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本編

-76- キャンベル商会の見学

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「どうかされましたか?」
「や、コナー…会長って、俺の歳誤解してるんじゃないかって思って」

エマさんに促されて、足を進めるとまじまじと顔を見てくる。

「因みにおいくつか聞いても?」
「オリバーが28なら、コナー会長も28だろ?俺は27だから、一つしか変わんねえんだけど」
「まあ……」

エマさんが目を丸くして驚いている。
えー、俺年相応じゃねの?
童顔じゃねえと思うんだけど。

「俺はそんなに若く見えんの?」
「お肌が綺麗ですし艶がありますから、5歳ほど若く見えると思います。先ほどの挨拶に、落ち着いているとは思いましたが……戻った時に色々と聞かれるかもしれませんね。
アサヒ様の年をお伝えになるでしょうから、今から覚悟してください」
「えー……でも、そっか。だからか。この子って言われて、子って年でもねえんだけどって思ったんだよな、さっき」
「きっと会長は22、3だと思っておいでかと」

そうか、若く見えるのか。
今までうちに来る商売人やらに、若いのに感心だ、と言われたことはあるが、言う人言う人じーさんだったからな、気が付かなかった。
ってことは、もっと若く見えていたのかもしれない。
今まで、舐められたマネしたことねえけど、今後は若く見えるなら軽く見られちまうこともあるだろうか。
それはちょっと良くないかもしれない。

「隙のないような見事な対応なので心配せずとも大丈夫ですよ。
上からご案内していきますね。
上の部屋は、奥から、会長室、副会長室、応接室が5つございます。
5つのうち先ほどまでいらしたお部屋とそのお隣の2つが特別室となっています。
今開いているのは、こちらのお部屋です」
「さっきより落ち着く部屋だ」

広さ的にも調度品にも安心する。
そりゃあ良い家具だろうし、殺風景ではないくらいに花や絵画があるんだけれど、品があるけど馬鹿高そうな感じはない。

「あら、意外ですわ」
「俺庶民の出だもん。オリバーとの暮らしで慣れてきたとはいえ、さっきの部屋の方が落ち着かない」

くすくすと笑うエマさんに、笑いながら返して、ふ、と視線を感じて一つの絵画に視線を向ける。
帽子を被ったおっさん達が6人並んだ絵だ。
ステッキを持った右から3人目のおっさんが、すげー気になる。
近づいてじっと目を向ける……なんだ、なんか違和感があって、とたん居心地の悪い部屋に思っちまう。

「気になります?」
「うん、この絵の、この人だけすげー気になる」

「素晴らしい感覚ですね。この部屋は、裏から覗ける部屋になっています。この絵の人物を通して…そういう魔道具が隠されています」
「マジか…俺が知っちゃっていいのか?」
「会長が好きに見学させてあげてとおっしゃっていたので大丈夫ですよ。疑惑がある方をお通ししています。
今までこの部屋の違和感に最初から気が付いた方は、私が勤めてから初めてです」

マジか、初めてとか。
スキルって言ったって、そんなスキルはねえから、感覚でしかなかったけど。
おはぎとの訓練で、感覚自体が鋭くなったのかもしれないな。

エマさんが感心したような声で言ってくる。
ちょっと嬉しくなっちまうな。
まあ、紹介にとっては俺であっても見破られたのは良くないんだろうけどさ。

「下の階をご案内しますね」
「うん」

一階は色々な受付と、物品が行き来しているらしい。
吹き抜けの階段を下りていくと、ぱっと見は大きい郵便局といった感じだ。
窓口がいくつかあり、その奥で書類や品を整理している職員が複数働いていて、受付の前のロビーには客で溢れていた。
活気ある場所だ。

「前触れのある貴族のお取引や、クレーム対応は上の応接室で行うことが多いですが、お店や職人の取引は一階の窓口で行うことが殆どです。
手前が新規の取引を希望の窓口が2つ、その奥が元から取引を行っている者の新たな品を希望する窓口が3つ、その奥4つが納品の窓口となっています。
窓口は納品も含めて午後4時までですから、それまではロビーも混雑していますね。
年末を前にしたこの時期は、納品も多いですし、来年に向けた新商品の取引も多く見受けられます」

時期も時期だが、全くの新規の取引より、元からなんらかの取引がある相手をする方が多いようだ。
ピリピリしている取引先の客もいるらしい。
怒鳴るおっさん相手でも、若い女性が冷静で丁寧な対応をしている。
怯まないところが流石だ。
手前から2つ目の窓口ってことは、新規の取引先の窓口だ。
エマさんが動くかと思い視線を向けると、エマさんが奥にいる一人の男性に目を向ける。
下の方で指を振ると、その男性が小さく頷いて窓口に向かう。
優し気で細身の男性だったが、有無を言わさず笑顔で出口まで連れていき、丁寧に頭まで下げている。
どっからあの力がくるんだか知らないが、すげえな。
まるで、タイラーみてえな人だ。

「失礼いたしました。納品は、受取りと商品確認を必ずセットで行っています。
また、商品確認は必ず2名で行うことにしています。
受付に入るのは比較的新しい商会員ですが、商品確認は、5年以上勤めているものを必ず一人つけることにしています」
「なるほど」
「実際間近で見てみましょうか。今丁度ポーションの納品がされるところです。大口の取引先の一つですから量も多いですよ」

エマさんに連れられてポーションの納品をやりとりしている受付裏へと足を運ぶ。
あれは誰だ、とちらほらと視線が入ってくるが、商会員は流石だ。
一度目に入れても、目礼をした後自分の仕事へと戻っていく。

「あ、エマさん。良いところに」
「どうしました?」
「こちらのポーションなのですが…少し品質が落ちている気がして。基準値に満たしているかどうか…どう思いますか?」
「確かに、前回より品質が落ちていますね。理由を聞きましたか?」
「それが、いつもと同じだと言うんです。こちらの箱のこの一列分は以前と同じ品質なのですが」

「なんも変わってませんがねえ。言いがかりは止していただきたい。この時期に値段を下げられちゃたまったもんじゃない」

偉そうなおっさんがふんぞり返ってエマさんともう一人の商会員に大きな声を張り上げている。
趣味が悪いが、高そうなスーツを着ている。ギラギラした時計と、指輪と、大ぶりでビラビラしたクラバットだ。
でっぷりとした体形で、首が短い。
あれじゃクラバットが口元に触れそうだ。
もう一度言うが、すげー趣味が悪い。

俺も横から見せてもらう。
ポーションなら俺のスキルで分かるはずだ。
この世界の薬という薬は、薬草がベースだし、薬草鑑定のスキル意外に調合のスキルもあるから薬となるものならかなり深いところまで鑑定出来る。
ポーションや薬の鑑定に関して、日はまだ浅いが、それなりにちょっとずつ鍛えてきてるんだ。
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