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第1章 旅立つ

12.店を買うようです

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ペン太と出会って1か月後ようやく所持金が550万Sとなり、ハジメは商人ギルドに来ていた。
1週間前に訪れ店舗候補を探して貰うように依頼していたからであった。今日ようやく何店舗か見つかったと商人ギルドから連絡があり、訪れたのだ。

正直このまま白兎に宿泊していると掃除や食事など楽であるが、ペン太とのコミュニケーション時に周囲に気を遣うということもあった・・・・、もっとペン太を可愛がりたいという素直なハジメの欲求が強くなったとも言う。表の理由としては宿泊費も3500Sで格安であるが塵も積もればである。店を開店するかどうかは分からないし、奴隷を使って商売というのはハジメにはまだ抵抗が強かったが今のハジメにとって宿泊費がかからないという事が大切なのであった。裏の理由は先に述べた通りだ。表<裏、割合的には2:8である。

ハジメがそんなことを思っていると、ギルドの物件係の女性が声を掛けて来た。

「あ、あの。ハジメ様。お待たせしました。今から見取り図と場所をお伝えします。き、気になる物件がございましたらお伝えください。実際に見る際に50,000Sお支払い頂きます。」

と担当の女性はペン太のお腹をぷにぷにしてニヤニヤしているハジメを見てやや引き気味に言った。ペン太は彼女には見えていないため、何もない空間を親指と人差し指でつまんでニヤついているという本当に変質者と言うような様子なので、彼女がドン引きするのも仕方ないのである。

「まずは1件目ですね」

気を取り直した女性スタッフはそういい広場から左上に位置する場所を指さした。大通りからは2本ほど中に入り、オースティンの道具屋に近いのが考えものである。

「オースティンさんの道具屋が近いのはちょっと・・・・。かなりの恩があるので避けたいのですが・・・・」

と申し訳なさそうに女性に伝える。純日本人のハジメは不義理を行うには抵抗があったからだ。勿論これまで通りオースティンの道具屋へはポーションは卸すことになっている。

「そうですか、では次の物件ですね」

2件目は冒険者ギルドのエリアの1本奥に入ったところで3つの物件の中で一番古い物であった。大きさは1階の手前半分が店となっており、カウンターの奥に地下と2階へ続く階段があるようであった。

3件目は中央から左下のエリアで大通りから4本ほど中に入ったところであり、通りには店は少なく、その店は八百屋や肉屋などの生活必需品を売る店だけであり、冒険者は訪れなさそうな通りだった。

『これは2件目だけかなぁ。ダメだったらまた探してもらうことになるかなぁ』と心でため息を吐いた。出来る看護師は思っていることを顔には出さないのである。
ハジメは取りあえず2件目のところを見せて貰うように依頼した。

ハジメは右肩にペン太を乗せ案内の人についていく。
30分程歩くと到着した。見た目はやや古いが清潔感があった。店の前も人は多くもなく少なくもなくといった感じで時折冒険者たちが買い物をしてる姿が見える。立地的には問題はなさそうだなと判断できる。

住居区画へ入るために裏口から入ると上下に延びる階段があった。その前はキッチンダイニングのようになっており、少し大きめのテーブルを置けば6人がゆったりと食事できるような広さがあった。また上下にある階段の奥の突き当りにドアがありそこにはトイレと風呂がついていた。

「お風呂はいいですねぇ。本当にありがたい」

とハジメは加点対象にしていた。階段を降り地下に行くと広い倉庫になっており、4方向から採光・換気用の窓が設置されており、地下ではあるがかなり明るかった。壁は石で出来ており、四隅にはランプを掛けることが出来る設備もあった。入口近くにある前世では電気を付けるスイッチがあるであろう場所に回すと4方向の窓が開くハンドルのようなものがついていた。スタッフの女性がそれを回し窓を開けると気持ちいい風が吹き抜けた。

「気持ちいい風入りますね」

とハジメが言うと、

「そうなんですよ。そして防犯のために窓には鉄格子がついていて、魔法無効化の魔法が掛かってるんですよ。お買い得ですよー、ここ。古いんですけどね」

と女性は言った。ハジメは

「ここにテーブル置いて調剤してもいいし、玄関入ってすぐのところでもいいかなぁ」

と自分が住んだ時のイメージを膨らませていく。そこにペン太と優しい奥さん、素敵すぎる環境である。創造、いや妄想は誰の迷惑にもならないというのはハジメの持論であった。人にバレるまでは。
ハジメたちは次に2階に案内された。2階は窓から入る日差しが程よく、温もりを感じた。階段を上ると廊下が伸びており、片側に部屋が4部屋ほど並んでいた。また階段を登り切った右側にはトイレが備え付けられていた。

「ここかなりいい気がする」

ハジメが呟くと案内してくれた人が

「いい物件だと思いますよ。お値段は古い割りに少々張りますが。引退されて娘さんのところへ行くということで早急に売りたいということと、これから商売をハジメめる方の役に立ちたいという希望がありまして、商売を始める方には少し割り引いて構わないと言われています。ですのでここは買い取りになりますが、1000万Sとなります。分割は11回、1回の最低支払100万Sなら組めますよ。ここに決めて頂けるなら」

とにっこり笑った。

「1回分は利子ですので、総額1100万Sですね」

なんでも契約が成立した時点で売り主にはお金が一括で支払われるとのことであった。つまり今後の金銭のやりとりはギルドとハジメの間で行われることとなる。つまり利子とは商人ギルドにお金を借りるということに対して支払う利子なのだと言われた。
そう考えると不思議に思うことがあったハジメはスタッフに尋ねた。

「商売が失敗して夜逃げしたらと取りっぱぐれるんじゃ?」

「いいえ、大丈夫ですよ。そもそもローンが組めるのはある程度信用がある方のみです。ハジメ様はオースティン様と仲がよろしいとか。今回の物件もハジメ様単独でなく、オースティン様が保証人となってローンを組みますので、万が一ハジメ様が夜逃げなさった場合はオースティン様が支払うことになります」

と笑顔で恐ろしいことを言った。

「あ、あ、オースティンさんに迷惑をかけないようしっかり支払います」

と顔を引きつらせながらハジメは言った。
そもそもこの家の1か月のローン支払い額は、1日に体力ポーションが10本売れるとなんとかなってしまう計算になる。勿論食事や必要物品を考えなければ。それを含めるなら15本は売れて欲しいところであるが、現在露店として売っているが1日に20本前後売れているので何とかなりそうである。このイヴの街では商人ギルドに登録すると露店許可もおまけで付いてくるのだ。中央広場の周囲に枠が引かれており、朝6時開場で先着順で場所を取り商売が出来る。ハジメもそれを利用していたのだ。

物件のカウンターの前には陳列棚も置かれており、すぐさま商売が始められるようになっている。しばらくは依頼はやめて支払い終わるまで体力ポーション作るようにしようとハジメは考えた。
このシャムラ1か月は45日で年巡りとしめぐりが10か月、1年が450日あるのである。1日は24時間で日本と差はないのだが。

「ここでお願いします。最初の支払いは今日ですか?」

とハジメが腹を括って切り出した。

「ありがとうございます。最初の支払いは契約日から1か月からスタートでかまいません。ハジメさんの口座から引き落としされますので、準備お願いしますね。追加で支払う場合はギルドまで足を運んでいただいてスタッフに声をおかけください。その際口座から落とすようにしますね。今日から住むようにしますか?それとも後日にしますか?」

ハジメは白兎の宿泊契約は今朝で切れていたのである。良いところが見つかればすぐにと考えていたからである。宿にもいい物件なかったらまた泊めてくださいとお願いしており、泊まる時は今日のお昼までに伝えればいいことになっていた。実際高いが良いところは見つかったのである。まだ午前中ということもあり、寝るための準備は出来ることも有難かった。

「今日からでお願いします。あと、頭金として400万S入金させてください」

と伝えた。案内の人から

「分かりました。では600万Sを等分割にしますか?」

と聞かれたので、はいと答えた。もし可能なら繰り上げ返済も出来るのだから安全に安全を期したハジメであった。
2人と1匹は商人ギルドへ帰り、紹介料と頭金を支払い契約をした。その後ハジメはオースティンの道具屋に報告がてら向かったのであった。

ハンドブック 5項目目

5-1.商業者で家探しをしよう!:Clear!

5-2.物件を選んでみよう!:Clear!

5-3.選んだ物件を内見しよう!:Clear!

5-4.自宅を購入しよう:Clear!

5-5.借金をしよう:Clear!
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