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本編

-46- 再会

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「っ……!?」

こいつ……っいつ来た?どっから!?
全く気がつかなかった!
背が高く、ピンク頭。
逆光だから、多少顔が見づらいものの、エメラルド色のきつい眼差しが特徴的だ。

しかも、あのローブ。
色は違うが、初日にぶっ倒れてた近衛魔道士とかいう連中と同じ作りじゃねぇか!
素早く距離を取り、体勢を整え、魔力を練り上げた。

「あ、悪ぃーーー俺は」

相手は片手をあげて、ばつの悪そうに口を開くが、どっから勝手に入ってきやがった?
『この家は普段私たちしか入れないようになっていますから安心してください』
そう言ってたし、昨夜のなんかの穴はおはぎが塞いだんだろ?
またどっか通れるような穴があいたのか?

威嚇で、つぶてを3つほど作り上げる。

「げ、待て待て、……あー、くっそ」

男が、両手を軽く上げていたが、眼差しがきつくなると同時、俺の作り上げたつぶてが3つとも粉々になった。
こいつ、今何しやがった!?
魔法に関しては、さわりしかしてない俺にとって、こいつを魔法でどうにかするのは厳しい。
しかも、あろうことか奴の立っている位置がすこぶる悪い。
温室を背に俺と対峙してるもんだから、木魔法に頼ることができない上に、威嚇以外の魔法をここで使いたくない。

しかたない、体術に持ち込むしかない。
先手必勝で、間合いをつめる。
刹那、相手の顔が驚きに変わった。
とりあえず蹴り上げようとした、そのとき。

「旭さん!」
『アサヒ、待って!』
「っぶほ」

顔にモフモフしたものがはりついた、おはぎだ。
口ん中におはぎの毛が入っちまった。
おはぎをべりっと引きはがす。

それより……。

「蓮君……え?」

『アサヒ、アレックスいい人』
「いい人?」
『オリバーの友達』
「友達……」

友達でいい人って言ったってめちゃくちゃ怪しい恰好してんじゃねぇか。
蓮君と一緒なのが…ていうか、おはぎもだが、蓮君もどこから来た?
みんなそうぽこぽこ現れることなんてできるのか?

『ん。ここ、アレックスの家』
「は?いまなんつった、おはぎ」
『この家、アレックスの家』
「はあ!?マジで?」

「旭さん、無事でよかった」

蓮君が柔らかな笑顔を向けてくれる。
少し大きめの白いシャツに、くるぶしが見えるほどの黒いズボンを履いていた。
ちゃんとした服を着ている。
服のサイズは合っていないが、髪も服も整えらえていた。
なにより、元気そうだ。

よかった。

「蓮君も。元気そうで安心した。えーと……ってことは、え……っやっべ!」

ちらりと背の高い男をみやると、ばつの悪そうに口元を緩めてくる。
いやいや、マジで?
アレックスの家ってことは、この人が侯爵様ってことになる。
てか、俺、今何した?
3つのつぶてで威嚇して、更に蹴り上げようとした。
誰を?
この家の主の侯爵様を、だ。
やばすぎだろ、え、どうしたらいい?まずいんじゃねえの?
侯爵様ってこんな若いのか?しかもオリバーの友人?聞いてねえ!!
てか、侯爵様ならなんでそんな恰好してんだ、もっとわかりやすく貴族的な服を着てくれよ!

俺が固まってると、口元を緩めたまま男が…いや、侯爵様が俺に話しかけてきた。

「あー、や、こんな格好できたし、いきなり目の前に現れたのも悪かった。
昨夜あんなことがあったんなら、しょうがない。この家の持ち主、アレクサンドラ=エリソンだ。オリバーとは元学友で、彼から君のことは聞いているが……え、けど…まさか」

マジか、本当に侯爵様だった。
これもう、挽回とか無理じゃね?
養子が決まったばっかなのに、クリフォード子爵にもすげー迷惑かけること間違いなしだ……。

「エリソン侯爵様、ご無礼を働き申し訳ありません。
私は、オリバー様の神器となり4日ほど前からこちらでお世話になっております、アサヒ=トウドウと申します」

養子先が決まったとはいえ、正式に決定するのは書類が通ってからだと聞いている。
すぐに受理はされるだろうとの話だが、クリフォードを名乗るわけにはいかない。
あー…どうするかなー……5分くらい前に戻りたい。
まっすぐ綺麗に頭をさげると、おはぎが腿のあたりに抱き着いてくる。
あいかわらず可愛いな、おはぎ。
この可愛さで、なんとか誤魔化されねえかな?

『アサヒ、元気出す。大丈夫、アレックス、優しい』
「うん、アレックスはすごく優しい人だよ、旭さん。大丈夫、怒ってないよ。ね?」
「あ、ああ、俺のことはアレックスと呼んでくれ」
「はい、では、アレックス様、私のことはアサヒ、と」
「ああ。楽に話してくれて構わな……あーじゃなくて、や、それは良いんだ。けど……それより……」
「…アレックス?どうしたの?」

なんだ?随分驚いて俺とおはぎを見てる。
あー……おはぎに驚いてんのか。
オリバーのやつもすげー驚いてたもんな。
なんだっけ、おはぎの種類って。
オリバーがなんとかっていう妖精だって言ってたが、“そのなんとか”が思い出せない。
俺にはどーでもいーと思っちまったせいだ。

「旭さん、そのすごく可愛いね?」

蓮君が、おはぎを目にしてぱあと明るく笑う。
おーすげーな。
凄い美人が笑顔だと、凄い威力がある。
蓮君が俺とおはぎの方まで来ると、しゃがんで、両手を軽く広げた。
おはぎがその両手に両手をのせる。
美人に可愛い猫、いい絵になるなあ、癒されるわ。

「だろ?おはぎって言うんだ」
「はじめまして、僕はレン。旭さんの友達だよ。仲良くしてね」
『レン、アサヒの友達?』
「うん、そう、友達。僕もおはぎって呼んでもいい?」
『ん。いいよ』
「ありがとう、おはぎ。っ旭さん、凄いね、こっちの猫は二足歩行でお話も出来るんだね!さすが異世界。
旭さんがおはぎって名前をつけたの?」
「そ、丸まったらおはぎみたいだなって思って。丸まったとこ見たことないけどな。
けどさ、そうだよな?蓮君だって、そう思うよな?こっちの猫は二足歩行で話も出来てすげーな異世界って思うよな?」
「え?うん、元の世界じゃアニメや漫画の中でしかなかったもん」
「だよな!」

ほらー俺の感覚は間違っちゃいなかった!
元の世界の人間にとっちゃ常識的な感想だった!

「あー、レン、そいつはたぶん、猫じゃない」
「え?こっちの世界では猫って言わないなら、なんて言うの?」
「や、猫は猫って言うぞ、こっちでも。じゃ、なくてだな…」

エリソン様……じゃなくて、アレックス様、少しずつ復活してくれたようだ。
オリバーと同じくらい驚いていらっしゃるようだ。
蓮君へのおはぎの説明に困られている。


「アサ……、アレックス!そっちに来られたのですか?」

オリバーが家の方からやってきた。
おせーよ!もう少し早く来い!って思ったが、俺が先に一人で向かうって言っちまったんだった。
十分に早い…っていうか、時間的に部屋に行って戻ってきた、くらいの時間じゃねえのか?

「オリバー、悪い、この時間なら温室の方にいるかと思って。急に目の前に出ちまったから、アサヒを驚かせた」
「アサヒ、この方は、私の元学友で親友の、アレックスです」
「うん、聞いた、今」

聞いた、それは。けどな。

「なあ、オリバー…俺、侯爵様がお前の親友だって聞いてないんだけど」
「え?……あー、言ってませんでしたっけ?」
「聞いてない。それと、お前、今日アレックス様が来られるって知ってたのか?」
「あ、すみません。それを言い忘れていたのを先ほど思い出して」

マジか。



+++++++++
異世界に召喚された二世俳優~と、おなじ時間軸で進めるつもりが、1日先行してしまいました(><)
ですが、このまま進めて行こうと思います。
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感想 20

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