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清純Domはすべてを捧げる

●甘い仕置き

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   ◇ ◇ ◇

 アグは待ってくれた。
 食事の後片付けが終わるまで、そわそわしながら待ってくれた。

 流し台で洗い物をしながら、我慢してくれるアグを褒めながら撫でたくてたまらなかった。

 でもそれをやってるといつまで経ってもアグにご褒美があげられない。
 だから僕もそわそわしながら後片付けをした。

 ――カチャリ。
 最後のお皿を拭き終えて棚へ戻し、僕がエプロンを外してすぐ。

「ほら風呂に入るぞ。ボサッとするな」

 既に服を脱いで裸になっていたアグが、僕を抱えて風呂場へ向かう。

 その間、乱雑に僕の服を脱がして廊下へ投げ捨てる。
 いくら早く僕が欲しいからといっても、さすがにこれは……。

 常識が違うことを痛感しながら、僕はアグの肩を叩いて小さく首を振る。

「せめて脱衣所でお願いします。ちゃんと脱いだ物を入れるカゴがありますから」

「……待てなかった」

「気持ちは分かりますけれど、ちょっとだけ我慢して下さい。ね?」

 押し付けと思われないよう、お願いを心がけて訴える。
 すると渋々な様子でアグが「分かった」と受け入れてくれた。

 でも頭の犬耳がペタリと倒れて、どこか怯えたような色を覗かせる。

「俺を罰するのか?」

「そんなことしませんよ。これぐらいで――」

「……仕置きしろ。それもDomの役目だ」

 嫌そうな感じなのに、アグはそれを望むの?
 戸惑いを覚えながらも僕はアグに応えたくて考える。

 お仕置き……どうしよう。誰にもされたことがないから、よく分からない。
 脱衣所に着いて、残っていたシャツを脱ぎながら考える。

 ――効きそうなお仕置きはこれしか浮かばなかった。

「アグ……今からお風呂で、アグから僕に触らないで。ベッドに行くまで我慢。良いですか?」

「……分かった。それでいい」

 渋々な様子で浴室へ入っていくアグに、僕の胸が落ち着かなくなる。

 ずっと待ってたのに我慢の延長は辛いよね。うん。
 頭に熱を溜めながら、僕もアグの後へ続く。

 一緒にお風呂へ入ると、僕は自分からアグに近づいてその首に抱きつく。
 肌が密着する。欲情の熱が伝わってきて、それだけで僕の理性が痺れて、頭がぼうっとなる。

「守流、お前……」

「うん……お仕置き。僕はアグに触るけど、アグは我慢して。片付けを待ってくれたご褒美はあげるから……」

 囁き声でも浴室だとよく響く。
 自分の声じゃないみたいだ。何かに取り憑かれたと思いたくなるほど甘い。

 僕は軽く頭を上げると、アグの唇にキスを重ねる。

 昨日、アグにいっぱい教えられたせいで、体がどうすればいいかを覚えてしまった。

 自分から舌を挿し入れ、肉厚なアグの舌に絡める。

「ン……ん、ん……っ……」

 アグからされていないのに、声が勝手に出てきてしまう。

 一方的なキス。アグからの動きはない。
 でも体がピク、ピク、と小さく跳ねたり、力が入ったりして、動くのを耐えている気配がする。

 一度唇を離して顔を見れば、アグは引きつった笑みを浮かべていた。

「……このっ……いい性格してるじゃねーか」

「嫌、だった?」

「好きにしろ……後で覚えていろよ」

 目を吊り上げて僕を睨みながら、アグの口はニヤリと笑う。

 ……お風呂から上がったら大変な目に遭いそうだな。
 でも、これなら我慢した分だけアグが喜んでくれる。

 もっとアグを幸せにできる。
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