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第4章 人材
82.執事長とメイド長を雇うみたいです
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とスムスがハジメを紹介する。バーナードは土下座の体勢になり頭が地面に埋まるのではないかと思うほど床にすりつける。
「どうか、どうか、よろしくお願いします」
と繰り返す。それを見た妻と娘もそれに倣った。ハジメとスムスが3人を立たせてソファーに座らせるのに10分程の時間が掛かった。それだけ切羽詰まっていたということだろう。それに店まで売ったという理由もわかった。そもそも店を売らず商業ギルドにお金を借りるほうが面倒がなかったのだ。そうすれば商売しながら返済することが出来るし、信頼のあるレストランならばギルドも問題なくお金を貸しただろう。しかし年頃の娘がいるとなると話は変わる。どうしても町中に息子が犯罪者であることは知られてしまう。そうなると客足は遠のくだろう。夫婦だけならば我慢すればなんとかなるかもしれない。支払うことが出来なければ借金奴隷になればいいだけの話である。しかし年頃の娘が居るというならば話が変わってくる。両親が奴隷ともなれば結婚できる可能性はほぼ無くなるし、仮に奴隷になる前に結婚したとしても、借金の返済義務が娘夫婦に生じてくる。その為に離縁される充分な理由になるし、結婚しないという選択肢を男は取る。それならば確実に返済し、奴隷にならずに済む方法を探すだろう。そしてその夫婦は店を売るという選択肢を選んだのである。
どうします?と言う顔でスムスはハジメを見てくる。
「分かりました。条件としてはクーラの街に住んでい頂けること、お給金は歩合給で最低1日金貨1枚ですが、大丈夫ですか?」
とハジメが告げると3人は戸惑いの表情を浮かべる。
「・・・では、歩合給で最低金貨2枚では?」
とハジメが言うとスムスが
「ハジメ様、歩合給とは何でしょうか?バーナードさんたちもそうですが、私も分かりません」
と3人に代わってハジメに問う。
「え?金額が不服って訳じゃなく?」
とハジメが思わず発すると、4人は首を縦に振る。
「・・・歩合給というのは稼いだお金の何割かをお給料とするということです。他はわかりませんが私は稼いだお金の半分をお渡ししようと思っていますが・・・」
残りの50%は野菜や小麦などの購入費などになる予定である。バーナードを雇うことが出来れば料理人が6人になる。そうなれば料理人を2人ずつ男女棟へ派遣でき暖かいご飯を提供することが出来き、ハジメの家に残った2人でご飯を作って貰えるのである。さらに後1-2人雇うことが出来ればバーナード一家にはマーケットの一部をレストランに改築してレストランにしようかなという考えがハジメの頭に浮かんでいた。そしたら行商に来た人もご飯が食べれて便利かなと思ったのだ。
こうしてバーナードを雇うことにしたのだった。ハジメは後日面接するというコウの付き添いをスムスにお願いしておき、3人を連れてギルドを出ようとしたとき、2人の男がハジメたちの前に立ちふさがったのである。にも拘わらず藍は特に反応をしなかった。ということは危険はないということだろう。とハジメが思っているとベッキーさんが反応した。
「トム・・・」
そういって二人の世界を作り始める。ハジメが置いて行かれていると、エイダさんが、
「トムさんは夫の幼馴染の宿屋の息子で厨房を担当していました。2人は婚約していたんですが、今回の事で私たちの方から破談にさせて貰ったんです」
と説明してくれた。
「おい、バーナード。話がある顔かせや。エイダちゃん、こいつ一瞬借りるからな」
と無表情の男が声を掛ける。あれは誰?と言う顔でエイダを見ると
「はい。この度は本当にご迷惑おかけしまして・・・」
とエイダが謝罪するとバーナードを連れていく。それを見送ったあとハジメの顔に気づいたのか
「宿屋の隠居でバーナードの幼馴染のウォーレスです」
出来る女エイダの説明が入った。取り残されたハジメと藍、エイダはギルドの前の中央公園のベンチに腰を掛ける。時間が掛かるだろうと思ったのだ。藍が2人に屋台で飲み物を買って来てくれた。一息ついて周囲を見渡すと継ぎ接ぎの多い服を着た子どもの姿が多く目に映る。
「ねぇ、藍、あの子達って?」
と問うとエイダが
「戦争があったことはご存知でしょう。ご両親が亡くなる子も多くて・・・」
と答える。続けて藍が
「この国からも利益を得ようとする貴族様が居らしたようで、先日その家が他国の政治介入の罪で取り潰しされたと聞きました。その為働いていた方々も解雇されたようでございます」
と言う。
「えぇ。その家の執事長さんとメイド長さんは生き残った部下に新しい職場を提供しました。亡くなった人の子どもたちを孤児院に入れようとされたのですが、満杯であると言われたそうです。今はお二人が面倒を見ているようですが、2人ともお給金が良くなかったそうで、貯蓄がそんなになく・・・・」
レストランを経営していただけはある。情報網が凄い。ハジメが藍に目配せすると、その姿が雑踏に消えていった。1時間ほどして藍が2人の所に帰ってくる。
「まだお二方の話し合いは終わらないのですか・・・・」
とやや呆れ気味に言う。
「うん。そうみたい。まぁそのお陰でまったりできるんだけどね」
とハジメが言うと、エイダが
「すみません。私ちょっと様子を見てきます」
と言いハジメと藍の側を離れた。
「もう間もなく元執事長とメイド長が来ます」
とハジメに言う。そして数分後年配の男女が現れる。
「こんにちは、私どもに何か話があるとお伺いしましたが」
と執事の方が尋ねてくる。
「えぇ、実は執事長とメイド長が出来る方を探しておりまして。できれば住み込みでお願いしたいのですが。申し遅れましたが、私は調剤師のハジメと申します」
と言うとメイド長の方がほんの僅かに目を見開く。彼女はハジメのことを知っているようだった。執事は顔色を変えず、
「有難い申し出なのですが、お断りさせていただきます」
と言うと、2人で頭を下げる。
「あぁ、子どもたちも一緒で構いませんよ。私の所に孤児院もありますので」
と断る理由を無くす。
「え?本当でございますか?」
と元執事長が驚く。その時背後からザ・執事の恰好をした陽の声がした。
「旦那様、お帰りが遅かったのでお迎えにきました。旦那様、執事長様とメイド長様が見つかったのですね。これで私どもは旦那様専属に戻れるのですね。安堵しました」
「本当に私も肩の荷が下りた思いです、旦那様」
と陽の言葉に藍も発言する。もともとこの世界で生きている人で執事長とメイド長が務まる人を探していたのだ。ハジメは世界の常識はある程度知っているが様々な細部を知らないし、陽と藍は細部を無視した動きが出来る。従って一般的な常識人が欲しかったのである。
その後ハジメは置き去りにされ、陽と藍によって執事長ウィリアムとメイド長パトリシアの雇用が決定した。2人と子供たちは明日の朝陽が迎えに来ることになったのであった。
そしてそこでエイダたちが帰ってくる。エイダとベッキーの目には泣いた跡があった。どうしたのか聞くとベッキーとトムの結婚が決まったそうである。バーナードの顔は赤くなっており、どうやらウォーレスに殴られたのだろう。まぁ結婚とは目出度いことである。
「すまねぇ、あんたがハジメさんかい。バーナード達をよろしくな。ついでにこいつもよろしくな」
とウォーレンは息子のトムをハジメの前に押し出す。
「初めまして、私はトムと言います。これからハジメさんの元で働かせていただきます」
と頭を下げる。ハジメの頭上に?が浮かんでいると、
「元々僕は結婚したら婿養子になる予定だったんです。うちの宿屋は兄夫婦が跡を継いでいますし、バーナードさんの所は息子さんは家を出て行っていたので、ベッキーと跡を継ぐことになっていたんです。それで厨房で料理の勉強をしてたんです」
とトムが説明してくれる。
「そういう訳で頼むな」
と言いがははとウォーレンは笑った。こうして、コウに付き添っていったギルドで6人+子供が領地に増えたのだった。
「どうか、どうか、よろしくお願いします」
と繰り返す。それを見た妻と娘もそれに倣った。ハジメとスムスが3人を立たせてソファーに座らせるのに10分程の時間が掛かった。それだけ切羽詰まっていたということだろう。それに店まで売ったという理由もわかった。そもそも店を売らず商業ギルドにお金を借りるほうが面倒がなかったのだ。そうすれば商売しながら返済することが出来るし、信頼のあるレストランならばギルドも問題なくお金を貸しただろう。しかし年頃の娘がいるとなると話は変わる。どうしても町中に息子が犯罪者であることは知られてしまう。そうなると客足は遠のくだろう。夫婦だけならば我慢すればなんとかなるかもしれない。支払うことが出来なければ借金奴隷になればいいだけの話である。しかし年頃の娘が居るというならば話が変わってくる。両親が奴隷ともなれば結婚できる可能性はほぼ無くなるし、仮に奴隷になる前に結婚したとしても、借金の返済義務が娘夫婦に生じてくる。その為に離縁される充分な理由になるし、結婚しないという選択肢を男は取る。それならば確実に返済し、奴隷にならずに済む方法を探すだろう。そしてその夫婦は店を売るという選択肢を選んだのである。
どうします?と言う顔でスムスはハジメを見てくる。
「分かりました。条件としてはクーラの街に住んでい頂けること、お給金は歩合給で最低1日金貨1枚ですが、大丈夫ですか?」
とハジメが告げると3人は戸惑いの表情を浮かべる。
「・・・では、歩合給で最低金貨2枚では?」
とハジメが言うとスムスが
「ハジメ様、歩合給とは何でしょうか?バーナードさんたちもそうですが、私も分かりません」
と3人に代わってハジメに問う。
「え?金額が不服って訳じゃなく?」
とハジメが思わず発すると、4人は首を縦に振る。
「・・・歩合給というのは稼いだお金の何割かをお給料とするということです。他はわかりませんが私は稼いだお金の半分をお渡ししようと思っていますが・・・」
残りの50%は野菜や小麦などの購入費などになる予定である。バーナードを雇うことが出来れば料理人が6人になる。そうなれば料理人を2人ずつ男女棟へ派遣でき暖かいご飯を提供することが出来き、ハジメの家に残った2人でご飯を作って貰えるのである。さらに後1-2人雇うことが出来ればバーナード一家にはマーケットの一部をレストランに改築してレストランにしようかなという考えがハジメの頭に浮かんでいた。そしたら行商に来た人もご飯が食べれて便利かなと思ったのだ。
こうしてバーナードを雇うことにしたのだった。ハジメは後日面接するというコウの付き添いをスムスにお願いしておき、3人を連れてギルドを出ようとしたとき、2人の男がハジメたちの前に立ちふさがったのである。にも拘わらず藍は特に反応をしなかった。ということは危険はないということだろう。とハジメが思っているとベッキーさんが反応した。
「トム・・・」
そういって二人の世界を作り始める。ハジメが置いて行かれていると、エイダさんが、
「トムさんは夫の幼馴染の宿屋の息子で厨房を担当していました。2人は婚約していたんですが、今回の事で私たちの方から破談にさせて貰ったんです」
と説明してくれた。
「おい、バーナード。話がある顔かせや。エイダちゃん、こいつ一瞬借りるからな」
と無表情の男が声を掛ける。あれは誰?と言う顔でエイダを見ると
「はい。この度は本当にご迷惑おかけしまして・・・」
とエイダが謝罪するとバーナードを連れていく。それを見送ったあとハジメの顔に気づいたのか
「宿屋の隠居でバーナードの幼馴染のウォーレスです」
出来る女エイダの説明が入った。取り残されたハジメと藍、エイダはギルドの前の中央公園のベンチに腰を掛ける。時間が掛かるだろうと思ったのだ。藍が2人に屋台で飲み物を買って来てくれた。一息ついて周囲を見渡すと継ぎ接ぎの多い服を着た子どもの姿が多く目に映る。
「ねぇ、藍、あの子達って?」
と問うとエイダが
「戦争があったことはご存知でしょう。ご両親が亡くなる子も多くて・・・」
と答える。続けて藍が
「この国からも利益を得ようとする貴族様が居らしたようで、先日その家が他国の政治介入の罪で取り潰しされたと聞きました。その為働いていた方々も解雇されたようでございます」
と言う。
「えぇ。その家の執事長さんとメイド長さんは生き残った部下に新しい職場を提供しました。亡くなった人の子どもたちを孤児院に入れようとされたのですが、満杯であると言われたそうです。今はお二人が面倒を見ているようですが、2人ともお給金が良くなかったそうで、貯蓄がそんなになく・・・・」
レストランを経営していただけはある。情報網が凄い。ハジメが藍に目配せすると、その姿が雑踏に消えていった。1時間ほどして藍が2人の所に帰ってくる。
「まだお二方の話し合いは終わらないのですか・・・・」
とやや呆れ気味に言う。
「うん。そうみたい。まぁそのお陰でまったりできるんだけどね」
とハジメが言うと、エイダが
「すみません。私ちょっと様子を見てきます」
と言いハジメと藍の側を離れた。
「もう間もなく元執事長とメイド長が来ます」
とハジメに言う。そして数分後年配の男女が現れる。
「こんにちは、私どもに何か話があるとお伺いしましたが」
と執事の方が尋ねてくる。
「えぇ、実は執事長とメイド長が出来る方を探しておりまして。できれば住み込みでお願いしたいのですが。申し遅れましたが、私は調剤師のハジメと申します」
と言うとメイド長の方がほんの僅かに目を見開く。彼女はハジメのことを知っているようだった。執事は顔色を変えず、
「有難い申し出なのですが、お断りさせていただきます」
と言うと、2人で頭を下げる。
「あぁ、子どもたちも一緒で構いませんよ。私の所に孤児院もありますので」
と断る理由を無くす。
「え?本当でございますか?」
と元執事長が驚く。その時背後からザ・執事の恰好をした陽の声がした。
「旦那様、お帰りが遅かったのでお迎えにきました。旦那様、執事長様とメイド長様が見つかったのですね。これで私どもは旦那様専属に戻れるのですね。安堵しました」
「本当に私も肩の荷が下りた思いです、旦那様」
と陽の言葉に藍も発言する。もともとこの世界で生きている人で執事長とメイド長が務まる人を探していたのだ。ハジメは世界の常識はある程度知っているが様々な細部を知らないし、陽と藍は細部を無視した動きが出来る。従って一般的な常識人が欲しかったのである。
その後ハジメは置き去りにされ、陽と藍によって執事長ウィリアムとメイド長パトリシアの雇用が決定した。2人と子供たちは明日の朝陽が迎えに来ることになったのであった。
そしてそこでエイダたちが帰ってくる。エイダとベッキーの目には泣いた跡があった。どうしたのか聞くとベッキーとトムの結婚が決まったそうである。バーナードの顔は赤くなっており、どうやらウォーレスに殴られたのだろう。まぁ結婚とは目出度いことである。
「すまねぇ、あんたがハジメさんかい。バーナード達をよろしくな。ついでにこいつもよろしくな」
とウォーレンは息子のトムをハジメの前に押し出す。
「初めまして、私はトムと言います。これからハジメさんの元で働かせていただきます」
と頭を下げる。ハジメの頭上に?が浮かんでいると、
「元々僕は結婚したら婿養子になる予定だったんです。うちの宿屋は兄夫婦が跡を継いでいますし、バーナードさんの所は息子さんは家を出て行っていたので、ベッキーと跡を継ぐことになっていたんです。それで厨房で料理の勉強をしてたんです」
とトムが説明してくれる。
「そういう訳で頼むな」
と言いがははとウォーレンは笑った。こうして、コウに付き添っていったギルドで6人+子供が領地に増えたのだった。
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