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第3章 航路
58.サプライズされるみたいです
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その続きをウォールが
「マコンも含めてこの辺りの領主はいませんね。5年程前不正が判明して一家全員が打ち首になった筈です。その後は誰も赤字の土地を手に入れようとはしていませんので。いまだに領主は決まっていません。ですから町長の私がその管理をしているのです。忙しくてたまりませんが・・・。そうなるとハジメさんは一代貴族ってことですね。これからは気を付けないと・・・」
そのウォールの発言にハジメは焦る。
「いや、貴族にはなりませんよ。マコンの街の一部の土地が欲しいだけですので。しかも避暑地的な感じなので、家を建てる許可だけでいいです。絶対貴族にはなりませんよ!」
と半ば叫びながら言う。
「・・・なに?そうなのか?まぁ確かに貴族は面倒ごとが多いからのぉ。ワシもなるんじゃなかったと今でも思うのじゃ」
フラップが天井を見上げながらため息を吐く。自由が無くなる貴族などなりたい人なんていないだろうとハジメは思っていた。その時陽が
「では発見した褒美というのを今ここに居るお三方で分けてはどうでしょうか?白金を鑑定したのはフラップ様ですし、イブの街の住人が持っていたのですから、ウォール様にも、旦那様は発見者ということでどうでしょう?」
と言う。こういう状況になってしまいパニック状態のハジメは全て陽に任せることにしたのだがそれがさらにハジメの頭を悩ませることになるとは思っていなかった。
「フラップ様は貴族とのことですのでこのイブを含めた港町までの領地を得るのです」
「・・・確かに今回の発見で領地を持つ事は決定しているが・・・」
「ならばここら一体を領地としてしまうのです。そうすれば領地視察としてウォール様の再教育もしやすいでしょう」
「なるほど・・・・」
フラップ様が陽の口車に乗せられつつある。ウォールはやや顔を顰めているがなんだか楽しそうである。やはり家族と近い距離に居るという事は嬉しいのだろう。今まで一人で頑張ってきたのだからこれからは少し甘えてもいいとハジメは思った。
「そしてマコンの港街を基本的にハジメ様の個人所有の土地として所属はイブの街とするのです。そしてウォール様は国絡みの仕事はフラップ様に振れますから量が減りますし税収が増えます」
「ちょ、ちょっと待って。マコンの港街全体を個人所有なんてそんな無茶なっ」
とハジメが抵抗しようとするが、フラップ様とウォールさんは頷きながら聞いている。
「わしも、辺鄙な土地を貰うよりは孫のおる土地を治める方がええからのぉ。そうさせて貰おうかの」
「そうですね。使えない貴族が来るよりはおじい様の方が御しやすいし・・・」
とウォールに至っては黒い発言が見られる始末。すっかり2人はその気でいるらしい。
「そ、そんなに大きな土地を頂いても税金払えませんし、今住んでいる人だっているんですよっ」
と抵抗を試みてみる。ウォールが目が笑っていない笑顔を作り、
「大丈夫ですよ。ハジメさんは商業ギルドと冒険者ギルドから税金を納めているのでそれ以上増えないですし。まぁ、ハジメさんの土地の整備はハジメさんが出すくらいですので」
と恐ろしいことを言う。つまり、マコンを整備したければ私有地だから自分でしてねって言っているのだ。今まではイブの街の税金で賄っていたがこれからはその分の税金が浮くということである。簡単に言えば収入は増えないが支出が減るという町長としてはとてもありがたい提案なのだ。さらにフラップが領主となれば役場の煩雑な業務はある程度減る。本当に一石二鳥なのだ。これに乗らないはずはない。
2人が盛り上がっているのを恨めしそうに見てハジメたちは従業員の面接を行うために商業ギルドへ向かうのだった。その後ろ姿を見てウォールが
「その書類を持って奴隷商に行ってくださいね。それで解放されるので」
と笑顔で言った。
ハジメと陽が役場を出ると中央広場の噴水のあたりでコウとリナリーがベンチに座っている。ハジメは2人に声を掛ける。面接時間まであと小一時間は有るので先に奴隷商に行き、手続きを取ることにした。
奴隷商の受付に行き4つのサインが入った書類を出し、時間が掛かるか聞くと、2階の応接室を案内され、そこのソファーで暫く待つよう言われる。数分後1人の老婆がハジメたちに近づいてくる。
「私はこの支店の代表者、イヴァンカと言う。奴隷解放の方だね?これからサインをしたお方の確認を取る必要がある。この街の3人にはすぐに取れるだろうが、王都の方は少し時間がかかるんだよ」
と言う。
「フラップ様は今役場にウォール様と一緒におられますよ?先ほどサイン頂きましたので」
とハジメが伝えると、
「なんと、すぐに確認するので待って欲しいのだ」
と言い、部下を使い確認へと向かわせた。そして30分後リナリーとコウは奴隷の証であるリストリングを外すことが出来たのだった。
奴隷からの解放で笑顔になった2人は涙を流して喜び、ハジメに抱きついていた。それを横目にみつつイヴァンカが
「・・・長い間こうして奴隷商をしておるが、こんな風に解放されるのは初めて見るよ・・・。あの様子はまるで兄弟のようじゃの・・・」
と苦笑いをしつつ呟くのが聞こえた陽は
「ふふふ。私の旦那様ですので」
と笑顔で返した。
「さて、お三方。そろそろ商業ギルドへ行きませんと時間に遅れますよ」
と陽が言い、4人はその場を後にした。それを眺めながら
「ほんに、面白い奴じゃの」
と今度は誰にも聞こえない呟きを老婆はしたのだった。
ハンドブック 11項目目
11-8.奴隷から解放しよう:Clear!
