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狂犬Subは根こそぎ貪る
遅めの起床
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◆ ◆ ◆
「……あー……」
気だるさを覚えながら俺は目を覚ます。
時間は分からない。
一応この世界でも時間の概念はあるが、この部屋に時計はない。
窓からの光を遮光する布越しに陽の高さを感じて、昼近くだと察する。
すぐに起きる気にならず、ベッドの上でぼんやりとする。
息を深く吸い込めば、守流の匂いが俺の肺を満たす。
かすかに甘さのある、頭の奥が騒ぎたくなる匂い。
思わず布団を抱えて息をつけば、胸の奥がひどく落ち着いて心地良くなる。
このままこうしていれば、全身が蕩けてしまいそうな――腹立たしい。
「チッ……」
俺は舌打ちしながら体を起こす。意識はハッキリしてきたが、体がぼやけたままだ。感覚が鈍い。夜はあれだけ神経が研ぎ澄まされ、守流のすべてを感じ取れるというのに。
体を繋げ始めると、必ずと言っていいほど守流は俺にSubスペースを与えてくる。
DomがSubをコントロールしてどこまでも多幸感を与える能力、Subスペース。
意図してなのか、無意識的なのかはよく分からない。
守流はDomのことを知らないから、どこまで自分ができるのかを理解していない。それでも俺を幸せにしたいという一心で、Subスペースを発動させている。
他のDomが相手なら、もっと屈服させるようなSubスペースを起こしているだろう。少なくとも俺が体を起こして、守流を堕とすために腰を振り続けるような力を残してなどくれない。
弛緩したSubの体をDomが抉り、心身だけでなく精神まで犯しにかかる。それがDomの本能のはず。
もし守流が少しでもそれを望んでいたならば、俺はあの色白で細い首に牙を立て、怒りのまま引き千切っている。
しかし守流は俺を犯そうとはしない。
どこまでも俺にその身を捧げ、喰われ続けることを心底望んでいる。
俺が幸せになることが人生の最上だと願う、俺だけのDom。
散々逃げてきたDomとの契約。この異世界で生きるため、不本意ながら結ぶことになったが……こんなに息がしやすくなるとは思わなかった。
体も心も苦しくない。
衣食住は用意され、のんびりと休みながら帰りを待ち、欲情のままに好きなだけ中へ精を放つことができる。
堕ちた世界にこんな自分に都合のいい世界が広がっているなんて、未だに信じられない。
そんな明らかに元の世界よりも恵まれた状況を不快に思う自分がいる。
本能のままに腰を振って、尻尾も振って……なんて愚かで堪え性のない駄犬のような生き方。俺が望んでいるのはこれじゃない。
腰を淫らに振って、嬉々として精を飲み干して俺に屈するのは守流のほうだ。
俺がアイツの支配者になる。
腹の底に焼けるような熱を覚えながら、俺は立ち上がって食事のある部屋へ向かった。
「……あー……」
気だるさを覚えながら俺は目を覚ます。
時間は分からない。
一応この世界でも時間の概念はあるが、この部屋に時計はない。
窓からの光を遮光する布越しに陽の高さを感じて、昼近くだと察する。
すぐに起きる気にならず、ベッドの上でぼんやりとする。
息を深く吸い込めば、守流の匂いが俺の肺を満たす。
かすかに甘さのある、頭の奥が騒ぎたくなる匂い。
思わず布団を抱えて息をつけば、胸の奥がひどく落ち着いて心地良くなる。
このままこうしていれば、全身が蕩けてしまいそうな――腹立たしい。
「チッ……」
俺は舌打ちしながら体を起こす。意識はハッキリしてきたが、体がぼやけたままだ。感覚が鈍い。夜はあれだけ神経が研ぎ澄まされ、守流のすべてを感じ取れるというのに。
体を繋げ始めると、必ずと言っていいほど守流は俺にSubスペースを与えてくる。
DomがSubをコントロールしてどこまでも多幸感を与える能力、Subスペース。
意図してなのか、無意識的なのかはよく分からない。
守流はDomのことを知らないから、どこまで自分ができるのかを理解していない。それでも俺を幸せにしたいという一心で、Subスペースを発動させている。
他のDomが相手なら、もっと屈服させるようなSubスペースを起こしているだろう。少なくとも俺が体を起こして、守流を堕とすために腰を振り続けるような力を残してなどくれない。
弛緩したSubの体をDomが抉り、心身だけでなく精神まで犯しにかかる。それがDomの本能のはず。
もし守流が少しでもそれを望んでいたならば、俺はあの色白で細い首に牙を立て、怒りのまま引き千切っている。
しかし守流は俺を犯そうとはしない。
どこまでも俺にその身を捧げ、喰われ続けることを心底望んでいる。
俺が幸せになることが人生の最上だと願う、俺だけのDom。
散々逃げてきたDomとの契約。この異世界で生きるため、不本意ながら結ぶことになったが……こんなに息がしやすくなるとは思わなかった。
体も心も苦しくない。
衣食住は用意され、のんびりと休みながら帰りを待ち、欲情のままに好きなだけ中へ精を放つことができる。
堕ちた世界にこんな自分に都合のいい世界が広がっているなんて、未だに信じられない。
そんな明らかに元の世界よりも恵まれた状況を不快に思う自分がいる。
本能のままに腰を振って、尻尾も振って……なんて愚かで堪え性のない駄犬のような生き方。俺が望んでいるのはこれじゃない。
腰を淫らに振って、嬉々として精を飲み干して俺に屈するのは守流のほうだ。
俺がアイツの支配者になる。
腹の底に焼けるような熱を覚えながら、俺は立ち上がって食事のある部屋へ向かった。
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