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第6章 新しい国

139.注意されるみたいです

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次の日は朝から膠を作り始め、なんとか2日ほどで膠造りと合板造りは完了した。後はこれを打ちつけて行けば学校の完成である。ハジメは学校の入り口付近に立って配置をどうするか枠組みだけが出来た状態で眺めていると、後ろからはくの声がする。

「主、これからどうするの?」

ハジメが振り返ると彼は目をキラキラさせて聞いてくる。無口な白虎はお手伝いが楽しいようである。それに嬉しくなってハジメは

「取り敢えず、玄関作って、キッチンと食堂を作ろうかなって」

はくの頭を撫でながら言うと、くれない

「主様。この空いたスペースは何に使うのですか?」

と運動場予定の場所を眺め見て聞く。

「あぁ、そこは運動する場所だよ。戦闘訓練とか体力作りとかに使える場所ってとこかな」

「人間て狭い場所でもいいんやな」

ゼニーがそう感想を呟く。それにハジメは

「あぁ、そこは空間拡張させるから今の10倍くらいは大きくなる予定だよ」

と答える。そこではっと気づく。

「入口の位置変えないと、ご飯食べるために1km以上歩かないといけなくなるやん・・・・」

少し落ち込む。

「・・・主、まだ枠組みだけだから建築魔法で簡単に変えられますよ?」

はくがフォローしてくれる。そうして入口を西の大通り付近に作ることにした。ハジメ的にはこの学校のグランドを使ってお祭り兼文化祭兼運動会のようなイベントをしようと思っていた。今まではイブの街でのお祭りに行ったりしていたが、この新しい土地ではそれは出来ない。ならば作ってしまおうという事だ。働いてくれている人にとって感謝と息抜きは絶対に必要なものである。

そして昼下がり。はく助手ホムンクルス2人、ハジメ、オーダの5名が食堂予定の床に板を敷き詰め、たっつんが体内に取り込んだ釘を口から物凄い速度で打ち出すことで8割方食い込んだそれをゼニーを咥えたくれないが釘目掛けて空中から落とし、落とされた彼は空中で180°回転し、甲羅で完全に打ち込んでいた。勿論並び終えた助手ホムンクルス2人も釘打ちを手伝っていた。ハジメとはくはキッチン部分の床の作成に入り、固定フィックスで固めて岩の様にした。これで汚れても水で流すことが出来るという仕様となっている。その後、はくに土を加工して作った階段を降りそこへ保存室を大小2つ作る。小さい部屋へは大きい部屋を通らないと行けないように作った。小さい部屋にはまいの取って来てくれた永久氷床えいきゅうひょうしょうを設置して冷凍庫。そしてわざと粗く作った扉の隙間から冷気が漏れ、大きい部屋は冷蔵庫仕様となるのだ。階段と大きな部屋を隔てる扉はしっかり作られた気密性の高い扉を設置する。

地下での冷蔵庫工事を終えて1階に戻ってくると、床は完成しており、実習室で作られた料理を置くカウンターも8割方完成していた。

「主様。台所の壁はどうしますか?」

くれないが聞いてくる。ハジメはオーダに

「この木って燃えない?」

と聞くと

「父上、流石に燃えるよ。でも火魔法の防御シールドを付与しとけばいいんじゃない?」

「あれは火で壁を作るから駄目じゃない?」

と不思議そうにハジメが言うと

「錬金術の付与なら魔力を通さないと発動しないよ。発動しなければ火魔法に対する耐性があがるだけだよ」

と説明してくれる。

「そうなんだ・・・。知らなかったよ。じゃぁ鎧とかに付与して発動しなければ火に対する防御力が上がるってことなんだ・・・」

と呟くとオーダは「そうだよ」と答える。それを聞いたハジメはにやりと笑う。そう彼の頭にあったのは【魔力剣】というロマン武器の想像だったのである。

そして2日後、学校の建築が終わり運動場に着手する。エリアは4つに分けて、草原ゾーン、森ゾーン、砂浜ゾーン、トラックを作ることにする。冒険者なら色々な場所での戦い方を経験した方がいいだろうと思ったからである。
北の大通りに面した東側に草原ゾーンを作ることにする。ここには北の塔で貰った雑草を撒くことにする。この雑草の種は育つ速さがすさまじいので、明日には緑に覆われているだろう。この場所はイベントの時は屋台なんかが出せるようにするつもりである。
その下には森林ゾーンを作る予定として、はくに根っこごと木を持ってきてもらうようにお願いしており、移植していくつもりである。その向かいには砂浜を設置し、足場の悪いゾーンを作る。そしてその北にトラックを作ることにした。トラックゾーンと言ってはいるが単なるクレーである。ここは所謂運動場で住人なら学生が使ってないときは使うことが出来るようにするつもりだった。

ハジメが雑草の種を蒔き終わったのを見計らったかのように、はくが帰ってきた。どうやら西門の前に50本ほど持って帰ってきたとのことで、ハジメはそこへ行ってアイテムボックスに仕舞い、森林予定地に埋めていく。3時間ほどで森林ゾーンが完成した。
そして翌日、砂浜ゾーンに敷く砂を大森林から南にある大砂漠から取って来て撒こうと妖精たちに伝えると、はくがその範囲を右前足でぽんぽんすると一瞬にして砂が出現した。

こうして裁縫室も作り上げたハジメは領民が来る2日前に手持ち無沙汰になってしまった。ハジメは何をしようかと考えながら土の神器『万物の書』をぺらぺらとめくった。そこにはハジメが手に入れた物で何が作れるのか書かれている。読むというより眺めているといった感じだろう。彼の手は不意にある1ページで止まった。

仮初かりそめの自我

  魂を持たないものに術者の自我を反映させることが出来る。ただし、その時の自我であるため成長しない。

  素材:なし

  作り方:対象物に霊薬エリクサーを振りかける                       』

『え?それだけ?』

とハジメは思ったが、そもそも錬金術師はこの世界にはハジメしかいないし、レベル10になる人間なんて今までの歴史の中でも皆無なのである。『万物の書』なしに仮初の自我の作り方を探り当てることは流れの早い海底で砂1粒を見つけるようなものである。これ作り出せる確率は天文学的と言っても過言ではない。

ハジメは助手ホムンクルスに使ってみる。

霊薬合成クリエイトエリクサー

ただのガラスの玉である瞳が光り、そこに意思を湛える。

「こんにちは、オリジナル」

助手ホムンクルスがにっこりと笑い。右手を差し出して来る。ハジメは思わず握手をした。

「こ、こんにちは・・・」

「そうそう。オリジナル。もう少し職業魔法勉強した方がいいと思うよ。道路作った時に僕たちの魔法に驚いてショック受けてたでしょ?」

そう言って助手ホムンクルスの説教はそこから小一時間続いたのだった。ハジメがぐったりとして書斎の机に突っ伏していると、

「まぁ今日はこれくらいにしとくけど、早く1号にも仮初の自我を使って欲しいんだけど。あと、言っとくけど職業レベルが上がったら助手ホムンクルスは作れる数は増えてるんだからね」

「じゃぁ、今は6体作れるってこと?」

ハジメは顔を上げず、0号に聞く。そもそも助手ホムンクルスは錬金術魔法のレベル5で1体使役することが出来る。レベル6で2体と1体ずつ増えていくらしく、現在ハジメのレベルは10であるため、6体使役することが出来るというわけである。

「そうだよ」

そう言って0号は部屋から出て行きすぐに1号を連れて部屋に入ってくる。そして彼もまた自我を得たのだった。こうして2号3号に自我を与えて、ハジメ一人でどうやって授業は回そうか悩んでいた調剤の講師不足問題はこうして解決したのだった。
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