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第3章 航路
61.やりすぎるみたいです
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次の日からジェフは出勤してきた。
「旦那ぁ、おはようごぜぇますだ」
と元気よく出勤してきた。キルト君はあれから随分良くなったらしく、熱も微熱まで下がったようで、食欲もあり、朝ごはんはお代わりまでしたらしい。まずまずと言ったところだろう。取りあえず昨日渡した薬でどれくらい回復するか観察することした。
ジェフの仕事っぷりはとても凄くてハジメなら2人で運ぶようなビン類やポーション類を1人で軽々と運んでいる。あれよあれよと言う間に力仕事は片付いていく。ハジメはすでに契約関連は陽にお任せ状態であり、ジェフも問題なさそうである。取りあえず裏庭へ薬草類を採取しに向かう。裏庭に着くと、白い石を前に3精霊が集まっている。
「ハジメー。集めて来たよー。これで全部だよ」
と舞が自慢げに言う。
「ありがとう。お仕事頼んじゃってごめんね」
とハジメが言うと3精霊は
「「「だいじょーぶ。楽しかったよー(です)」」」
と笑っている。ハジメはその白金をアイテムボックスに全て仕舞う。これで取りあえず貨幣危機は片付いたのだ。
ハジメは3精霊と一緒に薬草の収穫を行い店へと戻った。すると、そこにマーサがキルトを背負い来ていたのだ。
「ごめんね、ハジメさん。どうしても来たいって言うから」
と申し訳なさそうにマーサが言っているが表情は笑顔が戻っている。ハジメを担当していたころの笑顔であった。キルトを鑑定してみると2-3日で完治しそうであるが、念のため予定通り1週間内服してもらうことにする。
「動く力が弱くなっているから、これからしっかり歩く練習をしないとね」
普通人は寝たきりになると筋肉量が激減する。それが1か月以上になるのだ、恐らくキルトの筋肉量は元気な時の半分程度になっているのだ。それを以前のように戻すには個人差はあるだろうが3倍以上の月日が掛かるのだ。これから徐々にリハビリを行っていなければならない。彼の気力が落ちないように根気よく頑張らなければならない。ハジメはキルトの事を気にかけていこうと思った。
そうして話しているうちに時間となり、ジェフはキルトを連れて家に帰って行き、マーサは冒険者ギルドへ仕事に向かった。ハジメたちはそれを見送り昼食を摂った。
午後になるとコウと陽は店番をし、リナリーは昼食後の片付けの後家事をしてくれている。ハジメは手持無沙汰であったので3精霊を連れてハジメの土地となる可能性が高いマコンの街に行ってみることにする。馬車に乗れば2時間程度で着く。3人にそのことを伝えると充分気を付けるように言われた。
ハジメがオヤツ時間まで1時間ほどあるころマコンの街に着いた。帰りの馬車は今から2時間後が最終であるため、乗り遅れる訳にはいかない。遅れたらリナリーとコウのお説教が待っているのだ。これは避けなければならないとハジメは思っている。
馬車の停車場は少し小高い丘になっており、そこから街の全体を見渡すことが出来た。約10km四方が港町となっており、ハジメの場所から東は漁港になっていて小さな手漕ぎの船が十数艘止まっている。漁港の北に大型船などが泊められそうな桟橋がある。昔はここから何処かの国に行けたのかもしれない。南はダス国へ続く道が細々と続いている。西はイブの街へ続く凸凹な道と呼べるのか分からないモノが続いている。ここを整備すれば1時間程度で着くのではないかとも思う。ウォールの話では赤字ということなので整備する順番が低いのかもしれない。なんとも廃れた風景である。この丘から港まで歩いて10分程度で着いた。港町というよりは漁村と言った感じだろうか。なんとも長閑でハジメの出身地の島を思い出す。潮風がハジメの肌を撫で、鼻に懐かしい匂いを運んでくる。ここに住むのは贅沢なのかもしれないと思った。
ハジメは桟橋に向かって歩いていたが漁師らしい人に出会わない。すれ違う人はみな荒くれものの様な人物だけであった。周囲の家々は随分と古く、人が住んでいないだろう家も数多く目に映る。
「まるでウチの故郷のようだ・・・」
ハジメは思わず呟く。それに藍が
「ハジメさんの故郷って、こんな感じだったんですか?」
3精霊にも個性があった。このように藍は真面目な優等生タイプ。ハジメの事をさん付けで呼び、語尾も丁寧である。舞は風精霊というのも関係しているのかもしれないがどことなく猫を思わせるお転婆タイプ。恐らく誰とでも仲良くなれるだろう。航は万能タイプ。文武両道が良くあてはまるだろう。誰にでも好かれるタイプである。陽は冷静沈着な情報分析タイプだろう。シャプシェ様を補佐していただけあってほぼ完ぺきなサポートをしてくれる。唯一ハジメの利益優先で他を切り捨てることも厭わない割と暗殺者タイプとも言えるかもしれない。
「そうだね。僕が居た世界では、凄く努力した場所ではそれなりに栄えていたけど、周りの変化に気づかずそれに合わせられなかった所は廃れていたかな。国が気づいた時にはどうにか出来ないほどの状況だったんだよ。漁師って割と頑固でね。変化を嫌う人が多いんだよ。加えて収入も多いけど、支出も多いから。稼ぎと言う点なら誰かの下で働く方と変わらないから、そのほうが楽って考えて街を出る人も多かったんだよ」
「ふーん。変わることが出来ないなんて人間て面倒臭いね」
と様々な形態を持つ風精霊の舞が不思議そうに言う。
「周りの状況に対応するっていうのは当たり前だと思うんだけどなぁ」
と航も首を傾げた。
「風や水のように流れるように、土のように硬軟にというのは難しいのでしょうか」
藍がぽつっと呟く。
「そうだね。それは人によるかもね。そうなれる人はなれるし、出来ない人は出来ないってことかな」
「難しいんですね。人が生きていくっていうのは」
と藍は一人考え込んでいた。舞はハジメの両肩に両足を乗せて立ち上り海や平原を見ていて、航はハジメと手をつなぎながら蝶々や虫を見ては目を輝かせている。本当に三者三様である。
15分程歩くと商店が1軒ぽつんと建っており老婆一人椅子に座っていた。ハジメは恐る恐る入って行くと老婆は顔を上げて
「いらっしゃい」
と声を掛けた。
「見させて頂いても?」
と問うと
「えぇ、えぇ。お客なんて日に15人くればいい程度なんじゃ。好きに見とくれ」
と答える。これで生きていけるのだろうかとハジメが思うとそれをよんだのか
「もう道楽みたいなもんでな。本当は10年程前に閉めようと思ったのじゃが、皆が開けて欲しいと言うのでな。それでお前さんはここらで見かけん顔じゃが?」
と言われた。ハジメは正直に言うことにする。
「えぇ、イブの街から来まして。魚など買えないかと。後は気分転換ですね」
「珍しいことじゃ。魚は港に市場があるでの、そこで買うとええじゃろ。お前さんは港町の生まれかの?」
と言い当てられる。ハジメは自分が漁村の生まれであることを伝える。
「やっぱりの。こんな寂れた港街で気分転換と言うたら生まれが島か港街じゃろうて」
ハジメが見て回った店内には日常生活雑貨が売られているだけでポーションなども置いてなかった。本当に生活必需品だけある。
「住んでる者が少ないのでの。これだけあれば十分なんじゃ。働き口が無いでの、皆働くためにこの港から出て行くんじゃ。今住んでるのは漁師かならず者ばかりじゃの。じゃから店もうちの店だけなんじゃ。もう間もなく廃れていくじゃろ。お前さんは桟橋を見たかの?」
「えぇ、今からそこに行こうかと思っています」
と店主に答えると
「あそこは昔エルフの国からポーションを仕入れるために大きな船が毎日来ておってな。それが十数年前に購入個数に制限が掛かっての。今じゃ幽霊街となってるのじゃ。地元のもんも今じゃ用はないから近づかんから、ならずモノが多く住んで居るそうじゃ。行くなら気を付けなされよ」
とどこか寂しそうな表情で天井を見上げる。
「ばぁの話に付き合ってくれてありがとな」
と言われ俺にと干し魚10匹くれたので、ハジメは体力ポーションを1本お礼として渡し店を出る。それから10分後桟橋に着いた。ところどころ傷んではいたが修繕すれば使えそうである。港に近づくにつれて空き家が増えていて、いつ崩れてもおかしくない家すらあった。ここら一帯を大きな屋内市場と野外市場がある築地や豊洲市場の様にして周囲に露店や店が出来るように整地してみようかと思う。そうなればこの港が好きだけど仕事が無くて出て行った人々が少しは戻ってくるかもしれない。
ハジメがマコン再建計画を考えていると、彼の前に10人ほどの男たちが立ちふさがる。店主の言っていたこの場所に住み着いたならず者だろう。3精霊たちはハジメの前に現れ、戦闘態勢を取っている。過剰戦力がじゃないだろうかとハジメが思っていると1人の屈強な男が前に出てくる。
「よぉ、兄ちゃん。俺たちのシマに何の用なんだい。まさか用もなく来たってのかい?」
片手に鉄パイプのようなものを持ち、反対の掌を叩いている。ハジメは大きなため息を付きそうになる。こんな風に絡まれるのは冒険者ギルドに登録したときだろうと。
「用がないと来てはいけないと?」
「いや、かまわねーぜ。出すもん出して貰えたらな。やりな」
と言うと後ろに居た男たちが一斉にハジメ目掛けて走りだす。ハジメは我慢していたため息を吐き出そうとしたとき、
「風縛、吹き飛べ」
舞が右手を前に突き出す。ハジメたちの背後から何本もの目に見えない風が彼らを襲い、その身を縛られ、後ろに吹き飛ばされる。
「3人とも・・・」
とハジメが窘めようとした時、
「汚泥、固定」
「ハジメさんに何をするのですっ!濁流」
残りの2人の魔法が発動していた。ならず者たちは受け身が取れず後ろに吹っ飛ばされ、汚泥に体の一部を沈ませた後地面を固められさらに動きが取れなくなり、ハジメたちの後ろにある海が魔法の通り轟轟と音を響かせ濁流となり、彼らと周囲の家を押し流した。ハジメの目前には全て無くなり、ただ広い大地が顔を覗かせていた。そんな光景に茫然とするしかなかった。
「ふふん。一丁上がり~♪」
と舞は満足そうな顔をしており、航は辺りを伺っている。藍は何もなくなった場所を睨みつけている。
「3人ともやりすぎ・・・・」
ハジメの頭には弁償の2文字が浮かんでいた。
ハンドブック 11項目目
11-9.盗賊をやっつけよう:Clear!
「旦那ぁ、おはようごぜぇますだ」
と元気よく出勤してきた。キルト君はあれから随分良くなったらしく、熱も微熱まで下がったようで、食欲もあり、朝ごはんはお代わりまでしたらしい。まずまずと言ったところだろう。取りあえず昨日渡した薬でどれくらい回復するか観察することした。
ジェフの仕事っぷりはとても凄くてハジメなら2人で運ぶようなビン類やポーション類を1人で軽々と運んでいる。あれよあれよと言う間に力仕事は片付いていく。ハジメはすでに契約関連は陽にお任せ状態であり、ジェフも問題なさそうである。取りあえず裏庭へ薬草類を採取しに向かう。裏庭に着くと、白い石を前に3精霊が集まっている。
「ハジメー。集めて来たよー。これで全部だよ」
と舞が自慢げに言う。
「ありがとう。お仕事頼んじゃってごめんね」
とハジメが言うと3精霊は
「「「だいじょーぶ。楽しかったよー(です)」」」
と笑っている。ハジメはその白金をアイテムボックスに全て仕舞う。これで取りあえず貨幣危機は片付いたのだ。
ハジメは3精霊と一緒に薬草の収穫を行い店へと戻った。すると、そこにマーサがキルトを背負い来ていたのだ。
「ごめんね、ハジメさん。どうしても来たいって言うから」
と申し訳なさそうにマーサが言っているが表情は笑顔が戻っている。ハジメを担当していたころの笑顔であった。キルトを鑑定してみると2-3日で完治しそうであるが、念のため予定通り1週間内服してもらうことにする。
「動く力が弱くなっているから、これからしっかり歩く練習をしないとね」
普通人は寝たきりになると筋肉量が激減する。それが1か月以上になるのだ、恐らくキルトの筋肉量は元気な時の半分程度になっているのだ。それを以前のように戻すには個人差はあるだろうが3倍以上の月日が掛かるのだ。これから徐々にリハビリを行っていなければならない。彼の気力が落ちないように根気よく頑張らなければならない。ハジメはキルトの事を気にかけていこうと思った。
そうして話しているうちに時間となり、ジェフはキルトを連れて家に帰って行き、マーサは冒険者ギルドへ仕事に向かった。ハジメたちはそれを見送り昼食を摂った。
午後になるとコウと陽は店番をし、リナリーは昼食後の片付けの後家事をしてくれている。ハジメは手持無沙汰であったので3精霊を連れてハジメの土地となる可能性が高いマコンの街に行ってみることにする。馬車に乗れば2時間程度で着く。3人にそのことを伝えると充分気を付けるように言われた。
ハジメがオヤツ時間まで1時間ほどあるころマコンの街に着いた。帰りの馬車は今から2時間後が最終であるため、乗り遅れる訳にはいかない。遅れたらリナリーとコウのお説教が待っているのだ。これは避けなければならないとハジメは思っている。
馬車の停車場は少し小高い丘になっており、そこから街の全体を見渡すことが出来た。約10km四方が港町となっており、ハジメの場所から東は漁港になっていて小さな手漕ぎの船が十数艘止まっている。漁港の北に大型船などが泊められそうな桟橋がある。昔はここから何処かの国に行けたのかもしれない。南はダス国へ続く道が細々と続いている。西はイブの街へ続く凸凹な道と呼べるのか分からないモノが続いている。ここを整備すれば1時間程度で着くのではないかとも思う。ウォールの話では赤字ということなので整備する順番が低いのかもしれない。なんとも廃れた風景である。この丘から港まで歩いて10分程度で着いた。港町というよりは漁村と言った感じだろうか。なんとも長閑でハジメの出身地の島を思い出す。潮風がハジメの肌を撫で、鼻に懐かしい匂いを運んでくる。ここに住むのは贅沢なのかもしれないと思った。
ハジメは桟橋に向かって歩いていたが漁師らしい人に出会わない。すれ違う人はみな荒くれものの様な人物だけであった。周囲の家々は随分と古く、人が住んでいないだろう家も数多く目に映る。
「まるでウチの故郷のようだ・・・」
ハジメは思わず呟く。それに藍が
「ハジメさんの故郷って、こんな感じだったんですか?」
3精霊にも個性があった。このように藍は真面目な優等生タイプ。ハジメの事をさん付けで呼び、語尾も丁寧である。舞は風精霊というのも関係しているのかもしれないがどことなく猫を思わせるお転婆タイプ。恐らく誰とでも仲良くなれるだろう。航は万能タイプ。文武両道が良くあてはまるだろう。誰にでも好かれるタイプである。陽は冷静沈着な情報分析タイプだろう。シャプシェ様を補佐していただけあってほぼ完ぺきなサポートをしてくれる。唯一ハジメの利益優先で他を切り捨てることも厭わない割と暗殺者タイプとも言えるかもしれない。
「そうだね。僕が居た世界では、凄く努力した場所ではそれなりに栄えていたけど、周りの変化に気づかずそれに合わせられなかった所は廃れていたかな。国が気づいた時にはどうにか出来ないほどの状況だったんだよ。漁師って割と頑固でね。変化を嫌う人が多いんだよ。加えて収入も多いけど、支出も多いから。稼ぎと言う点なら誰かの下で働く方と変わらないから、そのほうが楽って考えて街を出る人も多かったんだよ」
「ふーん。変わることが出来ないなんて人間て面倒臭いね」
と様々な形態を持つ風精霊の舞が不思議そうに言う。
「周りの状況に対応するっていうのは当たり前だと思うんだけどなぁ」
と航も首を傾げた。
「風や水のように流れるように、土のように硬軟にというのは難しいのでしょうか」
藍がぽつっと呟く。
「そうだね。それは人によるかもね。そうなれる人はなれるし、出来ない人は出来ないってことかな」
「難しいんですね。人が生きていくっていうのは」
と藍は一人考え込んでいた。舞はハジメの両肩に両足を乗せて立ち上り海や平原を見ていて、航はハジメと手をつなぎながら蝶々や虫を見ては目を輝かせている。本当に三者三様である。
15分程歩くと商店が1軒ぽつんと建っており老婆一人椅子に座っていた。ハジメは恐る恐る入って行くと老婆は顔を上げて
「いらっしゃい」
と声を掛けた。
「見させて頂いても?」
と問うと
「えぇ、えぇ。お客なんて日に15人くればいい程度なんじゃ。好きに見とくれ」
