清純Domの献身~純潔は狂犬Subに貪られて~

天岸 あおい

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清純Domはすべてを捧げる

物騒な話

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   ◇ ◇ ◇

 翌朝、目を覚ますと体中が痛かった。
 延々とアグに体を貪られて、普段やらない体勢を取らされて――全身が筋肉痛で、朝から目に涙が滲んだ。

 でも隣で安らかに眠るアグを見たら、胸の奥が熱くなって別の涙が零れそうになった。

 僕はアグの居場所になってあげられたんだ。
 ずっと逃げ続けてきた彼が、何も我慢せずに延び延びと生きることができる。

 まだ契約して一日も経たないのに、この身をアグに差し出せたことが幸せでたまらない。

 しばらく寝顔を眺め、幸せを噛み締める。
 でもふと我に返って枕元の時計を見れば、仕事へ向かうギリギリの時間だった。

「わぁぁっ、お、遅れる……っ」

 慌ててベッドから出ようとして、力が入らず盛大に転がり落ちる。

 ドスン、と体を打ち付けて、筋肉痛の痛みが全身に走る。痛い。キツい。

 ……トレーニングの勉強しよう。
 僕は心から肉体改造することを誓う。

 これだけバタついても、アグが起きることはなかった。



 痛みを堪えながら介護の仕事をしていると、徐々に体が慣れて、痛みは気にならなくなっていった。

 休憩中に腕や脚を伸ばすストレッチをしていると、同僚に「おっ、もしかして」と声をかけられた。

「古矢も鍛え始めたのか? 俺も最近筋トレにハマってさー」

「えっと、うん、そんなところ」

「本格的にやるなら、しっかりタンパク質取っておけよ。良いプロテインのメーカー知ってるから、今度持ってきてやるよ」

「あ、ありがとう」

「最近ここら辺も物騒になってきたから、何かあった時、戦えないにしても逃げ切る体力は欲しいよな」

 物騒?
 初耳のことに思わず僕は首を傾げる。

「何かあったの?」

「知らないのか? 最近、変な連中がうろついてるんだってよ。捕まったら半殺しになるって……警察も被害に遭ったとか」

「そ、それは、物騒だね」

「そっ。古矢はケンカできないだろ? だから逃げる体力はしっかり付けとけよ」

 同僚の彼の言葉に僕は何度も頷く。

 ケンカなんて一度もしたことはないし、体育の授業で少しかじった柔道でさえ、試合するのが怖かった。

 戦うなんて考えられない。暴力なんてもってのほかだ。
 どうして平和に生きられない人がいるんだろう……そう思うと悲しくなってくる。

 ふとアグが頭に浮かぶ。

 ずっと追われ続けてきたアグ。
 きっと追手は理不尽な暴力で、嫌がるアグを押さえつけようとしていたのだと思う。
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