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第4章 人材

80.メイドを雇うみたいです

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「そうですね・・・。彼らはなぜ奴隷になったんでしょうか?」

とハジメがイヴァンカに聞く。

「それは彼らから直接聞く方が良いでしょう」

と言い、受付の男に再度指示を出す。暫くして男が奴隷を5名連れてくる。入ってきたのは人族の男が2人、女が1人と兎族の男女各1人。彼ら彼女らは酷く怯えたような顔をしている。ハジメがイヴァンカの顔を見ると、

「ハジメ様、この5名が料理人の奴隷です。それぞれ自分が何故奴隷に堕とされたのか言いなさい」

と命令した。一番右に居た女性が

「貴族様のお洋服にお茶を零してしまいました・・・」

ハジメはそれを聞き”えっ?”という表情でイヴァンカを見る。

「彼女の罪状は不敬罪です。本来ならそこで死罪になっても仕方ないのですが、その貴族の奥様の取り成しで奴隷落ちで済みました」

と奴隷商が言う。その隣の人族の男が

「私はご主人の好みの味に出来ず売りに出されました」

と下を向いて言う。続いてその隣の男が

「私は弟が大罪を犯し奴隷になりました」

と淡々と言う。

「彼の弟も貴族家で料理人をしていましたが、彼の作ったもので貴族一家が数日寝込むことになりました。その為弟は死罪、家族は奴隷落ちしました」

受付の男は淡々と追加説明していく。

「私たち夫婦は・・・」

と兎族の男が言いかけて黙り込む。

「彼は妻が襲われていたので助けに入ったのですが、その反撃で打ち所が悪く人が2人死んでしまいました。そのうちの1人が村長の遠い親戚であったために夫婦で奴隷落ちしました」

と言う。理不尽すぎる理由である。

「そんな理由で?」

とハジメはイヴァンカを見る。

「ハジメ様、犯罪奴隷でもこのような理由の人々もいるのです。この前部屋に居た犯罪奴隷は盗賊や殺人でしたが」

と伏し目がちに伝える・・・。

「そうなんですね・・・。なんとも酷い・・・・」

ハジメはそう言ってかぶりを振って

「5人とも私の所で働いてくれますか?給金は1日金貨1枚なんですが」

と問うと5人は驚いた顔をする。イヴァンカが

「ハジメ様は奴隷に賃金を渡すのですか!?」

と5人の奴隷に変わって問う。それに対してあい

「旦那様は働いた方にはそれに応じてむくいるべきとお考えなので。追加しておきますと、基本的な食事と衣類は無料です。お給金は個人的な趣味に使っていただくようになります。お休みは9日に1日、1週間で1日お休みを取って頂くようになります。これは旦那様命令ですので、守って頂きます」

と答える。左から2番目の味が合わなくて再度売りに出された男が

「給金だけでなく、休みまで??」

と思わず呟く。

「えぇ、それが旦那様の普通ですね」

こうしてハジメは5人の料理人、人族ノル、その隣のノーリ、家族が犯罪を犯し奴隷になったセロ、兎族の夫婦の夫のコン、妻のリンを配下に加えた。取りあえず支度をするために5人は一度控室に戻す。

その後3人の御者が出来る男の奴隷が案内されてくる。

「ハジメ様の左から馬族のアインツ、人族のウノとエンです」

ウノとエンは各々馬車屋を経営していたが失敗し借金奴隷へ、アインツは元々奴隷で貴族の元で御者をしていたが、その貴族の不正が発覚し取り潰しとなり、再度売られることとなっていた。

この世界の貴族って頭振ったらカランコロンと鳴るのだろうか・・・・。

そういう訳で計8人を130万弱で買い取ったのだった。

それから2週間くらいすると私有地の動きはそこそこスムーズに回るようになっていた。既にハジメの所有地クーラに商人たちはポーションを買い求めに訪れるようになっていた。もうしばらくするとマーケットが使用できるようになることを告げると弟子や丁稚などを送り込むという商人も出始めている。イブの街の料理人見習いには公園の一部を開放して屋台を出すようにした。使用料は1日3000シード、商品1個がおよそ銅貨5枚から7枚(500ー700s)なので、とてもリーズナブルであると喜ばれ、大体1日に4つくらいは屋台が出ている。そのうち2つは独立したばかりの料理人であり、宿屋に泊まって商売をしている。ポーションを買いに商人たちが来るのでかなり売り上げがあるようだ。宿は屋台を出すときは素泊まりで1000sとして+500s出せば朝食が付く仕組みにしている。朝食は宿でも食べられるし、屋台街で早くから準備しているときは片手間に食べられるものを配達してくれるという仕組みにした。子供たちが学校へ行く前に出来るちょっとしたアルバイトになっていた。最初はハロルドたちが自腹で払う予定だったようだが、ハジメが「働くのだから、給金は出します」と言い、1回の配達につき100sを支給することになった。

そんな子ども達は楽しそうに勉強をし、遊んでいる。やはり子供たちの笑顔が見えるということは幸せだなとハジメは思っていた。それのせいか大人たちも働いている最中でも時折笑顔が見えるようになった。暗い顔よりは明るい顔である。それに触発されて独身族たちが結婚したらいいなぁと思っている。

3度の食事はハジメの家のキッチンで5人の料理人によって作られ、3人の御者によって男女の各棟へと配達される。唯一昼食だけは子供たちと教員の分は勉強している教会へと配達される。親にとっても昼間ゆっくりと大人な時間を過ごせるのはいいだろうという配慮でもある。

夕方になると畑で取れた野菜や畜産場で取れた肉、乳は宿屋とハジメの家、家族棟へと運ばれている。民主主義に慣れていたハジメ的には社会主義ぽくて違和感を感じるのだが、代替案が浮かばないのだ。しばらくはこのままにするしかない。


なんとか私有地が落ち着いてきたこともあり、ハジメとひかりまいは今日、リアルメイドさんを求めてイブの街から6時間ほどの場所にあるメイド養成所に来ている。この世界のメイド養成所は最低半年、長くて3年としか決められておらず、所属期間は個人的能力によるところが大きい。つまり試験にパスさえすれば最短で半年で卒業できるのである。しかしその内容は難しく、平均すると2年で卒業する人が多い。今の季節は早秋で、次の卒業は年末となる。卒業が決まった新人メイドはそろそろ勤務先を探す時期になっている。

今ハジメたちがいるブリュンヒルデメイド養成所が案内してくれている先生によるとその歴史は古いらしく、かつては王家に仕えるメイドを輩出したこともあるとのことであった。現在王家は専属の養成所を作っており、そこからのみ採用している。そこの採用条件は子爵以上の女子と決まっているそうで、王家に雇用されなくてもデユーク公爵マーキス侯爵アール伯爵の貴族の屋敷へと雇用されているらしい。その下のバイカウント子爵バロン男爵フロンティア辺境伯などはこのブリュンヒルデメイド養成所から出ることが多い。しかしバイカウントやバロン、フロンティアくらいの貴族となると収入は少なく毎年新人を入れるということは財政的にしないのが普通である。この養成所の近くに領地を持つ貴族は一昨年、昨年と続けて新人を入れたため、今年は求人が少ないのだそうだ。養成所にとっては問題だが、ハジメにとってはラッキーなことである。
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