と答える。これで生きていけるのだろうかとハジメが思うとそれをよんだのか
「もう道楽みたいなもんでな。本当は10年程前に閉めようと思ったのじゃが、皆が開けて欲しいと言うのでな。それでお前さんはここらで見かけん顔じゃが?」
と言われた。ハジメは正直に言うことにする。
「えぇ、イブの街から来まして。魚など買えないかと。後は気分転換ですね」
「珍しいことじゃ。魚は港に市場があるでの、そこで買うとええじゃろ。お前さんは港町の生まれかの?」
と言い当てられる。ハジメは自分が漁村の生まれであることを伝える。
「やっぱりの。こんな寂れた港街で気分転換と言うたら生まれが島か港街じゃろうて」
ハジメが見て回った店内には日常生活雑貨が売られているだけでポーションなども置いてなかった。本当に生活必需品だけある。
「住んでる者が少ないのでの。これだけあれば十分なんじゃ。働き口が無いでの、皆働くためにこの港から出て行くんじゃ。今住んでるのは漁師かならず者ばかりじゃの。じゃから店もうちの店だけなんじゃ。もう間もなく廃れていくじゃろ。お前さんは桟橋を見たかの?」
「えぇ、今からそこに行こうかと思っています」
と店主に答えると
「あそこは昔エルフの国からポーションを仕入れるために大きな船が毎日来ておってな。それが十数年前に購入個数に制限が掛かっての。今じゃ幽霊街となってるのじゃ。地元のもんも今じゃ用はないから近づかんから、ならずモノが多く住んで居るそうじゃ。行くなら気を付けなされよ」
とどこか寂しそうな表情で天井を見上げる。
「ばぁの話に付き合ってくれてありがとな」
と言われ俺にと干し魚10匹くれたので、ハジメは体力ポーションを1本お礼として渡し店を出る。それから10分後桟橋に着いた。ところどころ傷んではいたが修繕すれば使えそうである。港に近づくにつれて空き家が増えていて、いつ崩れてもおかしくない家すらあった。ここら一帯を大きな屋内市場と野外市場がある築地や豊洲市場の様にして周囲に露店や店が出来るように整地してみようかと思う。そうなればこの港が好きだけど仕事が無くて出て行った人々が少しは戻ってくるかもしれない。
ハジメがマコン再建計画を考えていると、彼の前に10人ほどの男たちが立ちふさがる。店主の言っていたこの場所に住み着いたならず者だろう。3精霊たちはハジメの前に現れ、戦闘態勢を取っている。過剰戦力がじゃないだろうかとハジメが思っていると1人の屈強な男が前に出てくる。
「よぉ、兄ちゃん。俺たちのシマに何の用なんだい。まさか用もなく来たってのかい?」
片手に鉄パイプのようなものを持ち、反対の掌を叩いている。ハジメは大きなため息を付きそうになる。こんな風に絡まれるのは冒険者ギルドに登録したときだろうと。
「用がないと来てはいけないと?」
「いや、かまわねーぜ。出すもん出して貰えたらな。やりな」
と言うと後ろに居た男たちが一斉にハジメ目掛けて走りだす。ハジメは我慢していたため息を吐き出そうとしたとき、
「風縛、吹き飛べ」
舞が右手を前に突き出す。ハジメたちの背後から何本もの目に見えない風が彼らを襲い、その身を縛られ、後ろに吹き飛ばされる。
「3人とも・・・」
とハジメが窘めようとした時、
「汚泥、固定」
「ハジメさんに何をするのですっ!濁流」
残りの2人の魔法が発動していた。ならず者たちは受け身が取れず後ろに吹っ飛ばされ、汚泥に体の一部を沈ませた後地面を固められさらに動きが取れなくなり、ハジメたちの後ろにある海が魔法の通り轟轟と音を響かせ濁流となり、彼らと周囲の家を押し流した。ハジメの目前には全て無くなり、ただ広い大地が顔を覗かせていた。そんな光景に茫然とするしかなかった。
「ふふん。一丁上がり~♪」
と舞は満足そうな顔をしており、航は辺りを伺っている。藍は何もなくなった場所を睨みつけている。
「3人ともやりすぎ・・・・」
ハジメの頭には弁償の2文字が浮かんでいた。
ハンドブック 11項目目
11-9.盗賊をやっつけよう:Clear!
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