「マコンも含めてこの辺りの領主はいませんね。5年程前不正が判明して一家全員が打ち首になった筈です。その後は誰も赤字の土地を手に入れようとはしていませんので。いまだに領主は決まっていません。ですから町長の私がその管理をしているのです。忙しくてたまりませんが・・・。そうなるとハジメさんは一代貴族ってことですね。これからは気を付けないと・・・」
そのウォールの発言にハジメは焦る。
「いや、貴族にはなりませんよ。マコンの街の一部の土地が欲しいだけですので。しかも避暑地的な感じなので、家を建てる許可だけでいいです。絶対貴族にはなりませんよ!」
と半ば叫びながら言う。
「・・・なに?そうなのか?まぁ確かに貴族は面倒ごとが多いからのぉ。ワシもなるんじゃなかったと今でも思うのじゃ」
フラップが天井を見上げながらため息を吐く。自由が無くなる貴族などなりたい人なんていないだろうとハジメは思っていた。その時陽が
「では発見した褒美というのを今ここに居るお三方で分けてはどうでしょうか?白金を鑑定したのはフラップ様ですし、イブの街の住人が持っていたのですから、ウォール様にも、旦那様は発見者ということでどうでしょう?」
と言う。こういう状況になってしまいパニック状態のハジメは全て陽に任せることにしたのだがそれがさらにハジメの頭を悩ませることになるとは思っていなかった。
「フラップ様は貴族とのことですのでこのイブを含めた港町までの領地を得るのです」
「・・・確かに今回の発見で領地を持つ事は決定しているが・・・」
「ならばここら一体を領地としてしまうのです。そうすれば領地視察としてウォール様の再教育もしやすいでしょう」
「なるほど・・・・」
フラップ様が陽の口車に乗せられつつある。ウォールはやや顔を顰めているがなんだか楽しそうである。やはり家族と近い距離に居るという事は嬉しいのだろう。今まで一人で頑張ってきたのだからこれからは少し甘えてもいいとハジメは思った。
「そしてマコンの港街を基本的にハジメ様の個人所有の土地として所属はイブの街とするのです。そしてウォール様は国絡みの仕事はフラップ様に振れますから量が減りますし税収が増えます」
「ちょ、ちょっと待って。マコンの港街全体を個人所有なんてそんな無茶なっ」
とハジメが抵抗しようとするが、フラップ様とウォールさんは頷きながら聞いている。
「わしも、辺鄙な土地を貰うよりは孫のおる土地を治める方がええからのぉ。そうさせて貰おうかの」
「そうですね。使えない貴族が来るよりはおじい様の方が御しやすいし・・・」
とウォールに至っては黒い発言が見られる始末。すっかり2人はその気でいるらしい。
「そ、そんなに大きな土地を頂いても税金払えませんし、今住んでいる人だっているんですよっ」
と抵抗を試みてみる。ウォールが目が笑っていない笑顔を作り、
「大丈夫ですよ。ハジメさんは商業ギルドと冒険者ギルドから税金を納めているのでそれ以上増えないですし。まぁ、ハジメさんの土地の整備はハジメさんが出すくらいですので」
と恐ろしいことを言う。つまり、マコンを整備したければ私有地だから自分でしてねって言っているのだ。今まではイブの街の税金で賄っていたがこれからはその分の税金が浮くということである。簡単に言えば収入は増えないが支出が減るという町長としてはとてもありがたい提案なのだ。さらにフラップが領主となれば役場の煩雑な業務はある程度減る。本当に一石二鳥なのだ。これに乗らないはずはない。
2人が盛り上がっているのを恨めしそうに見てハジメたちは従業員の面接を行うために商業ギルドへ向かうのだった。その後ろ姿を見てウォールが
「その書類を持って奴隷商に行ってくださいね。それで解放されるので」
と笑顔で言った。
ハジメと陽が役場を出ると中央広場の噴水のあたりでコウとリナリーがベンチに座っている。ハジメは2人に声を掛ける。面接時間まであと小一時間は有るので先に奴隷商に行き、手続きを取ることにした。
奴隷商の受付に行き4つのサインが入った書類を出し、時間が掛かるか聞くと、2階の応接室を案内され、そこのソファーで暫く待つよう言われる。数分後1人の老婆がハジメたちに近づいてくる。
「私はこの支店の代表者、イヴァンカと言う。奴隷解放の方だね?これからサインをしたお方の確認を取る必要がある。この街の3人にはすぐに取れるだろうが、王都の方は少し時間がかかるんだよ」
と言う。
「フラップ様は今役場にウォール様と一緒におられますよ?先ほどサイン頂きましたので」
とハジメが伝えると、
「なんと、すぐに確認するので待って欲しいのだ」
と言い、部下を使い確認へと向かわせた。そして30分後リナリーとコウは奴隷の証であるリストリングを外すことが出来たのだった。
奴隷からの解放で笑顔になった2人は涙を流して喜び、ハジメに抱きついていた。それを横目にみつつイヴァンカが
「・・・長い間こうして奴隷商をしておるが、こんな風に解放されるのは初めて見るよ・・・。あの様子はまるで兄弟のようじゃの・・・」
と苦笑いをしつつ呟くのが聞こえた陽は
「ふふふ。私の旦那様ですので」
と笑顔で返した。
「さて、お三方。そろそろ商業ギルドへ行きませんと時間に遅れますよ」
と陽が言い、4人はその場を後にした。それを眺めながら
「ほんに、面白い奴じゃの」
と今度は誰にも聞こえない呟きを老婆はしたのだった。
ハンドブック 11項目目
11-8.奴隷から解放しよう:Clear!
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