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清純Domはすべてを捧げる
DomとSub
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「俺は人狼が統べる世界にいたSub持ちだ。Dom持ちに支配される存在……契約を結んだら、SubはそのDomの言いなりになるしかない」
知らないことだらけだけど、なんとなく理解はできた。
外見が異世界の存在を受け入れるしかない姿だから、その点を疑わないだけで内容が僕の頭に入ってくる。
「身も心もDomに奪われ、好き勝手される……大抵のSubは奴隷同然の扱いだ。もしくは愛玩動物か……それが嫌で、俺はDomから逃げ続けていたんだ」
「なんて酷い……それじゃあ元の世界に戻りたくても戻れないのでは?」
「ああ無理だな。戻れば捕まって、無理やり契約させられる」
小さくチッと舌打ちして、アグーガルさんは片頬を引きつらせる。
「生まれながらの隷属だから、従うのが当たり前だなんて……ふざけんな。俺は俺のものだ。支配なんてされてたまるか……っ」
食事をして声に力が戻ったけれど、また掠れている。
不意に――バタン、と後ろに倒れて彼は天井を仰いだ。
「逃げて、逃げて、地の果てまでヤツらは追いかけてきやがった……そして飛び降りたら、ここに出たんだ」
「えっと、つまり、もう追って来ないんですか?」
「多分な。アイツらに堕ちる勇気なんざないだろうからな」
アグーガルさんは息をつくと、ゴロリと体を横たえた。
「俺を助ける気なら、しばらくここへ居させろ。飯を出せ。用がなかったら話しかけるな」
「わ、分かりました。好きなだけ滞在して下さい。違う世界に来て、右も左も分からなくて大変ですよね。何かあればなんでも言って下さいね」
「うるさい。喋るな。もう寝る」
一方的に宣言した途端、アグーガルさんは完全に沈黙した。そして一分もしない内に寝息が聞こえてきた。
「すごい……嵐みたいな人だ」
遠慮なく自分の都合を通す姿が、野生動物そのものに見えてくる。
呆気に取られながら、僕はアグーガルさんに毛布をかける。
強がっていただけで、本当は疲れて早く寝たかったのかもしれない。寝顔がどこか満足げだ。
彼に休める場所を提供できた。
それがなぜか妙に嬉しくて、僕はしばらくアグーガルさんの寝顔を眺め、それから空いた食器を片付ける。
少なくとも僕は追手よりも信頼されているらしい。
思わず口元が緩んだ。
知らないことだらけだけど、なんとなく理解はできた。
外見が異世界の存在を受け入れるしかない姿だから、その点を疑わないだけで内容が僕の頭に入ってくる。
「身も心もDomに奪われ、好き勝手される……大抵のSubは奴隷同然の扱いだ。もしくは愛玩動物か……それが嫌で、俺はDomから逃げ続けていたんだ」
「なんて酷い……それじゃあ元の世界に戻りたくても戻れないのでは?」
「ああ無理だな。戻れば捕まって、無理やり契約させられる」
小さくチッと舌打ちして、アグーガルさんは片頬を引きつらせる。
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食事をして声に力が戻ったけれど、また掠れている。
不意に――バタン、と後ろに倒れて彼は天井を仰いだ。
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「えっと、つまり、もう追って来ないんですか?」
「多分な。アイツらに堕ちる勇気なんざないだろうからな」
アグーガルさんは息をつくと、ゴロリと体を横たえた。
「俺を助ける気なら、しばらくここへ居させろ。飯を出せ。用がなかったら話しかけるな」
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「うるさい。喋るな。もう寝る」
一方的に宣言した途端、アグーガルさんは完全に沈黙した。そして一分もしない内に寝息が聞こえてきた。
「すごい……嵐みたいな人だ」
遠慮なく自分の都合を通す姿が、野生動物そのものに見えてくる。
呆気に取られながら、僕はアグーガルさんに毛布をかける。
強がっていただけで、本当は疲れて早く寝たかったのかもしれない。寝顔がどこか満足げだ。
彼に休める場所を提供できた。
それがなぜか妙に嬉しくて、僕はしばらくアグーガルさんの寝顔を眺め、それから空いた食器を片付ける。
少なくとも僕は追手よりも信頼されているらしい。
思わず口元が緩んだ。
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