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第1章 旅立つ

16.業務規程を決めるみたいです

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ハジメはコウの衣服一式を買い求め家に帰って来た。帰宅後風呂に湯を張り、浸からせていた。今ハジメはフルーツと雑穀粥を温めコウの食事の準備をしている。

十数分前、最初にコウをお風呂に入れようとすると、

「ご主人様、お話しさせていただく事をお許しください。私を洗うとお湯が汚れてしまうので拭くだけで大丈夫です。勿体ないことをしないでください」

とハジメを止めたのだが、ハジメは問答無用とばかりコウをお湯につけると湯はすぐに真っ黒になり、コウが色白であることが分かった。あばら骨ははっきりと浮き上がり、腹はぽっこりと膨れ上がっており典型的な栄養失調の体つきだった。頬も痩せこけ目がギョロッとし、その瞳はせわしなく上下左右に動いており、強い警戒を感じているような動きであった。コウの体を浴槽外で石鹸を使い洗っている間に再度湯を張り、ペン太に客が来たら教えて貰うように伝えた。
その後もう1度湯を張り替えコウの汚れを落とすという作業は終わった。その頃にはコウも落ち着いたようであり、風呂から出たらペン太に声を掛けて貰うように伝えている。

「ご主人~。コウくんお風呂出たよー」

とペン太が声を掛けて来た。手を拭きつつお風呂へ行くとすっかりきれいになったコウが裸で立っていた。ハジメは買ってきた服を着せ、手をつないでダイニングテーブルのところまで連れてきていた。ハジメは朝ごはんとして買ってきたフルーツと雑穀粥をテーブルに座らせたコウの前に置き、食べるように促す。

「これは奴隷の食べるものではありません」

と拒否したが数秒後コウのお腹がぐーっと鳴り続いた不毛な戦いは終わった。良いから全部食べなさいと促し、ペン太に監視するよう依頼しペン太の前にも監視の報酬としてフルーツを置いた。

「食べ終わったら店においで」

とハジメは話し店のカウンターに向かうことにした。見られているうちは遠慮するだろうし、食べづらいだろうと思っての行動であった。入口からこっそり覗くと食事を摂っているのが分かった。12歳らしくしっかり頬張っているその姿を見ることでハジメは安心できた。

30分くらいするとコウが店のカウンターまで出てきて、土下座をした。何事かとハジメは驚き、取りあえず立たせる。日本人であるハジメは土下座をするというのはよっぽどのことが起こったことを意味する。

「すみません、ご飯は全部食べましたが、ご主人様をお待たせしてしまいました。殴るなり蹴るなりしてください」

と言うのだ。あまりにも切ないとハジメは思い、奴隷制度により一層不快感を覚えた。

 ハジメはコウと生活するにあたって、コウの子供らしさを取り戻すためにご主人様とコウとのルールを決めることにした。ハジメはコウの頭を優しく撫で、

「コウの報酬だけど、朝昼夕とちゃんと3回食べ、毎日お風呂に入ることと、服が汚れたら新しいのを買い与えるってところかな。後お金は1か月で5万S。これは俺との決まりなので拒否はできないよ」

とコウに言った。コウは12歳にして奴隷としての扱いにれてしまっているのだ。ハジメは奴隷として扱うことに慣れていない。それならば一緒に暮らすルールとして決めてしまえばいいのだ。いわゆる業務規程としてしまえばいいと思った。

「その代わりコウにはお店の掃除と、コウの部屋と俺の部屋の掃除をお願いするよ。店の掃除道具はそこの棚に入っているから頼むね。あと商品が正面を向いてなければ正面にしておいてくれるかな。早速お願いしようかな」

とハジメは話し、掃除道具の場所まで一緒に行き取り出した。コウは箒とハタキを持ち棚の上から下へ埃をはたき、カウンター側から出入口に向かい掃除をしていく。掃除の仕方は知っているんだなとハジメは驚いた。コウは

「両親がお店をしていましたので。もう店も親もありませんが」

と言い、掃除を続けた。ハジメはその間にコウのお約束事項を作っていた。1時間ほどすると掃除が終わりハジメの前に来たコウは片膝を立て座った。

「掃除が終わりましたご主人様」

と報告した。ハジメはまたその姿を見て悲しくなった。

「コウ。これから一緒に暮らすにあたって決まりを作ったんだ。それを伝えるね。
1.一緒に3食しっかり食べること。
2.お風呂は毎日入ること。
3.毎日着替えること。
4.自分の部屋、ハジメの部屋、店の掃除をすること。
5.体調が悪い時は必ず言うこと。
6.ホウ・レン・ソウは必ず行うこと。その際は立ったままで。
取りあえず、6つ決めたから守るようにね」
とハジメは話し、6か条が書かれた紙を広げ、キッチンに張っておくからねと話した。

コウは不思議そうな顔をしていた。それはそうである。奴隷は一日1食が普通だし、お風呂は入らず井戸や川で汚れを落とすくらいだ。まして自分の部屋を与えられることはなく、奴隷全員で納屋のようなところで雑魚寝するのが常である。主人は奴隷の体調など考慮して仕事を振ったりしない。コウが慌てて

「そんな条件おかしいですっ」

と言うと、

「俺とのお約束だからね」

とハジメはコウの頭を右手でぽんぽんと叩いた。

「さて、今日はもうお風呂入ったし、早めに寝ようかねぇ」

と言うと、コウは

「納屋はどちらにありますか?」

と言う。

「納屋?」

とハジメが問うと

「はい。私はそこで寝ますので・・・」

と真顔で言う。ハジメはため息を付き、コウを連れて2階へ上がる。階段を上ってすぐそこにある部屋へ案内した。実はコウがお風呂に浸かっている間にアーヴィン達が来てベッドとタンスを設置してくれていた。

「コウはこれからこの部屋で生活するんだよ」

「こんな部屋奴隷の私には勿体ないです」

と言うのだ。切なくてたまらなかった。コウを抱き上げてベッドに横にした。起きようとするがハジメが押さえ、布団を掛ける。
その数分後には寝入っていた。それを見てふっと笑ったハジメは自分の部屋へ行くのだった。

翌日お店を開ける。昨日までに冒険者ギルドやオースティンの店でハジメが店を開くことを宣伝してもらっている。お客0人は避けたい所だ。既にコウは起きており、

「あんな豪華な部屋とベッドで寝てすみません」

と起き掛けに言っていたが、もうあれはコウの部屋だと伝え用意した朝ごはんを食べさせ、早速朝の掃除をしてもらっていた。所謂いわゆる用事を言いつけて有耶無耶うやむやにするという、大人の汚い作戦である。オースティンの店へ卸すポーションは店の様子をみて午前中に納めることになっていたが、開店して暫くするとオースティンがハジメの店にやって来た。

「ハジメさん、開店おめでとうございます。コウ君はどうですか?」

と話しかけてきた。コウはハジメの横でオースティンに頭を下げていた。

「おはようございます。オースティンさん。もう少ししたらお伺いしますのに」

と言うと

「コウ君の様子を知りたかったので突然訪問させてもらったのです。あ、ついでにポーションも貰っていきますね」

と素敵な笑顔で言った。ハジメは

「もう既に良く働いてくれています。オースティンさんが私にと勧めてくださったとか。ありがとうございました」

とハジメも頭を下げ、ポーション5つを渡しその代金を受け取った。

「いえいえ、こうでもしないとハジメさんは奴隷を買わないと思いましたので、僭越せんえつながら」

と笑った。まだ挙動不審なコウの頭を撫で開店のお祝いとして追加で体力ポーションを5本買ってくれた。

その後もアーヴァンが店に来てポーションを5本買ってくれた。また冒険者たちが合計15本買ってくれた。
元商人の子であったためコウは計算もでき、後半はコウに販売を任せることができたため、ハジメは明日のポーションの作成を行うことが出来た。

ハンドブック 6項目目

6-4.奴隷のお世話をしよう!:Clear!

6-5.自分の店で商品を売ろう!:Clear!
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