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本編
-35- 裏番長
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「え?…嘘だろ?」
「いいえ、本当のことです」
「マジで?」
「ええ、マジでございます」
何の話が嘘か本当か、マジなのかって、オリバーの腕っぷしが全く、全然、これっぽっちもなくて、駄目駄目で、0だって話だ。
昨夜のこともあって、朝の水やり後にタイラーがこっそり俺を裏庭横に呼んだ。
朝食を食べ終わってすぐは植物に水をやり、その後オリバーは午前中の早い時間に研究結果をまとめるのが日課だ。
研究結果をまとめるときは、俺がいたら邪魔になるから…あー、いてほしいと言われたけれど、進み具合が悪くなるのは目に見えている。
だから昨日、せめて一時間半は一人でしっかり集中するように言ったんだ。
そしたら、集中力もペースもあがったっつー話だから、笑えるよなあ。
で。そのオリバーが、今日も研究結果をまとめるのに集中しているだろうこの時間、タイラーからやつの衝撃の事実を知ったのが今。
「は?え、だって、あのタッパと腹筋と腕でからっきしって、信じらんねえんだけど」
「あの身体は鉢植えで鍛えられたものです」
「嘘だろ?」
「本当です」
「けどさ、蔓くらい使えるだろ?初めてでも俺にだって出来たんだから」
「いいえ…オリバー様はとても植物に好かれるたちでして」
「ああ、まあ、俺から見てもすげー好かれてると思う」
実際、花も木もすごく健康だし、オリバーに声をかけられて喜んでるように見えるんだよなあ。
はたから見たら、植物に話しかけるなんて引く奴もいるかもしねえけど、なんていうか、オリバーに関してはあってるっつーか。
それが、普通の日常で、特別だとかいう感じがしない。
夢見がちに感じないのは、研究の結果を出しているからだろうか。
「ですから、蔓を出されても、絡まるのはオリバー様です」
「…なるほど」
自分で出して自分で絡まっていたら世話がない。
「なので、出来ればアサヒが自分の身だけでなく、オリバー様も守れるといいのですが。
アサヒは、実際、どれほど動けますか?」
「え?うーん…どうだろ?」
「昨夜はかなり手際が良いように見えましたが」
「あー、あれはおはぎのフォローがあったからで」
「おはぎさんが?」
「うっかり口塞ぐのを忘れて、魔法使われそうになっちまって。
そしたら、おはぎがどっからか葉っぱをだして塞いでくれたんだ。
オリバーもタイラーもソフィアだって魔法使う時呪文?なんか唱えたりとかしないじゃん?
言ったとしてさ、ソフィアの、はい、とか、それっ、とかそんなんだし。
俺もそれに倣ったから、すっかり忘れてて」
あれがなかったら、俺は奴の何らかの魔法でやられてただろうな。
おはぎさまさまだ。
「おはぎさんと言えば、ちょっと確かめたいことがるので呼んでもらえますか?」
「え?おはぎに?…そういや、どこ行ったんだろ」
「アサヒが呼べば来ますよ」
「?…おはぎーどこー?」
タイラーがさも当然のように言うから、おはぎを呼ぶと、太腿あたりにもにっとした感覚が。
おはぎだ。
本当に来た、えー今、どっからきた?
『なーに、アサヒ』
まん丸の目で見上げてくる。
可愛いな、まあどっからきたかなんていいか。
「タイラーが確かめたいことがあるんだって」
『ん。何?』
「裏門の横にある小さな魔法陣は、おはぎさんが書いたものですか?」
『ん、そう。あそこから昨日来た。あそこだけ穴が空いてたから塞いだ』
「そうですか、ありがとうございます」
『でも、あんまり持たない。それに、空きそうなところ他にもある。
上書きするか、作り変えたほうがいい。じゃないとまた変なの来る』
「やはり…そうですか。
侯爵様に相談しましょう。因みに、あの魔法陣はどのくらい持ちますか?」
『3日くらい』
「わかりました」
俺にはちゃんと把握できないが、穴があってそっから昨日の奴らがやってきたと。
その穴を魔法陣でふさいだのがおはぎってことだってことは、わかった。
おはぎ、魔法陣まで書けるのか。すげーな。
「…ということで、アサヒ。この時間は、今日から訓練にあてましょう」
「訓練?」
「ええ、昨日みたいなことがあった時のための、訓練です」
「タイラーとやんの?」
「そうですね……」
訓練はいいけどさ、タイラーとっていうのが。
や、昨日の連中を引っ張ってくのをみたら、きっと俺より強いんだとは思うんだけれど、いったって60歳越えてるの相手に本気出すのはちょっと……。
なんかあったら、困るしさ。
『大丈夫、おはぎが訓練する』
「おはぎさんが?」
「え?おはぎがやんの?」
『ん』
おはぎ相手に?こんなもふもふで可愛いの相手に蹴りとかいれんのか?
動物虐待にならねえか?それ。
そんな不安が一瞬よぎるが、おはぎは得意そうに大きく頷いてくる。
『コレ使う!』
これってなんだ?って思うと同時、おはぎがどこからか木の枝を一本だした。
器用に肉球の手でつかんでいる。
その手を、指さし…や、肉球さしか?確認するように地面に向けて大きく5回ふると、俺と同じくらいの土人形が5人出来上がった。
なんだこりゃ…すげーな、おはぎ。
「ああ、いいですね、素晴らしいです!では、おはぎさん、頼みますね」
『任せて。大丈夫。アサヒ、裏番長、もともと強いし、耐性もある!魔法合わせたらもっと強くなれる!』
「ぬあっ!?」
え、裏番長?なんでおはぎが知ってんだ!?
「なるほど…裏番長っていうのは、そういうスキルなのですか」
「えー…そんなの、俺のスキルにあったの?」
「異世界でしかわからないスキルもあるのですよ。特に気にはしていませんでしたが…良いスキルですね、アサヒ」
「それ、他の奴にいわないで、タイラー」
裏番長なんて、若気の至りっつーか、なんか、こんな年で言われるのなんて、すげー恥ずかしいだろ。
「いいえ、本当のことです」
「マジで?」
「ええ、マジでございます」
何の話が嘘か本当か、マジなのかって、オリバーの腕っぷしが全く、全然、これっぽっちもなくて、駄目駄目で、0だって話だ。
昨夜のこともあって、朝の水やり後にタイラーがこっそり俺を裏庭横に呼んだ。
朝食を食べ終わってすぐは植物に水をやり、その後オリバーは午前中の早い時間に研究結果をまとめるのが日課だ。
研究結果をまとめるときは、俺がいたら邪魔になるから…あー、いてほしいと言われたけれど、進み具合が悪くなるのは目に見えている。
だから昨日、せめて一時間半は一人でしっかり集中するように言ったんだ。
そしたら、集中力もペースもあがったっつー話だから、笑えるよなあ。
で。そのオリバーが、今日も研究結果をまとめるのに集中しているだろうこの時間、タイラーからやつの衝撃の事実を知ったのが今。
「は?え、だって、あのタッパと腹筋と腕でからっきしって、信じらんねえんだけど」
「あの身体は鉢植えで鍛えられたものです」
「嘘だろ?」
「本当です」
「けどさ、蔓くらい使えるだろ?初めてでも俺にだって出来たんだから」
「いいえ…オリバー様はとても植物に好かれるたちでして」
「ああ、まあ、俺から見てもすげー好かれてると思う」
実際、花も木もすごく健康だし、オリバーに声をかけられて喜んでるように見えるんだよなあ。
はたから見たら、植物に話しかけるなんて引く奴もいるかもしねえけど、なんていうか、オリバーに関してはあってるっつーか。
それが、普通の日常で、特別だとかいう感じがしない。
夢見がちに感じないのは、研究の結果を出しているからだろうか。
「ですから、蔓を出されても、絡まるのはオリバー様です」
「…なるほど」
自分で出して自分で絡まっていたら世話がない。
「なので、出来ればアサヒが自分の身だけでなく、オリバー様も守れるといいのですが。
アサヒは、実際、どれほど動けますか?」
「え?うーん…どうだろ?」
「昨夜はかなり手際が良いように見えましたが」
「あー、あれはおはぎのフォローがあったからで」
「おはぎさんが?」
「うっかり口塞ぐのを忘れて、魔法使われそうになっちまって。
そしたら、おはぎがどっからか葉っぱをだして塞いでくれたんだ。
オリバーもタイラーもソフィアだって魔法使う時呪文?なんか唱えたりとかしないじゃん?
言ったとしてさ、ソフィアの、はい、とか、それっ、とかそんなんだし。
俺もそれに倣ったから、すっかり忘れてて」
あれがなかったら、俺は奴の何らかの魔法でやられてただろうな。
おはぎさまさまだ。
「おはぎさんと言えば、ちょっと確かめたいことがるので呼んでもらえますか?」
「え?おはぎに?…そういや、どこ行ったんだろ」
「アサヒが呼べば来ますよ」
「?…おはぎーどこー?」
タイラーがさも当然のように言うから、おはぎを呼ぶと、太腿あたりにもにっとした感覚が。
おはぎだ。
本当に来た、えー今、どっからきた?
『なーに、アサヒ』
まん丸の目で見上げてくる。
可愛いな、まあどっからきたかなんていいか。
「タイラーが確かめたいことがあるんだって」
『ん。何?』
「裏門の横にある小さな魔法陣は、おはぎさんが書いたものですか?」
『ん、そう。あそこから昨日来た。あそこだけ穴が空いてたから塞いだ』
「そうですか、ありがとうございます」
『でも、あんまり持たない。それに、空きそうなところ他にもある。
上書きするか、作り変えたほうがいい。じゃないとまた変なの来る』
「やはり…そうですか。
侯爵様に相談しましょう。因みに、あの魔法陣はどのくらい持ちますか?」
『3日くらい』
「わかりました」
俺にはちゃんと把握できないが、穴があってそっから昨日の奴らがやってきたと。
その穴を魔法陣でふさいだのがおはぎってことだってことは、わかった。
おはぎ、魔法陣まで書けるのか。すげーな。
「…ということで、アサヒ。この時間は、今日から訓練にあてましょう」
「訓練?」
「ええ、昨日みたいなことがあった時のための、訓練です」
「タイラーとやんの?」
「そうですね……」
訓練はいいけどさ、タイラーとっていうのが。
や、昨日の連中を引っ張ってくのをみたら、きっと俺より強いんだとは思うんだけれど、いったって60歳越えてるの相手に本気出すのはちょっと……。
なんかあったら、困るしさ。
『大丈夫、おはぎが訓練する』
「おはぎさんが?」
「え?おはぎがやんの?」
『ん』
おはぎ相手に?こんなもふもふで可愛いの相手に蹴りとかいれんのか?
動物虐待にならねえか?それ。
そんな不安が一瞬よぎるが、おはぎは得意そうに大きく頷いてくる。
『コレ使う!』
これってなんだ?って思うと同時、おはぎがどこからか木の枝を一本だした。
器用に肉球の手でつかんでいる。
その手を、指さし…や、肉球さしか?確認するように地面に向けて大きく5回ふると、俺と同じくらいの土人形が5人出来上がった。
なんだこりゃ…すげーな、おはぎ。
「ああ、いいですね、素晴らしいです!では、おはぎさん、頼みますね」
『任せて。大丈夫。アサヒ、裏番長、もともと強いし、耐性もある!魔法合わせたらもっと強くなれる!』
「ぬあっ!?」
え、裏番長?なんでおはぎが知ってんだ!?
「なるほど…裏番長っていうのは、そういうスキルなのですか」
「えー…そんなの、俺のスキルにあったの?」
「異世界でしかわからないスキルもあるのですよ。特に気にはしていませんでしたが…良いスキルですね、アサヒ」
「それ、他の奴にいわないで、タイラー」
裏番長なんて、若気の至りっつーか、なんか、こんな年で言われるのなんて、すげー恥ずかしいだろ。
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