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第6章 新しい国

134.港を再建するみたいです

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時間は少し巻き戻って、すべての大地が国単位で離ればなれになった時、ハジメはスクナヒコと世界樹のオーダと共にハジメの家に居た。

「それで、スクナヒコ様。『時代の移り変わり』ってなんですか?」

緑茶をスクナヒコとオーダの前に置きながら聞く。

「ハジメ君は戦争を止めてって依頼されたんでしょ?」

「えぇ。転移する時にその依頼を受けましたが・・・」

話の意図が読み取れず困惑気味に答える。

「そこでアーシラト様たちは1つの大陸だから戦争が起こるんじゃないかと考えたみたいなんだよね。だから世界樹のオーダが根付いたことで、少々の無理は出来るようになったから、もう国ごとに島にしちゃえって話になったみたい。炎と死の神モトと戦いの女神アナト、戦闘神や魔法神の強い要望もあったことからも今回そうしちゃったみたい。ハジメ君は感じてないけど、少し前に大きな地震のような揺れを君以外は感じてたんだよ」

なんでもないようにスクナヒコは告げる。

「じゃぁ、もう既に大陸は分かれたということですか?」

ハジメが問うとスクナヒコとオーダは頷く。

「それが『時代の移り変わり』の1つの過程なんですよ、父上。本当は地震で家屋なんか倒壊させても良かったんですけど、それまではやりすぎって神様が言うから僕たち精霊が保護しましたけど」

「それは流石にやりすぎだよ、オーダ。状況が落ち着いたら船を持っている帝国やパテオン連合ではどの国が神の使者を陥れたのかって捜索するだろうし、それでハジメ君の居たアヴァの国に辿りついて、やらかしたことを知れば、それが戦争の新たな火種になる可能性も高いからねー。そうなったらイブの街のハジメ君の家族のコウやリナリー、新しいレストランも被害をこうむることになるから、そこを考えて被害を抑えたって感じだね」

スクナヒコにそう言われて世界樹は頬をぷーっと膨らませる。見た目15歳とは言え彼はまだ生まれたばかりである。

「それなら家屋を壊しても良かったんじゃないんです?その方が時間は稼げるでしょう?」

世界樹が神に対抗する。

「家屋まで壊してしまったら、怒りがさらに大きくなってより戦争になる可能性が高くなるんだよ、オーダ」

人が世界樹に説明する。

「でも、この島は神の加護で守られてますし、他の国が滅んでも問題はないでしょう?」

少し考えてからオーダが疑問を呈する。

「例えば1つの国がこの島以外を全て自国領にしたら、今度はこの島にちょっかいを掛けだすだろう?確かにこの島は神と世界樹であるオーダの力で守られているから近づくことさえ出来ないだろうけど、朝昼夕、夜、夜中四六時中攻撃が来ることになって、ハジメ君がゆっくりまったり過ごすことが出来なくなると思うよ?少なくともハジメ君以外でここに住む人間は恐怖を感じるだろうし、そうなったらゆっくり生活が出来なくなるよ?」

スクナヒコがその問いに答える。

「でも、加護を取り上げるだけなんて、神様は優しすぎると思いますけど。スキルも取り上げてよかったと思いますけど」

オーダは理屈は理解したようだが、まだ感情が優先されているようで納得はしていないようだった。

「それをしたら、人間は滅んでしまうよー。だって魔物と戦えなくなるからね。そうなったら信仰を力とする神々は力を失うから簡単にこの世界は崩壊してしまうよ」

あっはっはと豪快に笑うスクナヒコに考え込むオーダを見てハジメはくすくすと笑いながら言う。

「面倒な人はスルーするのが一番だから、こっちに矛先が向くことは避けた方が吉だよ、オーダ」

「んー。父上がそういうならいいのかな」

オーダが難しそうな顔をして答える。ハジメはその言葉に頷き、スクナヒコを見る。

「それで、チャドさんたちはいつ頃こちらへ?」

「そうだね。この街の北に港を整えて貰おうかと思ってね。この大森林の北にあるフルティオ国は享楽の街というだけあって、首都1つしか街はないし、それも北東に位置するから港は見えないから、良いと思うんだ。それに北はオーダの加護が強いから道中魔物に襲われることもないしね」

スクナヒコはそう提案した。ハジメも他国から見える位置に港があるとそこを目指して来る人も出てくるだろうからそのリスクを回避するためにはその方がいいかもしれないと思った。

「そうですね。ではそうしましょう」

そう言うとハジメたちは北門を出たところまで来た。

「スクナヒコ様。海はここから真っすぐ北ですか?」

ハジメが問うと、「そうだよ」と答える。

「海面はどれくらい下ですか?」

「そうだね。だいたい10mくらいかなー。世界樹が移動してきたことでどうしても土地を上げないと、根が海水に浸かっちゃうからね」

ふむと頷くとハジメは北門から街壁に沿って500mほど助手ホムンクルスに道を設置して貰った。

掘るディグ思考読み取りソーリーディング

北門100mほど離れた場所から真っすぐ北に幅200m、深さ60mの溝が出来る。

掘るディグ思考読み取りソーリーディング

再度ハジメが魔法を使うと同じ深さで1km四方の大きな穴が出来る。

『取り敢えず船の旋回はこれくらいで出来るかなぁ。喫水は今の船の高さを考えたら海面から50mあれば大丈夫か・・・後はチャドさんたちと相談かな』

石化ミネラライゼイション思考読み取りソーリーディング硬質化ハーディング

今しがた作った水路が石造りになり、さらに硬質化する。そして街の北の壁と平行にクーラの街から持ってきた港を設置した。

「スクナヒコ様、北の海岸を見に行ってきますね」

ハジメがそう言うとスクナヒコは

「はいはーい。じゃぁ僕は船を誘導してくるねー。到着には1週間くらいかかる予定だよー」

そう言ってスクナヒコは消えて行った。それを見送ってからハジメは妖精たちとオーダを連れて歩き始める。

ハジメはわたるから教えてもらった歩く歩道ムービングウォークの魔法で3時間ほど進むと海が見えてくる。海岸線は真っすぐに切り取られていた。

『魔法で3時間ってことは歩いて1週間くらいってことか。馬車だと3,4日ってところかな。船の安全を考えて水路引いたけど、正解だった』

とハジメは思った。彼が引いた水路はまだ海と繋がっていない。一気に繋げると水の勢いで大変なことになりそうだと思ったためだった。海まであと5mほどある大地をハジメは海面から50cm下になるように調整して水路と繋げる。海水は勢い良く水路に落ちて行いく。くれないに空から確認して貰っているが1時間経ってもまだ街まで海水が届いてなかった。

「取り敢えず、瞬間移動テレポーテーション用の土地をマーキングしておいてっと。皆帰るよー」

瞬間移動テレポーテーションを土精霊のわたるは簡単に使っていたが、ハジメが使うとなると移動場所のマーキングが必要だった。実際にその場に行き、自分の魔力を土に染み込ませることでそれを頼りに移動しなければならなかった。行き来を頻繁に行うならその都度魔力が補充されるが、あんまり行かないところだと魔力が自然に霧散し移動できなくなってしまうのだ。

そうしてハジメたちは家に帰って行った。そして翌日北門を出てみると湾内に1mほどの海水が貯まっていた。ハジメは海岸に瞬間移動テレポーテーションしさらに1mほど下げた。こうして3日ほどかけて海面とほぼ同じ高さになり、港は完成したのだった。



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