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第6章 新しい国

142.学ぶみたいです

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最後が体と鬣が茶色でスラリとした姿で額に白い星のような毛を持つトラベラーで、とても普段は大人しい性格であり、様々な状況に即座に対応できる賢さを持っていて、小回りも効き、人込みでも動じないそうだ。

ハジメは3頭と3人に、「これからもよろしくね」と頼む。馬たちは「任せろ」と言ってるかのように鳴き声を上げ、アインツたちも頷いた。彼らは馬車の手入れをするとのことだったので、ハジメはBBQで使う野菜でも収穫しようかと街の南西区画へと歩いて行った。

ハジメが家の門から出たところで農家の牛族ドナ、ジェイ、ケイトと熊族の養蜂家アルフが連れ立って歩いているのに出会った。

「ハジメ様。ここは素敵なところですね。とても静かですし、なんだか気分も良い気がします」

ケイトが告げる。

「そう言って貰えると作った人間からしたら有難いですね。ところで皆さんはどちらへ?」

ハジメが笑顔で応えると

「えぇ。実は畑はどこになるのかとお伺いするためにハジメ様にお伺いしようと思って来させてもらったんですが、この一角に畑があるのに気が付いたところでして」

ジェイが頭を掻きながら告げる。確かに彼らの家からでは学校や木で視界が遮られて畑は見えない。案内も北門から入ってすぐ左手にある公園を通って案内したからわからないのも仕方ない。

「そうでしたか、あとで案内しようと思っていたのですが、ちょうど今日の夕飯用の野菜を取りに行くところでしたので、良ければ一緒に行って貰って、意見を聞かせて欲しいです」

ハジメはそう言って彼らと一緒に畑へとやってきた。

「トウモロコシに小麦ですね。しかももう収穫できる状態・・・」

「えぇ。手持ちに2種類の種しかなかったもので。小麦があれば飢えることはないかなって素人判断で植えてみました」

ドナの呟きにハジメが答える。前世において農家はキャベツ農家、ホウレンソウ農家などほぼ分業化していた。しかしここでは農作物で良く口にするものは全て育てなければならない。キャベツの育成や米の育成、収穫に関する個々の知識はある程度あるものの、住人に優先すべき順番までは知らなかったのである。そのため主食となりうる小麦やそのままでも食べることが出来るトウモロコシを育成することにしたのである。まぁ、クーラの街の畑に1/3ほど残っていた作物はハジメが収穫していたため、野菜に困らなかったという事もあるが。

「良いと思います。私たちが持ってきた野菜はほぼ無くなっていたので、主食となる小麦があるだけでもありがたいですよ」

ジェイが答える。

「あぁ。クーラに残っていた野菜は私が持ってますから後で皆さんにお渡ししますね」

ハジメは笑顔でそう言った。1/3の量と言っても100haヘクタール、1km×1kmの畑の1/3量である。この1か月と少しの期間でハジメたちが消費しても、ほぼ全量と言っていいほど残っているのである。

「私たちが残してきた野菜たちですか?」

「えぇ。そうですよ。皆さんが大切に育ててくれていた物を国に渡すのは勿体ないですからね」

ハジメはドナにそう言って笑う。そのハジメの言葉に3人の農家は

「ハジメ様すぐに小麦やトウモロコシを収穫してもいいですか???」

と鼻息荒くハジメに詰め寄る。その興奮した姿にハジメが引いた顔をしていると、養蜂家のアルフがハジメの前に立って3人を抑えてくれる。

「お前ら、領主様が困ってるべ」

そう言われ3人は少し冷静さを取り戻す。

「すみません。つい興奮してしまって・・・。それに貯蔵庫も作らないといけませんしね」

ドナが恥ずかしそうに言う。

「・・・貯蔵庫はありますよ。学校の地下に・・・」

迂闊にもそう言ってしまったハジメに再度ジェイたちが詰め寄るのだった。その後彼らを貯蔵庫に案内すると農家3人は収穫を始めた。

「・・・領主様、迂闊に欲しい物を与えると危険ですよ・・・」

肩に肉球を置かれてアルフに注意されたのだった。

「・・・・はい・・・身に染みて分かりました・・・」

怯えた顔をしているハジメに

「はい。領主様は優しすぎる方ですから、頼まれればなんでもこなしてしまいますよね?嬉しいのは分かりますが、我々奴隷は領主様を頼ればいいと思ってしまいますし、そうしていれば領主様の負担は増えてしまいます。そうなれば私たちの孫、ひ孫の代に悪い影響しか与えませんよ。でも私は優しい領主様で良かったと思っておりますので、頼まれごとは執事様と相談してみてはいかがですか?人に任せられるものか領主様がしなくてはならないことか決めることが出来ると思いますよ」

優しい口調でアルフは答える。確かにハジメはウィリアムには全部事が終わってから報告するしかしなかった。『報・連・相』は大切だってわかっていたはずなのに。ハジメがしょぼんとしているのを見てアルフは

「ありゃ、すみませんでした。偉そうなことを言ってしまって」

と慌てて言う。

「いえ、指摘していただいたことはとても大切なことでした。本当にありがとうございました」

ハジメはにっこり笑って言う。

「それで、アルフさんはなぜお三方とご一緒だったんです?」

ハジメの顔を見て安堵したように笑ったアルフは

「あぁ、養蜂箱をどこに置こうかと考えてまして。蜂蜜はどうしても時間がかかりますのでなるべく早くと。ここまで来たので南の門から見てみようかと思います」

と言った。

「なるほど、花が多いところの方がいいですもんね」

「えぇ。蜂を飼うので、東や北だと人が刺される可能性がありますから、西か南かってところです。そう思って家を出たところでお三方にお会いしたので、一緒に居たんですよ。では私はここらへんで失礼しますね」

そう言って大きな右手を振ってアルフは南門へ向かって歩き始めた。ハジメはそれを見送り、農家たちの様子を見るとアルフと話しているうちに1/3の収穫が終わっていた。恐るべし農家パワーである。

「ケイトさん、クマイエルを借りてきてくれないか?」

とドナが言うと、「ほいよ」とケイトが答え、ハジメの家に向かって走って行った。

「ドナさーん、トウモロコシから運んでもらえますかぁー?今晩使いたいので」

とハジメが言うと「了解でーす」と両手で丸を作って答えた。ドナさん真面目だと思ったけど割とお茶目さんかもしれない。そう思いながら家に帰ることにし、家へ向かって歩き始めると、荷台を運ぶクマイエルとそれを操るエンさんとすれ違った。

「旦那様。夕方には私どもが皆を連れて行きますので」

と言われ右手を上げ「よろしく」とお願いした。家の門の近くまで来たとき、酪農家のトニーとトビーが

「ハジメさまー」

と言いながら駆け寄ってきた。その背中にはギューギュー詰めのリュックが背負われている。

「トニー、トビー。荷解きは・・・・終わってない・・・よね?」

とハジメが荷物を持ったままの彼等に聞くと、

「えっと、アセナが帰って来たんで荷解きをお願いしたんです。それで、俺らはカプリンブリントコッコンを飼っていい場所をお聞きしようと思って」

「その背中の荷物は?」

を視線をリュックに送った。

「あぁ、これですか?鍛冶師のカカさんにお願いして船に乗る前に釘とか金槌、のこぎりを作って貰ったんです。場所を聞いたら柵を作って、やつらの家を作ろうと思いまして。で動物たちは何処で飼ったらいいでしょう?」

と2人は聞いてきた。

「あぁ。それならもう作ってあるよ」

とハジメが言う。自分たちで作ってもらう方が良かったと気づいたのだが、もう既に完成しているのである。それならば使って貰ったらいいのだ。ハジメは2人を連れて畜産場へと案内した。

「ありがとうございます。動物たちも狭くて土じゃない場所にずっといたんで乳の出も悪くなってたんですよ。ハジメ様のお陰で奴らをここに放してやることができます」

2人は嬉しそうに言い、船内に居る動物たちを連れてくるために港へと向かって行ったのだった。
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