24 / 173
閑話 第1章
23.閑話:セバスチャンとの出会い
しおりを挟む
時刻は夕方前、私は一通りの事務仕事を終え一息ついたところだった。もう少ししたら依頼の終わった冒険者たちが報告に来る時間になる。そろそろ受付の手伝いに行こうかと席を立った。
冒険者たちは力を持っており刹那的な生き方を好む男が多い。その為に私がギルド長になる前は若い見た目のよい受付嬢を置くことでトラブルを避けて来たという事実があったが、そのせいで結婚や妊娠により退職することが多く、慢性的な人手不足になっているのだ。最近になりようやく子育てが一段落した元受付嬢を臨時職員として雇うことになってきている。しかしやはりまだ人手は足りないのが現実である。
そして私が受付まで降りると
「マスター、ありがとうございます。まだ空いてますので休んでいただいて大丈夫ですよ」
とベテランの受付が声を掛けてきたが私は右手を上げ「大丈夫だよ」と告げ受付の席に座る。そこへ中堅どころのハーフグラスの冒険者が一人の男を伴って入ってくるのが分かった。
「ここが冒険者ギルドだ。入るぞ」
と言いながらドアが開いた。一般的な冒険者の恰好をした黒い髪の青年が連れられて入ってくる。そのきょろきょろしている様子から恐らく最初の登録だろうと思っていると私の方へ歩いてくる。私の前まで来たので
「冒険者の登録ですね。まずこの箱の中に手を入れていただけますか?」
と鑑定箱を希望者の前に出してきた。青年は恐る恐る鑑定穴に手を入れる。私は希望に満ちた姿に心が躍ると同時に無事にその生を終わらせられるように祈る。それが私のルーチンだった。下から冒険者カードが出てくる。それを取り青年に渡そうとすると、仕事に帰って行くハーフグラスの冒険者を青年が目でその姿を追っているのに気づく。
「箱が青く光るということはこの町に対して危害が及ばないということです。それを確認して行ったのですよ」
と話した。青年が納得したような顔をしたので、冒険者カードにエラーがないか確認して手渡す。
「ハジメ・クラタさんですね。レベルは1と」
「依頼はあそこにある用紙を受付へお持ちください。依頼後は依頼物品と用紙を一緒にお渡しください。それで依頼達成となります」
と伝えると、ハジメさんは
「貼られている依頼に制限はありますか?」
「1回に1つにしてくだされば大丈夫ですよ。あとはあなたの自己責任となりますので。さて、登録料が1000S(シード)となります。」
と答えた。冒険者には自己責任が付き物なのだ。どんな依頼を受けることが出来るのか自分で判断することが求められる。そして依頼の達成度合いはギルド内で信頼度として評価され急ぎの仕事の斡旋時に使用さることになる。それは内部秘密であるため冒険者たちには公開されていない。
「あの。お金がないので、戦利品を売りたいのですが」
と気まずそうにハジメさんが言うので、売買所へ案内することにする。これである程度力量を図ることが出来るので確認することにした。
「わかりました。ではこちらに。ではこの上にどうぞ」
と銀色のトレーを出すとハジメさんはラビットの鞣革を3枚乗せた。私は驚く。ラビットを狩れるのは登録前の人なら普通と言ったところであるが、その処理は完ぺきに近かった。鞣革は皮を剥ぎ、特定の薬剤につけて乾燥させて初めて鞣革となる。普通の冒険者はラビットの死体を売るのが普通であり、価格は100Sが良いところである。これだけの加工が出来るのであるなら冒険者になるよりも職人として生きた方が安全であり生活は安泰なはずである。正直彼の素性などを聞きたかったがギルド職員にはタブーとされていた。ましてギルド長である自分が興味本位でそれを破ることは出来ない。色々な感情を抑える。
「鞣革3枚ですね。では1500Sですので、500Sお渡ししますね」
と半銀貨1枚を渡した。
「他に聞きたいことはありますか?」
「もしよろしければ1番安い宿と価格を教えて欲しいのですが」
と言うので
「わかりました。ギルドを出て左に行きますとベッドの絵のある看板があります。そこが『白兎』という宿です。1泊1食ついて3500Sです。もう少し安いところもありますが、自己責任でお願いします。白兎はある程度安くて安全であるということです」
と答えた。
「ありがとうございます、えっと・・・・」
とハジメさんが戸惑っている姿を見て名乗っていなかったことに気づく。
「あぁ、私はセバスチャンと申します」
と答える。
「ありがとうございます、セバスチャンさん」
とハジメさんは笑顔を作り頭を下げ、依頼を受けるために移動していった。その優しそうな笑顔の青年に後日色々な街の事情が解決に向かったりトラブルに巻き込まれたりするとは思いもよらなかったが。
こうしてハジメとセバスチャンは出会うことになるのだった。
冒険者たちは力を持っており刹那的な生き方を好む男が多い。その為に私がギルド長になる前は若い見た目のよい受付嬢を置くことでトラブルを避けて来たという事実があったが、そのせいで結婚や妊娠により退職することが多く、慢性的な人手不足になっているのだ。最近になりようやく子育てが一段落した元受付嬢を臨時職員として雇うことになってきている。しかしやはりまだ人手は足りないのが現実である。
そして私が受付まで降りると
「マスター、ありがとうございます。まだ空いてますので休んでいただいて大丈夫ですよ」
とベテランの受付が声を掛けてきたが私は右手を上げ「大丈夫だよ」と告げ受付の席に座る。そこへ中堅どころのハーフグラスの冒険者が一人の男を伴って入ってくるのが分かった。
「ここが冒険者ギルドだ。入るぞ」
と言いながらドアが開いた。一般的な冒険者の恰好をした黒い髪の青年が連れられて入ってくる。そのきょろきょろしている様子から恐らく最初の登録だろうと思っていると私の方へ歩いてくる。私の前まで来たので
「冒険者の登録ですね。まずこの箱の中に手を入れていただけますか?」
と鑑定箱を希望者の前に出してきた。青年は恐る恐る鑑定穴に手を入れる。私は希望に満ちた姿に心が躍ると同時に無事にその生を終わらせられるように祈る。それが私のルーチンだった。下から冒険者カードが出てくる。それを取り青年に渡そうとすると、仕事に帰って行くハーフグラスの冒険者を青年が目でその姿を追っているのに気づく。
「箱が青く光るということはこの町に対して危害が及ばないということです。それを確認して行ったのですよ」
と話した。青年が納得したような顔をしたので、冒険者カードにエラーがないか確認して手渡す。
「ハジメ・クラタさんですね。レベルは1と」
「依頼はあそこにある用紙を受付へお持ちください。依頼後は依頼物品と用紙を一緒にお渡しください。それで依頼達成となります」
と伝えると、ハジメさんは
「貼られている依頼に制限はありますか?」
「1回に1つにしてくだされば大丈夫ですよ。あとはあなたの自己責任となりますので。さて、登録料が1000S(シード)となります。」
と答えた。冒険者には自己責任が付き物なのだ。どんな依頼を受けることが出来るのか自分で判断することが求められる。そして依頼の達成度合いはギルド内で信頼度として評価され急ぎの仕事の斡旋時に使用さることになる。それは内部秘密であるため冒険者たちには公開されていない。
「あの。お金がないので、戦利品を売りたいのですが」
と気まずそうにハジメさんが言うので、売買所へ案内することにする。これである程度力量を図ることが出来るので確認することにした。
「わかりました。ではこちらに。ではこの上にどうぞ」
と銀色のトレーを出すとハジメさんはラビットの鞣革を3枚乗せた。私は驚く。ラビットを狩れるのは登録前の人なら普通と言ったところであるが、その処理は完ぺきに近かった。鞣革は皮を剥ぎ、特定の薬剤につけて乾燥させて初めて鞣革となる。普通の冒険者はラビットの死体を売るのが普通であり、価格は100Sが良いところである。これだけの加工が出来るのであるなら冒険者になるよりも職人として生きた方が安全であり生活は安泰なはずである。正直彼の素性などを聞きたかったがギルド職員にはタブーとされていた。ましてギルド長である自分が興味本位でそれを破ることは出来ない。色々な感情を抑える。
「鞣革3枚ですね。では1500Sですので、500Sお渡ししますね」
と半銀貨1枚を渡した。
「他に聞きたいことはありますか?」
「もしよろしければ1番安い宿と価格を教えて欲しいのですが」
と言うので
「わかりました。ギルドを出て左に行きますとベッドの絵のある看板があります。そこが『白兎』という宿です。1泊1食ついて3500Sです。もう少し安いところもありますが、自己責任でお願いします。白兎はある程度安くて安全であるということです」
と答えた。
「ありがとうございます、えっと・・・・」
とハジメさんが戸惑っている姿を見て名乗っていなかったことに気づく。
「あぁ、私はセバスチャンと申します」
と答える。
「ありがとうございます、セバスチャンさん」
とハジメさんは笑顔を作り頭を下げ、依頼を受けるために移動していった。その優しそうな笑顔の青年に後日色々な街の事情が解決に向かったりトラブルに巻き込まれたりするとは思いもよらなかったが。
こうしてハジメとセバスチャンは出会うことになるのだった。
0
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる