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本編
-95- 推察
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行先は、シリルの家から三軒先を曲がって少し進んだところらしい。
シリルの言っていた井戸があるとこを曲がるっぽいな。
俺とオリバーと医者は、シリルの家を出て馬車でその男の家に向かうことになった。
医者も一緒だ。
何もできないが、神殿以外に何か対処法があるなら目で見たい、と言う。
暇なのかと思ったら、開業医で、息子が後を継いでいるからこそ色々動ける人らしい。
当然だが、俺とオリバーが同じ馬車で、医者と尋ねてきた男がもう一方の馬車だ。
「なあ、オリバー、この世界には、美人だと男性を欲しがる奇病っつーのがあるのか?」
「今まだ分かっていませんが、先ほどコナーから相談を受けました。
本当に病気ならなにか策がないか、と」
本当に病気ならってことは、病気じゃねえってことか。
「そういや、選定式ってなんだ?」
「7歳を前に、神殿で魔力鑑定を行うことを、選定の儀と言います。
これは、貴族も平民も関係なく、このクライス帝国の民であれば、全員余すことなく行います。
地方で帝都に行くのが困難な場合は、代理として教会の司祭以上が魔力鑑定を行うこともありますよ。
選定の儀というのは期間が決まっているので、その間帝都はお祭り状態。
毎年たくさんの人が訪れ屋台も出ますから、平民であれどおしゃれをして神殿に行くのがならわしですね」
俺は眠っちまって分からなかったが、神殿では聖玉の間っつーひな壇式の講堂のような場所があるらしい。
子供たちが聖職者に導かれて、聖玉に手をかざし、魔力の種類と魔力量、スキルを測定するのだそうだ。
スキルは後天的なものも多いらしいが、先天的なものも少なくない。
先に知っておくことで、伸ばすことが出来るらしい。
また、極まれにスキルに、加護を持つ者がいるという。
ここ30年は加護持ちは出てきていないようだが、その場合は、貴族平民関係なく、選定の儀の後、教会の保護下に入るっつーんだから酷な話だ。
「30年前は何の加護だったんだ?」
「大地男神の加護と言われています」
「アリアナ教は、女神アリアナ様を信仰する宗教なんだろ?なんで別の神様の加護持ちを保護するんだ?」
「加護持ちの者が予期せぬ事故や事件に巻き込まれると、国の滅亡に繋がることもある、と言われています。
逆にもてなせばもてなすほど、国が安泰すると言われています。それを理由に、保護下に入ります」
「滅亡って…大地震が起きたり、津波が起きたりするってことか?」
「他国で起こったことですが、過去には大地震や大洪水が起こり、それらは加護持ちの死が理由と言われています。
実際のところは、本当かどうかはわかりません。おとぎ話に近い伝承として残されています」
「ふーん…で?今回のことが、なんで選定式、選定の儀?ああ、どっちも一緒か…それと、どういう関係があんの?」
「コナーの話では、ここ三年ほど前から、魔力が高く、裕福な家庭の美少女限定でかかる奇病ある、と聞きました。
初潮を迎えると、高熱が出て異常なほどに男性を欲しがる病だそうです」
「は?待て待て、魔力の高い女は生まれないんだろ?」
魔力の高い女が生まれないから、異世界から人を召喚してるんじゃなかったのか?
前提がおかしいだろ。
「ああ、貴族で言う魔力の高さと、平民で言う魔力の高さには、違いがあるんですよ。
貴族の場合、魔力が高いと言われる者は、20後半からです。
20あれば将来は安泰だと言われていますが、逆に20を下回ると魔力が低く将来が危ぶまれる、と言われます。
平民の場合は、大体が5以下です。10以上あれば、魔力が高い、と言われています。
ですから、ここで言う魔力の高い女性というのは、10以上ってことでしょうね。どんなに多くとも14、5だと思いますよ」
ってことは、貴族には満たないけど、平民にしちゃ魔力が高いってことか。
「医者は匙を投げ、神殿や教会へ助けを求めると、悪魔憑き、もしくは魔女の目覚めと言われ、もれなく神殿送りになるそうです。
毎年多額の寄付金を治療費として請求されるそうですよ。
神殿から出たものはまだいないようですね。
コナーの従妹が、同じ症状で神殿送りになっています」
なんだそれ、めちゃくちゃ怪しいじゃねえか。
や、元からすげー怪しい集団だったし、あんな貞操帯つけるような趣味した連中だ。
グレーじゃねえよ、黒だ真っ黒。
疑いの余地もねえ。
「コナーは随分前から教会を疑い、裏で動いていたようですね。
神殿に自分の商会の者を送り込んでいたようですが、先月から連絡がとれなくなったそうです」
流石コナーだ、商人気質だからか?
