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第3章 航路
54.美味しいお茶が飲みたいようです
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暗殺者に襲われてから数日後のお休みの日の昼下がり、4人でイッチーからお試しにと言われて貰ったハーブティーを飲んでいた。
「うーん。香りはとてもいいんだけど、茶葉が口に入ると苦みが強くなるなぁ・・・。せめてティーポットが必要か・・・。耐熱ガラスが見た目もいいんだけどなぁ・・・。ティーストレーナーで銀がいいかな・・・」
アダの街では普通に飲まれているモノらしい。イッチーは買ったポーションを自分の荷台に運ぼうとしたため、ハジメも手伝ったのだが、その時不意に落ちた袋からハーブティーが零れたのだ。ハジメは即座に言う。
「これ売って貰えますか?」
「あぁ、ハーブティーですか。差し上げますよ。1カ月分くらいしか残っていないので。実は私は少し苦手なんですよ。子供のころからこれを飲むより白湯を飲んでいたので。商売初めてこのイブの街のお茶を知った時からはここのお茶を飲んでいるんです。昨日も3か月分くらい買い込みました」
と笑いながら奥の3つの袋を指さす。ハジメは無料で貰うのには抵抗がったので、傷クリームを5個ほど押し付けておいた。イッチーはこの量なら2000Sくらいだから貰いすぎだと言われたがそこは押し切っておいたのだ。
アダの街ではお茶にダイレクトにお湯を注ぐらしい。そして茶葉ごと飲んでいるとのことだった。
ハジメが食にこだわるのは、看護師をしていたということも要因の1つである。この職に就いた時から高校や大学の時の友人を失っていく事が多い。不定休だし、時間も不規則。日勤でも終了間際に急患が来ればその対応に追われるのが普通であり定時で終わったことは新人の頃の2-3か月だけだろう。17時定時でも終わるのが19時20時はザラなのだ。女性の多い職場であるが、既婚者は家族が居るのでそちらを優先するのは当然である。そうなると独身の男となるとどの職場でもそうだろうが言い様に使われるのだ。そうなってくると企業に勤めた友人たちとの休みは合わず、それが続くので疎遠になりやすいのだ。従って一人で居ることが多くなり、一人で出来ることばかりをすることになる。もともとインドアであったハジメは陶芸やら読書やらに熱中するようになったのだ。ガラス工房に通ったのもいい思い出である。
これから取りあえずガラス職人のクララの所で耐熱ガラスがないか相談して、なかったらホウ砂探してみることにする。ガラスは熱すると膨張するがホウ砂は逆に縮小する性質がある。その為ガラスとホウ砂を混ぜると耐熱ガラスが出来上がると言う訳である。ガラス教室の先生が教えてくれたことである。地球ではホウ酸は100均などで簡単に手に入った。1匹見たら100匹いると思えと言われた黒光りの昆虫退治でホウ酸団子などは田舎ではよく使われているのだ。ハジメがこちらの世界に来る少し前にはホウ酸を使って作るスライムなどが流行ったことも記憶に新しい。リナリーとコウは冒険者ギルドに行くと言ったので、陽と2人でクララの所まで行くことにした。
クララの店へ入るとむっとする熱気が2人を包む。ハジメは顔を顰めたが陽の表情は特に変わらない。流石陽光の精霊である。
「あら、ハジメさんいらっしゃい。何か御用?」
「ええ、ちょっとお伺いしたいことがあって。今お時間大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。少し前に炉の火を落としたところで、今シャワー浴びて来たんですよ」
と水気を拭きながら店に出て来たクララが答える。
「あれ?炉って消したら温度上げるのが大変だから消さないのでは?」
と今回の訪問とは異なるふと疑問に思ったことを言うと
「あぁ、火魔法が使えないとそうですね。毎日朝に魔術に来てもらって炉に火を入れるってことになると割高になっちゃいますしね。それが出来るのは匠と呼ばれる人だけですね。匠が作るガラスはとても高価ですから、元は取れるでしょうが、普通だと点火と消火で1日10万Sが相場ですから普通は閉店の時か炉を修理する時だけですね」
と髪をタオルで拭きながら言い、
「ハジメさんには弟が冒険者だって言いましたけど、魔術師なんですよ。以前は魔力ポーションがレアだったので頼めなかったのですが、今は1万くらいで買えますから夜の快適さを捨てるってことにはなりませんよ。それで今日の御用は?」
と笑った。
「なるほど。あの、唐突なんですが、熱に強いガラスっていうのは無いですか?ガラスのヤカンみたいなものを探してまして」
納得しつつハジメが聞くとクララは考え込んだ。
「ポーション作るのに使うんですか?うーん。普通ガラスを火にかけると割れちゃうのは知ってますよね?それでもってことになると・・・」
難しそうな顔になり、
「私数年前までガラス職人の匠の称号を持つ人の所で修業していましたけど、そんなモノが作れたって話は聞いたことないですね。匠の称号を持つと言うのはその国ではトップランクという事になります。なので他国で新しい技術が出来た時には国から情報が必ず降りてくるんです。勿論自国なら絶対に情報が入ってきますが・・・。少なくても私が独り立ちした日までそんなモノが作れたという事実は聞いたことありませんね」
とはっきり言われた。ほぼ諦めていたのであまり気にはならない。後はホウ砂と言うモノがあるかどうかである。耐熱ガラスが無いということはもしかしたら無いか見つかっていない可能性が高い。そうなるとあるかどうかも分からないモノを探すことになる。そうなると一人ではかなり厳しい。
「そうですか。お時間取らせてすみませんでした」
「力に慣れなくてごめんなさいね。もし試して欲しいものが見つかったら持ってきてね。手伝えるかもしれないから」
とクララに言われ、ハジメと陽はクララの店を出た。そこで陽が
「我々が探してみましょうか?」
と言われた。ホウ砂の結晶があるのかどうか分からないし、その形が地球のものと同じとは限らない。どうしたものかと伝えると
「手当たり次第似たようなものを集めてみましょうか?航と舞、藍の3人で探して貰ってもいいでしょう。3人が協力したらほぼ全体を探すことは出来るのですから」
と提案された。何も手掛かりがない以上それでもいいのかもしれない。なかったら諦めも付くのだから。その後街を散策して店に帰り、精霊たちにお願いをする。
「水晶のような形だけど、透き通ってはなくて白い結晶なんだ。そんなのがあるかどうか調べてくれないかな?もしあればこの街から近いところを知りたいんだけど」
とハジメが3人に告げると、3人は一瞬にしてそれぞれの色の忍装束に服を変え右手と片膝を地面につける姿勢を取り、
「「「はっ、この命に変えましてもっ」」」
と言う。なぜに忍者・・・・?と思っていると
「シャプシェ様が上司の方の命でハジメ様の来られた世界の事を調べた時、忍者と言う存在にハマられまして・・・・。それから精霊たちの間では流行っているのです・・・」
申し訳なさそうに陽が言う。まぁ自分以外で精霊たちを見れる存在は少ないだろうと思っていたのでスルーしておいた。
それから3日後、3人が探し出した白い結晶が3つハジメの前に並んでいた。
「うーん。香りはとてもいいんだけど、茶葉が口に入ると苦みが強くなるなぁ・・・。せめてティーポットが必要か・・・。耐熱ガラスが見た目もいいんだけどなぁ・・・。ティーストレーナーで銀がいいかな・・・」
アダの街では普通に飲まれているモノらしい。イッチーは買ったポーションを自分の荷台に運ぼうとしたため、ハジメも手伝ったのだが、その時不意に落ちた袋からハーブティーが零れたのだ。ハジメは即座に言う。
「これ売って貰えますか?」
「あぁ、ハーブティーですか。差し上げますよ。1カ月分くらいしか残っていないので。実は私は少し苦手なんですよ。子供のころからこれを飲むより白湯を飲んでいたので。商売初めてこのイブの街のお茶を知った時からはここのお茶を飲んでいるんです。昨日も3か月分くらい買い込みました」
と笑いながら奥の3つの袋を指さす。ハジメは無料で貰うのには抵抗がったので、傷クリームを5個ほど押し付けておいた。イッチーはこの量なら2000Sくらいだから貰いすぎだと言われたがそこは押し切っておいたのだ。
アダの街ではお茶にダイレクトにお湯を注ぐらしい。そして茶葉ごと飲んでいるとのことだった。
ハジメが食にこだわるのは、看護師をしていたということも要因の1つである。この職に就いた時から高校や大学の時の友人を失っていく事が多い。不定休だし、時間も不規則。日勤でも終了間際に急患が来ればその対応に追われるのが普通であり定時で終わったことは新人の頃の2-3か月だけだろう。17時定時でも終わるのが19時20時はザラなのだ。女性の多い職場であるが、既婚者は家族が居るのでそちらを優先するのは当然である。そうなると独身の男となるとどの職場でもそうだろうが言い様に使われるのだ。そうなってくると企業に勤めた友人たちとの休みは合わず、それが続くので疎遠になりやすいのだ。従って一人で居ることが多くなり、一人で出来ることばかりをすることになる。もともとインドアであったハジメは陶芸やら読書やらに熱中するようになったのだ。ガラス工房に通ったのもいい思い出である。
これから取りあえずガラス職人のクララの所で耐熱ガラスがないか相談して、なかったらホウ砂探してみることにする。ガラスは熱すると膨張するがホウ砂は逆に縮小する性質がある。その為ガラスとホウ砂を混ぜると耐熱ガラスが出来上がると言う訳である。ガラス教室の先生が教えてくれたことである。地球ではホウ酸は100均などで簡単に手に入った。1匹見たら100匹いると思えと言われた黒光りの昆虫退治でホウ酸団子などは田舎ではよく使われているのだ。ハジメがこちらの世界に来る少し前にはホウ酸を使って作るスライムなどが流行ったことも記憶に新しい。リナリーとコウは冒険者ギルドに行くと言ったので、陽と2人でクララの所まで行くことにした。
クララの店へ入るとむっとする熱気が2人を包む。ハジメは顔を顰めたが陽の表情は特に変わらない。流石陽光の精霊である。
「あら、ハジメさんいらっしゃい。何か御用?」
「ええ、ちょっとお伺いしたいことがあって。今お時間大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。少し前に炉の火を落としたところで、今シャワー浴びて来たんですよ」
と水気を拭きながら店に出て来たクララが答える。
「あれ?炉って消したら温度上げるのが大変だから消さないのでは?」
と今回の訪問とは異なるふと疑問に思ったことを言うと
「あぁ、火魔法が使えないとそうですね。毎日朝に魔術に来てもらって炉に火を入れるってことになると割高になっちゃいますしね。それが出来るのは匠と呼ばれる人だけですね。匠が作るガラスはとても高価ですから、元は取れるでしょうが、普通だと点火と消火で1日10万Sが相場ですから普通は閉店の時か炉を修理する時だけですね」
と髪をタオルで拭きながら言い、
「ハジメさんには弟が冒険者だって言いましたけど、魔術師なんですよ。以前は魔力ポーションがレアだったので頼めなかったのですが、今は1万くらいで買えますから夜の快適さを捨てるってことにはなりませんよ。それで今日の御用は?」
と笑った。
「なるほど。あの、唐突なんですが、熱に強いガラスっていうのは無いですか?ガラスのヤカンみたいなものを探してまして」
納得しつつハジメが聞くとクララは考え込んだ。
「ポーション作るのに使うんですか?うーん。普通ガラスを火にかけると割れちゃうのは知ってますよね?それでもってことになると・・・」
難しそうな顔になり、
「私数年前までガラス職人の匠の称号を持つ人の所で修業していましたけど、そんなモノが作れたって話は聞いたことないですね。匠の称号を持つと言うのはその国ではトップランクという事になります。なので他国で新しい技術が出来た時には国から情報が必ず降りてくるんです。勿論自国なら絶対に情報が入ってきますが・・・。少なくても私が独り立ちした日までそんなモノが作れたという事実は聞いたことありませんね」
とはっきり言われた。ほぼ諦めていたのであまり気にはならない。後はホウ砂と言うモノがあるかどうかである。耐熱ガラスが無いということはもしかしたら無いか見つかっていない可能性が高い。そうなるとあるかどうかも分からないモノを探すことになる。そうなると一人ではかなり厳しい。
「そうですか。お時間取らせてすみませんでした」
「力に慣れなくてごめんなさいね。もし試して欲しいものが見つかったら持ってきてね。手伝えるかもしれないから」
とクララに言われ、ハジメと陽はクララの店を出た。そこで陽が
「我々が探してみましょうか?」
と言われた。ホウ砂の結晶があるのかどうか分からないし、その形が地球のものと同じとは限らない。どうしたものかと伝えると
「手当たり次第似たようなものを集めてみましょうか?航と舞、藍の3人で探して貰ってもいいでしょう。3人が協力したらほぼ全体を探すことは出来るのですから」
と提案された。何も手掛かりがない以上それでもいいのかもしれない。なかったら諦めも付くのだから。その後街を散策して店に帰り、精霊たちにお願いをする。
「水晶のような形だけど、透き通ってはなくて白い結晶なんだ。そんなのがあるかどうか調べてくれないかな?もしあればこの街から近いところを知りたいんだけど」
とハジメが3人に告げると、3人は一瞬にしてそれぞれの色の忍装束に服を変え右手と片膝を地面につける姿勢を取り、
「「「はっ、この命に変えましてもっ」」」
と言う。なぜに忍者・・・・?と思っていると
「シャプシェ様が上司の方の命でハジメ様の来られた世界の事を調べた時、忍者と言う存在にハマられまして・・・・。それから精霊たちの間では流行っているのです・・・」
申し訳なさそうに陽が言う。まぁ自分以外で精霊たちを見れる存在は少ないだろうと思っていたのでスルーしておいた。
それから3日後、3人が探し出した白い結晶が3つハジメの前に並んでいた。
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