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本編
-42- お約束の流れ
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魔力の高い女性のことが気になって…や、違うな。
俺自身の身の危うさや、俺が子供を産める身体であっても男だからってことが、俺を臆病にしたからだ。
最後にあっちの世界で振られた理由を、心の中ではまだ少しだけ引きずってたのかもしれない。
そっちをさきに聞いてしまったからか、結局国の制度のさわりを少し聞いただけで終わっちまった。
3日半で教わったことは属性に関する相性問題と、魔法の使い方が主。
オリバーの持ってる木属性は、火と相性が悪く、水、木、土と相性が良いんだそうだ。木属性は親父さんから引き継いだものだな。
これから魔法の使い方は、おはぎ先生が色々と教えてくれるようだ。
オリバー先生の説明は、まあ分かりにくいからなあ。
植物と調合に関することはオリバーから学び、魔法そのものはおはぎに学ぶのがよさそうだ。
帳簿や仕事に関する書類の見方も教わったが、そっちはなんとかなりそうだ。
文字が読めるのがありがたかったし、帳簿にしたって、向こうの世界の家計簿に、毛が生えたようなもんだった。
アプリも、パソコンも、電卓すらない。
数字の計算に関しては目が痛くなるし、めちゃくちゃ面倒だ。
まだ、『アバカス』があるだけよかった。
いわゆる、そろばんだ。
こっちの世界も10進法であるらしいのがせてめてもの救いだった。
それしかないのが逆に問題な気もするが、それしかないんだからしょうがない。
何代か前の神器様がぽろっとこぼしたのをきっかけに広まったようだ。
そろばんじゃなくて、アバカスって名前になったんなら、そいつは日本人じゃなさそうだな。
タイラーもアバカスを器用にはじく。
俺も幼少期にそろばんを習っていたからすぐになじんだが、魔法があるのに電卓もないなんて、進んでるんだか進んでないんだか。
マジか…すげー原始的だ、と愚痴をこぼしてそろばんをはじいたら、タイラーが使えることに驚いてたな。
まあ、学校ではさわりだけ教わって終了、だったからなあ。
俺の年でそろばんに慣れてるなんて、一部かもしれない。
この先、交渉先で必要になることもあるから、とタイラーから受け取った俺のアバカスは、少し明るめの色をしていて木目がとても美しかった。
綺麗な水色の高そうな箱に入っていた。
艶のある琥珀色の革ケースつきだった。
先ほど、ワグナー子爵、オリバーの親父さんから届いたそうだ。
なんかすげー高そうだが、そろばんなんて慣れて使わないとなんの意味も持たないから、ありがたく使わせてもらおう。
「アサヒ、そろそろお昼ですよ」
書斎の扉をノックもせず、さも当然のように開いて、オリバーがやってきた。
そして、ハグーーーからの、キス。
もう、お約束の流れだ。
ダイニングで待ってればいいものを、待ちきれなかったんだろう。
書斎といっても侯爵家の書斎だ、めちゃくちゃ本があるし、広い。
今日はここまでか。
帝国の歴史についての本を借りて、今日はおしまいだ。
歴史の本といっても、学生向けのもので、挿絵が入っている読みやすそうなものだ。
触れるだけのキスを落としたオリバーに、再度口づけを深くする。
だってすげー疲れてそうだったから。
こんなんで魔力が回復するならいくらでもしてやる。
これも、俺の中での、お約束な流れだ。
「っ…すみません」
「いーよ、謝んなくて。俺がしたかっただけだ。気分は?」
「最高です」
そうじゃない、魔力は回復したのかってのを聞きたかった。
満足げに綺麗な笑みを浮かべるんじゃない。
抱擁が…、や、もう、これは拘束だな、さらに強くなる。
「ぐえっ…あーもう、行くんだろ」
「はい、行きましょう。今日のお昼は、シチューとオムレツだそうですよ」
「そりゃ楽しみだな」
オリバーの好きなものだろう。
10時のおやつがオリバーの好みじゃなかったから、ソフィアが気をつかったのかもしれない。
感極まって抱き着いてくるオリバーをそのまま引きずるようにダイニングに向かう。
すげー歩きにくいが、まあ、悪くもない。
タイラーが微笑ましくついてくるのが分かった…本当に出来たやつだな。
俺自身の身の危うさや、俺が子供を産める身体であっても男だからってことが、俺を臆病にしたからだ。
最後にあっちの世界で振られた理由を、心の中ではまだ少しだけ引きずってたのかもしれない。
そっちをさきに聞いてしまったからか、結局国の制度のさわりを少し聞いただけで終わっちまった。
3日半で教わったことは属性に関する相性問題と、魔法の使い方が主。
オリバーの持ってる木属性は、火と相性が悪く、水、木、土と相性が良いんだそうだ。木属性は親父さんから引き継いだものだな。
これから魔法の使い方は、おはぎ先生が色々と教えてくれるようだ。
オリバー先生の説明は、まあ分かりにくいからなあ。
植物と調合に関することはオリバーから学び、魔法そのものはおはぎに学ぶのがよさそうだ。
帳簿や仕事に関する書類の見方も教わったが、そっちはなんとかなりそうだ。
文字が読めるのがありがたかったし、帳簿にしたって、向こうの世界の家計簿に、毛が生えたようなもんだった。
アプリも、パソコンも、電卓すらない。
数字の計算に関しては目が痛くなるし、めちゃくちゃ面倒だ。
まだ、『アバカス』があるだけよかった。
いわゆる、そろばんだ。
こっちの世界も10進法であるらしいのがせてめてもの救いだった。
それしかないのが逆に問題な気もするが、それしかないんだからしょうがない。
何代か前の神器様がぽろっとこぼしたのをきっかけに広まったようだ。
そろばんじゃなくて、アバカスって名前になったんなら、そいつは日本人じゃなさそうだな。
タイラーもアバカスを器用にはじく。
俺も幼少期にそろばんを習っていたからすぐになじんだが、魔法があるのに電卓もないなんて、進んでるんだか進んでないんだか。
マジか…すげー原始的だ、と愚痴をこぼしてそろばんをはじいたら、タイラーが使えることに驚いてたな。
まあ、学校ではさわりだけ教わって終了、だったからなあ。
俺の年でそろばんに慣れてるなんて、一部かもしれない。
この先、交渉先で必要になることもあるから、とタイラーから受け取った俺のアバカスは、少し明るめの色をしていて木目がとても美しかった。
綺麗な水色の高そうな箱に入っていた。
艶のある琥珀色の革ケースつきだった。
先ほど、ワグナー子爵、オリバーの親父さんから届いたそうだ。
なんかすげー高そうだが、そろばんなんて慣れて使わないとなんの意味も持たないから、ありがたく使わせてもらおう。
「アサヒ、そろそろお昼ですよ」
書斎の扉をノックもせず、さも当然のように開いて、オリバーがやってきた。
そして、ハグーーーからの、キス。
もう、お約束の流れだ。
ダイニングで待ってればいいものを、待ちきれなかったんだろう。
書斎といっても侯爵家の書斎だ、めちゃくちゃ本があるし、広い。
今日はここまでか。
帝国の歴史についての本を借りて、今日はおしまいだ。
歴史の本といっても、学生向けのもので、挿絵が入っている読みやすそうなものだ。
触れるだけのキスを落としたオリバーに、再度口づけを深くする。
だってすげー疲れてそうだったから。
こんなんで魔力が回復するならいくらでもしてやる。
これも、俺の中での、お約束な流れだ。
「っ…すみません」
「いーよ、謝んなくて。俺がしたかっただけだ。気分は?」
「最高です」
そうじゃない、魔力は回復したのかってのを聞きたかった。
満足げに綺麗な笑みを浮かべるんじゃない。
抱擁が…、や、もう、これは拘束だな、さらに強くなる。
「ぐえっ…あーもう、行くんだろ」
「はい、行きましょう。今日のお昼は、シチューとオムレツだそうですよ」
「そりゃ楽しみだな」
オリバーの好きなものだろう。
10時のおやつがオリバーの好みじゃなかったから、ソフィアが気をつかったのかもしれない。
感極まって抱き着いてくるオリバーをそのまま引きずるようにダイニングに向かう。
すげー歩きにくいが、まあ、悪くもない。
タイラーが微笑ましくついてくるのが分かった…本当に出来たやつだな。
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