51 / 173
第2章 ポーショントラブル
47.相談されるみたいです
しおりを挟む
「おはようございます」
というコウの優しい声で目が覚める。今日の夕方にはいよいよ新しい家を受け取る予定の日であった。朝ごはんを3人で食べていると宿屋の扉が開いた。ハジメがなんとなく入ってきた人を見るとそこにはソラがきょろきょろして誰かを探しているようだった。すぐに彼女はハジメに気が付くとこちらに向かってくる。
「おはよう、依頼主さん」
と困った様に微笑む。
「はい。おはようございます。あ、2人ともこちらは今家を建ててくれている大工さんのソラさんだよ。ソラさん、こちらは従業員のリナリーとコウです。こんな朝からどうしたんですか?何か問題でもあったんですか?」
と聞き、リナリーとコウにソラを家を作ってくれている大工であることを紹介する。コウは目を大きく開いて驚いた後そわそわしながらちらちらとソラを見ている。どうやら大工仕事に興味があるか、ソラに興味を持ったみたいである。12歳の子が様々なことに興味を持つことは大切であり、ハジメはそのコウの興味を大事にしたいと思った。
「初めまして、お二人さん。そして少し言いにくいのだけど、納品日を二日ほど遅らせて貰っていいかい?」
「それは大丈夫ですが、何かあったんですか?」
「ちょっ、ちょっとね建てて不具合が見つかったんだよ。それで今エルムと相談中なんだよ。多く見積もって明後日には完成すると思うんだけどね。今エルムが少し設計を手直ししているんだよ。大きな手直しは必要ないんだけど、やっぱり安全な家を作りたいからね。すまないけどよろしく頼むよ。宿屋の代金はウチらが払うからね」
連絡方法が手紙か直接会うしか一般的な方法として存在しないためにこの時間なら絶対に宿に居るだろうと思ってわざわざ来てくれたのだ。ハジメは
「わざわざありがとうございます。宿屋の代金は気にしないでください。割と環境の変化を楽しんでいますので。それでもしお時間あればご一緒に朝食どうですか?ウチのコウがお話を聞きたいみたいですし」
と勧めるとコウは顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。色々な世界をコウとリナリーには見て欲しい。
「そうかい?実は朝ごはんはまだなんだよ。ちょっと寝坊しちまってね」
と空いていた椅子に座る。
「昨日冒険者ギルドと商人ギルドには顔を出したんだけどね、最近は来られていないって言われてね。従業員は来ているみたいだったけど、こういうことはちゃんと依頼主さんに言いたかったからね。その時にはもう遅い時間だったからね、今朝ここに寄らせてもらったんだよ」
と言いながら朝定食を注文していた。
その後4人で色々話しながら楽しい時間を過ごした。その結果コウは建築現場に見学に行くことになったのである。満面の笑みで
「ご主人様行ってきていいですか?」
と言われれば断る事はないハジメである。直ぐに
「邪魔にならないようにね。ソラさん申し訳ありませんがよろしくお願いします。リナリーはどうする?」
と言うとリナリーは今日も冒険者ギルドに行くという。ソラは
「あぁ、ゆっくり見てていいからね。途中で帰りたくなったら言いな。弟子にこの宿まで送らせるからね」
と笑いコウの頭をポンポンしていた。満更でもないようだ。朝食後4人で宿から出てコウとソラと別れ、ハジメは久々に冒険者ギルドへ行くことにし、リナリーと2人で歩く。そして十数分後冒険者ギルドへと到着する。リナリーは受付に声を掛けると地下の訓練所に行くとのこと。怪我をしないように伝え、体力ポーションの3点セットを渡しておく。リナリーは心配し過ぎですと言いながら嬉しそうに手を振って歩いて行った。少しずつ普通の子となっているのはコウだけではないのだと思うと少し嬉しくなった。
ハジメはゆっくりと掲示板を見渡す。受けられそうな依頼はいつもと変わりがないようであった。どうしようかと悩んでいるとセバスチャンが難しい顔をしてカウンター内を歩いているのが見える。声を掛けようとするとセバスチャンの向こう側にやはり難しい顔をしたウォールもいることが見えた。
「・・・セバスチャンさん体大きいからなぁ、ウォールさん見えなかったかよ・・・」
「おはようございます。ウォールさん、セバスチャンさん」
と2人に声を掛けると振り向く。やはり顔は難しい顔をしている。
「どうしたんですか?そんな難しそうな顔をして」
と2人近づいて言う。
「・・・そうですね、ちょっと・・・」
セバスチャンが歯切れが悪く言う。ハジメは一般人である自分には言えない事かもと思い立ち去ろうとすると、
「・・・セバスチャンさん、ハジメさんに話してみませんか?何かいい策が出るかもしれません」
「一般人であるハジメさんを巻き込むのは・・・」
「・・・わかっています。しかしもうそんなに時間はないと思われるのです。ハジメさんは信用できる方です。第三者からの意見で何か打開策が生まれるかもしれません。どうかハジメさん一緒に応接室までお越しください」
とウォールが言うとセバスチャンは申し訳なさそうに
「ハジメさんを巻き込むことは無いようにしますので知恵だけでもお貸しください」
と言い、3人で応接室へ向かった。
2人と対面にハジメが座ると、町長のウォールが話し始める。
「まず、ハジメさんの家の放火犯であるアランは死罪が決定しました。犯行は認めていますし、目撃者も居ますので問題はありません。他国の者ですが放火は重罪ですのでこの街の決定に対して何も言うことは出来ません。それはいいのですが、実はエルフの国との戦争が起こる可能性が高まっています」
「エルフが攻め込んでくるという理由がわかりませんね・・・。どうしてそれが分かったんですか?」
とハジメが言うとセバスチャンが
「えぇ、そうなんです。実際にこの街に来た冒険者たちからこエルフ軍が食料や武具を集めているという情報がありました。その量から推測するに戦争を始めそうな気配なのです。しかもそう遠くない日に・・・」
「そういうことなら、この街を拠点としている冒険者の方々で口の堅い人には可能性として伝えておいた方がいいでしょう。防衛に協力してくれるかもしれませんし、遠距離の依頼は受けなくなるかもしれません。勿論拒否して街から離れる方々もいると思います。どちらにしてもいざという時に冒険者の方々まで混乱してしまうと住民がより一層不安になってしまいますし。あと警備隊と冒険者で協力体制を確立させないとダメだと思います。どういう風に住民をどこの安全な場所に移動させるかとか色々決めておくことは必要かと思います。あと訪れる人に目を光らせておく必要もあります。いざという時住民を煽るための工作員を潜り込ませることも考えられますから。それから、門番や見回りの人数増加をしないと。ただいきなり増やしたら住民たちの噂が立ちますので少しずつ増やしていく方法が良いでしょう。でも時々しか街を出入りしない人にはバレてしまうでしょうが・・・。あとは街に立て籠もることも考えて食料の保管でしょうか。エルフ国が食料を集めているということは価格は上昇しているんですよね?それなら商人ギルドとも協力して食料価格安定のためという名目で集めてもよいかと思いますよ。そして最後に・・・」
メモを頑張って取っていたウォールは
「・・・まだあるんですか?」
と顔を上げる。
「えぇ、後は武器ですが、今の武器はかなり使い込まれていますよね?修理をしましょう。そして修理に出すが流石に代わりの武具ないと住民の安全に問題があるため新しい武具を購入して着用。その後修理に出すという方法でどうでしょう?これで片方を修理に出してももう片方を着用するようにすると言えば問題ないかなぁ。まぁ他から何か言われたらそう答えればいいのではないでしょうか。ポーション類に関しては私がなんとかしますから。取りあえず体力ポーションと魔力ポーションはなんとかなると思います」
と告げる。ハジメは警備隊の武具がかなり使い込まれているのを見ていた。綺麗に磨かれているが端々が欠けていることに気づいていた。
本で得た知識を伝える。現代日本に住んでいたハジメは知識としての戦争しかしらないのだ。まして魔法がある世界の戦争である。使えるのは情報戦のみだろう。
「・・・ハジメさん・・・本当は軍師なんでは・・・?」
とセバスチャンが言うが
「やだなぁ、私は普通のポーション屋ですよ」
と笑った。
「では私はこれで帰りますね」
と続けて言うと2人が
「本当にありがとうございました。有事の際にはよろしくお願いします」
と頭を下げるので慌てて頭を上げさせてその場を辞した。1階の受付まで来たがリナリーはまだ訓練中だったため先に帰ることを伝えて貰えるように受付の人に頼んで宿屋に帰っていった。
夕方になり2人が帰ってくる。コウは笑いながら家を建てることが凄かったと笑顔で話していたが時々ハジメとリナリーの顔を見て悪戯っぽい目をして尻尾がふるふると左右に揺れていた。
というコウの優しい声で目が覚める。今日の夕方にはいよいよ新しい家を受け取る予定の日であった。朝ごはんを3人で食べていると宿屋の扉が開いた。ハジメがなんとなく入ってきた人を見るとそこにはソラがきょろきょろして誰かを探しているようだった。すぐに彼女はハジメに気が付くとこちらに向かってくる。
「おはよう、依頼主さん」
と困った様に微笑む。
「はい。おはようございます。あ、2人ともこちらは今家を建ててくれている大工さんのソラさんだよ。ソラさん、こちらは従業員のリナリーとコウです。こんな朝からどうしたんですか?何か問題でもあったんですか?」
と聞き、リナリーとコウにソラを家を作ってくれている大工であることを紹介する。コウは目を大きく開いて驚いた後そわそわしながらちらちらとソラを見ている。どうやら大工仕事に興味があるか、ソラに興味を持ったみたいである。12歳の子が様々なことに興味を持つことは大切であり、ハジメはそのコウの興味を大事にしたいと思った。
「初めまして、お二人さん。そして少し言いにくいのだけど、納品日を二日ほど遅らせて貰っていいかい?」
「それは大丈夫ですが、何かあったんですか?」
「ちょっ、ちょっとね建てて不具合が見つかったんだよ。それで今エルムと相談中なんだよ。多く見積もって明後日には完成すると思うんだけどね。今エルムが少し設計を手直ししているんだよ。大きな手直しは必要ないんだけど、やっぱり安全な家を作りたいからね。すまないけどよろしく頼むよ。宿屋の代金はウチらが払うからね」
連絡方法が手紙か直接会うしか一般的な方法として存在しないためにこの時間なら絶対に宿に居るだろうと思ってわざわざ来てくれたのだ。ハジメは
「わざわざありがとうございます。宿屋の代金は気にしないでください。割と環境の変化を楽しんでいますので。それでもしお時間あればご一緒に朝食どうですか?ウチのコウがお話を聞きたいみたいですし」
と勧めるとコウは顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。色々な世界をコウとリナリーには見て欲しい。
「そうかい?実は朝ごはんはまだなんだよ。ちょっと寝坊しちまってね」
と空いていた椅子に座る。
「昨日冒険者ギルドと商人ギルドには顔を出したんだけどね、最近は来られていないって言われてね。従業員は来ているみたいだったけど、こういうことはちゃんと依頼主さんに言いたかったからね。その時にはもう遅い時間だったからね、今朝ここに寄らせてもらったんだよ」
と言いながら朝定食を注文していた。
その後4人で色々話しながら楽しい時間を過ごした。その結果コウは建築現場に見学に行くことになったのである。満面の笑みで
「ご主人様行ってきていいですか?」
と言われれば断る事はないハジメである。直ぐに
「邪魔にならないようにね。ソラさん申し訳ありませんがよろしくお願いします。リナリーはどうする?」
と言うとリナリーは今日も冒険者ギルドに行くという。ソラは
「あぁ、ゆっくり見てていいからね。途中で帰りたくなったら言いな。弟子にこの宿まで送らせるからね」
と笑いコウの頭をポンポンしていた。満更でもないようだ。朝食後4人で宿から出てコウとソラと別れ、ハジメは久々に冒険者ギルドへ行くことにし、リナリーと2人で歩く。そして十数分後冒険者ギルドへと到着する。リナリーは受付に声を掛けると地下の訓練所に行くとのこと。怪我をしないように伝え、体力ポーションの3点セットを渡しておく。リナリーは心配し過ぎですと言いながら嬉しそうに手を振って歩いて行った。少しずつ普通の子となっているのはコウだけではないのだと思うと少し嬉しくなった。
ハジメはゆっくりと掲示板を見渡す。受けられそうな依頼はいつもと変わりがないようであった。どうしようかと悩んでいるとセバスチャンが難しい顔をしてカウンター内を歩いているのが見える。声を掛けようとするとセバスチャンの向こう側にやはり難しい顔をしたウォールもいることが見えた。
「・・・セバスチャンさん体大きいからなぁ、ウォールさん見えなかったかよ・・・」
「おはようございます。ウォールさん、セバスチャンさん」
と2人に声を掛けると振り向く。やはり顔は難しい顔をしている。
「どうしたんですか?そんな難しそうな顔をして」
と2人近づいて言う。
「・・・そうですね、ちょっと・・・」
セバスチャンが歯切れが悪く言う。ハジメは一般人である自分には言えない事かもと思い立ち去ろうとすると、
「・・・セバスチャンさん、ハジメさんに話してみませんか?何かいい策が出るかもしれません」
「一般人であるハジメさんを巻き込むのは・・・」
「・・・わかっています。しかしもうそんなに時間はないと思われるのです。ハジメさんは信用できる方です。第三者からの意見で何か打開策が生まれるかもしれません。どうかハジメさん一緒に応接室までお越しください」
とウォールが言うとセバスチャンは申し訳なさそうに
「ハジメさんを巻き込むことは無いようにしますので知恵だけでもお貸しください」
と言い、3人で応接室へ向かった。
2人と対面にハジメが座ると、町長のウォールが話し始める。
「まず、ハジメさんの家の放火犯であるアランは死罪が決定しました。犯行は認めていますし、目撃者も居ますので問題はありません。他国の者ですが放火は重罪ですのでこの街の決定に対して何も言うことは出来ません。それはいいのですが、実はエルフの国との戦争が起こる可能性が高まっています」
「エルフが攻め込んでくるという理由がわかりませんね・・・。どうしてそれが分かったんですか?」
とハジメが言うとセバスチャンが
「えぇ、そうなんです。実際にこの街に来た冒険者たちからこエルフ軍が食料や武具を集めているという情報がありました。その量から推測するに戦争を始めそうな気配なのです。しかもそう遠くない日に・・・」
「そういうことなら、この街を拠点としている冒険者の方々で口の堅い人には可能性として伝えておいた方がいいでしょう。防衛に協力してくれるかもしれませんし、遠距離の依頼は受けなくなるかもしれません。勿論拒否して街から離れる方々もいると思います。どちらにしてもいざという時に冒険者の方々まで混乱してしまうと住民がより一層不安になってしまいますし。あと警備隊と冒険者で協力体制を確立させないとダメだと思います。どういう風に住民をどこの安全な場所に移動させるかとか色々決めておくことは必要かと思います。あと訪れる人に目を光らせておく必要もあります。いざという時住民を煽るための工作員を潜り込ませることも考えられますから。それから、門番や見回りの人数増加をしないと。ただいきなり増やしたら住民たちの噂が立ちますので少しずつ増やしていく方法が良いでしょう。でも時々しか街を出入りしない人にはバレてしまうでしょうが・・・。あとは街に立て籠もることも考えて食料の保管でしょうか。エルフ国が食料を集めているということは価格は上昇しているんですよね?それなら商人ギルドとも協力して食料価格安定のためという名目で集めてもよいかと思いますよ。そして最後に・・・」
メモを頑張って取っていたウォールは
「・・・まだあるんですか?」
と顔を上げる。
「えぇ、後は武器ですが、今の武器はかなり使い込まれていますよね?修理をしましょう。そして修理に出すが流石に代わりの武具ないと住民の安全に問題があるため新しい武具を購入して着用。その後修理に出すという方法でどうでしょう?これで片方を修理に出してももう片方を着用するようにすると言えば問題ないかなぁ。まぁ他から何か言われたらそう答えればいいのではないでしょうか。ポーション類に関しては私がなんとかしますから。取りあえず体力ポーションと魔力ポーションはなんとかなると思います」
と告げる。ハジメは警備隊の武具がかなり使い込まれているのを見ていた。綺麗に磨かれているが端々が欠けていることに気づいていた。
本で得た知識を伝える。現代日本に住んでいたハジメは知識としての戦争しかしらないのだ。まして魔法がある世界の戦争である。使えるのは情報戦のみだろう。
「・・・ハジメさん・・・本当は軍師なんでは・・・?」
とセバスチャンが言うが
「やだなぁ、私は普通のポーション屋ですよ」
と笑った。
「では私はこれで帰りますね」
と続けて言うと2人が
「本当にありがとうございました。有事の際にはよろしくお願いします」
と頭を下げるので慌てて頭を上げさせてその場を辞した。1階の受付まで来たがリナリーはまだ訓練中だったため先に帰ることを伝えて貰えるように受付の人に頼んで宿屋に帰っていった。
夕方になり2人が帰ってくる。コウは笑いながら家を建てることが凄かったと笑顔で話していたが時々ハジメとリナリーの顔を見て悪戯っぽい目をして尻尾がふるふると左右に揺れていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる