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第6章 新しい国

129.下水を考えるみたいです

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次の日ハジメが目を覚ますと妖精たちは寝床として確保していたクッションでまだ眠っていた。そっと布団から出て着替えると地下へと降りてきた。

助手ホムンクルス

ハジメが錬金術スキルを使うと、2体は命が宿ったかのように瞳が輝きハジメの前に立つ。

「今日から道づくりを手伝って貰うね」

そう言うと、2体は頷きハジメの後ろをついてくる。

『妖精たちが起きるまでに少しでも進めておこうか』

ハジメはそう思い、2体を連れて外に出る。

「この石をこの泥濘ぬかるみに置いて行ってほしいんだ」

そう告げると、0号が

掌握シーザー紅石こうせき、並べ」

と言うと石はその指示に沿って次々に綺麗に設置されていった。1号が

掌握シーザー、泥濘、分離セパレーション、水、蒸気へ」

と錬金術スキルを使うと泥濘から水分が蒸気へと変わり、固まっていく。ついでにハジメの寝癖を直していた。

「なんですとーーーーー」

ハジメが思わず叫ぶ。その間に彼らは残りの3方向の馬車道を完成させ、ハジメの前に次の指示を待つために立った。そしてハジメの叫び声で起きた妖精たちが打ちひしがれているハジメの元に向かってきているのを。

「・・・そうか、そうか・・・。俺には思いつかなかった・・・」

そう呟きながら出来たばかりの石畳を叩くだけしか出来なかった。5分ほど自分の力が把握できていなかったことを嘆いたあと、気持ちを切り替える。 

「たっつん、はく。城壁の向こう10mくらいの木を全部処理してきて欲しいんだ。そこは草原ぽくしたいから、お願いできるかな?」

とハジメが言うと

「わかりましたですぞー。はっくん、行くですぞー」

たっつんははくの尻尾に自分の尾を巻き付け北へと向かっていった。白虎ライダー気分のようだ。とてとてと走っていくはくの後ろ姿はなかなかに可愛いものがある。はくは無口であるのでそのギャップもまた萌えである。

「おし。じゃぁこれから道を作って行くよ。くれないとゼニー、助手2人は手伝ってね」

と伝えると妖精2人は「はーい」と答え、助手2人はした。

「そんなこと教えたっけ?・・・・」

ハジメがぼそっと呟いたがホムンクルスの助手たちは何も答えなかった。ハジメは東門まで来ると、使用人棟を1つ取り出し、元の大きさに戻し仮置きする。そしての棟を目印に北に向かいゼニーに水で幅2mの道路となる部分を濡らしてもらい、くれないに上空から真っすぐになっているか確認させた。その後2度ほど乾燥ドライで水のラインを引き直し、問題がなくなったので、その水に沿って元使用人棟を並べていく。大通り沿いに店舗用に棟1つ分を確保し、城壁に沿って男子用の棟を2つ、水のラインを挟んで店舗用の土地、家族棟、家族棟と立てる。そして最初に引いた水のラインと直角になるように西に向かって道を確保し、交差点に女子棟を2つ設置した。それをホムンクルスは親和アフィニティーで大地へしっかりと固定していく。

そして最初に引いた水のラインの西側に平行になるように幅1mのラインを引き、大通り沿いに孤児院を設置する。本当ならその隣に教会を建てたいのだが、クーラの街で洗礼を行ったとき、2つの教会を行き来したことを踏まえ、この際1か所で済ませられるように大きいものを作ることにした。

「教会は後にして、次は畑を作ろうかな」

ハジメは町の南西部分に行きアイテムボックスから木を取り出し

分離セパレーション、葉」

とスキルを使うが葉は木から分離できなかった。

「・・・あくまで抽出ってことなのか」

そう呟きながら葉を毟り、畑予定地に撒いていった。勿論、ホムンクルスとくれない、ゼニーも手伝ってくれたのだが、たっつんとはくが帰ってきても片付いておらず、結局丸5日掛かった。

汚泥スラージ渦潮ワルプール腐敗ニグレド

撒いた葉は土に混ぜられ、腐葉土へとなった。

「どうしよう、同じ作業がもう1回ある・・・・」

ハジメの家のある北西部分も薬草畑予定地となっているのだ。同じ作業を繰り返さなければならいのである。結局1か月40日のうち4分の1の日にちを使って農作業の土地を用意することになったのである。わたるの存在は偉大だったことがわかったのだった。

街の最南西に畜産場を作り、豚獣人から貰った雑草を撒き、そこから大通りまでには麦を撒いておく。そしてそれらの上の部分は畑として、菜種、大豆、トウモロコシを撒く。後は農家のドナ、ジェイ、ケイが到着してから考えて貰うことにする。

「じゃぁ、次は水の確保かな。高い山があるわけじゃないから、水が循環するようなものを作らないと水不足になりそうだなぁ・・・・」

この地は山はあるが、そこまで高くないため、雨量はすくない可能性がある。それを考えるとやはり循環させるなどの水を確保する方が間違いないだろう。以前はわたるがいたため肥料は不要だったためにハジメが隔日で消去トラッシュしていたが、ここでは糞尿は1か所に集めるなどして肥料にする必要があるかもしれない。だがそれも病気の原因となる可能性が高い。

肥料として考えられるのは野菜の茎や葉、家畜の糞などを腐らせる方法でなんとかなる。しかし糞尿に関してはハジメが死んだあとを考えるとなんらかの方法を考える必要がある。ハジメは使用人棟の設計図を広げた。

「各部屋のトイレはパイプを伝って、この1か所の空間に貯まる・・・っと。で、ここの蓋を開けて肥料として回収される・・・。そして今までは俺が処分していたから・・・」

設計図の配管を指でなぞりながら呟く。このパイプは1本の木『ぬめり木』と言う名で、木の中央には穴が上下に貫通している。この木は根から水と栄養を吸収し葉でそれらをぬるぬるの液体に変え、根の中央にあるフラスコのようなコブに貯めて置く性質があるらしく、パイプとして使用するくらいに成長すれば15年くらいは水や栄養を与えなくても枯れることはないらしい。コブを切り落としてしまえば、物が落ちてくれば”ぬめり”でつるんと貯留場所まで落ちていくので、本当にパイプとして使える。大工のソラからそう教えてもらった時、『ムチン型糖タンパク質を作る木か、流石異世界』とハジメは思ったのだ。まぁ簡単に言うとウナギのぬるぬるが木の中に分泌されると思っていただければ良い。なので、この木の根は糞尿が貯まる空間の外に張り巡らされており、葉も窓の外に存在しているのである。コブに養分はたまらないので今以上に幹が太くなることはないため、非常にパイプとしての利用価値は高い。なお、この木には人間の静脈のように逆流防止弁のようなものがあり、下へは簡単に落ちるが匂いは上に上がってこないという優れものである。

「ふむ・・・・。この空間に消去トラッシュを付与したらいける?魔力の供給を魔石からにすれば、行ける?? 一番小さい魔石でどれくらい使えるのか実験だな!」

消去トラッシュは無属性の魔法なので使用するのは無属性の魔石となる。この無属性の魔石はビッグチューと言うただの大きいネズミから採取でき、ネズミの駆除は子供でも可能だ。小遣い稼ぎでやっているだから多く確保することができるため、価格はかなり安い。無属性魔石小なら1個10シードで”中”なら100S、”大”なら200S、”特大”でも500Sである。これに属性が付くと値段が数百倍から数千倍、特大に至っては数十万倍に跳ね上がる。因みに乾燥ドライなら大体”小”で1回、”中”で15回、”大”で40回、”特大”で60回使用することが出来る。
実際、クーラの街でも子どもたちがネズミ退治をして得た魔石を売ったりしてお小遣いにしていた。

ハジメは汲み取り用の蓋を開け四方の壁に消去トラッシュを付与していく。付与するという行為は回路を組み立てていく作業である。言い換えれば電気回路を構築するようなもので、使用する人が電池で使用する物が回路、付与の効果が光った電球だと想像して貰えれば理解し易い。電池を人ではなく魔石にすればいいのである。使用するのに必要な量を入れれば発動するようにすればいいのだ。

ハジメは貯留空間の横に直径10cmほどの穴を開け、そこを魔石投入口に設定し、無属性魔石小を1つづつ入れて行くと100個で発動するのが確認できた。つまり1,000Sで1回使用できるという事で、2日の1回なら1か月で20,000Sあれば十分な計算である。

「よし、これで排泄関連は問題なしっと。あとは水の循環方法を考えなきゃな」
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