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4.魔王を確実に殺すために出来ることを考える
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もう一回初めから開始になって、俺は王子様にお買い上げされた。前回と同じくらいの値段だとしたら、俺は相当お買い得だ。まあ死にかけだったしな。
前回の終わりで、勇者様がとどめを刺して聖女様が封印しなけりゃいけねえって事が分かったわけだから、俺は王子様に、勇者様と聖女様に、話をしないのか、と聞いてみた。思い出してくれたら儲けもの、思い出さなくても、事前に練習を促せるのではないかと。答えはもうやった、だ。
聖女様は神聖王国の聖女様で、勇者様は他国の農民の息子だ。自国の者なら俺のように何とでもできるけれど、他国の者だと手出しは難しい、という。だから仕方なく魔王復活後に話をしたわけだけれども二人とも思い出さなかったという。
「あれでも俺も、王子様を見て……? いや聞いてから思い出した?」
「バティストは合流後でも会話をするのが難しかった。致し方ないのは分かっているつもりだからね、これはもう酷い目にあう前に確保しようと動いたのだけれど」
「ん。ありがとうございました」
そもそも俺は父にあたる伯爵の名前を知らない。伯爵としか知らない。本当に伯爵なのかどうかも知らない。よく考えるとそれはそれですげえな?
で、ええとなんだっけ。そうそう。勇者様と聖女様だよ。
「お二人には手紙を出したことがある。その手紙が読まれていたのは二人とも教えてくれたから分かっているが、特に何かを思い出しはしなかったようだ」
「会いに行ってみるしかないのでは」
王子様はゆるゆると首を横に振った。
ここは、王子様の私室。前回魔王に負けた俺たちは、また転生したわけだ。糞みたいな女の胎から生まれて、糞みたいな連中に虐げられて。腹が減りすぎて自分で動くのも億劫な状態で売り飛ばされて、奴隷屋のくっさい臭いしかしない床に転がっていたら、王子様とベランジュのジジイが俺を買ってくれたわけだ。記憶は大体その辺でよみがえっている。何も最初からじゃなくてもいいだろうよ、と思うけれど。でもあの糞みたいな時間があったから、俺はまあ、俺なわけだ。
感謝はしてねえけど。
「聖女様は神聖王国の中央神殿におわすから、そう簡単に面会は」
「できますが」
いつものように壁際に控えていたベランジュのジジイが口を挟んでくる。ジジイは基本的に、俺と王子様が魔王討伐について相談している時は口を挟まない。今回の俺は前回の記憶があるので、口調がまあまあまともだ。それにご満悦で、勉強の時間は大分減った。前と違って最近は俺を殴らない。口で注意すれば俺が悩むか直すか聞いてくるからだ。分からん言葉は沢山あるけどな。
記憶を主体としたもの、王子様が得意とする戦略だとか、魔法だとか、そういうのは持ち越せるけれど、俺は一から体を鍛え直さなければいけないので、その時間を多めにとれるのは俺もありがたかった。
お勉強はな、楽しくねえんだよ。
「お忘れですか。殿下は大国アベラールの第三王子に御座います。アベラールは代々魔王討伐部隊に、勇者でなくとも参加しております」
「そういやあ、そうだよな」
「初代勇者が当時の第二王子の友人でございまして。その縁から、都度支援を行うように申しお送りされてございます」
魔王討伐は全ての生きとし生ける人類の悲願である。だからどこぞの国の王子様が参加してくれるだけで、ある意味通行証だし、飯屋宿屋の融通もしてもらえる。それでも野営だって多い訳だから、普通は嫌がるわな。
「ですから、アベラールの第三王子として、当代聖女様にご拝謁を願うのは、問題のない事でございます。手配いたしましょう」
「……ああ、頼むよ」
軽く礼をして、ジジイは退室する。
俺が王子様に拾われた時、王子様は九歳。あれから俺の体がちゃんと機能して、王子様の護衛を務められるようになるまで二年。王子様は今十一歳だ。俺の年齢は分からんので、気にしないことにしている。多分、王子様よりちょっと上じゃねえかな、って、ジジイたちは言ってた。任せるよ。
この二年前の時点で十年以内と王子様は言っていたから、まあそろそろ、魔物どもの動きも活発化してきていた。ただここから魔王の復活までが近いかって言うと、そうでもない。らしい。前の時に聞いた話だけれど、この状態から五十年ほど魔王が復活しなかった時もあるという。今回は十年以内で確定なんだけどな。
王子様が、二十歳になる前、だ。一、二年はずれるらしい。十八の時と十九の時があって、どう違うのかは分からずじまいだそうだ。まあその辺は人間には分からねえだろうよ。
「じゃあまあ、聖女様はそれでいいな。別にさ。そう遠くない内に復活する。それは明日かもしれねぇんだから顔を合わせておきましょう、どうぞよろしくお願いしますで、いいじゃねえか」
ジジイがいなくなったので、口調を崩す。爺が望むような丁寧な口調も所作も出来るけどよ、楽じゃねえのよ。
聖女様の場合は記憶を思い出してついでに聖なる祈りも思い出してくれたら楽になるのは確かだけれど、まあそれでも最後の時点で確か封印の祈りはご存じだったはずだから、最悪でもない。
お顔を合わせておくだけでも、悪くないと思うぜ。俺は。
「そうだね。諦めないで、ひとつひとつこなしていこう」
「そうそう。俺らにはやり直しの機会があるんですから」
「そう。……そうだね」
もう、王子様は疲れちまったのかもしれない。分からなくはない。一人で孤独に、仲間もいない状態で九回か。繰り返してきたんだから。
でも今は俺がいる。もうちょっとは、頼ってくれていいんだぜ。腕っぷし以外は頼りにならないとしてもな。
前回の終わりで、勇者様がとどめを刺して聖女様が封印しなけりゃいけねえって事が分かったわけだから、俺は王子様に、勇者様と聖女様に、話をしないのか、と聞いてみた。思い出してくれたら儲けもの、思い出さなくても、事前に練習を促せるのではないかと。答えはもうやった、だ。
聖女様は神聖王国の聖女様で、勇者様は他国の農民の息子だ。自国の者なら俺のように何とでもできるけれど、他国の者だと手出しは難しい、という。だから仕方なく魔王復活後に話をしたわけだけれども二人とも思い出さなかったという。
「あれでも俺も、王子様を見て……? いや聞いてから思い出した?」
「バティストは合流後でも会話をするのが難しかった。致し方ないのは分かっているつもりだからね、これはもう酷い目にあう前に確保しようと動いたのだけれど」
「ん。ありがとうございました」
そもそも俺は父にあたる伯爵の名前を知らない。伯爵としか知らない。本当に伯爵なのかどうかも知らない。よく考えるとそれはそれですげえな?
で、ええとなんだっけ。そうそう。勇者様と聖女様だよ。
「お二人には手紙を出したことがある。その手紙が読まれていたのは二人とも教えてくれたから分かっているが、特に何かを思い出しはしなかったようだ」
「会いに行ってみるしかないのでは」
王子様はゆるゆると首を横に振った。
ここは、王子様の私室。前回魔王に負けた俺たちは、また転生したわけだ。糞みたいな女の胎から生まれて、糞みたいな連中に虐げられて。腹が減りすぎて自分で動くのも億劫な状態で売り飛ばされて、奴隷屋のくっさい臭いしかしない床に転がっていたら、王子様とベランジュのジジイが俺を買ってくれたわけだ。記憶は大体その辺でよみがえっている。何も最初からじゃなくてもいいだろうよ、と思うけれど。でもあの糞みたいな時間があったから、俺はまあ、俺なわけだ。
感謝はしてねえけど。
「聖女様は神聖王国の中央神殿におわすから、そう簡単に面会は」
「できますが」
いつものように壁際に控えていたベランジュのジジイが口を挟んでくる。ジジイは基本的に、俺と王子様が魔王討伐について相談している時は口を挟まない。今回の俺は前回の記憶があるので、口調がまあまあまともだ。それにご満悦で、勉強の時間は大分減った。前と違って最近は俺を殴らない。口で注意すれば俺が悩むか直すか聞いてくるからだ。分からん言葉は沢山あるけどな。
記憶を主体としたもの、王子様が得意とする戦略だとか、魔法だとか、そういうのは持ち越せるけれど、俺は一から体を鍛え直さなければいけないので、その時間を多めにとれるのは俺もありがたかった。
お勉強はな、楽しくねえんだよ。
「お忘れですか。殿下は大国アベラールの第三王子に御座います。アベラールは代々魔王討伐部隊に、勇者でなくとも参加しております」
「そういやあ、そうだよな」
「初代勇者が当時の第二王子の友人でございまして。その縁から、都度支援を行うように申しお送りされてございます」
魔王討伐は全ての生きとし生ける人類の悲願である。だからどこぞの国の王子様が参加してくれるだけで、ある意味通行証だし、飯屋宿屋の融通もしてもらえる。それでも野営だって多い訳だから、普通は嫌がるわな。
「ですから、アベラールの第三王子として、当代聖女様にご拝謁を願うのは、問題のない事でございます。手配いたしましょう」
「……ああ、頼むよ」
軽く礼をして、ジジイは退室する。
俺が王子様に拾われた時、王子様は九歳。あれから俺の体がちゃんと機能して、王子様の護衛を務められるようになるまで二年。王子様は今十一歳だ。俺の年齢は分からんので、気にしないことにしている。多分、王子様よりちょっと上じゃねえかな、って、ジジイたちは言ってた。任せるよ。
この二年前の時点で十年以内と王子様は言っていたから、まあそろそろ、魔物どもの動きも活発化してきていた。ただここから魔王の復活までが近いかって言うと、そうでもない。らしい。前の時に聞いた話だけれど、この状態から五十年ほど魔王が復活しなかった時もあるという。今回は十年以内で確定なんだけどな。
王子様が、二十歳になる前、だ。一、二年はずれるらしい。十八の時と十九の時があって、どう違うのかは分からずじまいだそうだ。まあその辺は人間には分からねえだろうよ。
「じゃあまあ、聖女様はそれでいいな。別にさ。そう遠くない内に復活する。それは明日かもしれねぇんだから顔を合わせておきましょう、どうぞよろしくお願いしますで、いいじゃねえか」
ジジイがいなくなったので、口調を崩す。爺が望むような丁寧な口調も所作も出来るけどよ、楽じゃねえのよ。
聖女様の場合は記憶を思い出してついでに聖なる祈りも思い出してくれたら楽になるのは確かだけれど、まあそれでも最後の時点で確か封印の祈りはご存じだったはずだから、最悪でもない。
お顔を合わせておくだけでも、悪くないと思うぜ。俺は。
「そうだね。諦めないで、ひとつひとつこなしていこう」
「そうそう。俺らにはやり直しの機会があるんですから」
「そう。……そうだね」
もう、王子様は疲れちまったのかもしれない。分からなくはない。一人で孤独に、仲間もいない状態で九回か。繰り返してきたんだから。
でも今は俺がいる。もうちょっとは、頼ってくれていいんだぜ。腕っぷし以外は頼りにならないとしてもな。
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