異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

文字の大きさ
上 下
82 / 196
本編

-82- 悪魔憑きと魔女 オリバー視点

しおりを挟む
「コナー、お前、危ない橋を渡りすぎだろ。教会はヤバいだろ、なんでそんなことしたんだ?」

アレックスが咎めるように呟きます。
黒いうわさは昔からありましたが、表向きは唯一無二の国教です。
相手が悪すぎます。

「三年前からかしら?12歳から16歳ほどの、成人になる前の女性がある特定の病にかかる病気が裏で流行ってるの、知ってる?
表立っては病気と言われているけれど、悪魔に憑りつかれただとか、魔女だとか、そう教会には言われているわ」
「いや…俺は知らないな」
「私も、聞いてません。というか、女性だけですか?」
「そう。それも、魔力の高い女性だけよ。流行った、というのは語弊があるわ。本当に一部だけなのだから。
けれど、皆、裕福な商家のお嬢さんや、豪商のお嬢さんなのよ、それも見目美しい女性ばかり。
普通の、ごく一般家庭にだって、いるにはいるでしょ?比較的魔力の高い女性なんて。
そりゃ、数は少ないかもしれないけれど、でも、そんなのおかしいと思わない?」
「その女性たちが療養する場所が、神殿か」

「そう。それもたくさんの寄付を彼女の実家から貰ってね。
話を持ち掛けられたのは、一年半前。体制を整えたのは一年前よ」
「…コナーの従妹が療養していると聞きましたが、もしかして」
「年代が違うわ。流行ってもいなかった。でも、今だに神殿に療養していて、毎年多額の寄付っていう治療費を要求されて、なのに一向に連絡もとれないのはおかしいでしょう?
せめて会わせて欲しいと言っても、まだ憑りつかれている状態だ、教会を疑うのか?って言われたら何も言えなくなったらしいのよ。
疑うのかって疑うに決まってるじゃない、馬鹿にしないでって感じよ」
「可能性があるとすれば、選定の儀、魔力判定の時点で既にあたりをつけて何らかのアクションを起こしているかもしれないな」

アレックスが神妙な顔つきで呟きました。
確かに、見目麗しく、魔力が高い女性のみ、となると不自然気まわりないですね。

「その病というのはどういった症状なのですか?」
「高熱が出て、…異常なほどに欲しがるのだそうよ、男性を」
「12歳から16歳の成人前の子が、ですか?」
「そう、おかしいでしょう?それに、こっそり話を聞けたのよ、神殿送りにならなかった女性にね、接触できたの」
「その女性は、助かったのですか?」
「ええ、今も元気に商売をしているわ。その子の両親は、神殿ではなく、その子の婚約者にすがった。
もとから婚約者がいたそうなのよ、ちゃんとお互いに思い合っていたそうなのだけれど、婚約者の年は7つ上。
当時女性は15歳だったから、相手は渋ったそうね、成人するまでは待つとした誠実な男性だったらしいから。
状況が状況だけれど、若すぎるし負担が大きいもの。
まあ、でも、このままだと神殿送りになり一生外に出られない確率が高いと知って、それなら…と彼女を求められるだけ抱いたそうよ。
そしてあるとき、子を宿した瞬間ね、嘘のように熱が引いて、今まであんなに欲しがったのはなんだったのかしら?と不思議なくらい元に戻ったそうなの」
「だとすると、魅了…や、暗示か?」
「そう思うでしょう?だから調べていたのよ」

「その女性たちはもしかして、初潮を迎えてほどなくしてから病にかかったのではないですか?」

ある種の可能性に私が口を開くと、コナーが私の顔を驚いてみてきます。
ああ、やはり。
こういうことは、何らかのトリガーが必要になるものです。

「その通りよ」
「だとすると、やはり限りなく黒に近いですね」
「でしょう?商業ギルドの間では、すでに教会に疑いを持つ者も多いわ。でも、逆に教会の息のかかった商会も多い。
厄介なのよ、商人の情報網って、素早い上に正確さが売りでしょ?
ここ2年は、見目麗しい商人の女の子が生まれたら、選定の儀が過ぎるまでの間、態とそばかすを入れたり、髪に泥を塗ったりして美しさを隠しているそうよ。
魔力判定を終えて、万が一魔力が高い場合は、年上の婚約者を探しておくの。
今のところそれしかないのだけれど…どう思う?本当に病ならオリバーに、違うならアレックスに何か策がないかと思って」

「病、というのも全く可能性がないわけではないと思います。
あまり知られてはいないと思いますが、過去の文献では、性依存症という病気が実際にあります。
ですが、聞く限りそれとは違う気がしますね」
「因みに、その場合どうするのがいいのかしら?」
「薬療法と、魔力の循環療法で回復します。
多い魔力は必要ありません。ゆっくり微量に流すのが良いとされていますから、両手を取ったり、抱きしめたりするのがいいそうです。薬に関しては魔力の循環を正すことと、精神を落ち着かせるといった効果のものが使われます。
因みに、生活環境や幼少期に体験した影響が及ぼす可能性が高いそうですから、周りの協力が必要になります」
「魔女や悪魔に憑りつかれたっていう説は?」
「私から言わせてもらうと、限りなく可能性は低いんじゃないかと」
「どうしてか聞いてもいいかしら?」
「魔素にあたっただとか、生まれに何かしらの縁があるならともかく、普通の商家のお嬢さんが初潮を迎えて、ある日突然悪魔に憑りつかれたり魔女になったりはしないと思いますよ」
「確かに、そうよね」

「魅了や暗示の魔法を遮るってのは…難しいな。魔法具は作れるが、選定の儀では魔法具はつけられない」
「そうなのよね」
「ユージーンにも聞いてみるか。あいつなら何かいい案が思いつくかもしれないな。
それと、必要なら見た目を変えるっていう魔法具は作れるぞ?」
「そんなこと出来るの?」
「出来るか出来ないかで言ったら、出来る。だが、魔法具だ、外せば一瞬でバレる」
「それでも、肌や髪を痛めるよりはましかもしれないわ」

「コナー、教会と渡り合うには時期が悪すぎる。
従妹の奪還に絞るならともかく、あまり深く首を突っ込まない方が良い。
それこそ皇帝陛下くらいの人間を味方につけないと、まず勝てないだろう」

アレックスが、苦々しい顔で口を開きました。
出来ることならやってる、そう言いたいのでしょう。
蓮君が酷い目に合いましたし、闇属性で追いやられているのも教会のせいですから。

「ええ、そうね……、ねえ、この箱の中身はどうしたらいいかしら?」
「あと一つは探すとして、燃やすのが良いと思いますよ。普通に火で燃えます。生き物の体内に入ることさえ気を付ければ危険でもありませんから」


++++++++
魔力の高い女性と言ってるコナーの言い分に、現在、世界観の矛盾が生じているという誤解を与えてしまってます(><)
後の話で回収しますm(_ _)m
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...