欲しいもんがあれば、危ない橋も渡るらしい。
「魅了か?」
「ええ、それに近いものでないか、との考えです。アレックスは、暗示かなにかではないか、と。
初潮をトリガーとする暗示を、選定の儀であたりをつけてかけるのではないか…そう疑っています。
ですが、コナーの話では豪商や裕福な商人ばかり、と聞いていましたが……」
オリバーが考えるようなそぶりを見せるが、金だけが目的ならそんなまどろっこしい真似しなくていい。
これは、もう理由なんて明らかだ。
「それ、たまたま美少女がみんな金持ちの子供だったってことねえの?」
「え?」
「だって金目的なら、魔力量なんて関係ねーじゃん。別に男だってブスだってなんだっていいだろ?それが美人の生娘にかぎるっつーなら、魔力が高く美人な生娘ってのが重要だろ?」
「…魔力が高く美人な生娘、ですか」
「だってそうだろ?金目的なら最初からお貴族様を狙えばいいじゃん。
別に初潮じゃなくたって夢精トリガーにしたっていい話だろ?
悪魔に憑りつかれたって理由で神殿送りにして金せびるだけなら、男だってなんら問題ねーじゃん」
「確かにそうですね」
「それをあえて、平民の美少女で、魔力の10以上を選んでるっつーなら、もう1個しか理由ねえじゃん」
「…因みに、それは?」
この顔はわからないから聞いてるわけじゃなくて、分かってて聞いてる顔だな。
自分の考えと同じかどうか、確かめてんだろ。
もし本当なら非道だ。
「魔力の高い子供を産ませること」
シリルの言っていた井戸があるとこを曲がるっぽいな。
俺とオリバーと医者は、シリルの家を出て馬車でその男の家に向かうことになった。
医者も一緒だ。
何もできないが、神殿以外に何か対処法があるなら目で見たい、と言う。
暇なのかと思ったら、開業医で、息子が後を継いでいるからこそ色々動ける人らしい。
当然だが、俺とオリバーが同じ馬車で、医者と尋ねてきた男がもう一方の馬車だ。
「なあ、オリバー、この世界には、美人だと男性を欲しがる奇病っつーのがあるのか?」
「今まだ分かっていませんが、先ほどコナーから相談を受けました。
本当に病気ならなにか策がないか、と」
本当に病気ならってことは、病気じゃねえってことか。
「そういや、選定式ってなんだ?」
「7歳を前に、神殿で魔力鑑定を行うことを、選定の儀と言います。
これは、貴族も平民も関係なく、このクライス帝国の民であれば、全員余すことなく行います。
地方で帝都に行くのが困難な場合は、代理として教会の司祭以上が魔力鑑定を行うこともありますよ。
選定の儀というのは期間が決まっているので、その間帝都はお祭り状態。
毎年たくさんの人が訪れ屋台も出ますから、平民であれどおしゃれをして神殿に行くのがならわしですね」
俺は眠っちまって分からなかったが、神殿では聖玉の間っつーひな壇式の講堂のような場所があるらしい。
子供たちが聖職者に導かれて、聖玉に手をかざし、魔力の種類と魔力量、スキルを測定するのだそうだ。
スキルは後天的なものも多いらしいが、先天的なものも少なくない。
先に知っておくことで、伸ばすことが出来るらしい。
また、極まれにスキルに、加護を持つ者がいるという。
ここ30年は加護持ちは出てきていないようだが、その場合は、貴族平民関係なく、選定の儀の後、教会の保護下に入るっつーんだから酷な話だ。
「30年前は何の加護だったんだ?」
「大地男神の加護と言われています」
「アリアナ教は、女神アリアナ様を信仰する宗教なんだろ?なんで別の神様の加護持ちを保護するんだ?」
「加護持ちの者が予期せぬ事故や事件に巻き込まれると、国の滅亡に繋がることもある、と言われています。
逆にもてなせばもてなすほど、国が安泰すると言われています。それを理由に、保護下に入ります」
「滅亡って…大地震が起きたり、津波が起きたりするってことか?」
「他国で起こったことですが、過去には大地震や大洪水が起こり、それらは加護持ちの死が理由と言われています。
実際のところは、本当かどうかはわかりません。おとぎ話に近い伝承として残されています」
「ふーん…で?今回のことが、なんで選定式、選定の儀?ああ、どっちも一緒か…それと、どういう関係があんの?」
「コナーの話では、ここ三年ほど前から、魔力が高く、裕福な家庭の美少女限定でかかる奇病ある、と聞きました。
初潮を迎えると、高熱が出て異常なほどに男性を欲しがる病だそうです」
「は?待て待て、魔力の高い女は生まれないんだろ?」
魔力の高い女が生まれないから、異世界から人を召喚してるんじゃなかったのか?
前提がおかしいだろ。
「ああ、貴族で言う魔力の高さと、平民で言う魔力の高さには、違いがあるんですよ。
貴族の場合、魔力が高いと言われる者は、20後半からです。
20あれば将来は安泰だと言われていますが、逆に20を下回ると魔力が低く将来が危ぶまれる、と言われます。
平民の場合は、大体が5以下です。10以上あれば、魔力が高い、と言われています。
ですから、ここで言う魔力の高い女性というのは、10以上ってことでしょうね。どんなに多くとも14、5だと思いますよ」
ってことは、貴族には満たないけど、平民にしちゃ魔力が高いってことか。
「医者は匙を投げ、神殿や教会へ助けを求めると、悪魔憑き、もしくは魔女の目覚めと言われ、もれなく神殿送りになるそうです。
毎年多額の寄付金を治療費として請求されるそうですよ。
神殿から出たものはまだいないようですね。
コナーの従妹が、同じ症状で神殿送りになっています」
なんだそれ、めちゃくちゃ怪しいじゃねえか。
や、元からすげー怪しい集団だったし、あんな貞操帯つけるような趣味した連中だ。
グレーじゃねえよ、黒だ真っ黒。
疑いの余地もねえ。
「コナーは随分前から教会を疑い、裏で動いていたようですね。
神殿に自分の商会の者を送り込んでいたようですが、先月から連絡がとれなくなったそうです」
流石コナーだ、商人気質だからか?
欲しいもんがあれば、危ない橋も渡るらしい。
「魅了か?」
「ええ、それに近いものでないか、との考えです。アレックスは、暗示かなにかではないか、と。
初潮をトリガーとする暗示を、選定の儀であたりをつけてかけるのではないか…そう疑っています。
ですが、コナーの話では豪商や裕福な商人ばかり、と聞いていましたが……」
オリバーが考えるようなそぶりを見せるが、金だけが目的ならそんなまどろっこしい真似しなくていい。
これは、もう理由なんて明らかだ。
「それ、たまたま美少女がみんな金持ちの子供だったってことねえの?」
「え?」
「だって金目的なら、魔力量なんて関係ねーじゃん。別に男だってブスだってなんだっていいだろ?それが美人の生娘にかぎるっつーなら、魔力が高く美人な生娘ってのが重要だろ?」
「…魔力が高く美人な生娘、ですか」
「だってそうだろ?金目的なら最初からお貴族様を狙えばいいじゃん。
別に初潮じゃなくたって夢精トリガーにしたっていい話だろ?
悪魔に憑りつかれたって理由で神殿送りにして金せびるだけなら、男だってなんら問題ねーじゃん」
「確かにそうですね」
「それをあえて、平民の美少女で、魔力の10以上を選んでるっつーなら、もう1個しか理由ねえじゃん」
「…因みに、それは?」
この顔はわからないから聞いてるわけじゃなくて、分かってて聞いてる顔だな。
自分の考えと同じかどうか、確かめてんだろ。
もし本当なら非道だ。
「魔力の高い子供を産ませること」
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