98 / 196
本編
-98- 後悔しない選択
しおりを挟む
『アサヒ』
「え?」
急におはぎの声がすぐそばで聞こえてきた。
や、まずいだろ、ここで出てきちゃ駄目だろ。
帝都だと騒ぎになって捕まっちまうかもしれないんだろ?
『今、おはぎの声、アサヒにしか聞こえてない』
「…マジか」
『アサヒ、しゃべらない。アサヒ変に思われる。思ったらおはぎに伝わる』
(マジで?思うだけで?頭ん中で喋れんの?)
『そう。アサヒが思うだけで、おはぎに伝わる。会話できる』
「アサヒ?どうしました?」
「あー…や、大丈夫。これもあとで、家に帰ってから話す」
「そうですか。わかりました」
オリバーは…なんか察してるっぽいな、おはぎが俺と話してるの。
じゃなきゃ、心配が表情に出るもんなあ。
医者とオリバーはそのまま話を進めているが、俺は俺でおはぎと話をしねえと。
『アサヒ、魔力上がるの言っちゃダメ。あの人間たち喋る』
(医者は喋らなくても、あの子の親御さんはなんかの拍子に喋っちまうってことか)
『そう。だから、言っちゃダメ。おはぎが魔法かける』
(ん?)
『おはぎが、あの子に魔法かける』
(どうやって?)
『アサヒの目と声、魔法かけるときだけ借りる』
(そんなんできんの?それって変に思われねえの?)
『このドクター、鑑定得意。アサヒの眷属に、おはぎ見えてる。でも言わない、黙ってる』
(マジか……)
『それに、いい人』
(おはぎが言うのなら、いい人なんだな)
『ん』
(じゃあ、俺がやるって言えばいいんだな。医者もオリバーもそれで察してくれるだろうし)
『ん。アサヒ、暗示はおはぎでも解けない。でも、重ねること出来る』
(了解)
ってことは、俺が暗示をかけることを伝えればいいわけだ。
けど、極力広まるのはまずいわけだから、黙ってくれるよう頼むしかない。
うっかり喋っちまったらそれまでだが、助けられるのに助けないっつー選択肢は俺にはない。
あとは、今後の対策をたてるしかねえだろうなあ。
「先生、オリバー、今回は俺が暗示をかける。
親御さんたちは、俺が暗示をかけたってことは黙っていて欲しい。
それが約束できるならーーー」
「「出来ますっ!」」
ちらりと医者とオリバーを見やると、どちらも複雑そうな顔で俺を見てる。
いや、分かってる。
たぶん、どちらもおはぎを頼るっつー選択肢はなかったはずだ、わかっていても、だ。
俺より全然二人の方が魔法には詳しいだろうし、おはぎが精霊で、色々出来るってこともわかってるだろう。
「アサヒ……」
オリバーが、心配そうな顔をして俺の名前を呼ぶ。
こいつは、苦しんでる赤の他人より俺の小さなリスクを回避する男だ。
他人から見たら薄情な奴だと思われるかもしれない。
けど、俺はそれで構わないと思ってる。
寧ろ、俺を優先するオリバーに満足してる。
愛されてると実感してんだ。
俺も結構頭がイカれてるなって思う。
「だってさあ、助けられるのに助けないってのは、やっぱねえなって思って」
「ですが、今回だけとは限らないでしょう?」
「だから、口止めしたんじゃん」
「同じ状態な人は彼女に限ったことではないんですよ?」
「それは…そうかもしんないけど」
「だったらーーー」
「けど、俺は、目の前に自分が助けられる奴がいて、保身のために黙って何もしない方が絶対後悔するし、後々ずっと引きずる。
だから今回のことは、ただの俺の自己満足だ。
全員何とかしたいとかそんな善意持ち合わせてねえもん」
「ですが……」
オリバーが、ちらりと医者に目を向ける。
あー、そっか、医者への言い訳を考えてんのか。
「先生は、気がついてるらしいから、俺が暗示をかけたって不思議に思わないぞ」
「まあ…そうじゃな。初めから言う気も頼む気もどちらも無かったのは確かじゃ。医者としては失格かもしれん」
「だってよ。それでも駄目か?」
「そ、うですか……わかりました。今回だけですよ?今回だけ、アサヒを頼ります」
オリバーがやっと折れてくれた。
ただ、俺のわがままを通してくれただけっちゃだけなんだが、すげー悔しそうな顔をしてくる。
綺麗な顔が悔しそうに歪んでも綺麗なんだなあ、とか惚けそうになる。
あんま、こう言う顔はさせたくねえんだけど。
「ん。お前がいつも俺を優先してくれるのは、すげー嬉しいし、感謝もしてる。ありがとな」
「っ……はい」
綺麗に笑みをひくオリバーに安心感と優越感を覚えた俺は、早速まだ目を瞑っている少女のそばへと足を進めた。
「え?」
急におはぎの声がすぐそばで聞こえてきた。
や、まずいだろ、ここで出てきちゃ駄目だろ。
帝都だと騒ぎになって捕まっちまうかもしれないんだろ?
『今、おはぎの声、アサヒにしか聞こえてない』
「…マジか」
『アサヒ、しゃべらない。アサヒ変に思われる。思ったらおはぎに伝わる』
(マジで?思うだけで?頭ん中で喋れんの?)
『そう。アサヒが思うだけで、おはぎに伝わる。会話できる』
「アサヒ?どうしました?」
「あー…や、大丈夫。これもあとで、家に帰ってから話す」
「そうですか。わかりました」
オリバーは…なんか察してるっぽいな、おはぎが俺と話してるの。
じゃなきゃ、心配が表情に出るもんなあ。
医者とオリバーはそのまま話を進めているが、俺は俺でおはぎと話をしねえと。
『アサヒ、魔力上がるの言っちゃダメ。あの人間たち喋る』
(医者は喋らなくても、あの子の親御さんはなんかの拍子に喋っちまうってことか)
『そう。だから、言っちゃダメ。おはぎが魔法かける』
(ん?)
『おはぎが、あの子に魔法かける』
(どうやって?)
『アサヒの目と声、魔法かけるときだけ借りる』
(そんなんできんの?それって変に思われねえの?)
『このドクター、鑑定得意。アサヒの眷属に、おはぎ見えてる。でも言わない、黙ってる』
(マジか……)
『それに、いい人』
(おはぎが言うのなら、いい人なんだな)
『ん』
(じゃあ、俺がやるって言えばいいんだな。医者もオリバーもそれで察してくれるだろうし)
『ん。アサヒ、暗示はおはぎでも解けない。でも、重ねること出来る』
(了解)
ってことは、俺が暗示をかけることを伝えればいいわけだ。
けど、極力広まるのはまずいわけだから、黙ってくれるよう頼むしかない。
うっかり喋っちまったらそれまでだが、助けられるのに助けないっつー選択肢は俺にはない。
あとは、今後の対策をたてるしかねえだろうなあ。
「先生、オリバー、今回は俺が暗示をかける。
親御さんたちは、俺が暗示をかけたってことは黙っていて欲しい。
それが約束できるならーーー」
「「出来ますっ!」」
ちらりと医者とオリバーを見やると、どちらも複雑そうな顔で俺を見てる。
いや、分かってる。
たぶん、どちらもおはぎを頼るっつー選択肢はなかったはずだ、わかっていても、だ。
俺より全然二人の方が魔法には詳しいだろうし、おはぎが精霊で、色々出来るってこともわかってるだろう。
「アサヒ……」
オリバーが、心配そうな顔をして俺の名前を呼ぶ。
こいつは、苦しんでる赤の他人より俺の小さなリスクを回避する男だ。
他人から見たら薄情な奴だと思われるかもしれない。
けど、俺はそれで構わないと思ってる。
寧ろ、俺を優先するオリバーに満足してる。
愛されてると実感してんだ。
俺も結構頭がイカれてるなって思う。
「だってさあ、助けられるのに助けないってのは、やっぱねえなって思って」
「ですが、今回だけとは限らないでしょう?」
「だから、口止めしたんじゃん」
「同じ状態な人は彼女に限ったことではないんですよ?」
「それは…そうかもしんないけど」
「だったらーーー」
「けど、俺は、目の前に自分が助けられる奴がいて、保身のために黙って何もしない方が絶対後悔するし、後々ずっと引きずる。
だから今回のことは、ただの俺の自己満足だ。
全員何とかしたいとかそんな善意持ち合わせてねえもん」
「ですが……」
オリバーが、ちらりと医者に目を向ける。
あー、そっか、医者への言い訳を考えてんのか。
「先生は、気がついてるらしいから、俺が暗示をかけたって不思議に思わないぞ」
「まあ…そうじゃな。初めから言う気も頼む気もどちらも無かったのは確かじゃ。医者としては失格かもしれん」
「だってよ。それでも駄目か?」
「そ、うですか……わかりました。今回だけですよ?今回だけ、アサヒを頼ります」
オリバーがやっと折れてくれた。
ただ、俺のわがままを通してくれただけっちゃだけなんだが、すげー悔しそうな顔をしてくる。
綺麗な顔が悔しそうに歪んでも綺麗なんだなあ、とか惚けそうになる。
あんま、こう言う顔はさせたくねえんだけど。
「ん。お前がいつも俺を優先してくれるのは、すげー嬉しいし、感謝もしてる。ありがとな」
「っ……はい」
綺麗に笑みをひくオリバーに安心感と優越感を覚えた俺は、早速まだ目を瞑っている少女のそばへと足を進めた。
26
お気に入りに追加
1,018
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる