異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

本編

-2- 異世界召喚

なんだこれ、意味がわらねえ……、って、俺だけじゃないのか。


金髪碧眼のその男は、座り込んでいる女子高校生に手を差し伸べた。
戸惑いながらも、恐る恐るとそいつの手を取り、エスコートされて部屋を出ていく。

あれは生粋のお嬢様学校で有名なセーラー服だ。
若さと、豊満な胸は素晴らしい。
アイプチだろうが、化粧を塗りたくっていようが、若さとあの胸は本物だろう。
俺には、望んだって、逆立ちしたって、ないもんだ。
欲しかないけど。

あたりが静まり返る。
…おいおい、マジか。覚めない白昼夢かなんかか？

前方、さっきまで聖女の隣にいた男が振り返ってきた。
「………」
びっくりするくらい、はっとするのどの、もんのすごい美人だ。
さっきの女子高生なんて目じゃないほどの。

口は驚きで開いていて少々間抜け面だが、それでもありあまっての美人だ。
女優の水原麗香に似てるな、なんてぼんやり思う。
そういや、一時、彼女の息子が子役で出ていて有名になった、なんて名前だったっけか？
きっと大きくなったらあんな感じになるだろう。

「えー…と、え、あ、れ、う、うそ、み、水原蓮みずはられん君っ！？ほ、本物ー！？」

そう、水原蓮、そんな名前だったはず。

静まり返った空間の中、パジャマ姿でふわふわ頭の少年が彼を指さして叫んだ。
色白で全体的に色素が薄く、デカい瞳が青みがかってるから、どっか混ざってるかもしれない。
水原蓮ほどじゃないにしろ、この少年はこの少年で将来美しく育ちそうだ。

「うん、本物の水原蓮だよ」

綺麗に華やかな笑みを作ったその顔は、すげーな、の一言だ。
さっきまでのぽやっとした感じがまったくなく、流石芸能人だ、と思わせる。
目の前で芸能人を見るのは初めてだ。
パジャマ少年でなくとも、ちょっとだけテンションが上がってしまう。

「ふあぁぁ、ぼ、僕、水原蓮君の大ファンで！みずきちゃ…、姉の影響で一緒にファンになってっ！
今回の舞台も３回見にいって、すっごく良かったです！
ラジオも次が蓮君だって言ってたからすごく楽しみにしてて…」

おお、すげーファンだ。ガチ推しだな。
この水原蓮って子も、野郎のファンにも優しいらしい。

「ありがとう、嬉しいよ」

本当に嬉しそうに綺麗に笑みを作る。
おー、あれは、ファンでなくともくるものがある。
案の定、ガチなファンらしいパジャマ姿の少年は震え始めた。

「ふえぇ、どうしようー嬉しすぎるー！あぁ、まつ毛長いーばっさばさだ、綺麗ー美人ーあぁ、綺麗だよぅ尊いっ！
いい匂いするー！一生夢の中にいたいー！！」
「えーと…残念だけど、夢じゃないよ？」
「ふぇ！？現実！？」

そうか、やっぱり夢じゃないのか。
俺も夢と思っていたかった。
ついてなさすぎだろ。

「あ、ああ、握手してください！！」

パジャマ少年の彼に、はは、そうくるか、と笑いそうになった。