」
「…何故?」
あ、不機嫌になった。
以前の俺ならオリバーに言わずに直接送ってた。
でも、オリバーの伴侶であるわけで、その伴侶の俺が、旦那の友人に直接手紙を送るってのは、ちょっとばかり体裁が悪いし、オリバーにしちゃ良い話でもない。
てか、逆にされたら、俺はぜってー怒る、断言していい。
友人の伴侶宛にオリバーが直接手紙を送るなんてことがあったら、良い気分じゃない。
だから、オリバーが内容を確かめてから、出来れば一筆添えて貰い、オリバーに封をしてもらえばいい。
それなら、許容範囲以内だろ。
まあ、俺基準だけどな。
「だってさあ、シリルの件があったから“対価”払ってねえんだもん。
けど、俺が直接コナーに出すのは変だろ?
だから、出来ればオリバーに一筆添えて貰って、オリバーの名前で出してくれねえかなって思って。
俺の名前で出すのはなんか違うしさ」
「ああ、それでしたら、その件が対価そのものですよ。気にしなくていいと思いますけど」
「でも、向こうには一銭の儲けにもなってねえし、貸しとかめちゃくちゃ高くつきそうじゃん。こっちが貸しとくくらいで丁度いいだろ?」
「ですが──」
「俺の気づきを黙っていたくねえの。
いざって時に有利にしておきてえの。
俺がお前の強みを手助け出来て、弱いとこ補える奴だって思わせておきたいんだって。
けど、俺もまだ文章を書くのは不馴れだから、手紙の内容もお前が確認してから一筆添えて欲しい…駄目か?」
「…わかりました」
やっと折れてくれたか、それも渋々だ。
納得は…あんまりしてないみたいだな。
タイラーはなんも顔に出てないし何も言ってこないが、ソフィアは微笑ましく俺らを見守ってる。
「先に戻りますね」
「え?…わかった」
は?
普段、何かと俺といたがるオリバーが先に戻る?
びっくりしすぎて、わかった以外の言葉が出なかった。
てか、なんであんな寂しそうな顔をされなくちゃなんねえんだ。
俺が悪いみたいじゃん。
全然納得いかねえんだけど。
最後のひとくち、マロングラッセを口に入れる。
甘くて美味しいマロングラッセが、何故か苦みが強く感じた。
あんな顔させたくなかったんだけどなあ。
そんなに嫌なら、やっぱり手紙は諦めた方が良いのか?
おはぎのもふもふとした頭を撫でて気を紛らわす。
おはぎは栗も好きらしい。
おかわりした栗を夢中で食べてる。
「アサヒ」
「…はい」
浮かない気分の中、タイラーが俺の名前を呼ぶ。
身構えちまったが、咎めてるわけじゃないようだ。
きっと、俺は情けない顔をしてる。
やっぱ、俺がなんか悪いのか?
「アサヒ、オリバー様宛に手紙を書いてあげてください」
「え?俺がオリバーに?毎日一緒に居んのに?」
「はい。手紙を貰えなくて拗ねてるだけです。オリバー様が言い淀んだ時に、アサヒが話し始めてしまったでしょう?」
「あ…」
そういや、『ですが…』の後、なんか言いかけてたような気もする。
「『ですが、私も貰ったことがないのに』」
「えー…マジで?」
俺の言葉に、タイラーとソフィアは笑いながら頷いてくる。
マジらしい。
確かに手紙をオリバーに渡したことはない。
報告だとか、メモだとか、仕事に関するもんはあったけど、あらためて感謝だとかを文字にしてつらつらと綴ったことは無い。
声に出す方が楽だし、オリバーには、言いたいことは言うって決めてたからだ。
でも、そっか、俺からの手紙が欲しいならくれてやる。
「タイラー、ちょっとだけ良い便箋ある?ここで書いてく」
「お持ちします」
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