74 / 173
第3章 航路
67.レベルアップするみたいです
しおりを挟む
マコンの街から帰ってきた日の夜、ハジメは陽と舞にゾロア教について調べて欲しいことを伝える。2人はすぐにその姿を消した。そして土精霊の航には成形できる白い石を探して欲しいことを伝えると、元気に『はーい』と言って姿を消した。そして残った水精霊の藍と一緒に裏庭に向かう。
東屋まで来ると藍に
「たぶん、近々ここから引っ越すことになるんだけど、この池とか、精霊の木とかどうしようかと思ってるんだ」
と伝える。藍は
「ハジメさん、それは大丈夫ですよ。ね、ユドル様」
と言うとハジメの右隣りを見て言う。そちらに視線をやると精霊王のユドルが立っていた。
「久しぶりじゃの、ハジメ殿」
とユドルが右手を挙げてやぁと挨拶をしていた。ハジメは東屋にあるテーブルセットの椅子に座るように勧め、着席するとマジックバックから出したティーセットに魔法で作ったお湯でお茶を入れる。藍はペン太と一緒に花畑で遊んでいて、その周囲にカラフルな色の光の珠がふわふわと浮かんでいる。
「あれは精霊の卵のようなもんじゃて。生まれては数日で消えていくのじゃ。そして消える瞬間にこの世界に小さな小さな祝福を与えるのじゃ。今は精霊の木の中にほぼ消えていっているのじゃがな。それでもこの辺りに薬草や魔素草、色々な動物たちが増えているはずじゃて」
とふぉっふぉっふぉと好々爺のように笑いお茶を一口啜る。
「あぁ、それでの。この庭を移すのはワシに任せて貰ってよい。引っ越す頃に来るでの。あぁ、これはワシのお礼なんでな、気にせんでよいのじゃ。本来なら消えていくはずだったワシの子の精霊たちも楽しそうにこの世界を楽しんでおる。あ、それとこれは4大精霊の感謝の気持ちじゃ」
と言いながら4つのコインを手渡してくる。それを受け取りハジメは透明なコインを1枚掌に載せ、
「ありがとうございます。それでこのコインは一体・・・?」
とユドルに顔を向けると悪戯っぽく笑って、
「藍、ペン太殿こちらにおいで」
と2人を手招きする。2人は藍が凍らせた精霊の湖でスケートを楽しんでいた。いつの間に・・・・。とハジメが思ったが後回しにした。
2人が返事をしてこちらに来た。ユドルは藍に向かって
「藍、そろそろどうじゃ?」
と聞く。
「ユドル様。私もそろそろハジメさんをお手伝いしたいと思っていました」
と頷き、テーブルに置かれていたコインを1枚右手に掴み胸に当てる。
『水精霊アンディーンの契約を精霊王ユドルが許す』
と声ではなく空気がそう震えると藍が水の花蕾に包まれる。そして数分後、花弁が1枚1枚開き、なかからは高校生くらいに成長した藍が裸で胎児のように中央に浮かんでいる。ゆっくりと両目を開けた藍が足を地に着けるとハジメに突進してきて抱きつく。
「あ、藍。裸だから服きて!」
とアイテムボックスにあった洗ったばかりのシーツを藍に巻き付ける。
「あぁ、体があるの忘れてました・・・」
と舌をちょろっと出して言い、右手の人差し指をさっと振る。藍がシーツを取るとそこにはメイド服があった。そして藍は頭にホワイトブリムを着ける。
「ハジメ様、私藍は清水の精霊へと昇華させていただきました。今後はメイドとしてお仕えさせて頂きます」
と陽のように綺麗なお辞儀をすると、すぐにテーブルまで来て
「お茶が冷めてしまったようです。入れ直しいたしますね」
と告げ、お茶を煎れなおし始めた。
「さて、次はペン太殿だの」
とユドルがペン太に視線を落とすと
「えー。ペン太今のままでいいよ?」
と言いながらぴょんとハジメの右肩に上る。
「そうか、困ったのぉ。これは精霊かそれに属する者にしか使えんの・・・じゃ・・・・」
と不意に言葉に詰まる。ハジメが不思議そうにユドルに視線をやると1枚のコインがハジメの視線まで浮かびあがっている。そして不意に白い光の珠が現れコインに吸い込まれ光ったかと思うとハジメの体目掛けて飛んできた。ハジメは慌てて身を固くした瞬間
『日の本の3柱が1つ、ツクヨミの名において言祝ぐ』
と澄んだどことなく神々しい声が頭に静かに響く。それを見ていた、ユドルが
『・・・承知いたしました。ではそのように・・・』
と何かと話していたが頭を下げるとハジメの顔をまっすぐに見て、
「ハジメ殿。自分自身を鑑定してみると良いじゃろうて」
と言うのでその指示に従う。
『<鑑定>』
名前:ハジメ
種族:人
職種:道具師 Lv.10 (7↑up)→ 錬金術師 Lv.2
副職:なし
年齢:19歳
性別:男
体力:Lv.4 (2↑up)
耐久:Lv.4 (2↑up)
敏捷:Lv.4 (2↑up)
器用:Lv.7 (2↑up)
魔力:Lv.8 (3↑up)
魔抗:Lv.8 (5↑up)
幸運:Lv.9 (3↑up)
スキル:言語理解 Lv.∞
四百四病耐性 Lv.10(3↑up)
魔法全属性 Lv.10 (5↑up)
道具投擲 Lv.10
匠石運斤 Lv.7(1↑up)
アイテムボックス
称号:神々の代行者
精霊の解放者
精霊王の友
スクナヒコの加護
神器を使う者
異世界の神々の加護
「・・・錬金術師?・・・」
「えぇ、道具師の上位職ですね。神様からは人間でこのランクになったのはハジメさんで3人目のようですよ。
今の世界にはハジメさんだけです。あぁ、錬金術師と言っても石を金に代えるとかは出来ないそうです。あくまで道具師の力が上がると言った程度とのことです」
とユドルが言う。ハジメは錬金術師を意識して鑑定すると
錬金術師Lv.2:使用した道具の効果が10倍になる。当たるかどうかは本人の器用に依存。モノを作る場合の補正値が10倍に跳ね上がる。また鑑定によりその商品の品質が10段階で知ることが出来る。
ハジメは思わず土下座の恰好になる。
「・・・また、人に言えないことが増えた・・・・」
思わず穴を掘って叫びそうになったハジメであったが今は夜。ぐっと堪えた。これからはすごく手抜きでポーション作らないとかなり危険なものが出来てしまう。いや、手抜きしてもかなりものが出来る可能性があるのだ。道具師の力が上がるといった簡単なものではない。これからは違う品物を考えなければならなくなるかもしれない。
「いや、そもそも俺の店はポーションの店というわけではないじゃないか。ギルドへの登録は雑貨屋で提出していたはず・・・。ポーション以外を売っても問題はない。そうだ、輸入雑貨店というおしゃれな名目で各国の品物を売ってもいいのかもしれない。よし、そうしよう」
とハジメの気持ちが少し落ち着きを取り戻したとき、そこへ航と舞、陽が帰ってきていた。
「旦那様。諦めが肝心かと存じます・・・」
ユドルから話を聞いた陽が慰めのようなことを呟き、そっと肩に手を置き、テーブルの向こうに視線をやった。ハジメがその視線を追うとそこにはコインを持った航と舞が居た。
『大地の精霊グノームの契約を精霊王ユドルが許す』
『風精霊シルフィードの契約を精霊王ユドルが許す』
航は大岩に包まれ、舞は風の繭に包まれる。そして藍と同じように全裸の彼らが居た。舞の方は藍に任せ、ハジメは航にシーツを掛け、今裸であることを告げる。
そしてすぐに、緑のとんがり帽子、深緑色のローブ、緑の靴を履いた舞と、冒険者風の恰好をした航がハジメに挨拶をする。
「ハジメー。神風の精霊に昇華しちゃったー。えへへー」
と嬉しそうにその場でくるくると回っている。
「主様。拙者、浄土の精霊に昇華し申した」
一人時代が古い寡黙そうな男となった航が満面の笑みで立っている。それは嬉しそうにユドルは見ている。
「ふむ。これで上位精霊が4人となったのじゃな。これなら、2つ3つの国くらいすぐに落とせるじゃろうて。ふぉっふぉっふぉ」
と愉快そうに笑う。
「ユドル様、ご冗談を。旦那様はそんなことしませんよ。ね?」
と陽が言う。
「当たり前。そんなことしても面倒臭いだけです。俺は気ままで居たいんですっ」
半ば八つ当たりのようにユドルにハジメは言った。
「まぁ、ハジメ殿じゃから、変な事はするまいと思うておるのじゃがな。さて、わしはそろそろ帰るでの。では引っ越しの時にの」
とユドルは消えていった。ハジメは椅子に腰かけ、
「もう調べ終わったの?3人とも」
と声を掛けると、航が白い塊をドシンドシンと20個ほど地面に置いた。ハジメはそれをアイテムボックスに仕舞う。
「ありがとう、航」
今までの癖でつい頭を撫でまわす。今まで坊主頭であったが今ではソフトモヒカンのような髪型になっている。それでも彼は嬉しそうに眼を細める。
「旦那様。これは光の石の様です」
航が石を置いた時に欠けた石をつまみ上げて陽が言う。
「光の石?」
「えぇ。4属性の魔力が溶け込むことでその色を白に代えて結界の属性を持つ石の事です。これを設置するだけである程度の魔物が近づきたくなるという効果があります。その昔には街に置くというのが主流だったのですが、人工的に作ることはできないため、現在は使われなくなっています。それから数千年経っていますしこの石の存在を知っている人はいないでしょう」
とハジメの問いに陽が答える。これは丁度いいかもしれないとハジメは思った。頭を撫でられている航に対抗意識を発揮したのか、舞が
「えっと、ゾロア教は子供連れて街を出た後、首都?だっけ?そこから来た奴隷商会に途中で渡して、お金を受け取っていたわ。途中でこの服からこの服に着替えていたわ」
と司祭服から商人風の服に一瞬にして衣装替えして教えてくれる。
「ゾロア教の司祭服ですね。私の方からも合わせてお伝えします。ゾロア教は10年ほど前に始まったようです。当初から孤児を預かり育ておりました。初代は温厚で真面目な方だったようです。それまで孤児を奴隷とすることが当たり前でしたが、彼はそのような考えにはなれなかったようです。そして子供たちが成人すると彼ら彼女らの希望する職種に就けるよう様々なギルドへ斡旋していたようです。しかし彼も裕福ではなかったため、寄付を募ったそうですが、集まらなかったそうです。そのため、年を追うごとにその活動資金は減って行き、ついに3年目に行き詰ったそうです。そしてその年に成人した子供の数名が奴隷商に身売りをし、資金調達を提案したそうです。勿論彼は拒否しましたが、これから自分たちのような子供を助けて欲しいと説得されたそうです。しかし彼はそれを悔やみ、その子達への贖罪の為にゾロア教を立ち上げたようです。今から5年前彼は亡くなりその意志を継いだ息子が活動していましたが、3年前に何者かによって殺され、今はその時補佐していた者が教祖となっているようです」
「なるほど・・・。子供の希望を聞くより手間なく確実に高値で売れると言うことか・・・。でもそれで得たお金で残った子供を育ててるんじゃ、悪いことではないんじゃ?」
ハジメは呟きながら難しい顔をする。
「いえ、そうではないようです。売り上げと寄付金は一度教会本部に納められ、2か月に1回1か月分のお金が入ってるようです。不足分のお金はその街の修道士や修道女が教会とは別で働いて得た給金で補填されているようです。あ、勿論彼ら彼女らには教会からの給料はありません。その為どの街の教会も火の車のようです」
「でも子どもを奴隷として売っている・・・・」
「旦那様。首都から来た司祭一行に成人した子供たちは連れていかれるので、孤児院の彼ら彼女らは知らないのです」
ハジメはため息を付きながら呟く。
「タチの悪いことだ。教会の上だけが潤っているということか・・・。ということは土地の利用料金を下げて貰っても意味がないってことか・・・」
ハンドブック 12項目目
12-3.精霊を進化させよう:Clear!
12-4.水上位精霊と契約しよう:Clear!
12-5.土上位精霊と契約しよう:Clear!
12-6.風上位精霊と契約しよう:Clear!
12-7.上位職へ転職しよう:Clear!
東屋まで来ると藍に
「たぶん、近々ここから引っ越すことになるんだけど、この池とか、精霊の木とかどうしようかと思ってるんだ」
と伝える。藍は
「ハジメさん、それは大丈夫ですよ。ね、ユドル様」
と言うとハジメの右隣りを見て言う。そちらに視線をやると精霊王のユドルが立っていた。
「久しぶりじゃの、ハジメ殿」
とユドルが右手を挙げてやぁと挨拶をしていた。ハジメは東屋にあるテーブルセットの椅子に座るように勧め、着席するとマジックバックから出したティーセットに魔法で作ったお湯でお茶を入れる。藍はペン太と一緒に花畑で遊んでいて、その周囲にカラフルな色の光の珠がふわふわと浮かんでいる。
「あれは精霊の卵のようなもんじゃて。生まれては数日で消えていくのじゃ。そして消える瞬間にこの世界に小さな小さな祝福を与えるのじゃ。今は精霊の木の中にほぼ消えていっているのじゃがな。それでもこの辺りに薬草や魔素草、色々な動物たちが増えているはずじゃて」
とふぉっふぉっふぉと好々爺のように笑いお茶を一口啜る。
「あぁ、それでの。この庭を移すのはワシに任せて貰ってよい。引っ越す頃に来るでの。あぁ、これはワシのお礼なんでな、気にせんでよいのじゃ。本来なら消えていくはずだったワシの子の精霊たちも楽しそうにこの世界を楽しんでおる。あ、それとこれは4大精霊の感謝の気持ちじゃ」
と言いながら4つのコインを手渡してくる。それを受け取りハジメは透明なコインを1枚掌に載せ、
「ありがとうございます。それでこのコインは一体・・・?」
とユドルに顔を向けると悪戯っぽく笑って、
「藍、ペン太殿こちらにおいで」
と2人を手招きする。2人は藍が凍らせた精霊の湖でスケートを楽しんでいた。いつの間に・・・・。とハジメが思ったが後回しにした。
2人が返事をしてこちらに来た。ユドルは藍に向かって
「藍、そろそろどうじゃ?」
と聞く。
「ユドル様。私もそろそろハジメさんをお手伝いしたいと思っていました」
と頷き、テーブルに置かれていたコインを1枚右手に掴み胸に当てる。
『水精霊アンディーンの契約を精霊王ユドルが許す』
と声ではなく空気がそう震えると藍が水の花蕾に包まれる。そして数分後、花弁が1枚1枚開き、なかからは高校生くらいに成長した藍が裸で胎児のように中央に浮かんでいる。ゆっくりと両目を開けた藍が足を地に着けるとハジメに突進してきて抱きつく。
「あ、藍。裸だから服きて!」
とアイテムボックスにあった洗ったばかりのシーツを藍に巻き付ける。
「あぁ、体があるの忘れてました・・・」
と舌をちょろっと出して言い、右手の人差し指をさっと振る。藍がシーツを取るとそこにはメイド服があった。そして藍は頭にホワイトブリムを着ける。
「ハジメ様、私藍は清水の精霊へと昇華させていただきました。今後はメイドとしてお仕えさせて頂きます」
と陽のように綺麗なお辞儀をすると、すぐにテーブルまで来て
「お茶が冷めてしまったようです。入れ直しいたしますね」
と告げ、お茶を煎れなおし始めた。
「さて、次はペン太殿だの」
とユドルがペン太に視線を落とすと
「えー。ペン太今のままでいいよ?」
と言いながらぴょんとハジメの右肩に上る。
「そうか、困ったのぉ。これは精霊かそれに属する者にしか使えんの・・・じゃ・・・・」
と不意に言葉に詰まる。ハジメが不思議そうにユドルに視線をやると1枚のコインがハジメの視線まで浮かびあがっている。そして不意に白い光の珠が現れコインに吸い込まれ光ったかと思うとハジメの体目掛けて飛んできた。ハジメは慌てて身を固くした瞬間
『日の本の3柱が1つ、ツクヨミの名において言祝ぐ』
と澄んだどことなく神々しい声が頭に静かに響く。それを見ていた、ユドルが
『・・・承知いたしました。ではそのように・・・』
と何かと話していたが頭を下げるとハジメの顔をまっすぐに見て、
「ハジメ殿。自分自身を鑑定してみると良いじゃろうて」
と言うのでその指示に従う。
『<鑑定>』
名前:ハジメ
種族:人
職種:道具師 Lv.10 (7↑up)→ 錬金術師 Lv.2
副職:なし
年齢:19歳
性別:男
体力:Lv.4 (2↑up)
耐久:Lv.4 (2↑up)
敏捷:Lv.4 (2↑up)
器用:Lv.7 (2↑up)
魔力:Lv.8 (3↑up)
魔抗:Lv.8 (5↑up)
幸運:Lv.9 (3↑up)
スキル:言語理解 Lv.∞
四百四病耐性 Lv.10(3↑up)
魔法全属性 Lv.10 (5↑up)
道具投擲 Lv.10
匠石運斤 Lv.7(1↑up)
アイテムボックス
称号:神々の代行者
精霊の解放者
精霊王の友
スクナヒコの加護
神器を使う者
異世界の神々の加護
「・・・錬金術師?・・・」
「えぇ、道具師の上位職ですね。神様からは人間でこのランクになったのはハジメさんで3人目のようですよ。
今の世界にはハジメさんだけです。あぁ、錬金術師と言っても石を金に代えるとかは出来ないそうです。あくまで道具師の力が上がると言った程度とのことです」
とユドルが言う。ハジメは錬金術師を意識して鑑定すると
錬金術師Lv.2:使用した道具の効果が10倍になる。当たるかどうかは本人の器用に依存。モノを作る場合の補正値が10倍に跳ね上がる。また鑑定によりその商品の品質が10段階で知ることが出来る。
ハジメは思わず土下座の恰好になる。
「・・・また、人に言えないことが増えた・・・・」
思わず穴を掘って叫びそうになったハジメであったが今は夜。ぐっと堪えた。これからはすごく手抜きでポーション作らないとかなり危険なものが出来てしまう。いや、手抜きしてもかなりものが出来る可能性があるのだ。道具師の力が上がるといった簡単なものではない。これからは違う品物を考えなければならなくなるかもしれない。
「いや、そもそも俺の店はポーションの店というわけではないじゃないか。ギルドへの登録は雑貨屋で提出していたはず・・・。ポーション以外を売っても問題はない。そうだ、輸入雑貨店というおしゃれな名目で各国の品物を売ってもいいのかもしれない。よし、そうしよう」
とハジメの気持ちが少し落ち着きを取り戻したとき、そこへ航と舞、陽が帰ってきていた。
「旦那様。諦めが肝心かと存じます・・・」
ユドルから話を聞いた陽が慰めのようなことを呟き、そっと肩に手を置き、テーブルの向こうに視線をやった。ハジメがその視線を追うとそこにはコインを持った航と舞が居た。
『大地の精霊グノームの契約を精霊王ユドルが許す』
『風精霊シルフィードの契約を精霊王ユドルが許す』
航は大岩に包まれ、舞は風の繭に包まれる。そして藍と同じように全裸の彼らが居た。舞の方は藍に任せ、ハジメは航にシーツを掛け、今裸であることを告げる。
そしてすぐに、緑のとんがり帽子、深緑色のローブ、緑の靴を履いた舞と、冒険者風の恰好をした航がハジメに挨拶をする。
「ハジメー。神風の精霊に昇華しちゃったー。えへへー」
と嬉しそうにその場でくるくると回っている。
「主様。拙者、浄土の精霊に昇華し申した」
一人時代が古い寡黙そうな男となった航が満面の笑みで立っている。それは嬉しそうにユドルは見ている。
「ふむ。これで上位精霊が4人となったのじゃな。これなら、2つ3つの国くらいすぐに落とせるじゃろうて。ふぉっふぉっふぉ」
と愉快そうに笑う。
「ユドル様、ご冗談を。旦那様はそんなことしませんよ。ね?」
と陽が言う。
「当たり前。そんなことしても面倒臭いだけです。俺は気ままで居たいんですっ」
半ば八つ当たりのようにユドルにハジメは言った。
「まぁ、ハジメ殿じゃから、変な事はするまいと思うておるのじゃがな。さて、わしはそろそろ帰るでの。では引っ越しの時にの」
とユドルは消えていった。ハジメは椅子に腰かけ、
「もう調べ終わったの?3人とも」
と声を掛けると、航が白い塊をドシンドシンと20個ほど地面に置いた。ハジメはそれをアイテムボックスに仕舞う。
「ありがとう、航」
今までの癖でつい頭を撫でまわす。今まで坊主頭であったが今ではソフトモヒカンのような髪型になっている。それでも彼は嬉しそうに眼を細める。
「旦那様。これは光の石の様です」
航が石を置いた時に欠けた石をつまみ上げて陽が言う。
「光の石?」
「えぇ。4属性の魔力が溶け込むことでその色を白に代えて結界の属性を持つ石の事です。これを設置するだけである程度の魔物が近づきたくなるという効果があります。その昔には街に置くというのが主流だったのですが、人工的に作ることはできないため、現在は使われなくなっています。それから数千年経っていますしこの石の存在を知っている人はいないでしょう」
とハジメの問いに陽が答える。これは丁度いいかもしれないとハジメは思った。頭を撫でられている航に対抗意識を発揮したのか、舞が
「えっと、ゾロア教は子供連れて街を出た後、首都?だっけ?そこから来た奴隷商会に途中で渡して、お金を受け取っていたわ。途中でこの服からこの服に着替えていたわ」
と司祭服から商人風の服に一瞬にして衣装替えして教えてくれる。
「ゾロア教の司祭服ですね。私の方からも合わせてお伝えします。ゾロア教は10年ほど前に始まったようです。当初から孤児を預かり育ておりました。初代は温厚で真面目な方だったようです。それまで孤児を奴隷とすることが当たり前でしたが、彼はそのような考えにはなれなかったようです。そして子供たちが成人すると彼ら彼女らの希望する職種に就けるよう様々なギルドへ斡旋していたようです。しかし彼も裕福ではなかったため、寄付を募ったそうですが、集まらなかったそうです。そのため、年を追うごとにその活動資金は減って行き、ついに3年目に行き詰ったそうです。そしてその年に成人した子供の数名が奴隷商に身売りをし、資金調達を提案したそうです。勿論彼は拒否しましたが、これから自分たちのような子供を助けて欲しいと説得されたそうです。しかし彼はそれを悔やみ、その子達への贖罪の為にゾロア教を立ち上げたようです。今から5年前彼は亡くなりその意志を継いだ息子が活動していましたが、3年前に何者かによって殺され、今はその時補佐していた者が教祖となっているようです」
「なるほど・・・。子供の希望を聞くより手間なく確実に高値で売れると言うことか・・・。でもそれで得たお金で残った子供を育ててるんじゃ、悪いことではないんじゃ?」
ハジメは呟きながら難しい顔をする。
「いえ、そうではないようです。売り上げと寄付金は一度教会本部に納められ、2か月に1回1か月分のお金が入ってるようです。不足分のお金はその街の修道士や修道女が教会とは別で働いて得た給金で補填されているようです。あ、勿論彼ら彼女らには教会からの給料はありません。その為どの街の教会も火の車のようです」
「でも子どもを奴隷として売っている・・・・」
「旦那様。首都から来た司祭一行に成人した子供たちは連れていかれるので、孤児院の彼ら彼女らは知らないのです」
ハジメはため息を付きながら呟く。
「タチの悪いことだ。教会の上だけが潤っているということか・・・。ということは土地の利用料金を下げて貰っても意味がないってことか・・・」
ハンドブック 12項目目
12-3.精霊を進化させよう:Clear!
12-4.水上位精霊と契約しよう:Clear!
12-5.土上位精霊と契約しよう:Clear!
12-6.風上位精霊と契約しよう:Clear!
12-7.上位職へ転職しよう:Clear!
0
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる