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第2章 ポーショントラブル
30.値上げさせられるみたいです
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ハジメが戻ってくるとオースティンは苦い顔していた。
「どうかしたんですか?すごく難しい顔をしていますが・・・」
「あぁ、ハジメさんお帰りなさい。すみません、待たせていただいていました。申し訳ありませんが、一緒にもう少し待ってもらえませんか?もう一人来るのです」
ハジメはオースティンの前に座り、リナリーに自分の分のお茶を出してもらうように頼のんだ。10分程すると商人ギルド長のエヴァがベスパを連れてやってきた。オースティン、エヴァ、ベスパ、リナリー、コウが揃ったところで話が始まる。
「実はハジメさんのポーションが問題となっているのです。ご存知かと思いますがポーションの効果が高いのです」
とオースティンが話し始める。ハジメは昨日アベルに言われるまで知らなかったと心の中で汗をかきつつ頷く。
「それにより、他の調剤師の収入が減っていることが問題となっているのです。私からすれば、努力が足りないと思うのですが、そう思わない者が多いのです」
そのオースティンの話を引き継いでエヴァが続ける。
「研究・研鑽をしてこなかった怠惰な輩が作成方法を開示しろと言っているのです。本当に恥知らずな要求です。頭に来ます」
続けてベスパが後を継ぐ。
「作り方は個人の秘匿情報だと商人ギルドも突っぱねたのです。しかしその恥知らずな調剤師が卸している商人とそれに懇意にしている貴族からもその要求が強出始めたのです。貴族が関わってくると無下に突っぱねることはギルドとしても出来ないのです・・・・。そこでエヴァ様がオースティン様に相談したところ、オースティン様の店でも誰が作ったポーションなのか聞くお客さんが増えているとのことでした。実際に既にハジメさんのポーションの効果の高さが巷に広がってきているんです。魔力ポーションはハジメさんが作ったものとは公には知られていないので今はそのようなトラブルは起こっていません。そこで3人で話合いをした結果ハジメさんのポーションの価格を上げてはどうかと言う案が出たのです。なかなか売りにくくなるとは思うのですが・・・・」
と言った。
「訪ねて頂いた理由は分かりました。しかし急に売値を上げるとなると私たちは生活できるのでしょうか?それ相応の反発が起こると思うのですが・・・」
とハジメは言った。今日まで4500Sで売っていたものが例えば500S値上がりしたとしたら買う人にとっては大きな価格変動だ。50S程度の値上がりでは調剤師や商人、税収の下がったことをハジメのせいにする貴族たちは納得しないだろう。
「反発などに関しては商人ギルド頼って頂いて大丈夫です。それに今日中にハジメさんのポーションの価格が上がるということは伝えるようにします。それで改正された価格ですが、最低1000S上げて欲しいのです。500Sでは3者から不満が出ると思われます。いかがでしょう?」
ハジメは価格を上げても皆が買いやすい値段で提供がしたい。苦しむ人は少ない方がいいと思っている。
「では1000Sで。それ以上だと買えない人も出てきてしまうので。価格はいつから上げればいいのですか?」
「エヴァが週明けからでお願い出来るでしょうか?周知するのに今週中は必要だと思うので。それまでは売る本数は変えずにお願いします」
「価格が上がれば制限掛けている本数増やしてもいいのですか?」
とハジメが問うと
「えぇ、あちらたちは価格のみの指定でした。本数に関しては作れるのなら勝手にしろって言われましたよ」
とウインクしながらエヴァが言った。顔は悪代官の様に邪気を帯びていた。3者は商人ギルドに結構面倒を掛けたらしい・・・。こ、怖いよ商人ギルド・・・・。
これで来週から価格は5500Sとなることが決定された。隣にいたコウとリナリーに
「今週はたぶん凄く忙しくなるよ・・・・」
と言うと2人は頷いた。
昨日のうちに広まった価格改正の事実は瞬く間に広がり、翌日ハジメの想像した通り用意した30本のポーションは開店後1時間過ぎには売り切れてしまった。開店前からの行列は長くなったが、元々本数限定だったため、もっとポーションを出せなどと言われるトラブルはなかった。ついでに魔力ポーションも全て売れたため、午後から店を閉め3人それぞれ休暇ということにした。ポーションの数はまだまだあるが、本数は増やさないでほしいという商人ギルドからの指示があったためである。それにより先延ばしにしていた休みを取ることにしたのだ。
リナリーは野菜の手入れをして買い物に行くということだったので、経費として1万Sほど渡しておいた。畑ももっと広げたいが土地がないのが悩みであった。安全を考えると近所に土地があるほうがいいのだ。
コウは冒険者ギルドで短剣の練習をするという。セバスチャンにいつきてもいいと言う約束をいつの間にか取り付けていたようで練習に向かうとのこと。買い食い用に5000S渡しておいた。ハジメは店の周囲を散歩することにし、3人は思い思いに活動を開始した。
ハジメはゆっくりと周辺を歩いていた。ハジメの店から1本裏の道に入ると今までの雰囲気とは大きく変わった。店の一本裏は住宅街となっており、行く必要性がないのだ。ハジメは知らない場所に来ているかのような感覚になり、ちょっとウキウキし始めた。趣味として路地散歩を上げていただけはある。
「なぁ、本当に行くのか?」
と沈んだ声がハジメの耳に届いた。どうしたのかと見ると1組の夫婦の前に1人の男が立っている。
「あぁ、母親をずっと一人にしておくわけには行かないしな。まだ1週間ほどあるから支度を急いでいるところだ」
と夫が答える。
「そうか・・・。仕方ないよな。それで家は売れそうなのか?」
と男が聞くと妻が答える。
「それが・・・まだなんですよ。買っても建物がこうも古いから解体して建て直すことになるからなかなか難しいみたいで・・・」
と3人が家を見上げる。2階建ての古びた店舗付きの家の様だったが、奥に見覚えのある家が見えた。
「ありゃ、お前の店だな」
不意に後ろから聞いたことのあるテノールの声がかかった。振り返ると家具屋のアーヴィンが立っていた。
「ここは食器屋でな、田舎の母親が病気がちになってしまったらしい。始めはこちらに呼ぶつもりだったらしく、家を建て直す予定だったんだがな。母親の体力的に難しいそうなんだ。だから建て直しを止め田舎に帰ることにしたみたいなんだよ。それで1月前から売りに出していたんだが、売れないみたいだな」
「始めは1500万Sで売りに出してたみたいだが売れなくてな。徐々に下げて今は500万Sだが売れないんだ。ほとんど土地代みたいなもんだがな。建物の取り壊しと新たに建てるのは購入者持ちになってるらしい。更地にして店舗を立ててとなると数か月かかる。その間物は売れないし、売れるようになってもここは見ての通り住人以外は人通りが少ない。食器屋としては立地が良かったんだがな。住宅としては広すぎるし、店舗としても売り上げが厳しい・・・。そういった訳で売れ残っているんだ」
とアーヴィンが言った。
「なるほど・・・・。俺は畑くらいしか思いつかなくて」
とハジメが言うとアーヴィンはそれでもいいんじゃないか、と言った。
「買ったら柵作ってくれますか?外から見えないようなものがいいんですけど」
とハジメが悪戯っぽく言うと
「いいぜ。安くしておく・・・。かあちゃんに怒られないような金額でという前置きが付くがな」
と快諾されてしまった。
「おい、こいつが買ってくれるってよ」
とアーヴィンはハジメの肩に手を置き、食器屋夫婦に声を掛けていた。夫婦はハジメの両手を握って感謝を述べた。まぁハジメとしても畑もっと広げたいと考えていたので渡りに船であったことは事実である。3人で商人ギルドに行き、購入の手続きをした。
「金額は500万Sです」
とギルドの土地管理のスタッフが言うと、
「1500万で買いますよ。お母さんの介護も大変でしょうし、お金は有った方がいいですし」
と3倍の値段で買い取った。
「まさか高く買う人がいるとは思いませんでした・・・」
とスタッフは言っていたがハジメは笑顔で返しておいた。
そしてハジメはギルドで夫婦が出発した後家を壊して整地して貰うように依頼をし家に帰った。まさか、散歩に来て土地を買うとは思わなかったが、この街に少し溶け込めたような気がした。
ハンドブック 8項目目
8-2.土地を買ってみよう:Clear!
「どうかしたんですか?すごく難しい顔をしていますが・・・」
「あぁ、ハジメさんお帰りなさい。すみません、待たせていただいていました。申し訳ありませんが、一緒にもう少し待ってもらえませんか?もう一人来るのです」
ハジメはオースティンの前に座り、リナリーに自分の分のお茶を出してもらうように頼のんだ。10分程すると商人ギルド長のエヴァがベスパを連れてやってきた。オースティン、エヴァ、ベスパ、リナリー、コウが揃ったところで話が始まる。
「実はハジメさんのポーションが問題となっているのです。ご存知かと思いますがポーションの効果が高いのです」
とオースティンが話し始める。ハジメは昨日アベルに言われるまで知らなかったと心の中で汗をかきつつ頷く。
「それにより、他の調剤師の収入が減っていることが問題となっているのです。私からすれば、努力が足りないと思うのですが、そう思わない者が多いのです」
そのオースティンの話を引き継いでエヴァが続ける。
「研究・研鑽をしてこなかった怠惰な輩が作成方法を開示しろと言っているのです。本当に恥知らずな要求です。頭に来ます」
続けてベスパが後を継ぐ。
「作り方は個人の秘匿情報だと商人ギルドも突っぱねたのです。しかしその恥知らずな調剤師が卸している商人とそれに懇意にしている貴族からもその要求が強出始めたのです。貴族が関わってくると無下に突っぱねることはギルドとしても出来ないのです・・・・。そこでエヴァ様がオースティン様に相談したところ、オースティン様の店でも誰が作ったポーションなのか聞くお客さんが増えているとのことでした。実際に既にハジメさんのポーションの効果の高さが巷に広がってきているんです。魔力ポーションはハジメさんが作ったものとは公には知られていないので今はそのようなトラブルは起こっていません。そこで3人で話合いをした結果ハジメさんのポーションの価格を上げてはどうかと言う案が出たのです。なかなか売りにくくなるとは思うのですが・・・・」
と言った。
「訪ねて頂いた理由は分かりました。しかし急に売値を上げるとなると私たちは生活できるのでしょうか?それ相応の反発が起こると思うのですが・・・」
とハジメは言った。今日まで4500Sで売っていたものが例えば500S値上がりしたとしたら買う人にとっては大きな価格変動だ。50S程度の値上がりでは調剤師や商人、税収の下がったことをハジメのせいにする貴族たちは納得しないだろう。
「反発などに関しては商人ギルド頼って頂いて大丈夫です。それに今日中にハジメさんのポーションの価格が上がるということは伝えるようにします。それで改正された価格ですが、最低1000S上げて欲しいのです。500Sでは3者から不満が出ると思われます。いかがでしょう?」
ハジメは価格を上げても皆が買いやすい値段で提供がしたい。苦しむ人は少ない方がいいと思っている。
「では1000Sで。それ以上だと買えない人も出てきてしまうので。価格はいつから上げればいいのですか?」
「エヴァが週明けからでお願い出来るでしょうか?周知するのに今週中は必要だと思うので。それまでは売る本数は変えずにお願いします」
「価格が上がれば制限掛けている本数増やしてもいいのですか?」
とハジメが問うと
「えぇ、あちらたちは価格のみの指定でした。本数に関しては作れるのなら勝手にしろって言われましたよ」
とウインクしながらエヴァが言った。顔は悪代官の様に邪気を帯びていた。3者は商人ギルドに結構面倒を掛けたらしい・・・。こ、怖いよ商人ギルド・・・・。
これで来週から価格は5500Sとなることが決定された。隣にいたコウとリナリーに
「今週はたぶん凄く忙しくなるよ・・・・」
と言うと2人は頷いた。
昨日のうちに広まった価格改正の事実は瞬く間に広がり、翌日ハジメの想像した通り用意した30本のポーションは開店後1時間過ぎには売り切れてしまった。開店前からの行列は長くなったが、元々本数限定だったため、もっとポーションを出せなどと言われるトラブルはなかった。ついでに魔力ポーションも全て売れたため、午後から店を閉め3人それぞれ休暇ということにした。ポーションの数はまだまだあるが、本数は増やさないでほしいという商人ギルドからの指示があったためである。それにより先延ばしにしていた休みを取ることにしたのだ。
リナリーは野菜の手入れをして買い物に行くということだったので、経費として1万Sほど渡しておいた。畑ももっと広げたいが土地がないのが悩みであった。安全を考えると近所に土地があるほうがいいのだ。
コウは冒険者ギルドで短剣の練習をするという。セバスチャンにいつきてもいいと言う約束をいつの間にか取り付けていたようで練習に向かうとのこと。買い食い用に5000S渡しておいた。ハジメは店の周囲を散歩することにし、3人は思い思いに活動を開始した。
ハジメはゆっくりと周辺を歩いていた。ハジメの店から1本裏の道に入ると今までの雰囲気とは大きく変わった。店の一本裏は住宅街となっており、行く必要性がないのだ。ハジメは知らない場所に来ているかのような感覚になり、ちょっとウキウキし始めた。趣味として路地散歩を上げていただけはある。
「なぁ、本当に行くのか?」
と沈んだ声がハジメの耳に届いた。どうしたのかと見ると1組の夫婦の前に1人の男が立っている。
「あぁ、母親をずっと一人にしておくわけには行かないしな。まだ1週間ほどあるから支度を急いでいるところだ」
と夫が答える。
「そうか・・・。仕方ないよな。それで家は売れそうなのか?」
と男が聞くと妻が答える。
「それが・・・まだなんですよ。買っても建物がこうも古いから解体して建て直すことになるからなかなか難しいみたいで・・・」
と3人が家を見上げる。2階建ての古びた店舗付きの家の様だったが、奥に見覚えのある家が見えた。
「ありゃ、お前の店だな」
不意に後ろから聞いたことのあるテノールの声がかかった。振り返ると家具屋のアーヴィンが立っていた。
「ここは食器屋でな、田舎の母親が病気がちになってしまったらしい。始めはこちらに呼ぶつもりだったらしく、家を建て直す予定だったんだがな。母親の体力的に難しいそうなんだ。だから建て直しを止め田舎に帰ることにしたみたいなんだよ。それで1月前から売りに出していたんだが、売れないみたいだな」
「始めは1500万Sで売りに出してたみたいだが売れなくてな。徐々に下げて今は500万Sだが売れないんだ。ほとんど土地代みたいなもんだがな。建物の取り壊しと新たに建てるのは購入者持ちになってるらしい。更地にして店舗を立ててとなると数か月かかる。その間物は売れないし、売れるようになってもここは見ての通り住人以外は人通りが少ない。食器屋としては立地が良かったんだがな。住宅としては広すぎるし、店舗としても売り上げが厳しい・・・。そういった訳で売れ残っているんだ」
とアーヴィンが言った。
「なるほど・・・・。俺は畑くらいしか思いつかなくて」
とハジメが言うとアーヴィンはそれでもいいんじゃないか、と言った。
「買ったら柵作ってくれますか?外から見えないようなものがいいんですけど」
とハジメが悪戯っぽく言うと
「いいぜ。安くしておく・・・。かあちゃんに怒られないような金額でという前置きが付くがな」
と快諾されてしまった。
「おい、こいつが買ってくれるってよ」
とアーヴィンはハジメの肩に手を置き、食器屋夫婦に声を掛けていた。夫婦はハジメの両手を握って感謝を述べた。まぁハジメとしても畑もっと広げたいと考えていたので渡りに船であったことは事実である。3人で商人ギルドに行き、購入の手続きをした。
「金額は500万Sです」
とギルドの土地管理のスタッフが言うと、
「1500万で買いますよ。お母さんの介護も大変でしょうし、お金は有った方がいいですし」
と3倍の値段で買い取った。
「まさか高く買う人がいるとは思いませんでした・・・」
とスタッフは言っていたがハジメは笑顔で返しておいた。
そしてハジメはギルドで夫婦が出発した後家を壊して整地して貰うように依頼をし家に帰った。まさか、散歩に来て土地を買うとは思わなかったが、この街に少し溶け込めたような気がした。
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