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第3章 航路
72.出航するみたいです
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船名をウガリットと命名した後皆を載せモーリーが船長となり近くの島まで運航させることになる。出航する前にモーリーが船内を案内してくれる。ジェフ一家とリナリー、コウは甲板で景色を見たりしてはしゃいでいる。その為|航を警護として配置する。勿論姿は消した状態でである。従って案内されるのはハジメと残りの精霊たちである。
「船は4層に分かれてるんや。一番下は貯留海水が溜まる場所やから、案内はせんでもええな。海水の出し入れは船長室で出来るようになっておる。一応修理のために降りれはするけど、鍵が必要や。鍵は船長室にでも置いとったらええし。一応渡しておくな」
とモーリーはハジメにグレー色の大小1つずつ宝石を1組手渡す。
「このキーストーンに登録した者だけがこの階段を下りることが出来るんやで。登録してない者は階段降りても上に戻される仕組みになっとる。一度降りてみる?」
と言われハジメがやってみる。精霊ズは人間の仕組みが当てはまるのか分からないためにそうした。ハジメが階段を下まで降り切ったとき、不意に眩暈がしたかと思うと階段の降りる前の場所に居たのである。
「まぁこんな感じやな。取りあえずハジメ殿を登録して置くわ。登録、ハジメ」
モーリーが大きい方のキーストーンを持ち上げ言うと、ハジメの体をモヤモヤした魔力が包み込む。どうやらハジメの魔力を登録しているようである。数秒後、グレーの石が仄かに光る。それを見届けると大小の宝石をくっつけ、さらに
「管理者変更、モーリー・レジネッタからハジメへ」
モーリーが続けると大小の石が交互に光る。そして声が聞こえる。
『管理者をハジメへ変更しました』
「声聞こえたかいな?」
とモーリーが言うので頷く。石を離し、
「これで無事登録者変更やな。登録するときはさっきやった通りやで。管理者は副管理者を1人決めることが出来る。管理者は登録、除名が出来る。副管理者も登録、除名が出来るけど、管理者の認証が必要になるっちゅーことやな」
「承認?という事は管理者も鍵の近くに居ないといけないってことですか?」
とハジメが問う。
「いや、この大きい方が管理者の石で、小さい方が副管理者の石になっとるんや。管理者の変更は大小の石をくっつけんとあかんけど、それ以外の登録は遠くでも出来るで。副管理者が登録しようとすると大きい方の石からさっき聞いた声がするはずや。それに対して、承認か拒否か選べるようになっとる。せやから、管理者の石はオーナーが、副管理者の石は船長が持つのが普通やな。それでこの最新のキーストーンの凄いところはやなー、この石を持つもの同士で会話が出来るっちゅーところなんや。緊急事態とか船底の故障の時に臨時で人手がいるやろ?その時に先にオーナーに連絡取れるんや。以前のは承認、拒否って出るだけやったから、会話できるようになったことで、状況を詳しく知れるようになったんやで。魔力は多めに必要なんがデメリットやけどな」
という。状況が分かれば対応も早く行うことが出来るのだ。確かに、有用である。
「それでっと。3階の案内から始めるで」
と案内を始める。3層目は縦50m×横50m×高さ3mの荷物室が18室、左9、右9室で、左船尾には上下へ続く階段があり、右側の中央には歌舞伎などの舞台で使われる迫の装置がある。迫の横には操作室があり、そこには風魔法の魔石が置いてあり、それを操作することで迫は上に登ったり下に下がったりするのだ。簡単に言うと魔力を原動とするエレベーターである。ここから荷物の出し入れが行えるようである。
2層目は10人部屋が4つ、トイレとシャワー室が1つずつでこれは船員室。その隣は迫が昇降する空間となっている。そして10人部屋の大きさの予備室が2つ。更に6畳の個室が12室、12畳の大きめの個室4つある。
1層目には船尾から1/3の部分から室内になっており、室内の中央に階段があり、そこを上ると船長室兼運転席であり、その階段の正面には備品庫、左船尾には2層目へと続く階段がある。
その後モーリーが船長兼操縦士となり、近くの島々を観光することになった。勿論ナハルの杖から水を出しながらである。それを見たジェフが水が出ることの意味があるのかとハジメに聞いてきたが、ハジメは「浪漫」だと答えていた。勿論彼らにはまったく理解できなかったようである。
「これくらいなら船長ならだれでもできることやな」
とその間も笑いながら1人で船を操っていた。操縦するだけなら1人でも問題ないらしい。荷物の上げ下ろしや遠方へ行くときはやはりそれなりの人数が必要となる。ここでも人材登用が課題となるのだった。
そうして2時間くらいのクルージングを楽しんだあと帰港した。港の外に停泊させるのはリスクが高いため、港の中へと停留させた。その後モーリーの馬車を見送り、自分たちもイブの街へ帰る。ハジメ以外は初めての船に興奮しまくり、帰りの馬車では熟睡することになった。あのリナリーさえも眠ったのだから、その興奮の高さがうかがえるだろう。
こうして社員旅行兼処女航海は無事に終わりを迎えたのだった。
「旦那様、まずは人材ですね」
とハジメの横に座っていた陽が静かに言う。そうこれからはそこが大問題なるのである。いつから目を覚ましていたのか、ジェフが2人に声を掛けて来た。
「あのぉ、旦那ぁ。実は俺の弟が船長をしてたんですが、エルフ国へ行くことが無くなったんで仕事がなくなったんでさぁ、今職を探しているところで・・・。もし良かったら雇って貰えやせんか?」
と言う。渡りに船であった。
「取りあえず一回会ってみたいな」
とハジメが言うとジェフは嬉しそうに次の定休日にでも連れてくるというので、その時に面接を行うことにしたのだった。
そして次の定休日となった。コウとキルトは市場へ出かけ、リナリーとマーサは冒険者ギルドへ仕事に行っている。店に残っているのはジェフとハジメ、精霊ズだけであった。
朝食が終わり一息ついた時、店の玄関がノックされる。恐らくチャドであろう。扉を開ける前に誰何すると小さな蚊の鳴くような声で
「あの・・・兄に言われてきました、チャドです・・・・」
という。ハジメはあれ?船長じゃなかったっけ?と思いつつハジメが扉を開けるとそこには筋肉隆々で身長2m近くあるような大男が両手を前にしてもじもじしながら立っている。ハジメが言葉を失っていると、
「こらぁ、チャド。もうちっとはきはき喋らんかっ。そんなんだから再就職先が見つからないんだぞ」
とジェフが言う。
「すいやせん、旦那ぁ。昔っからこいつはこんなんで・・・・。船に乗るとしっかりするんでさぁ。陸だとこんなんなんですが・・・」
と謝る。
「・・・そうなんだ・・・・。取りあえずチャドさん、中へどうぞ」
と促す。店内のテーブルに座って貰うと藍がお茶を3人分運んできた。お茶を飲むために持ったカップは、海の男の手にとってはとても小さく、薬指と小指は行き場無くピンと立っている。
「チャドさんは船長になって長いんですか?」
とお茶が置かれるのを待ってハジメが問う。
「・・・はい。クビになるまで10年程乗っていました。戦艦の船長になっては5年くらいです・・・・」
とモジモジしながら言う。
「えっと、ウチの船は商船ですが、大丈夫でしょうか?」
と更に質問する。
「・・・はぃぃ。船の操作方法は一緒なんで、問題はありません・・・・」
と答える。その応答にジェフが苛々しながら言う。
「旦那ぁ、こいつはこれでも国のトップクラスの腕前で、4年前に表彰を受けたんですが、陸ではこんな感じになってしまうんで、それ以降は選考すらされず仕舞いなんでさぁ。今回エルフ国が無くなったことで軍縮の流れになり、真っ先に辞めさせられたんです。操縦の腕間は王国1って言われてたんですけど」
「なるほど・・・恥ずかしがり屋ってことかぁ・・・」
とハジメが納得する。しかし実際船長が陸の上でこんな感じであればトラブルになった時に困りはしないだろうか。船員同士のいざこざの時に何も出来なければそれもまた船長としての資質を問われることもあるだろう・・・。悩むところである。
取りあえずハジメは次の定休日に船に乗せてみることにした。操縦に関しては問題ないだろうとは思ったが、勝手が違う可能性もあるからである。
そして1週間後、ハジメは前の週の自分の考えを後悔したのである。そう、心の底から・・・・。
ハンドブック 12項目目
12-10.船に乗ろう:Clear!
12-11.報酬:奴隷
「船は4層に分かれてるんや。一番下は貯留海水が溜まる場所やから、案内はせんでもええな。海水の出し入れは船長室で出来るようになっておる。一応修理のために降りれはするけど、鍵が必要や。鍵は船長室にでも置いとったらええし。一応渡しておくな」
とモーリーはハジメにグレー色の大小1つずつ宝石を1組手渡す。
「このキーストーンに登録した者だけがこの階段を下りることが出来るんやで。登録してない者は階段降りても上に戻される仕組みになっとる。一度降りてみる?」
と言われハジメがやってみる。精霊ズは人間の仕組みが当てはまるのか分からないためにそうした。ハジメが階段を下まで降り切ったとき、不意に眩暈がしたかと思うと階段の降りる前の場所に居たのである。
「まぁこんな感じやな。取りあえずハジメ殿を登録して置くわ。登録、ハジメ」
モーリーが大きい方のキーストーンを持ち上げ言うと、ハジメの体をモヤモヤした魔力が包み込む。どうやらハジメの魔力を登録しているようである。数秒後、グレーの石が仄かに光る。それを見届けると大小の宝石をくっつけ、さらに
「管理者変更、モーリー・レジネッタからハジメへ」
モーリーが続けると大小の石が交互に光る。そして声が聞こえる。
『管理者をハジメへ変更しました』
「声聞こえたかいな?」
とモーリーが言うので頷く。石を離し、
「これで無事登録者変更やな。登録するときはさっきやった通りやで。管理者は副管理者を1人決めることが出来る。管理者は登録、除名が出来る。副管理者も登録、除名が出来るけど、管理者の認証が必要になるっちゅーことやな」
「承認?という事は管理者も鍵の近くに居ないといけないってことですか?」
とハジメが問う。
「いや、この大きい方が管理者の石で、小さい方が副管理者の石になっとるんや。管理者の変更は大小の石をくっつけんとあかんけど、それ以外の登録は遠くでも出来るで。副管理者が登録しようとすると大きい方の石からさっき聞いた声がするはずや。それに対して、承認か拒否か選べるようになっとる。せやから、管理者の石はオーナーが、副管理者の石は船長が持つのが普通やな。それでこの最新のキーストーンの凄いところはやなー、この石を持つもの同士で会話が出来るっちゅーところなんや。緊急事態とか船底の故障の時に臨時で人手がいるやろ?その時に先にオーナーに連絡取れるんや。以前のは承認、拒否って出るだけやったから、会話できるようになったことで、状況を詳しく知れるようになったんやで。魔力は多めに必要なんがデメリットやけどな」
という。状況が分かれば対応も早く行うことが出来るのだ。確かに、有用である。
「それでっと。3階の案内から始めるで」
と案内を始める。3層目は縦50m×横50m×高さ3mの荷物室が18室、左9、右9室で、左船尾には上下へ続く階段があり、右側の中央には歌舞伎などの舞台で使われる迫の装置がある。迫の横には操作室があり、そこには風魔法の魔石が置いてあり、それを操作することで迫は上に登ったり下に下がったりするのだ。簡単に言うと魔力を原動とするエレベーターである。ここから荷物の出し入れが行えるようである。
2層目は10人部屋が4つ、トイレとシャワー室が1つずつでこれは船員室。その隣は迫が昇降する空間となっている。そして10人部屋の大きさの予備室が2つ。更に6畳の個室が12室、12畳の大きめの個室4つある。
1層目には船尾から1/3の部分から室内になっており、室内の中央に階段があり、そこを上ると船長室兼運転席であり、その階段の正面には備品庫、左船尾には2層目へと続く階段がある。
その後モーリーが船長兼操縦士となり、近くの島々を観光することになった。勿論ナハルの杖から水を出しながらである。それを見たジェフが水が出ることの意味があるのかとハジメに聞いてきたが、ハジメは「浪漫」だと答えていた。勿論彼らにはまったく理解できなかったようである。
「これくらいなら船長ならだれでもできることやな」
とその間も笑いながら1人で船を操っていた。操縦するだけなら1人でも問題ないらしい。荷物の上げ下ろしや遠方へ行くときはやはりそれなりの人数が必要となる。ここでも人材登用が課題となるのだった。
そうして2時間くらいのクルージングを楽しんだあと帰港した。港の外に停泊させるのはリスクが高いため、港の中へと停留させた。その後モーリーの馬車を見送り、自分たちもイブの街へ帰る。ハジメ以外は初めての船に興奮しまくり、帰りの馬車では熟睡することになった。あのリナリーさえも眠ったのだから、その興奮の高さがうかがえるだろう。
こうして社員旅行兼処女航海は無事に終わりを迎えたのだった。
「旦那様、まずは人材ですね」
とハジメの横に座っていた陽が静かに言う。そうこれからはそこが大問題なるのである。いつから目を覚ましていたのか、ジェフが2人に声を掛けて来た。
「あのぉ、旦那ぁ。実は俺の弟が船長をしてたんですが、エルフ国へ行くことが無くなったんで仕事がなくなったんでさぁ、今職を探しているところで・・・。もし良かったら雇って貰えやせんか?」
と言う。渡りに船であった。
「取りあえず一回会ってみたいな」
とハジメが言うとジェフは嬉しそうに次の定休日にでも連れてくるというので、その時に面接を行うことにしたのだった。
そして次の定休日となった。コウとキルトは市場へ出かけ、リナリーとマーサは冒険者ギルドへ仕事に行っている。店に残っているのはジェフとハジメ、精霊ズだけであった。
朝食が終わり一息ついた時、店の玄関がノックされる。恐らくチャドであろう。扉を開ける前に誰何すると小さな蚊の鳴くような声で
「あの・・・兄に言われてきました、チャドです・・・・」
という。ハジメはあれ?船長じゃなかったっけ?と思いつつハジメが扉を開けるとそこには筋肉隆々で身長2m近くあるような大男が両手を前にしてもじもじしながら立っている。ハジメが言葉を失っていると、
「こらぁ、チャド。もうちっとはきはき喋らんかっ。そんなんだから再就職先が見つからないんだぞ」
とジェフが言う。
「すいやせん、旦那ぁ。昔っからこいつはこんなんで・・・・。船に乗るとしっかりするんでさぁ。陸だとこんなんなんですが・・・」
と謝る。
「・・・そうなんだ・・・・。取りあえずチャドさん、中へどうぞ」
と促す。店内のテーブルに座って貰うと藍がお茶を3人分運んできた。お茶を飲むために持ったカップは、海の男の手にとってはとても小さく、薬指と小指は行き場無くピンと立っている。
「チャドさんは船長になって長いんですか?」
とお茶が置かれるのを待ってハジメが問う。
「・・・はい。クビになるまで10年程乗っていました。戦艦の船長になっては5年くらいです・・・・」
とモジモジしながら言う。
「えっと、ウチの船は商船ですが、大丈夫でしょうか?」
と更に質問する。
「・・・はぃぃ。船の操作方法は一緒なんで、問題はありません・・・・」
と答える。その応答にジェフが苛々しながら言う。
「旦那ぁ、こいつはこれでも国のトップクラスの腕前で、4年前に表彰を受けたんですが、陸ではこんな感じになってしまうんで、それ以降は選考すらされず仕舞いなんでさぁ。今回エルフ国が無くなったことで軍縮の流れになり、真っ先に辞めさせられたんです。操縦の腕間は王国1って言われてたんですけど」
「なるほど・・・恥ずかしがり屋ってことかぁ・・・」
とハジメが納得する。しかし実際船長が陸の上でこんな感じであればトラブルになった時に困りはしないだろうか。船員同士のいざこざの時に何も出来なければそれもまた船長としての資質を問われることもあるだろう・・・。悩むところである。
取りあえずハジメは次の定休日に船に乗せてみることにした。操縦に関しては問題ないだろうとは思ったが、勝手が違う可能性もあるからである。
そして1週間後、ハジメは前の週の自分の考えを後悔したのである。そう、心の底から・・・・。
ハンドブック 12項目目
12-10.船に乗ろう:Clear!
12-11.報酬:奴隷
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