22 / 196
本編
-22- おはぎは猫じゃない
しおりを挟む
「あらあら、今日は猫ちゃんも一緒に食べるのね」
ソフィアがにこにこした顔で、5枚の皿を用意し始め、タイラーが椅子をもう一つ追加して持ってきた。
この家では、夕食だけみんなで同じものをとることにしている。
テーブルもハーフサイズだ。あんなでーんと長いテーブルじゃ話をするのも距離が遠くてかなわない。
最初はタイラーにとんでもないと遠慮されたが、俺がそうしたいと言ったらそうなった。
給仕されるのは慣れないから、朝食後と、3時のお茶の時間だけにしてもらっている。
様付けもやめてもらった。
敬語はしょうがなくだ、あんまり畏まられるのはやめてほしい、とお願いした。
だって、なんかすげー居心地悪いんだもん。
「うん、急に増えてごめん。あ、ソフィア手伝うよ」
「大丈夫ですよ、猫ちゃん一匹くらい。ふふっいつも助かります、そんなことアサヒにしてもらうことじゃないですのに」
「いーのいーの、俺一般庶民の出だから。
あ、あと、おはぎって名前にしたから、ソフィアもそう呼んでやって」
「まあ、おはぎ。いい名前を貰ってよかったわね」
ぼーっとつったってるオリバーは無視だ無視。
なんだ、こいつさっきから。
「えーと……、ソフィア、この猫知ってるの?」
「?よく裏庭でお茶してると来ますのよ、オリバー様が侯爵様から預かったのでは?」
「私は知らない」
「あらまあ…どこかで飼われてるのかしら?」
「えー?でも、俺のことご主人様って言ってきたよ?この家の猫だろ?
アサヒって呼ぶように言ったけどさ、それに…名前、つけちゃったよ?」
「…ご主人様ですか、あー…名前、つけちゃったんですよね……」
「もうなんだよ、さっきから!いいだろ、猫の一匹や二匹!」
「猫じゃないんですよ!」
へ?
猫じゃない?
「猫だろ?」
「二足歩行の猫がいますか?いないでしょう!」
「…ここにいる」
「だから、猫じゃないんです!猫は喋らないし、二足歩行では歩きません!常識でしょう!」
「…………」
あーなんだよ……常識?常識ねぇ…常識だ?
クッソむかつく。
「常識ってさ、……俺ここにきてまだ3日目なんだけど。
今まで魔法自体なかったんだ、猫が二足歩行で歩いたって喋ったってそういうもんだって思ったって仕方ないだろ?
大体、常識非常識言われたら、男が妊娠出来る方がよっぽど非常識だろーが」
むすっとして言えば、オリバーははっと息を飲んで眉を下げてくる。
怒鳴り散らさず、冷ややかに言ったからかもしれない。
けど、常識って言葉は……今の俺にすげーささって痛い。
「……すみません」
「すげー傷ついたから、なぐさめて」
ごめんなさい、機嫌直して、と頬と目元の黒子あたりと唇にキスが降ってくる。
オリバーが所かまわず口づけるから、3日目にしてタイラーとソフィアの前では慣れたものだ。
少しずつイライラも収まる。
こいつの匂い、マジで落ち着くし…、キスも、まあ、優しいし…嬉しい。
「でも、アサヒ。結構…いえ、かなり、内緒にしないとというか、領主様に相談案件、なくらいには大事なんですよ?」
「なんで?」
「ケットシー、彼は妖精です。帝国で妖精は伝説、ドラゴンと同じくらいおとぎ話なんですよ。
あーしかも、アサヒ、契約までしちゃって……どうしましょう」
「?妖精?おはぎ、羽生えてないし、もふもふしてんじゃん。妖精はないよ、なー?」
おはぎに同意を求めると、器用にスプーンを持って見上げてくる。
おー肉球で持てるのか、すげーな。
『アサヒ、ご飯、食べていい?アサヒも一緒』
「おー、一緒に食おうぜ、せっかくの料理がさめちまう。オリバーも。…なんか交渉が必要なら後でちゃんと聞くから、先食おう?」
「…はい」
ソフィアがにこにこした顔で、5枚の皿を用意し始め、タイラーが椅子をもう一つ追加して持ってきた。
この家では、夕食だけみんなで同じものをとることにしている。
テーブルもハーフサイズだ。あんなでーんと長いテーブルじゃ話をするのも距離が遠くてかなわない。
最初はタイラーにとんでもないと遠慮されたが、俺がそうしたいと言ったらそうなった。
給仕されるのは慣れないから、朝食後と、3時のお茶の時間だけにしてもらっている。
様付けもやめてもらった。
敬語はしょうがなくだ、あんまり畏まられるのはやめてほしい、とお願いした。
だって、なんかすげー居心地悪いんだもん。
「うん、急に増えてごめん。あ、ソフィア手伝うよ」
「大丈夫ですよ、猫ちゃん一匹くらい。ふふっいつも助かります、そんなことアサヒにしてもらうことじゃないですのに」
「いーのいーの、俺一般庶民の出だから。
あ、あと、おはぎって名前にしたから、ソフィアもそう呼んでやって」
「まあ、おはぎ。いい名前を貰ってよかったわね」
ぼーっとつったってるオリバーは無視だ無視。
なんだ、こいつさっきから。
「えーと……、ソフィア、この猫知ってるの?」
「?よく裏庭でお茶してると来ますのよ、オリバー様が侯爵様から預かったのでは?」
「私は知らない」
「あらまあ…どこかで飼われてるのかしら?」
「えー?でも、俺のことご主人様って言ってきたよ?この家の猫だろ?
アサヒって呼ぶように言ったけどさ、それに…名前、つけちゃったよ?」
「…ご主人様ですか、あー…名前、つけちゃったんですよね……」
「もうなんだよ、さっきから!いいだろ、猫の一匹や二匹!」
「猫じゃないんですよ!」
へ?
猫じゃない?
「猫だろ?」
「二足歩行の猫がいますか?いないでしょう!」
「…ここにいる」
「だから、猫じゃないんです!猫は喋らないし、二足歩行では歩きません!常識でしょう!」
「…………」
あーなんだよ……常識?常識ねぇ…常識だ?
クッソむかつく。
「常識ってさ、……俺ここにきてまだ3日目なんだけど。
今まで魔法自体なかったんだ、猫が二足歩行で歩いたって喋ったってそういうもんだって思ったって仕方ないだろ?
大体、常識非常識言われたら、男が妊娠出来る方がよっぽど非常識だろーが」
むすっとして言えば、オリバーははっと息を飲んで眉を下げてくる。
怒鳴り散らさず、冷ややかに言ったからかもしれない。
けど、常識って言葉は……今の俺にすげーささって痛い。
「……すみません」
「すげー傷ついたから、なぐさめて」
ごめんなさい、機嫌直して、と頬と目元の黒子あたりと唇にキスが降ってくる。
オリバーが所かまわず口づけるから、3日目にしてタイラーとソフィアの前では慣れたものだ。
少しずつイライラも収まる。
こいつの匂い、マジで落ち着くし…、キスも、まあ、優しいし…嬉しい。
「でも、アサヒ。結構…いえ、かなり、内緒にしないとというか、領主様に相談案件、なくらいには大事なんですよ?」
「なんで?」
「ケットシー、彼は妖精です。帝国で妖精は伝説、ドラゴンと同じくらいおとぎ話なんですよ。
あーしかも、アサヒ、契約までしちゃって……どうしましょう」
「?妖精?おはぎ、羽生えてないし、もふもふしてんじゃん。妖精はないよ、なー?」
おはぎに同意を求めると、器用にスプーンを持って見上げてくる。
おー肉球で持てるのか、すげーな。
『アサヒ、ご飯、食べていい?アサヒも一緒』
「おー、一緒に食おうぜ、せっかくの料理がさめちまう。オリバーも。…なんか交渉が必要なら後でちゃんと聞くから、先食おう?」
「…はい」
54
お気に入りに追加
1,007
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる