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第5章 第1節 東の塔 ~耕す~

104.妖精と出会うみたいです

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「おぉ、ハジメ殿が塔を攻略したようなのでな。攻略したあとどうしたらいいか伝え忘れたと神様から言われての、来た次第じゃ。ここに魔力を通してくれんかな?」

とハジメを中央にある球へと案内する。ハジメが魔力を通すとそれは緑色に鈍く光った。

「これで終わりじゃ。それと、これは神様からじゃ」

とユドルが言うと空中にふよふよ浮いているタツノオトシゴがハジメの前に泳いできた。くるっと丸まっている尻尾がなんとも言えない。

「名前を付けて可愛がって欲しいの。あぁそやつ、そう見えて妖精なのじゃよ。風魔法が得意なやつじゃ」

とふぉっふぉっふぉと好々爺のように笑った。ハジメは妖精を見つめたあと、

「じゃぁ、まい・・・。って女の子なの?」

「オイラはオスですぞー」

とタツノオトシゴはハジメの目の前で尖った口を動かしふよふよ動いている。

「流石妖精、話せるんだね・・・。じゃぁ、たっつん。よろしくね」

「ハジメ殿、そこにある魔方陣に魔力通したら一番下まで降りれるんでの」

そうしてハジメが塔を去って行くのを精霊王は眺めていた。

「嫌な役割を負ってしまったでござるな・・・」

老人を労わる声がする。

「・・・ワーデン様・・・。こればかりは精霊王としての私目わたくしめの役割でございます。それよりも、ハジメ殿の方が辛かろうと思うのです・・・」

そういいながらハジメの消えていった魔方陣を眺めながら言う。

「そうでござるな。我々神もハジメ殿に迷惑をかけてばかりでござる・・・」

神の管理神ワーデンもまた魔方陣を静かに見つめていたのだった。


『エキストラの依頼のクリアを確認。報酬として”裁縫道具ケース”、”作業空間”を授与します』


ハジメはたっつーを連れて夕方には大森林の最寄りの街アリスまで帰ってきていた。宿屋の部屋を取った時、宿の店員から

「あれ、お客さん。今日は大森林にお泊りじゃ?」

と言われた。少なくても塔にある街の依頼で1日は過ぎている。その前後を合わせると3日は経過していると思っていた。しかし、店員が言うには今朝ハジメが旅立ったと言う。

「・・・ちょっと、処理を急ぐ薬草が見つかったので、一回帰ってきました・・・」

と言うと「薬って色んなことしないといけないんですね」と納得したようだった。取りあえず4泊分の部屋を予約しておく。ハジメはベッドにごろりとなった。明日は1日まったり休んで明後日からもう一度薬草の採集に向かう予定にした。そして夕飯を食べた後、すぐに寝息を立てていた。

翌朝、ハジメが得たスキルを確認する。裁縫道具ケースはバラバラに入っていた裁縫道具がケースに全て収まっており、『成長する裁縫道具セット』となっていた。ハジメはそれをアーロンのくれたトランクへ仕舞った。どんどん人に見せられないモノが増えていく。ため息を吐きそうになったが、それはこの後の報酬を見てからにしよう。

 もう1つの報酬、”作業空間”は失伝魔法に属するもので、今のところ、調剤室と裁縫室が作れた。裁縫室は作業台や5体のマネキンが配置されていた。マネキンはセットの巻き尺で測定するとその通りに変形してくれ、確認しながら作ることが出来るようになっていた。また調剤室は調剤机が設置されており、裁縫室にはなかった扉があり、そこを開けるとクーラの街の自分の薬草畑くらいの大きさの畑が一面に広がっていた。ハジメはその日の残りの時間を使って、3面を耕し、畑に薬草と魔素草、治癒草を植えておいた。ハジメがその空間から外に出たときには街は夕暮れに染まっていた。どうやら”作業空間”では時間が流れているようだ。

そして翌日、ハジメはたっつんを連れてもう一度大森林へと来ていた。新しい薬草の採集をするためであり、ハジメの左手には『万物の書』が握られている。探し始めて5時間ほど経過し、お昼ご飯は終わり、おやつの時間近くになった頃、赤い実が鈴なりについた植物とその隣に同じように黄色の実を付けたものを見つける。ハジメはそれを鑑定する。万物の書に掲載されるのはあくまでハジメが素手で触ったモノに限るようだった。植物の中には素手で触るとカブレたり棘を持ち自衛している存在は数多くある。それを素手で触るというのはかなりのリスクを負うことになるで、彼は触る前に鑑定を掛けているのだった。

エピ草:赤く熟れた実でオフェンスポーションを作ることが出来る。品質は普通。1週間に3回ほど採集できる。

デフ草:黄色く色づいた実でディフェンスポーションを作ることが出来る。品質は普通。1週間に3回ほど採集できる。

ハジメはそろそろ赤くなるだろう空を見上げてアリスの街へ帰ることにした。

「たっつん、帰るよー」

と声を掛けると上空からタツノオトシゴが

「はいですぞー」

と返事をした。そしてどさっとハジメの目の前に1羽の鳥が落ちて来た。

「たっつん・・・・」

ハジメはやれやれといいながらタツノオトシゴを見る。

「オイラの餌ですぞ」

となんだか威張ったように言っている。ハジメがアイテムボックスにその鳥を仕舞っているうちにハジメの髪に尻尾を巻きつけて固定させる。たっつんは移動の時はこのスタイルであり、お腹が空くと自分で狩りに出かけていくのだ。因みにタツノオトシゴは肉食であるが、普通は目の前にそれが来るまでじっと待つ習性なのだが、この世界のその存在は自分で狩りに出かけるらしかった。最初はこんなふよふよの移動では狩れないと思っていたハジメだったが、たっつんは口から行きたい方向と反対方向に風を吹き出しかなりのスピードで移動したのを見たとき、かなりの衝撃が走った。どうやら得意な風魔法は口からしか発揮できないらしく、攻撃方法は単純な体当たりボディーアタックだったが、その攻撃回数はえげつなかった。1分もせずに冒険者ギルドで言うAランクのモンスターサンダーバードを倒したのだ。この1匹でたっつんの約4か月分のご飯となる。それが先ほどのモノと合わせて10体程ハジメのアイテムボックスに入っている。そう4年分の食事を1日で得ているのだ。

そして翌日もハジメは大森林に向かおうとアリスの街の出入り口を過ぎてハヌマーンがドロップした馬の彫刻を大地に置き、

「コール」

と言うとその手のひら大の彫刻は命を吹き込まれ動き出し、徐々にハジメが乗れる大きさまで多くなった。バヤールは綺麗な赤い毛並みとブロンドのたてがみを持つ魔法の馬で、その背に乗る人数によってその大きさを変えることができ、その速度も疾風かと言わんばかりである。

「バヤール・・・いや、ここはパトリシアと呼ぼう。パトリシア、ゆっくり森に向かって」

とハジメが伝えると、ゆっくりと歩き始めた。ハジメの脳裏に”はいよーパトリシア、はいよー”というフレーズが浮かんでいたのは言うまでもない。30分もかからず大森林の前まできたハジメは「リターン」でバヤールを彫刻に戻しアイテムボックスに入れた。

そうして残りの3日間採集して手に入れた新しい材料はエピ草とデフ草だけであった。


祭壇前で一人の修道女が祈りを捧げている。そこへ足音が近づいてきたがある一定の所まで近づくと歩みを止めた。修道女はその後暫く祈りを捧げた後、振り返るとそこには1人の老人が立っていた。修道女が振り返ったのを見て取ると再び近づき始める。どうやら祈りが終わるのを待っていたらしい。

「どうですか?

そう呼ばれた老人は修道女に向かってか、神に向かってか片膝をつき頭を垂れて言う。

「予言者殿、順調でございます。今のところ、ゴブリンとオークに王が生まれました・・・」

「そうですか、予定通りですわね・・・」

集めるものと呼ばれた老人の回答に予言者の口は綻んだ。

「えぇ、そうでございます。あと少しでオーガの王も生まれましょう・・・」

老人はそう答えながら口元を怪しく釣り上げた。


ハンドブック 9項目目

9-6.妖精と契約しよう:上書きClear!

ハンドブック 10項目目

10-9.4属性の精霊を使役しよう:上書きNot Clear!

10-10.妖精と魔力を交わそう:上書きClear!

10-11.報酬:所有地が破棄

ハンドブック 12項目目

12-6.風妖精と契約しよう:上書きClear!

ハンドブック 13項目目

13-9.東の塔の攻略:Clear!
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